趣味Web 小説 2005-05-23

feat.VOICE #6

0.遅刻

昨夕6時半頃、私は赤坂で道に迷ってました。地図が読めない男です。焦って右往左往していたら、広場へ抜けました。正面にそびえるビルを見上げれば TBS ……「逆方向じゃん」絶望的な気分に。TBS といえば東京エレクトロンの子会社の面接の際に中へ入りました。懐かしい。TBS は東京エレクトロン発足時の最大出資者だったので、現在も細々と縁があるのだとか。テレビ局の中は迷路になっている、という噂話がありましたけど、TBS はスッキリしてました。で、その会社と現在の勤務先の両方から内定が出たのですが、最終面接でお話した役員さんらの好き嫌いで今の会社を選びました。7月のことだから、けっこう遅かったですね。

というわけで結局、赤坂MOVEについたときには何分遅れだったかよくわからない。招待されておいてひどい話です。ごめんなさい。会場でも謝ったけど、ここにも書いておきます。

1.くつしたさん

さて、私を呼んでくださったのはくつしたさん。最初にライブへ招待されたのはいつだったかな。今回のライブが2周年だそうだから、それより前ではないのでしょうけれども。初めてのときは顔を出すのを散々渋ったような記憶がありますが、もうその理由は思い出せません。たぶん、単に出不精だから休日にどこかへ出かけるのが面倒くさかったんでしょうね。いい加減ですね。その後は年2回程度のペースでライブの客になってます。あれれ、そうすると今回が4回目か5回目? そんなものかな。

もともとはたろたま騒動関連で私がくつしたさんの日記にリンクしたあたりが最初の縁らしい。以来、くつしたさんは備忘録の読者なのだそう。何年も読んで飽きないというのも珍しい……と書いてから自分のアンテナをチェックしてみたのですが、私の巡回先もほとんど変化ないですね。

さて、昨日のライブは「feat.VOICE #6」という名前がついていて、くつしたさんが O・A で、以降、松岡宮渡邉隆輔aoiBITTERSWEET の順。ちなみに O・A というのはオープニング・アクトの略で、つまり「最初の人」っていうだけの意味なのかと思ったら、微妙に違うらしいのです。でもどう違うのかは、客席からはわかりませんでした。持ち時間も一緒のようでしたし、座席が埋まって立ち見がいるくらいにお客さんも集まっていました。私はみながけん制しあって(?)空白地帯になっていた最後の席に座りました。ちゃっかり系。

2.赤坂MOVE

くつしたさんにとって赤坂MOVEは、

店の人ほぼ全員が、わたしでなくスタッフの犬さんのほうを「くつした」だと思い込んでいたようで。んだからファックスでわざわざ性別とか年齢とか生年月日とか住所とか書いて送ってんのに、見やしないのね・・・・。

そのうえ、セッティング表とか使用機材とか事前にファックスしてるし、リハ待ち時間にさんざんわたしがギターいじってるの見てるはずのくせに、いざセッティングのときにアンプを使うと言ったら「エレキなんですか」って、なんすか。ああすいませんエレキです、って、どうしてわたしが小さくならなきゃいかんのよ。もう・・・・。

って感じだったらしいのですが、ただ観てるだけの客としては悪くありませんでした。aoi さんが即興で「赤坂MOVE、赤坂MOVE空気重い」なんていって笑いをとってましたけど、つまり、ノリを強制されない空間だったわけ。野球場でいえば内野指定席。演奏中に居眠りしたっていいわけですよ、多分。演奏者は怒るかもしれないけれど、こちらはお客様であって、一人の演奏ではなく「feat.VOICE #6」全体を観に来てるんだ、文句あるかみたいな。何せ客席の椅子とテーブルがきれいで、床もきれいで、むしろステージの方がつぎはぎだらけみたいになってて、こうしたことのひとつひとつが、客席優位っぽい雰囲気を作っていたように思う。

スタッフ対応も、どちらかというと演奏者より客席のサービスを重視してるような感じでした。飲み物とか、かつてないほど頼みやすかったですし。というのは、どことはいいませんけど、くつしたさんに呼ばれて出向いたライブハウスの多くは、店員さんもステージに全関心を向けていたり、常連客みたいな誰かとお喋りしてたり、ドリンクチケットをどこで渡したらいいのかさえハッキリしなかったり、カウンタに店員が不在で困ったり。場慣れすれば気にならなくなる程度の小さな障害なのでしょうが、「何となく場違いなところに来てるような気分」が抜けない今の私には、ちょっと冷たい感じがしていたのです。その点、赤坂MOVEはドリンクカウンタの位置は明快だし、店員さんはステージよりも客の方に関心を向けているし、カウンタの位置もステージの正面ではなく脇の奥まった場所にあってよかったです。

3.本稿の構成

えーと、ちっともライブ自体の感想を書いていないわけですが、その理由は、私が本や映画の感想をほとんど書かないことと同じ。一言で感想を書けば、「楽しかったです」。二言で書けば、「楽しくてよかったです」。もうちょっと長く、といわれると絶句する他ない。

それでも、何か書こうと思います。書けない文章を書くコツは、外堀から少しずつ埋めていくこと。いきなり本題を書こうとしない。そうすれば、とりあえず文章はドンドン長くなっていって、最終的に本題に触れても触れなくてもそれなりの感想らしくなったりならなかったりします。

ま、それほど難しく考える必要は多分なくて。くつしたさんが松岡さんとこの掲示板に書いた感想も、周辺の言葉を抜いてしまえばとても圧倒されるライブでしただけ。逆に松岡さんが日記に書いたくつした評はわたしの前に歌っていた「くつした」様がすごい良かったです。この一言。「圧倒」「すごい」「よかった」これなら! 私にも書ける! ……ちょっと安心。

ところで、この備忘録は基本的に1話完結形式。ひとまとまりの主張を一気呵成に書き上げて公開するのが基本のパターンです。本稿はこの形式を崩し、思ったこと、考えたことを未整理のまま、どんどん放り込みます。緩いはてなダイアリーユーザに近い更新形態です。これは人気ブログを目指すなら避けるべき手法。本稿を最後まで読んだとき、その理由はアタマの疲労が雄弁に物語ってくれるだろうと思います。

4.大物

くつしたさんが日記で他の4組のうち3つは弾き語りで、大物なんですね、オープニングアクトなんか見やしないで楽屋で女といちゃついていました。大物ですね。なんて書いてて、その一方できのうの対バンは、「松岡宮」さんという人がすごかったのですと松岡リスペクト。逆に松岡さんもいつも、対バンさんと出会うのが楽しみなのですがと前置きしてくつしたリスペクト(他の対バンについては一言もなし)。あはは。

ここで「大物」という言葉が出てきてくるのは単なる皮肉でもなくて、一般人の考える言葉遣いの基準とは別の価値体系の存在が影響してるはず。はてなダイアラー的にはテラヤマアニさん@俺パパといえば「有名人」だったり「カリスマ」だったりするけれど、それって「一般人」の感覚とはだいぶ違いますよね。……という例え話でわかってもらえるのかな。

(引用者注:「大物ですね。」の続き)そのくせ、リハで一曲だけ聴いただけのくせに、最後に会った時に笑顔で「高階文具店って曲がすごいよかったです」とか言ってきて、おめ、それしか知らんだろうに。おいおいおい。なかなか、むつかしいのです。

なるほど。とはいえ、全員には尽くせない礼儀を社交性の高さでフォローしていこうとする戦略は、無愛想よりは勝るに違いない。一応、1曲は聴いていて、その曲を素直に誉めたのだから、少なくとも嘘吐きではない。「誰あんた?」って顔して挨拶もせずに横を通り過ぎる手もあるわけですよ。その場合、おいおいおい。は避けられても、それ以上に損をするでしょう。厚顔無恥を指摘してオシマイ、という話ではないかもしれない。

いずれにせよ私はそんな舞台裏を知らず、「くつしたさんと松岡さんって以前からのお知り合いだったのですか?」なんて呑気に訊ねたりしてました。くつしたさんはステージの上でもフロアでも同じ人っぽい雰囲気なのですが、松岡さんは顔からして違ってしまう感じ。表情が違うんですね、多分。でもライブ写真を見るとくつしたさんは客席から観た感じと違って見えて、松岡さんはライブ写真でも客席から見たまんま。そんなことを考えながら喋ってました。それが上の空の理由(すみません!)。

5.くつしたライブ

くつしたさんの自己評価では「いまひとつ」だったらしいのですが、私は「いいなあ」と思いましたよ。今だから書くけれど、最初のときは「面白いけど、ていうか、面白い、という区分でいいのだろうか」ってあたりが正直な感想でした。歌はバリバリって感じの衝撃、気に入ったのは MC (曲間のショートトークのことをエムシーというらしい)で、対バンも私の日常に登場しない人たち。音楽の世界はカオスだなあ……と。歌や曲の方で好印象だったのはゲノビズムで、なるほどつくしたさんがリスペクトするわけだ、と納得。

だんだん関心(あるいは感心?)のポイントが変化してきたのは、単に私がくつしたさんの迫力に慣れただけではないと思う。ギターの方はまだぴんと来ないものの、歌唱はとってもいい。「高階文具店」はみなが誉めるみたいなので、「はれるな」について書きます(あー、わかんない人は CD を買えばわかります)。新曲として紹介されたときにはカレーライスとキムチピラフとチーズケーキとポテトサラダと冷やしトマトが気になっていたんです。

ここでいきなり話を寄り道しますが、私はずっと音楽に無関心で、それはテレビや映画やマンガに興味がないのと同様に興味がなかったわけです。別に嫌いというわけじゃなくて、聴けば「音楽ってのもいいものだな」と思うけれど、逆にいえばそれだけ。私にとって、たいていの音楽は心地よく通過していくものだったわけです。

それはそれでいいのだし、文句ないわけ。ただ、あってもなくてもいいものだったから、強い関心を持つことがなく、だからカラオケにいったって歌える曲が全然ない。常識としてヒット曲のさわりの部分は知っているのだけれど、そこしか知らないわけね。だからスピッツの「ロビンソン」なら、「宇宙の風に乗る~♪」みたいなところしか歌えない。それじゃあカラオケにならないわけで、だから私はカラオケは嫌い。正確には、聴いているだけなら好きなんですけど、「徳保クンも歌えばいいのに」とかいって勧められるのが困る。そういう人がいないなら、カラオケに連れてってもらうのは悪くないですね。

私がくつしたさんのライブを観る機会をもらって、吃驚したというか、気付かされたのは、「頭の中をすいすい通過していくような音楽ばかりじゃないんだな」ということ。ただ、しばらくは単に下手で耳障りが悪いだけなのか、そうでもないのか判断できませんでした。正直いうと、今でも微妙な感じはするわけです。今回のライブでも、多分、一番ふつうに CD が売れたりしているらしい aoi さんの音楽が、やっぱり心地よく頭を通過する系統の音楽。くつしたさんはうまくなってもくつしたさんではあるのだけれど、どちらかといえばリラックスして聴ける方向へ進んでいるような気がするわけですよ。

くつしたさんの曲には、演奏と歌唱だけでなく歌詞にも「引っ掛かり」が用意されていて、それが「はれるな」では食べ物の羅列でした。昔は、そこが気を引いたというか、嫌でもその違和感に引きずられてしまったのでした。頭の中で音楽が渋滞が起き、怒ったドライバーがクラクションをひっきりなしに鳴らすのでますます大混乱。ついには喧嘩も起きますよ、という感じ。それが昨日はどうだったかというと、食品を満載したトラックはノンストップで走り去ってしまい、敢えていえば他の誰かでも書きそうな歌詞、本筋の「1人で食べる今日から さよなら」の方が胸に迫る。

うまくなるというのが即ちそういうことなのか、それとも? というあたり、私にはわからない。「メジャーを目指す」らしいくつしたさんの進むべき道が、私なんかにわかったらむしろおかしいのだけれど。個人的な希望を書くなら、くつしたさんの音楽が持っている「頭を素通りしない引っ掛かり」を消すことなく、進化していってほしいと思う。

帰宅してから聴いた CD は音が非常にクリアで、スッキリした印象。意外な仕上がりに頭がついていかないまま、ボケーっとしながらエンドレスリピート。私のようなトーシローが最初に聞くのは CD の方がいいかもしれないな、なんて思う。迫力が抑えられて、しみじみとした感じで聞けるので、自然に抵抗なく頭へ入ってきます。が、その先で「言葉」が引っ掛かっていく。堆積していく。この感じ。くつしたさんの CD なんだから当たり前なのだけれど、くつしたさんの音楽なんだな、と思う。

次回のライブは6月8日だそうです。

6.掲示板

ところで、くつしたさんに呼ばれて何度かライブを観ましたけれど、出てくる音楽家の方々、たいていウェブサイトを持っていらっしゃるのですね。昨日のライブも全参加者がサイト持ちでした(くつした松岡宮渡邉隆輔aoiBITTERSWEET)。

当然、掲示板なんかもあったりして。ライブが盛況だと、感想の書き込みがあったりするわけです。で、ざっと見て回ったのですが、うーん、一番客が多かった aoi さんのところでも1件きりしか感想がない。そりゃアンケートを欲しがるのもわかる。わざわざ会場にまで出向いた人が、掲示板に感想を一言書くくらい簡単なことだろうに、ほとんど誰も感想を書かない。いくら回収率が低いといっても、アンケートの方がまだしも集まるのだろうし、やっぱり手書きの方が「ホンモノ感」がある。あと、間違いなく会場に来た人の思ったことでもあるのだし。

ひとつ不思議に思うのは、お客さんたちがどこから集まってくるのか。みんな誰かの知り合い、というわけでもなさそうなのです。

7.松岡宮ライブ

松岡さんは私の前上司と同い年。前、といっても上司の方が消えたわけじゃなくて、私がグループを移ったのです。という話は全然、ライブと関係ないはずなのですが、私は音楽を「ながら消費」して25年も生きてきたので、音楽に集中する方法がわからない。というのはイイワケで、じつはわざと関係ないことを考えたりしました。

くつしたさんがいうように、とても圧倒されるライブでした。でしたが、圧倒されて染まってしまうことに忌避感があったんですね。「何これ!? 自分は今、何を観せられているの!?」という戸惑いがあり、いったん心が静まって、急に感情が爆発する。「ちょちょちょ、ちょっと待った~! そりゃ、ライブに飲み込まれるだけで人生壊されるわけじゃなし、とって喰われるわけじゃなし、素直に没頭したって何も問題はない。そんなことはわかっているけれど、でも、でも、もう少し時間をください」というわけで、ちょっと目を閉じてみたり、(´・ω・`) なんて表情を作ってみたり。

無意識に上の空になって、目の前で起きていることと間接的にしか関係のないことをフワフワ思い描くのが私のホームポジション。安心できる生活スタイル。まずそこへ持っていくために、意図的な情報の遮断を行った……あえて説明すれば、そんなところなのかな。

いくらなんでも音楽のライブの砂かぶり席で耳はふさげない。くつしたさんとは別方向ながら、松岡さんの曲も歌詞も歌唱もアタマに引っ掛かりまくり。素直に流れていかないということはつまり、歌詞が頭の中で反響してグルグル回り続けるということで、えーと、よくわからない人は松岡さんの駅員観察日記を読んで想像を膨らませていただきたいのですよ! というか、6月5日に次のライブを行うそうなので、いってみるのが一番いいと思います。

松岡さんにとってはおそらく今後の課題、私にとっては恵みの雨(何のこっちゃ)となったのが、MC でつなぎつつ息を整える時間。ライトのせいかどうかわかりませんが、このときだけはあっさり魔法が解けるのです。常識人として社会生活を送られているのであろう松岡さんに戻ってしまう。私はこの時間帯をありがたく活用して段々に精神状態を立て直しまして、後半は概ね「これもなかなか面白いかも!」なんて余裕をかましてみたりして。強がりです、すみません。

一言で感想を書くと、「ビビりました」。

8.……

この備忘録は、招待してくださったくつしたさんのために書いているので、以降3組のライブの感想は省略します。多分、興味ないだろうし。それに、私の中にもしっかり感想を書かない理由はあります。

最初の女性2組は、いうなれば個性派。後の男性3組に個性がないといいたいわけではなくて、なんていうのかなー、ふつうにいい感じだったってこと。「この人らがもっと洗練されていったり、うまくなったりすると CD がどんどん売れたりするのかな、と素直に想像できた」と書けばニュアンスは伝わるかな。私の頭を心地よく通過していくので、「言葉」がガリガリ爪痕を残していったりはしない。でも、「ながら消費」ばかりしてきた私が思うに、それは決して悪いことじゃない。

ただ、音楽に無関心に生きてきた私にとって、つまり結局、渡邉隆輔さん、aoi さん、bittersweet さんらはですね、「あ、その曲知ってる。さわりのところだけだけどね。なんだったかの CM 曲でしょ。歌手? 知らないよ」みたいな扱いになっていくわけで。私は音楽をやっている人間じゃないから。既存の音楽にとくに不満があるわけでもなくて。その巨大な序列の中に、一人二人、知識が追加されても、逆にいえばただそれだけのことで。「めざましテレビ」で紹介されるメジャーデビューした新人歌手と同じ目線で語ることになるわけで。

曲調としては3組とも好きなパターンだったし、売れ出してるらしい aoi さんはやっぱりうまかったし、渡邉さんもよかったし、bittersweet も楽しかったのだけれど、非常に安心してライブを満喫(?)できたのだけれど、私はそれで満足したし、そのことは少なくとも喜んでくれると思うのだけれど……。

9.オフ会とか

ちょっと質問されたので、ここでも書いておきますが、「趣味Web」でオフ会を開く予定はありません。今回、書いたように、くつしたさんのライブにはちょくちょく顔を出しているので、くつした詣でをしていれば私に会うことは難しくないはず。とはいえ、そこまでして会いたい人もいないわけでしょう。だったら別に、会わなくても、ねえ。私はあんまり人と会うのは好きじゃないですし。

10.うずまき

これまで私は途中で帰ってしまうことが多かったので、今日は最後までいるつもりでした。でも5組目まで全部見て、ついでに下のフロアの会場でライブしてたうずまきさんも聴いたので、出たときには午後10時くらい。うわわ、こりゃ大変だと思いました。簡単に食事して帰宅したときにはもう、日付が変わりそうになっていたと思う。ひばりが丘でさえこんなに遠かったのだから、茨城の北の方から来てたくつしたさんは本当に帰るの大変だったろうな。

うずまきさんのライブは、とてもよかったです。すごく楽しそう。

Information

注意書き