ちゆ日記
(ちゆが日常生活で起こった出来事をつづる日記です)
◇平成13年7月◇
07月03日30年前のエロ本 |
平成13年7月3日(火) | 30年前のエロ本 | ||||||||||||
うどんアタック!(仮称)のmicchyATSさんに、珍しいものを貸して頂きました。
「ポケットビジュアル誌・ヤングV」昭和47年1月号。 約30年前のエロ本です。 「ポケット」と名乗るだけあって、大きさはジャンプコミックスと同じくらい。手軽に携帯できて電車の移動時間や仕事の空き時間にも素早く取り出せます。 時刻表ならともかく、エロ本にとって携帯性がどれほど重要なのかはよく分かりませんけれど。 ちなみに、定価は350円。当時は大卒の初任給が5万円くらいでしたから、現在の物価で考えると1500円前後の値打ちだと思われます。 表紙で「PORNO」「ポルノ」「ぽるの」と、わざわざ英語・カタカナ・ひらがなを駆使して「我こそはポルノであるぞ」と自己主張しておられる理由はよく分かりません。 巻頭のグラビアは、「新年特別企画」。
…「なにかの参考にどうぞ」とか言われても、ちょっと困ってしまいます。 そして、さらに中を読み進めると、困惑を通り越して錯乱してしまいそうな記事が目白押しです。
「『オー、レックス!』 ひと声高いリンダの声とともに、リンダのプッシーからはレックスの白いミルクが黒い肌をつたい落ちてきた」。 …この文章では健康な成人男性はとてもヌけないと思いますが、それ以前に挿し絵が妖怪です。 これで興奮できるのは水木しげる先生くらいだと思いますが、そういえば今日(7月3日)はつのだじろう先生の誕生日でした。おめでとうございます。 さて。 この「ヤングV」最大の見どころは、「憧憬」と題された24ページの読み切り漫画です。
作者は林ひさお先生。小学館の学習雑誌で「帰ってきたウルトラマン」や「ウルトラマンA 」の漫画版を描いておられたこともある方です。 時代はまだ「ハレンチ学園」が連載していた頃。「まいっちんぐマチコ先生」が登場する10年前という、エロ漫画黎明期です。 絵柄は当時主流だった梶原一騎原作みたいな劇画調で、およそ色気というものが感じられません。 では、この漫画をストーリーの流れに沿ってご紹介していきたいと思います。 物語は、主人公が親友の木村くんの部屋を訪れるところから始まります。主人公が元気よく部屋に入ると、なぜか木村くんは下半身ハダカ。
「せんずりさ…」。目に陰までかけて、ダンディに決めているつもりなのでしょうか彼は。 どことなく伴宙太と星飛雄馬を連想させる外見の二人ですが、当時の劇画はみんなこんな感じなので、特に「巨人の星」のエロパロとかではありません。 ともあれ、ここで主人公がせんずりを知らないことが発覚。 主人公「それやるとどうなるんだ?」 木村くん「天国にいった気分になるのさ」 そして、「よぉし一発伝授するか」などと言い出す木村くん。性に関する情報を雑誌やビデオやインターネットで仕入れる現代とは違って、30年前は兄弟や友人からせんずりの手ほどきを受けるのが常識だったようです。 共同体の中で受け継がれていくせんずり文化。浪漫です。 そんなこんなで、木村くんの一発伝授が始まります。
シュッシュッポッポッ シュッシュッポッポッ 走っているのはD52ですね。 愛称はデゴニ。戦時中、輸送の増加に対処するために造られた超巨大貨物機関車で、昭和18年から昭和20年に製造されました。 出演している140号機は、昭和19年製。廃車になったのは昭和48年ですから、この漫画の執筆当時はまだ現役で活躍していました。 しかし、まさかそれが、よりにもよってせんずり描写に使われるとは。 おそらく、木村くんの素早く力強いピストンがD52のような重量級のパワーを連想させ、蒸気を噴き出すように激しくイってしまったということだと思います。 こうしてせんずりを伝授された主人公。 その魔力にすっかり魅せられ、毎日コイてコイてコキまくるシュッシュッポッポッ人生に突入してしまいました。
もう訳わかりません。シュッシュッポッポッ。 そして、やめるどころかさらに回数が増えていく主人公。「自分のムスコを握っている時がいちばん心がやすまる」などと言い出すほどの重症です。 ついに、こんなにやつれてしまいました。
このままでは、コイツせんずりで死にます。 読者が真剣に心配になったところで、そんな彼に一大転機が訪れます。ちょっとしたきっかけで、以前から憧れていたお隣の奥さんとホテルでベッドインすることになるのです。 「わたしにまかせて…。さあ、あおむけになって」と、やさしく主人公をリードしてくれるお隣の奥さん。ただ者ではありません。 さあ、ようやくエロ漫画らしくなってきました。 せんずり馬鹿の主人公も、ついに童貞を捨てて男になる時です。
完。 お隣の奥さんが木村くんより下手で、D52級のダイナミックな愛撫ができなかったのが悪かったのでしょうか。 そういえば、明治11年の「通俗男女自衛論」には「手淫は乱状の中に就いても最も身体を傷い風俗を姦乱すもの」として、その「害毒」が詳しく述べられています。 「神経衰弱」「馬鹿」「近眼」「ニキビ」などの症状をせんずりが引き起こすという発想は、明治の文明開化でキリスト教文化圏から輸入され、大正・昭和と伝承されていきました。 もしかすると、タバコの箱に「健康のため吸い過ぎに注意しましょう」と書いてあるのと同じように、「健康のためコキ過ぎに注意しましょう」という警告として、「憧憬」が掲載されたのではないでしょうか。 それも興ざめな注意書きなどではなく、「せんずりにハマり過ぎると、こんな馬鹿になるのだぞ」という漫画の形態をとって。 常に読者のことを考えて健康に配慮しながら、かつ楽しませることも忘れなかった「ヤングV」。 まさにエロ本の鑑。 今から30年も昔、東映戦隊シリーズはまだ存在しておらず、仮面ライダー1号が現役で活躍していた時代。子どもたちが「帰ってきたウルトラマン」に夢中になっていたその時に、大人たちのヒーローは「ヤングV」だったのです。グレイト! その偉業は、21世紀に語り継がれなければならないでしょう。
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