作品名 5段階評価
短評
<ア行>
愛と青春の旅立ち ☆☆☆★★
 邦題はこんなポルノチックな甘い甘いタイトルなんだけど、原題は「An Officer and a Gentlman」、見れば解るとおり海軍航空士官養成所を舞台にした恋愛モノなんだけど、主眼はあくまでも主人公の成長にあるんですね。だから近所のビデオ屋の如く恋愛物のコーナーにあるのは疑問符。
 未来をつかむために努力する軍人の卵達と彼らを狙う貧しい街娘、構図としてもよく出来ている。勿論、バラ色の話だけではなく悲惨な挫折などもたくさん出てくるが、それも受け止めて主人公の成長の糧となっていく。
 好きなシーンはやはり修了後のところだ。散々悪罵の限りを尽くして生徒をしごいた鬼軍曹が、修了後少尉に任官された生徒たちに敬礼するところだ。ここは素直に感動した。
 日本の自衛隊もこの手で行けばいいと思うのだが何をとち狂ったのか協力して作ったのは「マドンナの如く」っていうソフトポルノだからなあ。
アウトブレイク
アナライズ・ミー ☆☆☆☆★
 どうも強面のくせに情けない役が多くはないかと個人的に思っているデ・ニーロの作品。この役もマフィアのドンという絵的にピッタリの面構えにも関わらず、とあるトラウマによりすぐに泣き出すような情けない役。
 精神分析をモチーフにしたコメディーなのでもう一人の主役、精神科医が絡まれる筋が物語の中心だ。初めのうちはデ・ニーロは情けないところばかりなのだが、若干出てくるアクションシーンや後半の怒るところなどは、やはり長年培ったマフィアばりの迫力で流石と思われる。
 ハリウッド的にこんがらがった話は一件落着めでたしめでたしとなる。なかなかマフィア映画らしく陰惨なシーンもあるが、見た後の心持ちがいいのはやはりコメディーと云うところか。
 純然たる既存のコメディーに嫌気が差している人はお勧めです。
アルマゲドン
インディジョーンズ
インディペンデンスデイ
ヴェルベット・ゴールドマイン
<カ行>
カジノ
カスケーダー ☆☆★★★
 ジャケットを見れば解るとおりかなりアメリカナイズされた一本。ああ、これはドイツ映画です。
 スタント馬鹿と称されているとおり主人公であるスタントマンが計画性もなく行き当たりばったりで行動して、さらに相棒の賢い女に助けられる所など、アクション映画の典型例を云っています。
 ところでおやっと思ったのはドイツ映画なのにヒトラーの遺産を財宝としているところ。ナチスは不透明なところが多いから、ネタにはしやすいが、いいのかいなという感じがした。「我が闘争」の記述や鍵十字の位置から推理するなど、日本の良識派や左翼なら徹底して弾圧しそうなアイテムに満ちている。
 ナチス協力者の過去を持つ人物が出てきたとき、やっと物語が深くなったかなと思ったが、もちろんそんなことはなく脳筋的な話が延々と続きます。
 まあ解ったことと解らなかったことが一つづつ。
 解ったのは部屋に爆弾が仕掛けられたときは冷蔵庫にはいるべきということ。解らないのは主人公の恋の行方で、はじめの女の子の母親とはどうなっちまうんだ!?
菊次郎の夏
キリング・ゾーイ ☆☆☆☆☆
 タランティーノ監督の銀行強盗物。
 いや、ぶっとんでます。普通の良識ある強盗とは全く違う本当に「キレちゃった」強盗映画を楽しめます。なんせ主犯がホモでヤク中でエイズ、その上平気で人質をバンバン殺していくというから並じゃない。浅学の故かそういう映画は見たことがなかった。
 また殆ど警察が出てこないところとか、舞台があまり動かない所を見るとかなり低予算だと思うのだが、それでここまで楽しめるというのはやはり監督の力量だと思う。ラストシーンもかなり独特で人の死ぬシーンは映画は何百回も見たけどああいう深く印象に残る死に方も初めて見た。
 色々な意味で目から鱗のクライムムービーです。
 そんなに新しくないけど、新鮮です。
クイック&デッド ☆★★★★
 シャロン・ストーンにディカプリオが出てくる西部劇、という豪華キャストからどんな映画かと思って期待して見たが、実に退屈な代物だった。なんといっても開始20分でおおよそのプロットが読めてしまったことに自分でも驚いた。
 話は基本的に一対一の果たし合いの連続で、その間にストーリー展開があるのだが、勝敗が見え見えでストーリーも陳腐であるため、やたらイライラとさせられた。
 子供の頃、相撲を見ていてなんで試合の間がこんなに長いのかといらついた覚えがあるが、それを久々に思い出した。
 まあ、ストーリーは正道中の正道を走っているから、安心といえば安心してみられる作品です。
紅の豚 ☆☆☆☆★
 宮崎駿監督のアニメ映画。
 「かっこいいとは、こういうことさ」というコピーが示すとおり、実にかっこいい映画。これが実写だったら(人間だったら)とんでもなく嫌みで苦笑さえ出ないだろうが、その点「豚」ということで、嫌味なくかっこよさが十二分に出ている。
 物語自体は単純なのだが、数多く仕掛けられている伏線や挿話がとてもとてもかっこよくて楽しい気分にさせてくれる。
 具体的な舞台は架空の物であるが、場所と地域は大体指定されており、飛行艇もリアリティを持たせているらしく(「機長のカバン」を書いた故・石崎元機長がそう書いていた)大人の鑑賞にも十分たえうる作品である。
 ハードボイルド的なかっこよさが徹底的に馬鹿にされている時代において貴重な一本である。
 加藤登紀子の歌も2曲入っており、聞かせてくれる。
ゴースト ☆☆☆★★
 サブタイトルは「ニューヨークの幻」
 大いに感動を狙った映画で、後から考えるとなんてことない話だけれども見ている最中は完全にノってしまう映画。
 なんでこんなまどろっこしい表示をしたかというとあまりの感動に再び見ると妙な疑問が続々出てくること。
 例えば、壁を通り抜けられるのに対抗電車を避けるシーンは変じゃないかとか、霊媒師に乗り移った主人公とヒロインのキスシーンは実際は霊媒師のオバサンとキスしてんじゃないか、とか(しかし、このゴールドバーグはなんといかがわしい役が似合うことか!)。
 一応ミステリーの趣もあって2時間ドラマ以上には盛り上がれるが(だが、まあゴーストという特性もあって推理らしい推理もなく犯人は分かってしまうが)、推理としての側面では犯人を追い込むところが痛快な程度、やはり主眼は恋愛の要素。
 ラストが臭いと云えば匂うが、それでも万人に納得できるだろうし、カタルシスはまあ得られる一作。
ゴーストバスターズ
コマンドー ☆☆☆☆★
 あの筋肉の塊、シュワルツネッガーの頭が空でも解るアクション映画。筋も極めて単純でアクションが(当時の割に)非常に派手なので無難を狙いたいときにお勧めの一本です。
 とにかくこれだけ主人公が勝手に暴れて暴れて暴れ回るという映画も珍しいものがあります。一応さらわれた娘を助けるという大義名分はありますが、殆ど傷を負わずまるでアクションゲームのように大量の敵を倒しまくるのはやはり快感です。
 普通の映画だとそういうのは「嘘臭い」と思ってしまうのだけれども、此処まで極端に超人ぶりを表せられると、シュワルツネッガーの顔と相まって非常に説得力があります。
 ちなみに僕が生まれて初めてビデオで見た映画で、変に丁寧語を使ってしまうほど、おそれ多い、言語が意味をなくす肉体映画です。
GODZILLA ☆☆☆☆★
 まずいうと、これは日本のみなさんお馴染みの「ゴジラ」とは似ても似つきません。まったくアメリカではゴジラは流行っていると聞くし、ハリウッド版でも散々煽って宣伝していたけれども、一体彼らは何を考えているのでしょうか。
 と、いうのが周囲の意見だけれども純然たる単なる一本の映画だと思えばなかなか興奮できるし、面白いと思うんだけどね。だから「ジュラシックパーク外伝」とでも思えばいいと思います。ジャン・レノはやっぱかっこいいし。
  ところでこの映画にラルクが曲を提供した、これでラルクは世界に通用する、ってな意見が一時期出てたけどほんとかね? 日本の関連シーン、すなわちマグロ船のBGMでしょ? そもそもそんな船でラルクなんてかかるのかなあ。あんまりいい使われ方ではないと思うんだけどね。
<サ行>
ザ・シークレットサービス
サムライ・フィクション
鮫肌男と桃尻女 ☆☆☆☆☆
 望月峯太郎の漫画が原作のクライム・カルト・ムービー。
 原作が割とコミカルなのに対し、映画の方はマジだね。いや、ギャグなところもあるけど、やはりジャンル分けすればアクションだろうなあ。
 ああ、主演は今KDDIで認知されまくってる浅野忠信ね。
 結構原作から脱線してるところもあるけど、かなり面白い。
 敵役のキレぐあいとかメインキャスト紹介場面のかっこよさとか非常に日本映画、殊にヤクザ映画路線からぶっ飛んでる。こいつは洋画路線だなあ。そう思っていたら監督がタランティーノファンなんだってね。なるほど、こういうと僕は非常に嬉しい。
 さてラストが少々納得がいかなかったが、非常に面白かったことには代わりはない。ただあのヤクザ側の女の人、結局何しに来たんだろうねえ。これはさっぱり解らなかった。
シェーン ☆☆☆★★
 云わずとしれた西部劇の名作。
 1952年の作品ながらそのカッコよさは全く遜色がない。まあこういう国民と戦争やっても勝てないなあ、とフィクションのくせにそう思わせるような「強い」映画だった。これは別にアクションの話をしているわけではない。この映画はアクションが主眼ではないのだ。
 七人の侍を模して荒野の七人が出来たように、物語の筋は時代劇とさほど変わらない。万人に共感できる物であるし、最後のテーマも時代劇と共有可能な物である。
 これを見ると、やはりアメリカ人からは銃は奪えない。シェーンと廃銃派のジョーの妻の論議は、シェーンの「銃」の力により結局彼の云うように銃のいらない世界になった。だが映画は終わっても彼らの生活は続くのだ。最も近い保安官でさえ150キロ、ジョーが銃を手放すことはないだろう。
 ところでこの映画は銃撃シーンが一瞬で終わる。現代の感覚からすると違和感があるが、何故だかとても自然にすっきりとした感じで見ることが出来た。
死にたいほどの夜
ジャズ大名
ジャッキー・ブラウン ☆☆☆☆☆
 タランティーノ監督作品でエルモア・レナード原作のクライム・ムービー。出演はパム・グリアー、サミュエル・ジャクソン、ブリジット・フォンダにデ・ニーロと知る人ぞ知る豪華な組み合わせ。この映画が解らない奴は何なんだというくらいの面白さ。
 監督が原作者を尊敬しているとだけあって、基本的に原作と忠実でレナードのファンとしても大変満足(原作小説は「ラムパンチ」)。
 映画としては原作であったヒロインの人種を白人から黒人に変え、悪役との整合をつけ物語に深みをつけてくれる。これ全編に流れるブラックミュージック、特に最後に流れるエンディングテーマが、物語の締めをつけている。 とにかく犯罪小説にありがちな暗さもそんあないし、かといってコメディー系ほど明るくない、程良い感覚を味わえます。
 ところでタランティーノ作品はどれも初めのメインキャスト表示のセンスがいいなあ。非常に好きだ。
シューティング・フィッシュ
シュリ ☆☆☆☆★
 近くて遠い国、韓国のメガヒット映画。
 僕としては儒教の国というイメージが強いのだが、なかなか街並みも北との対比を見せるためか先進国風で驚いた。スーパーなどはアメリカのそれよりも遥かに日本に近いと思った。
 またアクションもハリウッド製のそれよりも遥かに本格的なように思えたし、今なお戦時中の国が敵国の工作員という身近なテーマを出してあれだけの作品を汲み上げたことに対してはやはり日本じゃ無理だなあと思った。色々な意味でね。
 ところで個人的に微笑ましいと思ったのは主人公格の人物が、どれもどこにでもいそうな普通の顔をしていたこと。これがまたリアリズムを出しているように感じられた。日本だったらまず間違いなくジャニーズの人達が拳銃片手に大暴れするんだろうな。
ジングル・オール・ザ・ウェイ
新宿鮫
シンドラーのリスト
スターシップ・トゥルーパース ☆☆☆☆☆
 有名なSF作家、ハインラインの、絶対に映画化不能といわれていたスケールの大きい原作を使った映画。実は15禁。
 SF映画はどうも陳腐な処理や話が多くて好きではないのだが、これは大当たり。宇宙艦隊モノにありがちなおそろしく大きなスケールもよく伝わってくる。その中の一人である主人公を始め、3人の同級生の視点も映画化不能の謂れとなった宇宙軍の世界観をつかむのに大きく役立っている。
 戦闘では15禁だけあってそれは相当に痛い。ホラー慣れしている人にはなんてことないが、TV放映は無理だろう。
 それでも敵のエイリアンは形も動きもリアルだし、その迫力には十分一体となって感情を突き動かされ、痛みや興奮を感じることが出来るだろう。
 SFでは一番におすすめ。
ストレンジ・デイズ
スワロウテイル ☆☆☆☆☆
 非常にお勧めの映画。
 日本にある架空の都市を舞台に下層外国人を主人公にした名作。暗黒小説というジャンルがあるが、この映画もそこに属するだろう。登場人物は売春婦やスナイパー、バンドマン、やくざ、そして中華マフィアなどばかり、その上出てくる言葉も日英中と入り乱れ、独特の雰囲気を醸し出している。
 とはいっても全くの架空の世界の話ではなく、映画に出てくる街並みは確かにどこにでもある団地だったり繁華街だったりするし、役人や警官のイメージは我々のイメージとかなりだぶるモノがある。
  とにかくキャラクターはかっこいいし、歌も暴力も必要な要素は全てそろっている。セリフもファッションも真似したくなるような、とにかくイカした凄い映画なので、是非是非一見を勧めます。
 僕はこの映画にハマって第二外国語を中国語にしました。
戦場のメリークリスマス ☆☆☆★★
 ワイドショーでよくみる大島渚監督の映画。
 坂本龍一の音楽に出演、そしてたけしの(そうクレジットされている)出演で有名だけど、実はこの映画、あのデビット・ボウイも主役格で出ていたんですね。いやあ、すごいな監督。ワイドショーから見るととてもそんな偉い人には見えないのだが。
 話は結構きわどいテーマを扱っているんだけど、日英合作の成果自虐的でもなくまた国粋的でもなく、ただ必然的に暗いであろう収容所を淡々と描いている作品である。勿論、救済もある。
 ボウイはやはりまあらしい役柄でらしいことをしている。
 タイトルの由来ともなるラストシーンはやはり涙なくしては見られない。やはりたけしの力って凄いなあと思った。
 戦争に敵味方あれども、正義も悪もない。それがよく解った。
<タ行>
ターミネーター
ダーティー・ハリー
タイタニック ☆☆☆★★
 まあ誰でも知ってる作品。
 僕は大学受験の直前期に見た。確かに超弩級映画でありそれ相応に面白かったが、それ以上はなんとも言い難い作品だった。これは多分、本質的に恋愛映画(それもよくある障壁のある恋!)であるのに僕は沈没の方に力点を置いて見たからだろう。
 まあそういう見方でも有名な小話は描き尽くされており、十分に満足はできた。しかし解らないことが一つあって、絵を描いて貰うところで何故裸になる必然性があったのか。ここで相当しらけた。
 主役周辺は勿論架空の代物なのだが、うまく現実と調和しており(フォレスト・ガンプのように)そういう意味での興奮は出来た。おそらく実際こういう形で生死を分けたものもいただろう。
 タイタニック号の受難者の墓地には別人ながらジャックという男の墓があって、そこは熱狂的ファンの捧げる花がたえないそうだ。天国のジャック氏もまさかこんな形で世間に注目されるとは想像だにしないだろう。
ダイ・ハード
TAXI
007 ☆☆☆☆★(初期・現在版)
 云わずとしれたジェームズ・ボンドシリーズ。
 何作か見ているが、やはり初期のコネリー版か現在のブロズナン版がいいと思う。どうもちょうど中期の頃の作品はマジメに作っている気がしないのだが、どうだろうか?
 もちろん荒唐無稽な悪人の滅茶苦茶な作戦は初期からあったが、それも段々実効性を失い、珍奇な新兵器と世界の美女との絡みだけで作っているような気がしている。それならリアル方面に走った最近作の方がただのアクション映画に成り下がったと通人は嘆くが、面白いと思う。
 ところで日本を舞台にした奴、あれはどう考えても国辱物の映画だと思うがどうだろうか。
 タイガー田中、ねえ。
ツインタウン ☆★★★★
 トレインスポッティング大流行の後、雨後の竹の子の如く現れた関連映画の一本。その中でこれはかなりの駄作に思える。
 ギョッとするのは主役の双子が風呂の中で麻薬を吸うシーン位のもので、あとは特に驚くこともないし興奮することもない。いや、売春宿のシステム説明の所は実はそこそこ興味深かった。
 あとの見所は、そうだね。双子の姉が非常に胸が大きくてセクシーで、売春宿の受付をしているんだけど、そこで客が「お前を指名する」とかいうところで期待してしまったくらい。
 なんか売春宿のことばかり書いているが、実際そのくらいのことしか書くことがない。キョンシーの大流行以降、愚にもつかない香港ホラーが大量に輸入されたときくが、ブリティッシュポップも似たような運命かな、と思った。
天空の城ラピュタ ☆☆☆★★
 小学生の時、密かに大変気に入っていていた作品。
 ところが今見返してみたりすると随分幻滅した。アニメのことは全く詳しくないが、絵が随分古く感じたし、ムスカが子供向けの悪人のような喋り方をしているのに閉口した。まあ、気にいって見ていた当時は僕自身子供だったのでそれはそれでよかったのかもしれないが、他の宮崎作品と比べて普通の大人が見るに耐えうる作品かと云われれば敢えて判断を留保したい。
 まあでも大変ロマンあふれる作品で、実写ではちょっとこれほど夢のある話を作るのは無理でしょう。初めて見た後、大いに感動し、校庭の芝生に寝そべって天空城が見えるんじゃないかと本気で目を凝らしたことがあったが、あの純な気持ちはどこに行ったんだろうねえ?
天使にラブソングを ☆☆☆★★
 ウーピー・ゴールドバーグが主演だが、この人、こういう役が似合うねえ。破天荒な役がその後与えられるようになったが、この作品が一番しっくりくる。
 物語の筋は保守と革新の激突をユーモラスに描いているのだが、宗教という特性上、保守の権化のようなところは確かに厳しい。僕もそれに関してはやや抵抗を感じたことがなくもない。
 さてこの映画、映画全般にいわれるように何で短期間であんなにうまくなったのかという疑問はあるが敢えて無視して、歌声は確かに凄い。保守の側を立てるためかちゃんとした賛美歌も歌うがそれも含めて歌で感動させてくれる。他にBGMでソウルをガンガンにかけてくれるのもオールディーズファンには嬉しい。
 キリスト教はゴスペルにラップ、ロックコンサートの儀礼を持ち込んだ。仏教も歌はあるにはあるが、豊富な賛美歌には勝てないし、勘違いしたボーズがエレキを持っても虚しくなるばかり。
 若者がビジュアル的・サウンド的に映える教会に走るのも自然の理と思った。
トイ・ソルジャー ☆☆☆☆★
 空想好きな子供にとって学校がテロリストに占領されると云うシチュエーションは魅力的な物だろう。勿論その中で活躍するのは警察ではなく自分たちである。そんな空想そのままの映画がこれだ。
 全寮制の学校にテロリストが来るのだが、非常にスピード感に溢れる映画で、兵器も派手に駆使するので見応えは十分にある。
 勿論主役サイドである子供も活躍するのであるが、大部分犯人を鎮圧するのは警察である。しかもこの警察、有名キャストは一人もいないのだが、その分本格的に突入を図っており、数十分の銃撃戦はこれだけで実際の事件の報道を見ているような気にさせてくれる。リアリティーも十分だ。
 最初から最後まで一切飽きさせない展開には脱帽。
トゥルーライズ ☆☆☆☆★
 ターミネーター後のシュワルツネッガー主演のアクション映画。1分あたり1億円の金がかかってるって? とにかくアクションとしては極めて秀作だと思う。映画好きには初めの雪中での銃撃戦は不評らしいが、それも含めて面白かった。
 まあでもやはり白眉は橋爆破でしょう。なんといっても本物の橋を吹っ飛ばしちゃうんだもんなあ。実は僕はこの映画で一番かっこいいと思うのは、このシーンのパイロットなんだけどね。
 しかし奥さんがセミヌードで踊るのには何か必然性があったのかなあ。家族で見る場合、このシーンで会話は詰まるね。映画館で見たのは中学生の頃だけど、さすが正視は出来なかったなあ。
 アクションだけでなく、家族の復興なんかもストーリーに織り交ぜているのだが、そのストーリーのみには殆ど関心はない。けど、あれだけ楽しむためにはやはり必要だったんだろうな。
 とにかく勧善懲悪。かなり興奮できるし、笑える。見終わった後もいい感じなので、お勧めです。
ドーベルマン
独裁者 ☆☆☆★★
 チャップリン初のトーキー映画。
 最後の独壇場の演説をやりたかったがためにトーキーを採用しただけあって最後の演説、それも最後の最後のセリフには胸に迫る物がある。
 勿論、原則喜劇だけあってよく笑える。古典的な名作と称される喜劇の殆どが今の感覚では一部好事家対象にしかならないのとは異なり、喜劇王の面目躍如と思われるおもしろさだ。
 この作品は当時隆盛を誇っていたヒトラーを痛烈に風刺している。ヒトラーに関しては勿論殆どの人が否定意見を述べているが、同時代にこう云えたチャップリンこそ真の文化人だと思う。もし現代にヒトラーの如き独裁者が現れた場合、果たしてこのような映画が出来るかどうか怪しいものがある。
時計仕掛けのオレンジ ☆☆☆☆☆
 キューブリック監督の問題作。
 昨今、少年犯罪が問題になっているが、なんだか巻き添えで15禁になりそうな映画です。確かに血も出れば痛みのある暴力映画なんだけど、妙に清々しく気持ちいい気分になる。テーマは少年犯罪ではなく全体社会の危険性を描いた風刺モノなのだが、その導入部としての無茶苦茶な日常を描いた前半の方が印象的。
 暴力中毒のくせにクラシック好きなところや、ミルクバーに入り浸ってること、ダサいんだけど何か先進性を感じるファッション、そして流行語と思われるロシア語の単語。そんなものが流行ったことはないのに非常にライフスタイルにあこがれるところがある。
 映画のお約束としてちゃんと観客の精神の平衡を保つための救済はこの映画にも確かにある。だけれども、それを吹き飛ばすくらい、映画は始終暗い話なんだけど、清々しい気分になれることは請け合いである。
トップガン ☆☆★★★
 トム・クルーズのお茶の間デビュー映画。
 空軍の型破りパイロットがトップ1%の精鋭を集めた特殊訓練を受ける中での青春ドラマだ。とはいってもストーリーは殆ど「愛と青春の旅立ち」と同じである。まあ教官がオヤジからオネーチャンに代わり、その代わり憎悪対象がアイスマンという同期のライバルに変わった程度だろう。物語の深みも少ない。
 まあストーリーよりも当時の人々が唸った飛行機に関するシーンを重点的に見るべきなのだろうが、今となってはこの飛行機も古いなと思わずにはいられない。
 この映画に出てくる敵国はインド洋付近にある架空の国だが、インディアンやジャップやベトコンやイワンを叩きのめしてヨシとしていた頃と違ってやりにくいだろうな、と思う。
トレインスポッティング ☆☆☆☆☆
 云わずとしれたBPMの火付け役の傑作。
 テンポのいい展開、スピード感溢れる音楽に、疲れ切った街並み、正義や道徳に唾を吐いたストーリー。アメリカにはないセンス。さすがピストルズを生んだ国の底力。
 ここには善人はただの一人も出てこない。セックス、ドラッグ&バイオレンスの世界だ。未来に希望なんてない。未来を選べ、がサブコピーだったが、選べる未来だってありはしない。非常に息のつまりそうなやりきれない感じが残った。
 クソみたいな生活(事実クソにまみれている)、非合法な手を使って未来を選んだレントン。彼がいくばくか残したのはヘロインでラリることを人生の目的に「選ん」だスパッドだけと云うところが象徴的だ。
 ヤクばかりやっているせいか映像もラリったようなシーンが多く。往年のサイケデリックムービーではないが、こっちまでたゆたってくる。
 僕は高校の時に大いにポスターが気に入ってクラスの壁に小さく貼ったくらいだ。誰も相手にしてくれなかったけど、その後の隆盛には密かに満足している。
 



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