フィンランドの機能性食品

(画像)驚くほど多様な機能性食品が日常、利用されている

Functional Foods from Finland. Cited from © Virtual Finland, 2000

2000.04.10


キシリトールは虫歯を防ぐか 〜 フィンランドの機能性食品

初めに

以下の特集では、Virtual Finland の特集 Functional Foods from Finland(2000.04.07) の抄訳をベースに、ほかの情報やコメントを加えてある。

さて、フィンランドは機能性食品、すなわち健康を増進させる食品の分野で世界の最先端にあるといわれる。フィンランドでは伝統的に病気を未然に防ぐことが重視されてきた。そのため、栄養医学は重要な研究分野だ。研究のための投資額は相当のもので、そのみのりも大きい。新しい企業も誕生している。機能性食品への需要はこれからも高まってゆくと予想される。

じつは、フィンランドの食生活は、はるか昔から、驚くほど「機能的」だった。フィンランド人の祖先は、ライ麦やオート麦、大麦を作り、長い冬に備えて収穫物を乾燥保存した。冬にはそれでポリッジや発酵パンを作る。夏には森でベリーを摘み、冬に備えてリンゴンベリーのプレザーブを作った。早春には、とけかけた雪の下にクランベリーを探す。収穫がうまくいかないときは、松の木の樹皮がパンに加えられることもあった。あるいはまた、トウヒの木の新芽が春に食された。夏には牛乳を発酵させて保存する。こんにちの見地からすれば、こうした食品には、大量の食物繊維、フラボノイド、リグナン、Probiotics、Prebioticsが含まれている。

ヨーロッパの法律には、まだ「機能性食品」の定義がない。一般的には、機能性食品とは、健康増進や病気の予防に役立つことが科学的に証明されている食品のことと解されている。フィンランドの伝統的な食生活の結果としてか、あるいは食生活に原因がある病気が増えたこと(1950年代)の結果としてか、健康増進食品の研究は、こんにちのフィンランドの食品科学における一分野として確立している。Benecol、キシリトール、Lactobacillus GGのような世界的に知られるようになったものに加えて、この国では非常に多くの機能性食品が開発されている。その多くは、フィンランド国外ではあまり知られていない。(Benecol と Lactobacillus GG については、翌日以降の記事で紹介します。)

虫歯を防ぐキシリトール

キシリトールは、その効果が科学的に証明された最初のフィンランドの機能性食品だ。主にチューインガムやトローチの甘味料として使われる。キシリトールが世界の注目を浴びるようになったのは1970年代初め。フィンランドのふたりの研究者シェイニンとマキネン(Arje Scheinin and Kauko Makinen)が、キシリトールの虫歯に対する抑制効果を証明した。キシリトールを常用することが歯の健康に良い効果をもたらすことは、そのごの多くの研究によって確認された。2-3か月の短期のキシリトール使用により子どもが中耳炎になる確率が減ることも示した研究者もいる。

フィンランドのキシリトール産業は、キシリトール甘味料の分野において世界をリードしている。キシロフィン社(Xyrofin)の前身であるスオメン・ソケリ社が、1972年にキシリトールの加工法に関して特許をとり、白樺の小片を原料とするキシリトールの生産を開始した。こんにちでは、キシロフィン社のキシリトールは世界中で使われている。チューインガムとトローチの甘味料として用いられるのが一般的だが、ほかに口腔衛生学の分野への応用もなされている。歯磨き粉、フッ素の錠剤、口内洗浄剤に用いられるのがその例だ。製薬においても、薬を飲みやすくするために、キシリトールを錠剤の「シュガーコーティング」として用いることがあるという。


2000.04.11

フィンランドのBenecolマーガリン、アメリカで大人気

フィンランドの機能性食品といえば、日本ではキシリトールだが、アメリカでは Benecol が非常に話題になっているらしい。

BENECOLBenecolは、日本では知られていないようだが、血液中のコレステロール値を適正に維持するマーガリン。アメリカでは話題沸騰のようで、1999年、CNNニュースでの、ヘルスケア関連での話題トップテンの第一位となった。Benecolに含まれる plant stanol ester という成分が、「悪玉コレステロール」LDLの吸収を防ぐ。plant stanol ester はフィンランドの Raisio Group によって1995年に開発された。FDA(米国食品医薬品局)は1999年5月26日、Johnson&Johnson's社の「Benecol」を許可、現在米国のスーパーなどで販売されはじめている、とヘルスビズメールマガジンがレポート。

リグナンとフラボノイドについては、ヘルシンキ大学教授ハーマン・アドラークロイツのレポートがある。イソフラボノイドやリグナンを含有する植物牲食品は、いくつかのタイプの癌を予防する役割を果たしている。リグナンは穀物製品(パン)、各種種子、ベリーおよび野菜に含まれる。菜食主義者の発癌率が低いのもリグナンが関係しているらしい。

Lactobacillus GG株は乳酸菌のたぐいのようで、発酵乳(ヨーグルト)に用いられ、腸に良い効果があるようだ。研究者の名前を見ると、Mykkanen、Salminen、と、明らかにフィンランド人とわかるメンバーが入っている。

プロバイオティクスは「腸内の常在菌叢(フローラ)を改善することにより、宿主に利益をもたらす、単一あるいは複数菌株からなる生きた培養菌。いわゆる善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌など」で、1990年代になって効用が分かってきた。日本食品機能研究会のページによると、「Currently, the idea of improving the intestinal bacterium plexus is more popular in Europe than in Japan, and a product resembling a lactic bacterium that activates intestinal valuable bacterium "probiotics " is available. Probiotics is a word invented by analogy to Antibiotics. However, some three years ago, Gibson in England used the word "Prebiotics "for a product such as oligosaccharide that helps increase valuable intestinal bacterium and promotes better health. The term "Prebiotics "is now in common use. 」だそうです。


2000.04.12

体に良い細菌LGG 〜 フィンランドの機能性食品(3)

Virtual Finlandの記事 Friendly dairy bacteria の簡単な紹介とコメント。

フィンランドの乳製品最大手バリオ社Valio)は、プロバイオティクスの分野で先駆的な地位を保っている。「プロバイオティクス」についてはきのうの記事で触れたが、英文のまま引用した部分の要旨を訳しておこう。

「近年、ヨーロッパでは、腸内の菌叢を改善するという考え方が一般化して、腸内の有益な菌を活性化させる製品(プロバイオティクス)が手に入るようになった。プロバイオティクス(“向生”物質)という言葉は、アンチバイオティクス(抗生物質)という言葉からの類推で生まれた。最近になって、イギリスのギブソンが、腸内の有用菌を増加させ健康を増進させる働きのあるオリゴ糖のようなものをプレバイオティクスと呼んだ。こちらの用語も広まりつつある。」

乳酸菌が体に良いことが最初に注目されたのは、1980年代初期、バリオ社の研究開発部門でのことだった。同社がまず開発したのは、 Asidophilus と名づけられたタイプの製品だ。さらに研究を進めるうちに、健康を増進させる菌糸Lactobacillus GG (LGG)が発見された。この菌糸はアメリカの学者によって分離された。バリオ社はLGGの発見者とコンタクトをとり、1987年、世界におけるLGGの独占的販売権を取得した。LGGは世界で最も広く研究されている乳酸菌だ。病原菌や毒素から腸を保護する働きがあることが分かっており、腸の不具合を予防し、おなかの調子が悪いときには整腸効果を発揮する。

最初のLGG製品は、1990年フィンランドで発売された「Gefilus」だ。この新製品のマーケティングには、ひとくふう必要だった。細菌といえば害をなすというイメージがあるなかで(実際、「抗菌加工でいつも清潔」なんていうキャッチフレーズがありますね)、「体に良い」細菌LGGの宣伝キャンペーンが行われ、成功した。「Gefilus」ブランドには、牛乳、発酵乳、ヨーグルト、ジュース、daily-dose drink(ヤクルトのようなものかな?)、カプセル錠などがある。バリオ社は、LGGのライセンスを外国の企業にも供与した。こんにち、LGG製品は25ヶ国で手に入る。LGGの人気の秘密は、やはり健康に良いという科学的根拠があることだろう。


BENECOL 〜 フィンランドの機能性食品(4)

Virtual Finlandの記事 Benecol on the world map の簡単な紹介とコメント。

最新の、そして注目度の高いフィンランドの機能性食品がBenecolだ。血清コレステロールを下げるという世界初のマーガリン。

ここで余談だが、margarine はギリシャ語の「真珠」(マルガリーテースまたは、それと同根の言葉)からフランス語経由で英語に入ったという。「真珠色のもの」という意味だろう。ラテン語のマルガリータで、ひいては「マーガレット」という人名も同原と思われる。「マーガリン」はフランス語読みで、英語では「マージャリン」。また、ベネコルというのは、イタリア語ふうに bene「良いこと」+ col (=colesterolo) というネーミングだろうか。「コレステロール」は英語では chole- だが、イタリア語では h が入らないで cole- だ(chole- のほうが語原に忠実なつづり)。

さて、フィンランドでライシオ(Raisio)グループがこのベネコルを発売したのは、1995年末、けっこう最近のことだ。フィンランド国外からも注目を浴びた。植物性ステロールのコレステロール低下作用は既に1950年代から知られており、フィンランドでは1980年代から研究のテーマになっていた。研究対象となっていた植物性ステロールは結晶状で、天然に存在する植物性ステロールと違ってほとんど溶けない。口の中で溶けないのでは食用に適さないわけで、どうやったら溶けるようになるかが製品開発の課題だった。

Benecolの開発には、長期にわたる研究を要した。まずフィンランドの木材加工会社 UPM-Kymmene が、1981年、植物性ステロールの分離を開始した。β-シトステロールに含まれるシトスタノールにコレステロールを下げる効果があるらしいと分かってきた。1986年、ヘルシンキ大学中央病院(HUCS)との共同研究が始まった。シトスタノールの抽出には成功したのだが、上述のように「溶けない」という問題があった。そこで登場するのがライシオ・グループの研究開発部。ついに1989年、スタノールを可溶性に変換する方法が発見された。スタノールのコレステロール低下作用は、1993年から94年にかけて最終的に確認され、1995年、New England Journal of Medicine 誌で発表された。これが製品化され、1999年になるとアメリカのCNNニュースで「健康関係の話題ナンバーワン」となるほど脚光を浴びた……と、このことは、きのうの記事で書いたとおり。


2000.04.15

Multi-Bene 〜 フィンランドの機能性食品(5)

Virtual Finlandの記事 Less salt の簡単な紹介とコメント。

こんにち、早死にの原因として、癌と並んで心臓血管の病気が一般的だ。1950年代、食生活が不健康なものになると(高脂肪、高コレステロール、高塩分)、フィンランドでもこれらの病気が増えた。コレステロールはもとより、多すぎる塩分が心臓血管を危うくすることが知られている。1970年代には、カルッパネン教授が「ミネラル・ソルト」を開発した。ナトリウムを減らし、かわりにカリウムとマグネシウムを加えたものだ。さらに味の点にも工夫をこらした「パンソルト」の生産は、フィンランドで、1980年代に大成功をおさめた。現在では世界15か国に輸出されている。パンソルトを使うと、ミネラルの摂取(血圧に影響を与える)のバランスが良くなる。この効用は多くの国際的研究によって確認され、パンソルトは20か国以上で特許をとっている。

カルッパネン教授は、最近また新しい発明を行った。さまざまな利点を持つ製品、Multi-Beneだ。マルチベネは、植物性ステロールとミネラル(カルシウム、マグネシウム、およびカリウム塩)を含んでいて、コレステロールを下げる働きが動物実験と人体実験から分かっている。動物実験によると、血圧を下げたり肥満体質を改善する効果もある。研究者は、マルチベネには、ほかにも良い効果があるかもしれないと考えている。例えば、骨粗鬆症や消化管のある種の癌に対する抑制作用があるかもしれないということも、研究のテーマになっている。マルチベネは、すでに特許や登録商標として保護されており、最近、いくつかの地域でライセンス契約が結ばれたばかりだという。キシリトールやベネコルのようなヒット商品になるかどうか、まだこれからといったところだろうか。


2000.04.16

将来へ向けて 〜 フィンランドの機能性食品(6)

新技術 〜 Omecol と SFE

飽和脂肪と心臓血管疾患の危険性の関連は、1900年代初期から知られていた。フィンランドで開発された Omecol 技術を使えば、飽和脂肪を、害の少ないタイプの脂肪に置き換えることができる。かくて製品における多価不飽和脂肪の割合が増えている。この技術は、品質や風味を損なうことなく、いろいろな食品に適用することが可能だ。現在までのところ、Omecol 技術は肉製品に使用されているが、将来は、ほかの食品群にも適用されるだろう。Omecol 技術は、すでにヨーロッパの11か国とアメリカで特許を得ている。特許権を持つオメコル・フィンランド社(Omecol Finland Oy)は、技術を輸出したいと考えている。

フィンランドのトルニオに拠点を置くアロマテック社(Aromtech Oy)は、フィンランドでも最も新しい機能性食品企業のひとつだ。北欧諸国に初めて、未来の技術である超臨界流体抽出(SFE: Supercritical Fluid Extraction)を紹介した。SFE技術の利点は、非破壊的な抽出だ。混合物の成分を破壊することなく、しかも人工的な成分を添加することなく、抽出を行うことができる。アロマテック社は、植物性の原料から、機能性食品を作る。同社は、栄養学的効果についての臨床試験を行い、詳細なレポートをまとめている。アロマテック社は他の企業や研究機関と連携して研究を進めている。ヨーロッパで最初のクロウメモドキ油(buckthorn oil)の製品化「Omega 7」はこの連携の成果であり、SFE技術を用いている。

穀物のちから

フィンランド人は伝統的に大量のライ麦を消費する。ライ麦パンに含まれる食物繊維、ミネラル、ビタミンB群が健康によいことは、昔から知られていた。ヘルシンキ大学での研究によれば、ライ麦には発がん率を抑制する働きもあるらしい。これらの優れた効果は、ライ麦パンに含まれるリグナン(lignans)のおかげだ。この研究は国際的にも注目を集め、ライ麦への関心は高まっている。1999年夏、FDA(米国食品医薬品局)は、「全粒製品は大腸がんの危険を減らす」という健康上の効能を認めた。フィンランドでは、ライ麦は主に全粒で(精白せずに)消費される。フィンランドの製パン業界では、ライ麦製品を輸出する努力をしている。例えば、Vaasan & Vaasan社のライ麦パン「RyeMax」は、国外での販売を念頭に置いて開発された商品だ。

FDA(米国食品医薬品局)は以前から、オート麦に心臓疾患を防ぐ効能を認めている。伝統的に、フィンランドでは、オート麦がポリッジやパンに用いられてきた。こんにちでは、オートブラン(オート麦の籾殻)は、ヨーグルト製品にも用いられている。ヘルシンキ大学のハンヌ・サロバーラ教授は、発酵させたオートブランを用いたスナック Yosa を開発し、特許をとった。Yosa は、ヨーグルト同様、いろいろな果物で風味をつけることができる。オートブランの効能に加えて、Yosa には、L.acidophilus などのプロバイオティクスが含まれている。絶対的菜食主義者(ビージャン)には理想的な食品だ。脂肪分を含まず、従来のヨーグルトより低カロリー。Yosa は、ビオフェルメ社(Bioferme Oy)という小さな会社で生産されている。

特別な食事が必要な人のための製品

食物アレルギーおよび吸収の障害は、フィンランドでは常に重要視されており、特別な食事が必要な人々のためのいろいろな食品が生産されている。ラクトース過敏症は、フィンランドでは一般的だ。バリオ社(Valio)は世界で最初に低ラクトース製品を開発した企業のひとつで、これらの製品の製造法に関していくつもの特許を得ている。バリオ社の低ラクトース製品のラインナップは、世界で最も多岐に富んでいる。バリオ社はさらに、完全にラクトースを除去した乳製品の製造法を開発し、特許を得ている。ラクトースを除いたミルクは、通常のミルクの40%しかカロリーがないので、低カロリー食品、ないし糖尿病患者用の食品としても理想的だ。

機能性食品の新開発への投資

フィンランドは、機能性食品の研究にコンスタントな投資を続けている。いくつかのプロジェクトは、まだ商品化に至っていないが、健康食品の開発には、さまざまな専門的知見と、なによりも、費用をかけた長期に渡る臨床試験が必要だ。科学者たちは「原始的」な松の樹皮のパンの健康増進効果にも注目している。

フィンランド国立技術局(TEKES)は、フィンランドにおける研究を財政的に支援している。1997年から2000年にかけてのTEKESの食品改良プログラムは、食品と健康に焦点をあて、総額2億フィンランドマルッカに及ぶ予算を持っている。このプログラムの目的は、産業上の研究開発の結果を効率的に利用すること、食品部門と他の部門(医学やバイオテクノロジー等)の協力体制を促進すること。研究ネットワークの拡大、EUの研究プロジェクトへの参加によって国際的なトップレベルの研究が可能になり、さらなる発見や製品の改良につながる。

各大学でも、食品の健康に対する効果に関する教育に力を入れるようになった。フィンランド第二の都市トゥルクにあるトゥルク大学では、健康および生物科学の学位プログラムが設置された。クオピオ大学では、数年前から臨床栄養学の講義が行われている。クオピオ大学ではまた、応用栄養学および食品バイオテクノロジーの学位プログラムも開始している。健康と食品の関係に関する臨床試験は、各大学、国立公共健康協会、および Oy Foodfiles Ltd(独立した私的な研究機関)で実施される。原則として、マーケティングにおいては、食品の健康への効果をうたうことは禁じられている。臨床的に検証された効能に限って、宣伝に用いることができる。新しい機能性食品の製品は、まずその安全性が確認されなければならない。Foodfiles では、顧客企業に対し、安全性に関する報告書を完成させる手助けをしたり、新製品のマーケティングが行えるよう援助を行ったりしている。また関連する研究成果を整理して、検索できるようにしている。このようなシステムがあるので、フィンランドの企業では新しい機能性食品を開発しようという熱意が高まりやすい。


faireal.net <webmaster@faireal.net>