日米間の「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に関する日米両首脳への第四回報告書

小泉純一郎内閣総理大臣とジョージ・W・ブッシュ大統領は、2001 年6月に「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)を設置した。現在4年目の規制改革イニシアティブは、規制改革及び競争政策に関する分野別及び分野横断的な事項に焦点を当てることにより経済成長を促進することを目的としている。

具体的な進展の追求及び双方向の対話の原則に則り、日米両政府は、2004 年10 月、規制改革についての詳細にわたる要望書を交換した。これらの要望書は、このイニシアティブの下に設置された上級会合及び作業部会における両政府間の広範にわたる議論の基礎を提供した。これらの会合は、過去一年間にわたり、電気通信、情報技術、知的財産権、エネルギー、医療機器及び医薬品、競争政策、透明性及び政府慣行、民営化、司法制度改革、商法改正、流通、領事事項及び貿易投資関連措置を含む主要な分野における改革について議論を行ってきた。これまでと同様、いくつかの作業部会では、民間部門の代表からのインプットを受けた。これらの民間部門の代表は、このイニシアティブの下で取り上げられている重要な問題について見解を表明し、貴重な専門知識、所見及び提言を提供した。

日本国政府は、過去一年間にわたり、一連の規制改革措置をとってきており、その中には、2005 年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」が含まれる。米国政府は、この閣議決定、及び、規制改革・民間開放推進会議が日本の規制環境を改善するために行ってきた努力を歓迎する。また、米国政府は、構造改革特別区域推進本部が特区を通じて規制の緩和を推進するために行っている作業を引き続き歓迎している。さらに、日米両政府は、地域及び世界において知的財産権の保護と執行を強化するための協力にますます焦点を当ててきている。両政府はこの協力を二国間、地域及び多国間の議論の場において引き続き向上させていく決意を確認する。

今回の両首脳への報告書には、規制改革イニシアティブの下での作業に関連する日米両政府による主要な規制改革及びその他の措置が列挙されている(財務金融対話において取り上げられた金融サービスに関する措置も含まれる。)。両政府は、この報告書に明記された措置を歓迎し、これらの措置が、競争力のある製品及びサービスの市場アクセスを改善し、消費者利益を増進し、効率性を高め、経済活動を促進するとの見解を共有する。

両政府は、更に規制改革を促進する決意を再確認するとともに、いずれかの政府の要望に基づき、双方の都合の良い時期に、この報告書に含まれている措置を取り上げるために会合する。

目 次

日本国政府による規制改革及びその他の措置
T.電気通信
U.情報技術
V.エネルギー
W.医療機器・医薬品
X.金融サービス
Y.競争政策
Z.透明性及び政府慣行
[.民営化
\.司法制度改革
].商法
XI.流通
米国政府による規制改革及びその他の措置
T.規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題
U.電気通信
V.情報技術
W.エネルギー
X.医療機器・医薬品
Y.金融サービス

日本国政府による規制改革及びその他の措置

T.電気通信

A.競争促進

1.日本国政府は、これまで、技術革新が著しい電気通信分野に即した競争政策を遂行してきた。その結果、世界の中でブロードバンドサービスが最も高速で、最も購入しやすく、技術的に最も高度化した電気通信市場の発展を促進してきた。さらに、2005 年3月時点において第三世代携帯電話の契約数が3,000 万件を超え、IP電話の契約番号数も800 万件を超えている。

2.総務省では、IP化・ブロードバンド技術及びサービスの進展等を背景としてますます複雑化する電気通信事業分野の競争状況を正確に把握するため、2003 年度から様々な電気通信事業分野に関する競争評価に取り組んでいる。

3.総務省は、2004 年6月、インターネットアクセス市場における評価結果について、パブリック・コメント手続を経た後発表した。当該評価によれば、現行規制下等の条件の下では、ADSL 並びに戸建て住宅市場及び集合住宅市場におけるFTTH について、単独事業者及び複数事業者の協調による市場支配力のいずれの懸念も存在しない。

4.総務省は、本年、「インターネット接続」のうち、ADSL、FTTH、CATV インターネットサービス等のブロードバンドの領域について再評価を行うとともに、新たな分野として、ブロードバンドの主要なアプリケーションの一つとしてのIP電話及び3つのグループ企業によって構成される携帯電話市場を含む移動体通信に係る競争評価を行った。総務省は、2005 年7月、評価結果について、パブリック・コメント手続を経た後発表した。

B.固定系相互接続

1.ブロードバンドの進展やそれに伴うIP電話の普及及び携帯電話の普及により、既存の固定電話網の通信量は急速に減少している。過去2年間における毎年の減少の割合は、通信時間で見た場合、年15%程度となっている。さらに、今般、既存事業者のドライカッパを利用した競争事業者による直収電話のサービス開始等、電気通信市場を取り巻く環境は急速に変化している。

2.このような電気通信市場の環境変化を踏まえ、情報通信審議会は、昨年10 月、「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」の答申を行った。当該答申は、接続料関係コスト削減を実現する新モデルの評価及び5年間をかけてのトラフィック(通信量)の増減に依存しないコスト(NTS コスト)の段階的除去等を内容としている。

3.総務省は、この答申に基づき、2005 年度以降に適用される接続料算定方法の見直しを行うため、2005 年2月に関係省令の改正を行った。長期増分費用方式のモデルの見直しは、接続関係コストを11.8%削減した。この削減とNTS コストの除去により、急激なトラフィックの減少(2003 年度と2004 年度の比較によると、IC で20.2%、GC で16.3%の減少)を補い、新たな接続料の上昇をIC において14.9%、GC において2.7%まで抑制した。

4.見直しが行われたモデルは3年間適用される。総務省は、透明な手続により、モデルの改訂又は変更についての更なる検討を継続する。

5.情報通信審議会は2004 年12 月、ユニバーサルサービス基金の見直しを行うため、ユニバーサルサービス委員会を開催した。2005 年7 月、委員会の答申案は、パブリック・コメント募集のため発表された。日米両政府は、WTO 参照文書の約束に沿ったユニバーサルサービス制度を維持する継続的な意思を有することを再確認した。

C.移動体通信

1.NTT ドコモの接続料は、過去4年間での約25%の値下げにより、現在のところ、発信者課金制度を採用する先進国の中で最も低いレベルまで下がっている。2005 年3月に届け出られたNTT ドコモの接続料は、2004 年度と比較して3.4%引き下げられた。第二種指定(移動体系)電気通信設備を有する電気通信事業者は引き続き、接続約款を総務省に届出し、公表することが義務付けられる。

2.携帯電話用周波数については、パブリック・コメント手続及び「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」における関係者・有識者による公開の場での議論といった透明な手続により、800MHz 帯におけるIMT-2000 周波数の割当方針が決定された。

3.総務省は、携帯電話事業における一層の競争促進及び電波の有効利用という観点から、1.7GHz 帯及び2GHz 帯について、新たな免許の免許要件及び数等について記載している免許方針案を作成し、これについてパブリック・コメントを招請し、電波監理審議会へ諮問を行った。2005 年8 月に制定された最終的な免許方針は、これら周波数帯の割当基準において、新規参入事業者を優先的に取り扱うとともに、既存事業者の周波数のひっ迫に対応するものである。周波数の割当は、2005 年9 月30 日までに受け付けた申請に基づき、透明・公正な手続きにより、年末までに決定される予定である。

D.先端技術とサービスの促進

1.規制改革イニシアティブ電気通信作業部会は、相互認証システム及び次世代無線技術に関する民間の専門家から見解を聴取した。

2.情報通信審議会は、2004 年12 月、高出力型950MHz 帯パッシブタグシステムについての技術的条件について一部答申を行った。総務省は、この答申その他の議論を踏まえ、2005 年4月に所要の省令改正を行った。433MHz 帯のアクティブタグシステムについては、433MHz 帯の既存システムであるアマチュア無線とアクティブタグシステムとの共用可能性に関する実証実験の結果に基づき、情報通信審議会における検討が継続されることとなっている。総務省は、この実証実験のための無線局免許を2005 年7 月に付与した。情報通信審議会が最終報告書案を公表する際、総務省はパブリック・コメント手続を行う。

3.ユビキタスネットワーク社会の進展のため、総務省は2004 年11 月、ワイヤレスブロードバンド推進研究会を立ち上げた。研究会は2005 年4月に中間報告書を作成し、具体的な無線ブロードバンドシステムに関する提案募集を行った。この研究会において、無線ブロードバンドシステムのための周波数の再割当の促進方策について検討を行っているところである。

4.電波有効利用政策研究会は最終報告書において、帯域非占有型の免許不要局について電波利用料を徴収しないことを提言した。

E.ネットワーク工事規制の緩和

1.電気通信事業者が行う光ファイバ敷設工事のうち、年度当初に想定しえず、かつ、緊急性を有すると認められるものについては、道路管理者と電気通信事業者など関係機関の間で概ね四半期ごとに必要な調整を行い、冬季・年度末においても道路交通に著しい影響を与えない範囲で抑制を緩和する措置を2005 年度末まで試行する。

2.国土交通省は、直轄国道については、2001 年度以降全国で線路敷設権に関する電子申請を可能とするとともに、その他の国道及び都道府県道については、電子申請が可能となるよう、地方公共団体に要請した。また、地方公共団体の標準システムの基本的な仕様を策定し、地方公共団体に公開した。

F.電気通信機器の貿易の促進

1.総務省と米国連邦通信委員会(FCC)は、非公式の会合を重ねた結果、電気通信機器分野と電磁両立性(EMC)分野のそれぞれで適当な相互承認の方式について認識を共有するに至った。

電気通信機器分野については、日米両政府は、政府間の相互承認協定を、可能ならば2006年早期に締結することを目的として、2005 年11 月に政府間公式交渉を開始する予定である。

2.EMC 分野については、米国政府は、認定機関から認定を受けた日本の適合性評価機関が行ったIT 機器及び工業、科学、及び医療用装置(ISM 機器)に係る適合性評価結果の受入れを可能とする措置の策定を日本と協力して行う用意があることを確認した。

G.ネットワーク回線終端装置(NCTE):

日本国政府は、1990 年のネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する書簡(1990 年書簡)についての、首脳への第三回報告書に記載されている簡素化された手続の廃止に関する提案について、パブリック・コメントを招請する。改訂された手続に対する継続的な必要性を証明する十分な証拠が利害関係者からパブリック・コメント手続を通じて提出されない場合、1990 年書簡は2006 年度以降適用されないこととなる。

U.情報技術(IT)

A.規制及び非規制障害の除去:

日本は、IT分野において大きな進歩を成し遂げ、著しい成果を挙げてきた。例えば、日本のインターネット・サービスは、現在、世界で最も高速で安価なものの一つになっており、また、電子商取引の市場規模は米国に次ぐ世界第2位にまで成長した。日本は、電子商取引を含めたITの活用を更に促進する規制環境を醸成する努力を継続していく。

1.オンライン・サービス:

日本国政府は、例えば対面取引又は書面取引の義務付けといった電子商取引や他のオンライン・サービスの妨げとなっている既存の法律、規制における障害を引き続き除去していくと共に、現在は電磁的な方法が認められていない分野における電磁的な方法による通知や取引を容認するために、必要に応じ法律及び規制を改正していく。日本国政府は、例えば、2005 年12 月から一部地域において、新車新規登録手続を対象として、ワンストップ・サービス・システムを導入することとしている。また2008 年までに全ての自動車登録手続について、全国でオンライン申請できるワンストップ・サービス・システムを導入することを目指している。

2.技術的中立性:

日本国政府は、民間部門に最大限の柔軟性を与え技術革新を奨励するために、特定技術を過度に推進、強制又は選好しない方法(技術的中立)で、IT分野に関連する法、規則、ガイドラインを実施することが一般的に重要である、との見解を米国政府と共有する。ある特定の環境においては、特定技術を採用することが不可避な時もあるものの、日本国政府は、「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」において、(ある特定技術に対する過度の依存を避けるとの)電子署名の定義に関してそうしてきたように、適切かつ実行可能な範囲内において技術的中立性を確保するよう努力を継続していく。

3.民間部門とのパートナーシップと国際調和:

日本国政府は、e-Japan 計画の形成及び実施において民間部門が重要な役割を担うことを理解している。この基本原則の下、「e-Japan 重点計画-2004」では、例えば、自由かつ公正な競争の促進や民間部門が潜在的な活力を十分に発揮できるような関連規制の見直しを通じ、市場が円滑に機能するような環境の整備の必要性について明記している。日本国政府は、今後の法的枠組の形成においても、引き続き、過度に規制したり、電子商取引を阻害したりすることのないよう、また国際的な調和を図るべく努力していく。

4.e-文書法:

日本国政府は、民間事業者等のコスト削減のため、2005 年4 月にe-文書法を施行した。

a.日本国政府は、民間事業者のコスト削減の必要性と書面による保存が法的に有効である場合の要件のバランスをとりながらe-文書法が確実に施行されるよう努めてきた。また、日本国政府はe-文書法に関する全ての関連規則(省令)の内容の整合性を保つよう取り組んできた。IT戦略本部は、この点において、関係省庁のe-文書法関係省令の制定・改正のスケジュール管理を行うなど、中心的役割を担った。

b.関係省庁は、パブリック・コメントの募集を行うなど、民間事業者等の意見をe-文書法主務省令の整備に反映するための措置を講じた。

5.IT政策の調整

a.「e-Japan 重点計画-2004」に明示されているように、IT戦略本部は、IT分野における規制改革に関する政策の策定とその実施において、規制改革・民間開放推進会議及び規制改革・民間開放推進本部と緊密に連携してきた。IT戦略本部は、日本のIT政策の恩恵が最大化されるようにこれらの組織との緊密な連携を継続していく。

b.IT戦略本部は、民間部門の専門家を評価専門調査会のメンバーに任命した。この過程で、IT戦略本部は、本専門調査会の中立性と透明性を保つことに注意を払うとともに、現在のグローバル化したIT社会に呼応する広範な知見からIT戦略本部に助言ができる民間の専門家を任命した。さらに、日本国政府は、今後継続するe-Japan の評価において、知見の範囲を更に広げるために、日本の団体以外からの専門家を含め、専門家からのインプットを積極的に求めていく。評価専門調査会は、PDCA サイクル(Plan-Do-Check-Act サイクル)の手法に基づき、「e-Japan 重点計画-2004」を含む日本のIT政策が目指す目標に向けての進捗状況について積極的に評価を行っている。現行の評価結果は、IT戦略本部に報告されている。さらに、「e-Japan 戦略」、「e-Japan 戦略II」、「e-Japan 重点計画-2004」の決定に際しては、IT戦略本部は、パブリック・コメントの募集により、民間部門を含む関係者から意見を求めており、将来のIT戦略を策定する際も、これを継続していく。

c.関係省庁間の連携を促進するために、関係省庁の官房長級を構成員としたIT関係省庁連絡会議が2004 年2月に設立された。また、複数府省にまたがり緊密な省庁間の連携を通じて実施されるべき重要政策については、IT戦略本部主導のもと、個別に連絡会議を設置している。IT戦略本部は、引き続き、関係省庁と緊密な連携のもとIT政策を推進していく。

B.知的財産権保護の強化:

日本国政府は、文化審議会著作権分科会において、デジタル技術利用の急速な拡大に伴う諸問題に対応するために必要な変更点を整理するために、著作権法の幅広い見直しを行っている。

1.著作権保護期間延長:

日本国政府は、著作権保護期間延長について、国際的な動向や権利者・利用者間の利益の均衡を含む様々な関連要因を考慮しつつ検討を続け、2007 年度までに著作権保護期間の在り方について結論を得る。米国政府は、音声録音を含むすべての著作物について保護期間を延長することが世界的な傾向であると認識しており、日本国政府は、この点についての米国政府の懸念を認識する。

2.法定損害賠償制度:

日本国政府は、権利者の侵害立証責任を軽減するため、侵害行為に対する法定損害賠償制度を含め、更なる措置の検討を継続し、2007 年度までに結論を得る。

3.デジタルコンテンツの保護:

デジタルコンテンツの保護を強化すべく:

a.日米両政府は、ソフトウェアや他の知的財産等を含む、政府支出によるIT資源上に存在するデジタルコンテンツの保護の改善について、必要に応じ情報交換を継続する。

b.プロバイダ責任制限法は、2002 年5月の施行以来、関連ガイドラインを通じて一定の前向きな成果をあげている。本法及びガイドラインにより、デジタルコンテンツの海賊版を含むインターネット上での権利侵害情報は、信頼性確認団体からの申立を通じて削除することができる。日本国政府は、引き続き本法律の運用状況を見守っていく。現在、この一環として、本法律の有効性及び妥当性の理解を促進するための利害関係者への定期的なアンケートの実施をしている。

c.日米両政府は、オンライン上の著作権侵害に関する事項につき、著作権侵害の二次的責任原則の適用とその適用範囲を明確にする方法の検討も含め、議論を継続する。

d.日本国政府は、著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)及び実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)の規定に従って、ピア・ツー・ピアネットワーク上でアップロードされる著作物及びレコードの著作権及び著作隣接権侵害への対応として、利用可能化権を設けていることを確認した。さらに、日本国政府は、関連する条約上の規定を踏まえて、私的利用の例外範囲を明確にするため引き続き努力する。

e.日本国政府は、適切な方法により、「一時的複製」の保護の範囲の解釈を知らしめるよう努力してきた。今後、更に、適切な方法で一時的複製の保護の範囲の解釈を明らかにするよう努力していく。

f.日米両政府は、技術的保護手段の改善に関して議論を継続する。

g.日米両政府は、エンドユーザーの違法コピーに関する事項について議論を継続する。

4.偽作版:

日本国政府は、特に大学構内における本の複製に関する事項について、米国政府と議論を継続する。

5.著作権法における教育例外条項の適切な範囲:

日本国政府は、教育機関、教員及び学生に対する著作権法上の「教育例外条項」のガイドラインを公表し、例外となる実例を提示し、著作権法改正法における例外条項の範囲を明示した。日米両国政府はこの事項の例外の範囲について引き続き議論を継続する。

6.知的財産推進計画及び知的財産政策

a.知的財産戦略本部(知財本部)において、知的財産立国を実現するための様々な施策が議論され、2003 年7月に「知的財産推進計画(知財推進計画)」が策定された。知財本部において最終的結論に至らなかったいくつかの重要な論点について更に議論を進めるため、知財本部は、2003 年10 月に3つの専門調査会、すなわち(1)知的財産権利保護基盤の強化に関する専門調査会(「権利保護基盤の強化に関する専門調査会」)、(2)医療関連発明行為の特許化の可能性に関する専門調査会(「医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会」)、(3)コンテンツビジネスに関する専門調査会(「コンテンツ専門調査会」)を設置した。法律(知的財産基本法)上、知財推進計画は、少なくとも年1回見直され改定されることになっている。この規定に従い、2005 年6月10 日、知財本部は、「知財推進計画2005」を決定、公表した。

b.知財推進計画の見直しにあたっては、知財本部は閣議決定されたパブリック・コメント手続に関する一般的なルールに従って、パブリック・コメント招請のための適切な期間を設ける。その際、知財本部は、米国政府やその他関係者から寄せられたコメントについて、真剣に考慮し、必要に応じて最終的な施策や措置に反映することを確保する。また、日本国政府は、知的財産基本法や知財推進計画のための施策が、国際的な義務、基準、及び規範に従ったものであること、更に知財本部に対して知的財産基本法や知財推進計画のための施策を実施するために必要な支援及び資源を提供することを確保する。

c.知的財産戦略本部令は、知財本部が必要と認める場合には、専門調査会が知財政策の立案時に、有識者又は権利者を含む関係者を専門調査会の会合に招いて意見を聴くことができる、と定めている。

7.知的財産権保護の強化に向けた日米協力

a.日米両国は、海賊版や模倣品が全世界で取引されているという深刻かつ増大しつつある問題に対処すべく、最近、主要な新政策を策定した。2004 年10 月、米国は「STOP!イニシアティブ」を、2005 年6月、日本は「知財推進計画2005」を打ち出した。

b.知的財産権分野における日米双方の施策の策定に加え、日米両国は、これまで、知的財産権の保護及び執行を強化すべく堅密な協力関係を維持してきており、今後ともこれを維持していく。多国間協力と共に、日米両政府は、例えば、

(1)2004 年11 月及び2005 年4月に、アジア及び世界中で知的財産権保護・執行を促進すべく、二国間協議を開催した。

(2)「APEC 模倣品・海賊版対策イニシアティブ」を共同提案し、この提案は2005 年6月に韓国において開催されたAPEC 貿易担当大臣会合において承認された。

(3)規制改革イニシアティブの下、デジタルコンテンツの海賊版対策に向けて協力する方法について協議した。

c.日米両政府は、二国間、地域内、多国間協議の場において、世界規模で知的財産権保護をより強力に促進するため、引き続き協力する。

C.官民における電子商取引の推進

1.プライバシー:

日本国政府の関係省庁は、2005 年4月1日に全面施行された個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の施行に関し、実効性の確保に留意しつつ、ガイドラインの策定・見直しを行った。

a.個人情報保護法が各分野に共通する必要最小限の要素を示したものであることを踏まえ、策定・見直しされたガイドラインは、各分野特有のものとなっている。関係省庁は、各審議会における議論及びパブリック・コメントを踏まえ、これらのガイドラインの策定・見直しを行った。

b.関係省庁は、民間の事業者団体が自主的に行う個人情報保護のためのガイドラインの策定を支援することとしている。このような自主的なガイドラインは、民間部門における個人情報の適切な取扱いに寄与するものと期待される。

c.日本国政府は、透明性を確保し、民間部門の自主的な取組を尊重するとともに、個人情報保護法の施行に関するよりよい理解を促進することが重要であると考えており、この立場は以下の例に示されている。

(1)2005 年3月23 日、内閣府、金融庁、総務省、経済産業省及び厚生労働省は、日米の事業者を対象とした個人情報保護法に関するセミナーに参加するために専門家を派遣した。同セミナーは、300 人以上の参加者にとって、個人情報保護法の施行に関する理解を深めるための有益な機会となった。

(2)日本国政府は、個人情報保護法を施行する関係省庁が、施行や是正措置に関する情報を公表することは重要であると信じる。

(3)基本方針に記されているとおり、内閣府は、個人情報保護法の施行状況について、法の全面施行後3年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。関係省庁は、個人情報の適切な取扱いを確保するために、ガイドラインによって必要な措置を講じることが重要であると考える。例えば、経済産業省は、ガイドラインの実効性について年次レビューを実施し、政府全体を通じた一貫性を模索すべく必要なあらゆる変更を行う予定である。

2.裁判外紛争解決手続の促進:

日米両政府は、2004 年の両首脳への報告書において、電子商取引が効果的に機能し発展していくためには、利用しやすく実効性のある裁判外紛争解決手続(ADR)の仕組みが不可欠であることを確認した。日本国政府は、以下に述べるとおり、「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR 法)の施行が、日本国内のものであれ国境を越えるものであれ電子商取引に関する紛争についてADR の利用を妨げないことを確保する。

a.ADR 法の下では、一般的に、当事者が、電子商取引に関するものを含め、個々のADR 手続に適用される規則、手続き及び基準を決定することが認められている。日本国政府は、ADR 法の施行規則やガイドラインを、オンライン上の紛争の解決を促進し、また国境を越えて取引されるという電子商取引の性質に適合するように立案することを確保する。

b.日本国政府は、ADR 法が施行された後、国境を越える紛争あるいは電子商取引に関する紛争に係るADR 手続への同法の影響を注視し、これらのADR 手続について明らかになった問題や障害を改善するための措置を遅滞なく採る。

3.ネットワーク・セキュリティ:

2003 年9月9日に採択された地球規模のサイバーセキュリティ推進に関する日米共同声明のもとで、日米両政府は、増加するサイバー攻撃や地球規模の情報ネットワークの相互依存性により、重要情報インフラの安全を確保するという課題に答える責任は全ての国にあることを認識した。日本国政府は、日本における官民の情報セキュリティのレベルを上げるよう努めている。日米両政府は、特に重要インフラの大多数が民間部門に所有されていることにかんがみ、重要インフラ防護については公的部門と民間部門が責任を共有するという認識を再確認した。

a.適切かつ統一的な情報セキュリティ政策を立案し実施していく機能を強化する努力の一環として、日本国政府は、2004 年12 月、IT戦略本部の下への「情報セキュリティ政策会議」と「内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)」の設立に着手することを決定した。

NISC は2005 年4月に稼動を開始した。情報セキュリティ政策会議は2005 年5月にIT戦略本部の決定に基づき、設立された。日本国政府は、政府横断的な調整を可能にし、効果的な情報セキュリティ政策を立案するという目的を達成するために、これらの組織に十分な資源を提供する最大限の努力を行う。

b.現在、日本国政府は、中央政府のコンピュータシステムに関する「情報セキュリティ対策の基準(対策基準)」案について詳細を検討している。その第一段階のものは、2005 年9月15 日に発表されたが、パスワードの用法やウイルスの防止のような各省庁で共通の基本的対策を示すことに焦点を合わせている。これら共通の基本的対策の確立に続いて、政府のコンピュータシステムに対するより洗練された対策基準を作成中である。2004 年6月の両国首脳への報告書において、これらの対策基準は、適切な場合には、公開(私有・独占ではない)であり、産業界での合意に基づいた自主的基準団体によって開発された基準と矛盾しないものになることを、日本国政府は確認している。さらに、今後の対策基準に関して、日本国政府は、

(1)政府と民間部門のコンピュータシステムに相互依存的性質があり、政府のコンピュータシステムを支えるITインフラの大部分を民間会社が供給していることを認識している。

(2)特に技術的な実行可能性に関する意見を聴取するため、又は、選びうる様々な対策がある場合には、関心を有する関係者から技術的助言を幅広く求めることが有益であると認識している。この過程を経ることにより、最良かつ、最も技術的な実現性がある対策基準の作成に役立てることができる。加えて、日本国政府が透明な手法で対策基準を向上させるならば、それらの基準は民間部門にとっても有益な参考となりうる。

(3)情報セキュリティ対策基準を策定する際には、関心を有する関係者からの幅広い意見が役立つと認識している。それゆえ、NISC は、一般国民の意見を求める適切な方法を検討し続けることにしている。特に対策基準が事業者、契約者及び他の民間主体に影響を与える分野については、国内外の全ての関心を有する関係者からできるだけ幅広く意見を求めることが非常に重要であると日本国政府は信じている。2005 年10 月17 日、NISC は、対策基準案に関する検討及びパブリック・コメント手続を開始した。

c.IT戦略本部が2005 年2 月に発表した「IT政策パッケージ2005」に基づき、日本国政府は、民間部門における情報セキュリティ対策の更なる利用を促進していく。自主的なベスト・プラクティスは改訂が比較的容易であることを認識しつつ、日本国政府は、2005年度以降、民間部門と連携して、民間における情報セキュリティに関する自主的なベスト・プラクティスの策定と普及に努めるとともに、当該情報セキュリティ対策が民間部門で自主的に導入、採用されるよう奨励していくこととする。

d.日米両政府は、今後とも、情報セキュリティに関するベスト・プラクティスの改善に関する情報及び経験を交換していくこととする。

4.スパム:

日米両政府は、一般的に消費者及び企業の双方にとって同じく負担であると認識されている迷惑商業メール、すなわちスパムに関心を持っている。スパムはまた、ウイルスやフィッシングといった様々な形態のオンライン詐欺や悪質なコードの拡散にますます関連するようになっている。日本国政府は、2002 年4月に成立し同年7月に施行された「特定電13子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール法)」の執行を含め、スパム対策に積極的に取り組んできた。総務省において2004 年10 月から定期的に開催されている「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」での議論に基づいて、直罰規定の導入を含む迷惑メール法改正法案が2005 年3月に国会に提出され、5月に成立した。

a.日本国政府は、米国と緊密に協力しつつ、国際的なスパム対策を更に推進する。

b.日本国政府はまた、送信者認証技術を含む革新的な技術の開発のために民間部門による自主的な取組を尊重することの重要性を認識するとともに、スパム撲滅のために政策を展開するに当たり、民間部門とともに作業を行っていく。この考え方は米国政府とも共有している。

D.情報システムの調達改革の促進

1.改革実施の促進:

2004 年12 月、情報システムに係る政府調達に関する各府省の申合せに記載された改革事項について、2003 年度における各府省の実施状況の「フォローアップ調査」の結果が総務省のホームページで公表された。

a.日本国政府の情報システムに係る政府調達府省連絡会議は、整合的で、完全かつ時宜にかなった形で申合せの調達改革項目を実施することが重要であることを認識し、可能な限り速やかにこれらの改革を実施するように全府省に指示する。

b.全府省庁は、申合せの2.に示されている入札の参加制度の見直しについて、2005 年度末までに実施するよう一層努力する。これにより、中小企業や外国企業への情報システム調達への参加の機会が拡大するであろう。

c.「IT政策パッケージ2005」に基づき、経済産業省は、調達側の調達能力の強化を図るため、2005 年度中に「調達スキル標準」を策定することとしている。これは、申合せの3.に示された調達担当官に対する研修の強化という目的に大きく貢献するものである。

2.改革実施の進捗に関する評価:

申合せに記載された改革事項の実施状況を示した2004 年のフォローアップ調査には、2003 年版のフォローアップ調査にはなかった、全体の進捗状況や各府省の実績を示す有用なデータが掲載された。また、2004 年4月には、日本国政府は、情報システムに係る政府調達事例情報を提供するオンラインのデータベース(http://cyoutatujirei.e-gov.go.jp/)を構築した。

a.日本国政府は、再度年次フォローアップ調査を行うことを計画している。情報システムに係る政府調達府省連絡会議において、調査の形式と内容について検討する。

b.フォローアップ調査の結果を補足し、申合せにある改革事項の進捗状況を正確に評価する取組を支えるため、日本国政府は、全府省が個々の調達案件に関する必要な全ての情報を情報システムに係る政府調達事例データベースに定期的に入力することを確保する。

c.日本国政府は、データベースの情報の量と質が一定のレベルに達した際には、これら情報の分析を行い、情報システムの調達における傾向の把握に役立つ統計を公表する。

d.情報システムに係る政府調達府省連絡会議は、引き続き、国民によるデータベースの利用促進を図る。

3.改革の有効性の評価と向上

a.内閣官房は「政府調達における我が国の施策と実績(2004 年度版)」を2005 年5月にホームページに掲載した。当該報告書では、内閣官房が受領したいくつかの調達に関連した質問やコメントに対する回答が示され、日本が総合評価方式に使用している基準額(コンピュータ製品及びサービスに係る基準額を含む)について意見を聴取するために内閣官房が2004 年度中に行った供給者調査の結果が示されている。利害関係者が情報システム調達の課題や改善を把握し、フィードバックを示す機会が増加するように、日本国政府は、内閣官房の調達に関する年次報告書の供給者調査の中で、これらの課題や改革に関する質問を更新するか質問数を増加させる。

b.ほとんど全ての府省は、不当な安値落札を防ぐための低入札価格調査の基準を策定している。各府省は、同調査を実施した調達案件については、公正取引委員会に報告するとともに、総務省が運用する情報システムに係る政府調達事例データベースに入力することとしている。

c.各府省は2003 年に低入札価格調査を22 件実施した。日本国政府は、非競争的で不当な安値落札を防ぐ措置が効果的に用いられることを確保すべく、引き続き作業する。

4.改革の強化

a.CIO 連絡会議が決定した「電子政府構築計画」の一環として、各府省は、コストの削減やパフォーマンスの向上に資する「レガシー」コンピュータシステムの取換や改修を行うため、その業務や同システムの見直しを行うこととされてきている。36 のレガシー・システムに対する刷新可能性調査が2004 年度中に終了し、その結果は、各府省のウェブサイトに掲載されている(セキュリティ上の理由により公表することが不適切なものは除く)。各府省は、これらレガシー・システムについて、2005 年度末までに最適化計画を策定し、この計画を2006 年度から実施することとしている。CIO 連絡会議は、これらの見直しを透明性のある方法で実施するよう同会議による指示に各府省が従うとともに、最適化計画が最終決定される前にパブリック・コメント期間を設けることを確保すべく、引き続き作業する。また、CIO 連絡会議は、全ての府省に対しアンバンドル化、競争入札、複数年契約の活用その他の方法を適切に用いることにより、どのようにレガシーシステムの契約内容が改善されるかについて、議論を続けるよう指示する。

b.2003 年、各府省が行う業務・情報システム見直しを支援し、それらを改善するための計画を立案するため、外部専門家の中からCIO 補佐官が選定された。各府省の機能を更に効率的かつ費用対効果の高いものにすることを促進するため、「IT政策パッケージ2005」に示されたように、内閣官房とすべての関連府省は、CIO 補佐官の機能を高めるべく、引き続き作業する。

c.情報システムに係る政府調達府省連絡会議事務局は、各府省が情報システムの入札結果を契約締結後遅滞なく公表することを確保すべく、引き続き作業する。

V.エネルギー

A.規制当局:

日本国政府は、エネルギー政策基本法の目的であるエネルギーの安定供給の確保及び環境への適合を満たしつつ、小売分野における選択肢を拡大し新規参入者の市場参加の機会を提供することにより、競争的なエネルギー市場を構築すべく、電力分野及びガス分野において重要な制度改革を行った。日本の改革プロセスは米国政府により歓迎されている。

公平、効率的かつ安定的なエネルギー市場を創設するに当たって、これらの改革の実効性を確保するためには、厳格な市場監視が必要である。日本国政府は、そのような監視を行うために、明確な行動規範に基づく必要な職員数、十分な専門知識、独立性及び予算を備えた執行の仕組みを確立することの重要性を認識している。2005 年3月に、経済産業省は総合資源エネルギー調査会電気事業分科会及び都市熱エネルギー部会の下に市場監視小委員会を設置した。市場監視小委員会は、経済産業省による、自由化された電力・ガス市場の監視及び紛争処理を支援することとなる。市場監視小委員会の委員は外部有識者によって構成され、独立した勧告を行うことを確保しつつ運営を行う。

B.国民からの意見:

経済産業省は、日本における電気事業制度改革及びガス事業制度改革を実行するための省令や指針等が、オープンかつ透明な手続により作成されることを確保するための重要な措置を講じた。意思決定過程の公平性・透明性を一層向上させるため、経済産業省は、パブリック・コメントの有意義な機会を引き続き提供し、パブリック・コメントが最終的な規則において考慮されることを確保する。

1.電力:2005 年初頭、経済産業省と公正取引委員会は、「適正な電力取引についての指針」の改定案をパブリック・コメント手続に付し、寄せられた意見に回答を行った。

2.天然ガス:2004 年中頃、経済産業省と公正取引委員会は、「適正なガス取引についての指針」の改定案をパブリック・コメント手続に付し、寄せられた意見に回答を行った。

C.電力:

電気事業法は2003 年6月に改正され、新たな電気事業制度への道を開いた。更に、経済産業省は省令を改正し、2005 年4月に市場の約63%(2003 年の水準の2.4 倍)まで小売分野の需要家の選択肢を拡大した。

1.送配電部門の公平性・透明性
a.中立機関

(1)経済産業省は、改正電気事業法に基づき、電力系統利用協議会より提出された事業計画について経理的・技術的基盤に関する情報を含めて審査し、2004 年6月に同協議会を中立機関として指定した。電力系統利用協議会は、一般電気事業者、新規参入者、その他の系統利用者及び学識経験者により中立的に構成される有限責任中間法人である。また、電力系統利用協議会は評議会を設置しており、そのメンバーは、経済分析専門のコンサルタント、消費者、マスコミ関係者等から構成される。

(2)中立機関は、電気事業分科会報告及びパブリック・コメント手続を通じて寄せられた意見を踏まえ、設備形成、系統アクセス、系統運用及び情報開示に関する詳細なルールを策定した。更に、個別の一般電気事業者も、中立機関ルールを踏まえたルールを策定した。

(3)経済産業省は、中立機関の意思決定の公平性・透明性を確保するために同機関を監督し、是正の必要があれば、監督命令や指定の取り消しを行う。

b.行為規制

(1)経済産業省は、電気事業分科会の報告書や同報告書に対するパブリック・コメントを踏まえ、送配電部門の会計と他の部門の会計とを分けることを義務付け、収支計算書において会計分離を行うための省令をまもなく策定する。

(2)2005 年5月、経済産業省は、託送供給業務における情報遮断及び差別的取扱いの禁止の実効性を確保するため、公正取引委員会と共に「適正な電力取引についての指針」を改定した。さらに、最近の事業者から寄せられた懸念事項を踏まえ、コージェネレーションシステム(LPG 等を燃料とし、発電の際の排熱もエネルギーとして利用するシステム)の新増設やオール電化等に関する電力−ガス間の競争における適正な電力取引の在り方を指針に追加した。

(3)経済産業省及び公正取引委員会は、一般電気事業者の行為について電気事業法、独占禁止法、又は指針に反する事実がある場合には、その是正のため、当該行為の停止又は変更の命令を行うこととなる。命令を行う際には、必要があれば、市場監視小委員会に審議を依頼することとなる。

2.新しい電力市場の制度設計
a.卸電力取引所

(1)2003 年2月に取りまとめられた「今後の望ましい電気事業制度の骨格について」において、電気事業分科会は、卸電力取引市場は、私設・任意ではあるが、電力市場における重要な役割を担っていることを指摘した。

(2)日本卸電力取引所は、2003 年11 月に設立され、2005 年4月より取引を開始した。

b.自由化範囲の拡大(1)小売分野の自由化範囲は2004 年12 月の省令改正により、2005 年4月から50kW 以上の全高圧需要家までに拡大された。

(2)2007 年4月以降、その時点までの部分自由化の結果を踏まえ、家庭需要家を含む小売分野の全面自由化に関する検討が開始される。

(3)日本国政府は、小売分野の自由化範囲の拡大について、新聞やリーフレットによって広報を行っている。

3.託送制度の見直し
a.同時同量ルール

(1)経済産業省は、パブリック・コメントを踏まえ、2005 年4月に、同時同量ルールを緩和し、新規参入者が、30 分3%の第一変動範囲に加え、3〜10%までの第二変動範囲も選択できるようにした。2005 年4月の新しい託送制度の開始に向けて新同時同量支援システムが導入され、新規参入者は30 分ごとの需要家の需要データを入手可能となった。そのデータは、遠隔検針システム等により一般電気事業者が収集し、所有するものである。

(2)経済産業省は、これらの措置を実行するため、2004 年12 月に省令等を整備した。

b.パンケーキの廃止:経済産業省は、公平・透明な託送料金により全国規模の電力取引を容易化すべく、パンケーキ問題を解消して系統利用者がどこから発電しようとも供給する区域における一律の託送料金を支払う枠組みを導入するため、2004 年12 月に省令等を整備した。本措置についても、2005 年4月に施行された。

c.託送供給約款変更命令発動基準の明確化:経済産業省は、ネットワーク規制を適正に執行できる仕組みを確保するため、変更命令発動に係る基準を明確化し、必要な規制を整備した。

4.規制改革の見直し:

2005 年4月より、新しい一連の電気事業制度が施行され、電力市場は変化した。今後は、2005 年3月25 日に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」を踏まえ、経済産業省は、公表された定量的、定性的な基準を参照して、市場における公平性、透明性及び競争力を確保するための追加的な規制改革の導入等の追加的措置の必要性も考慮しつつ、市場の監視及び評価を行う予定である。これら基準には、卸電力取引市場における取引状況、中立機関における業務運用状況、行為規制の遵守状況、新規参入の状況及び電力会社間の競争等に関するものも含まれうる。

D.天然ガス:

改正ガス事業法が2003 年6月に国会で承認され、2004 年4月に施行された。それによって、小売自由化範囲が年間契約ガス使用量50 万m3以上の需要家まで拡大され、2004年12 月時点では市場の約50%にまで小売自由化範囲が拡大された。経済産業省は、規則案の公表やそれに対するコメント募集を適切に行いつつ、ガス事業法の改正に併せた規制の整備を行い、実施している。

1.託送供給(ガス導管の第三者利用)の公平性・透明性

a.託送供給料金:経済産業省は2005 年9月に、託送供給料金認可にかかる行政プロセスを更に透明化し、また、料金の妥当性についての事業者の説明責任を明確化するため、「ガス料金情報公開ガイドライン」を改定した。

b.会計整理:経済産業省は2004 年10 月に、導管部門の会計を他の業務部門の会計と区分し、区分された会計を公表する規則を定める省令を公布した。

c.行為規制:経済産業省と公正取引委員会は共同で2004 年8月に「適正なガス取引についての指針」を改定し、ガス事業法に規定されている情報遮断と特定の託送供給利用者への差別的取り扱いの禁止に関する項目を新たに追加した。経済産業省は、ガス事業者によりガス事業法に反する行為が行われた場合には、その是正のため、当該行為の停止又は変更の命令を行うこととなる。同様に、公正取引委員会は、ガス事業者により独占禁止法に反する行為が行われた場合には、その行為を是正するための措置を講じる。

2.導管網の整備促進:

国土交通省は2004 年10 月に、パイプラインの埋設深度に関して、これまでの1.8m ではなく1.2m で足りるとする通達を出した。これによって、費用効率の高い導管ネットワークの延伸が容易となり、更なる競争が期待される。

3.LNG基地の第三者利用:

経済産業省と公正取引委員会が共同で行った2004 年8月の「適19正なガス取引についての指針」の改定の一環として、LNG 基地の所有者と利用を希望する者との無差別的な交渉を促進するため、LNG 基地の第三者利用に関する項目が新たに設けられた。

4.規制改革の見直し:

経済産業省は、新規参入者の評価、第三者利用制度の利用状況、「適正なガス取引についての指針」等の行為規制の遵守状況など定性的、定量的な基準を参照し、また、安定供給と安全性への影響という観点から、市場を監視し、規制改革の効果を評価する。経済産業省は、市場における公平性、透明性及び競争を確保するため規制を実施する必要性について考慮しつつ、都市熱エネルギー部会での議論を踏まえ、これらの評価を行う。

5.更なる小売自由化範囲の拡大:経済産業省は、2007 年から小売自由化範囲を年間契約ガス使用量10 万m3以上の需要家に拡大するため、適時に法令を改正する。年間契約ガス使用量10 万m3未満の家庭用及び小規模業務用需要家への自由化範囲拡大のあり方については、時宜を得た形で結論を出す。2007 年の小売自由化範囲拡大における詳細な制度設計や、更なる小売自由化範囲拡大を考えるに当たっては、上述した市場監視の結果やこれまでの規制改革の評価を反映させることとする。

W.医療機器・医薬品

A.医療機器及び医薬品の保険償還価格の算定ルールの改革並びに関連事項

1.保険償還価格の算定ルールの改革:

医薬品・医療機器の償還価格の見直しについては、内外価格差を是正し、市場実勢価格を踏まえた価格の見直しを行うことが2003 年3月に閣議決定されている。この閣議決定により、厚生労働省は、革新性の価値を認識しつつ、改革を継続的に実行する。同時に、日本の患者に対して効率的で質の高い医療を確保し、よりよい医療機器及び医薬品の開発を奨励することが重要である。

日本政府は、現在、医療保険制度の抜本的な改革に取り組んでいる。2005 年4月、中央社会保険医療協議会(中医協)の専門委員会は、医薬品及び医療機器の価格制度の見直しに着手した。中医協においては、業界に意見表明の機会が与えられ、中医協はこれらの意見を考慮する。

医薬品業界の機会を促進するため、厚生労働省は、2005 年度において、これまでの実施時期であった秋よりも前倒しして7月に、価格の見直しに関する意見聴取の場を設けた。厚生労働省は、米国企業を含む業界に対し、中医協において意見を表明する意味のある機会を引き続き提供する。2005 年度において、厚生労働省は、償還価格と革新性の価値に係る認識が整合的なものとなることを確保する。償還価格政策を決定する際に、厚生労働省は、日本での医療を行うコストを増大させる要素についての業界の意見に留意する。

a.医薬品

(1)追加的に提出された申請資料の考慮:厚生労働省は、申請者が比較及び加算を選択する際、申請資料に加えて追加資料の提出を受け入れることを確認する。厚生労働省はまた、提出された全ての資料を薬価算定組織の委員に送付し、算定に際しそれらを考慮するよう奨励する。

(2)米国政府の見解:日本政府による医薬品の保険償還制度見直しの検討に際し、米国政府は、製造業者から示唆された償還価格制度(MSRP)の適用、比較方式及び市場拡大に基づく再算定基準に関する変更について、自らの見解を述べた。

(3)加算率:厚生労働省は、画期性や有用性の加算率を2002 年度から大きく引き上げ、画期的な医薬品の適切な評価を確保している。厚生労働省は、革新性を科学的に評価するために有用な加算を十分な範囲で継続的に活用する。厚生労働省はまた、中医協に対して、加算の件数やタイプを含む加算結果のリストを継続的に提出する。

(4)医薬品の外国平均価格調整ルール:厚生労働省は、日本の患者のための質の高い医療に貢献するため、日本において画期的な医薬品を利用できることを確保するための適切な政策を講じる。厚生労働省は、米国企業を含む業界に対して、医薬品の外国平均価格調整ルールに関連して相談する意味のある機会を引き続き提供する。

b.医療機器

(1)医療機器の外国平均価格ルール(FAP):厚生労働省は、日本のための質の高い医療に貢献するため、日本において先進的な医療技術を利用できることを確保するための適切な政策を講じる。厚生労働省は、中医協により定められたルールに従い、医療機器の価格改定の過程において、米国、英国、ドイツ及びフランスを含む4か国の平均価格を用いることとされている。厚生労働省は、米国企業を含む業界と相談をしながら、適切な価格についての情報を採集するための方法及びデータの採集範囲について検証する。中医協における国内外の市場における価格差に関する関心を考慮しつつ、厚生労働省は、業界に対し、日本市場に特有の費用に関する情報を提供するよう要請し、日本においてビジネスを行う上で生じる費用に関する米国業界の研究結果を考慮する。米国政府は、最も適切な参照価格は米国のリスト価格であるとの見解を表明した。厚生労働省は、次回の2年に一度の材料価格改定にむけて準備する際、外国平均価格ルールを含む価格ルールの要素を見直す。厚生労働省は、米国業界を含む業界に対して、引き続き、外国平均価格ルール及び医療機器に関連する将来的なデータ採集方法に関連する事項について相談するための意味のある機会を供給する。

(2)C1及びC2価格:厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、引き続きC1及びC2申請に関する事前相談を実施し、必要な助言を与える。

(3)C1区分への適格性及び加算に関する明確な基準:C1区分に適合する製品の基準を更に明確化するため、厚生労働省は、2005 年度に、過去においてC1区分に入れられた又は拒否された製品の例について、業界に対し説明する。厚生労働省は引き続き、米国業界を含む業界に対し、C1及びC2区分への申請について相談する機会を提供する。

2.ビジョン

a.厚生労働省は、2002 年8月に医薬品、2003 年3月に医療機器産業について、それぞれ政策提言である「ビジョン」を公表した。厚生労働省に設置された医薬品・医療機器産業政策推進本部は、2005 年度に、ビジョンのアクションプランを実施を加速化させるよう努力する。この努力により、市場での収益というインセンティブの提供を通じて革新性が育成されるとともに、安全かつ先端的な医薬品及び医療機器の日本への導入が加速される。2005年4 月28 日、厚生労働省は、医薬品産業ビジョンの進捗状況を取りまとめ、公表した。2004年度に進展が見られた分野としては、治験環境と医薬品価格制度が挙げられる。

(1)治験環境:治験コーディネーター研修課程修了者数は、2003 年度の3,200 人から2004年度の3,900 人に増加した。大規模治験ネットワークに参加する医療機関数は、2003年度の556 施設から2004 年度の991 施設に増加した。厚生労働省は、2004 年度に、医師主導の治験として3件の治験届を受領した。

(2)薬価:「薬価制度・薬剤給付の在り方に関する研究会」を通じて、厚生労働省は薬価制度及び薬剤給付の在り方について、中長期的な観点から情報収集を行い、業界と意見交換を行った。

b.厚生労働省は、2005 年6 月1 日に「医薬品産業ビジョンのアクションプランの進捗状況に関するヒアリング」を、2005 年6 月10 日に「医療機器産業ビジョンアクションプランの進捗状況に関するヒアリング」を開催した。これらのヒアリングにおいて、米国業界を含む様々な業界の代表が有用な意見を提供した。厚生労働省は、ビジョンを実施していくに当たり、これらの意見を真摯に考慮する。

3.透明性:

厚生労働省は、償還価格決定プロセスの透明性を引き続き確保する。厚生労働省は、価格算定ルールの変更に先立ち、またその影響を検討する際に、米国業界を含む業界に対し、意見を提出する意味のある機会及び相談へのアクセスを引き続き提供していく。日本政府は、2005 年度に2年に一度の価格改定の準備を行い償還価格制度の変更について検討する間に、このような相談を実施する。厚生労働省は、2005 年度から試験的に、薬価算定組織による製品申請に関する最初の会合の形式を修正する。加算の申請に係る意思決定過程において補足情報が有用であると薬価算定組織が認めた場合、厚生労働省と薬価算定組織は、申請者に対し、会合の冒頭数分間、製品の効果と有用性に関するプレゼンテーションを行うことを許可する。

4.診断薬:

厚生労働省は、診断機器(例えば体外診断薬や画像診断機器)に関する償還価格決定に際し、診断機器の価値を認識する。厚生労働省は、体外診断薬については、院内試験の臨床的価値を評価するシステムを継続し、保険償還に際して付加的な価値を反映する。厚生労働省は、診断機器の保険償還に関する医療機器業界との意見交換のための定期的な会合に、引き続き画像診断及び体外診断薬業界の代表を含める。厚生労働省は、2004 年4月に、在日米国商工会議所によって設立された臨床検査の勉強会にオブザーバーとして参加した。

勉強会には日本臨床検査医学会と日本臨床検査薬協会も参加している。勉強会では、院内における検査、予防的検査、制度管理等の診療報酬上の評価を含む体外診断薬に関する様々な事項が議論された。厚生労働省は、診断機器業界に対し、引き続き価格決定過程の透明性を確保する。

5.バイオロジック製品及び血液製剤

a.バイオロジック製品:厚生労働省は、バイオロジック製品と医薬品との、研究・製造・安全性の差異を認識する。

b.血液製剤:厚生労働省は、2005 年度に、血液製剤に関連する保険償還価格に関する事項について血液製剤業界と継続して相談を行う。

6.診断群分類別包括評価:

厚生労働省は、診断群分類別包括評価(DPC)が、平均在院日数及び治療結果を含めた医療の様々な側面に与える影響について、継続して研究する。厚生労働省は、米国業界を含む業界に対し、引き続き、DPC 制度の導入又は主要な改定に関して、業界の要望に応じて、情報を提供し、意見を表明する意味のある機会を提供し、相談ができるようにする。厚生労働省は、DPC の仕組みにおいて、革新的な製品の重要性を認識する。

7.データ保護:

知的財産戦略本部が決定した「知的財産推進計画」の一環として、日本政府は医薬品の試験データに関する保護期間を6年間から8年間に延長することを検討している。

厚生労働省は、新規医薬品の開発に対するインセンティブを向上させるために、医薬品の試験データに係る事項の検討を続ける。

B.医療機器及び医薬品の制度改正及び関連事項

1.序論:

厚生労働省は、2005 年度に、安全かつ有効で革新的な医療機器及び医薬品の導入を早め、日本の患者が最善の医療を受けることができるよう努力する。2004 年4月1日の医薬品医療機器総合機構(総合機構)の設立及び2005 年4月1日施行の薬事法における大改正の実施により、ビジョンの目標の観点からも、安全かつ有効で革新的な医療機器及び医薬品の導入が進展することが期待される。

2.達成目標

a.医薬品及び医療機器の承認審査を迅速に行うための努力を行う一方で、厚生労働省は、総合機構が首脳への第三回報告書において記述された医薬品及び医療機器の年間達成目標を実現することを確保する。年間達成目標は総合機構が設立された以降の申請に適用する。

厚生労働省と総合機構はまた、中期目標(2009 年まで)の達成の重要性を認識する。

b.厚生労働省は、総合機構の設立時までの医療機器申請に係る相当量の滞貨が存在していたことを認識し、総合機構が滞貨を可能な限り早期になくすよう強く奨励する。同時に、厚生労働省は、総合機構が達成目標において目指している期限内に新規申請を処理するよう奨励する。

c.厚生労働省は、医薬品相談を促進する必要性を認識する。2005 年4月26 日に発出された通知により、総合機構は、新しい相談の予約制度を導入した。割当てよりも多くの相談要望がなされた場合には、相談の予約は医薬品の現在の開発状況や申請の種類の区分に応じて、個々の医薬品の重要性に基づいて日程調整の優先度付けが行われる。2005 年10 月1日から実施されているこの制度は、総合機構の相談過程の構造を再編成し、総合機構の相談に係る資源を最適化することを特徴としている。総合機構はこの制度を実施に伴い、引き続き業界と協議する。

d.旧薬事法における後発医療機器について、厚生労働省は、総合機構が旧薬事法の下で行われていたのと同等に、すなわち4か月以内に審査を終えることを確保する。これは、改正薬事法が完全に施行される2008年3月31日までの経過措置として継続するものである。

e.1986 年の日米市場指向・分野選択型協議(MOSS 協議)の日米共同報告において明記されたとおり、体外診断薬の標準的事務処理期間は6か月のままである。

f.厚生労働省は、総合機構が医療機器審査の中期目標を達成することを確保するとともに、総合機構が結果的にそれらの目標を上回ることを奨励する。

g.総合機構は、2005 年6月22 日に、業績に関する情報を含む最初の年次報告を公表した。

3.達成指標

a.適切な方法で行う達成評価の重要性が認識されている。日米両政府は、達成指標の有用性に関して総合機構と業界で行われる建設的な議論を歓迎し、それらの議論が成功裡に結論に至ることを期待する。

b.米国政府は、総合機構の達成度及び業界の業務計画プロセスを促進するためのいくつかの指標を用いることの重要性を指摘した。医薬品に関するこれらの指標には、@相談希望の要望から面談まで、申請から面接審査会まで、そして面接審査会からヒアリングまでの期間、A標準的な新薬、優先品目及び希少疾病用医薬品それぞれについての年間の承認済・提出済・審査中の品目数、B主要な一部変更承認申請(一変申請)の承認期間、承認済・提出済・審査中の一変申請の品目数、及びC最終の審査報告書後に実施されたGMP(医療機器及び医薬品の品質管理)査察の数、が含まれる。医療機器については、これらの指標には、申請数(総数及び承認されたもの)、申請資料の審査当たりの議論数、各段階における評価に要した時間及び審査官が要した時間が含まれる。

4.透明性

a.業界との会合:厚生労働省及び総合機構は、2005 年度も引き続き、医療機器及び医薬品の規制について、米国業界を含む業界に対し、意見交換のための意味のある機会を提供する。厚生労働省は、総合機構が企業に対して、審査関連業務に関与する意味のある機会を提供し透明性を確保するようにする。

b.申請の状況:総合機構は、2004 年9月に、審査の見通し、進捗状況、他の審査関連の事項についての情報伝達を説明する仕組みを構築した。審査過程の透明性を改善する重要な過程として、総合機構は、2004 年9月に、新薬、新医療機器又は改良医療機器の申請企業が総合機構と、自らの製品の承認の見込みと審査過程におけるいくつかの中間的な段階のタイミングを含む製品の審査進捗状況について議論する会合の開催を要請することができる旨を伝える通知を発出した。

c.メモ:医療機器の治験相談について、総合機構と申請者は、公式な会議メモを作成する。

総合機構は治験相談に係るメモが申請者に提供され、総合機構及び申請者が相互に確認したものとなることを確保する。医療機器の簡易相談においては、総合機構は、申請者の要請に応じて、申請者によって作成された会議メモを見直す。厚生労働省は、総合機構が会議の目的を満たすために時間的制限を柔軟に取り扱うことを確保する。

d.外部専門家:日本に安全かつ有効な医療機器及び医薬品を供給するべく、厚生労働省と総合機構は、これらの分野における専門家からの助言を求める。総合機構はこれらの専門家のリストをウェブサイトで公開する。厚生労働省と総合機構は、関連の医療機器及び医薬品について適切な知識を有する外部専門家を活用する。厚生労働省は、利害対立のある専門家を外部専門家として選ぶことを避ける。

5.監査/査察:

総合機構は、2005 年4月1日、外国製造施設に対する新たな要求事項を規定した改正薬事法の施行に伴い、外国製造施設の調査を開始した。厚生労働省は、一般的には、適切な申請に基づく承認前の医薬品・医療機器製造管理・品質管理規制(GMP/QMS)を製品審査と並行して実施し、全審査期間内に終了させることを認識する。厚生労働省及び総合機構は、実質的な欠陥が発見されない限りにおいて、海外の承認前GMP/QMS 調査が、新規製品の承認の審査のプロセスを理由なく遅延させないことを認識する。厚生労働省及び総合機構は、書面査察の実際的な適用について、引き続き業界と議論する。外国製造施設のGMP/QMS 監査を促進するための米国食品医薬品庁(FDA)と総合機構との協力について、厚生労働省は引き続き米国政府と議論する。総合機構は、FDA が日本企業を含む国内外の業界との間で行っているのと同様に、業界と、GMP/QMS 監査に関する意見交換を追求する。2005 年4月1日、総合機構は、高リスク(クラスV又はW)の医療機器に対する品質システム監査を開始し、同日時点で登録された日本における11 の第三者認証機関は国内外の製造所におけるクラスUの医療機器の監査を開始した。認証基準のないクラスUの医療機器は総合機構又は地方自治体の監査を受ける。

6.医療機器のガイダンス:

厚生労働省は、医療機器に係る基準、規格、審査手続等の新たなガイダンスを作成する時は、パブリック・コメント募集の機会を引き続き確保する。厚生労働省は、2004 年度に、医療機器の審査に係る公表されたガイダンスの使用機会の増加について検討した。厚生労働省は、2005 年度に、医療機器の市販前及び審査段階に係るガイダンスを更に公表する。

7.職員及び専門性:

厚生労働省は、総合機構が、審査と安全性確保を促進するために適切な人材を雇用することも含め、資源と専門性を増大させることを確保する。2005 年4月1日時点で、総合機構は291 人の職員を有する。厚生労働省は、総合機構が2009 年3月31 日までに346 人の職員を確保する目標を達成するよう確保する。総合機構は、1つのチームが同じ品目について治験相談と審査を行うようにする。厚生労働省は、総合機構が審査員に対して継続的な研修の機会を与えるとともに、審査員の人事異動が専門領域の知見を高めることを確保する。2004 年度、総合機構は審査員に対して幾つかの研修機会を適切に提供した。厚生労働省は、研修等の機会を継続することにより、総合機構の審査員が自らの専門知識を高めることを確保する。

8.医療機器審査の効率化:

総合機構は、医療機器審査を効率化するための措置を講じてきた。

厚生労働省は、2005 年に、安全性や有効性に変化が生じないならば、製造工程や製品設計の一部変更は、承認申請よりも届出が適切であることを確認した。2005 年4月1日、サマリー・テクニカル・ドキュメント(STED)が日本の規制体系の一部分となった。厚生労働省及び総合機構は、承認基準がある医療機器の申請資料を削減する。

9.優先審査と優先的な治験相談:

2004 年2月27 日、厚生労働省は、優先審査と優先的な治験相談についての過程を記した0227016 号通知を発出した。総合機構は、優先審査と通常の審査を促進するよう努力している。

10.配合剤:

2005 年3月25 日、「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」が閣議決定された。この中で、2005 年度に配合剤の承認要件を緩和することを求めている。3月30 日、厚生労働省は、医薬品承認申請における配合剤の承認要件を明確化する通知を発出した。当該通知において、(i)患者の利便性の向上に明らかに資するもの、(ii)その他配合意義に科学的合理性が認められるもの、という事由を追加している。

11.不服申し立て:

2005 年3月、総合機構は、審査等業務及び安全対策業務に係る業界からの不服等の対応について明確化を図る通知を発出した。この通知には、可能な限り15 勤務日以内に不服等の申立て者に回答を行うよう担当部長に求めることを含む、審査及び安全対策業務に係る申立てに対して総合機構がとる予定の措置が特定されている。申請者は、総合機構及び外部の科学的専門家が出席する会議において、総合機構の決定に対して科学に基づいた申立てを行うことができる。総合機構は、この不服申し立て制度の構築に際し、業界の意見を反映した。

12.安全対策業務:

厚生労働省は、総合機構が有害事象報告の検討を行う際、特に当該事象が措置を要する場合は、関連企業と意見交換を行うよう更に努力することを確保する。

a.医療機器について、厚生労働省は、市販後の安全対策に関する要求及び方法を、適切な形で医療機器規制国際整合化会議(GHTF)ガイダンス文書と調和させる。2005 年4月1日の時点で、厚生労働省は重篤でない事象に関しては定期的報告を認めている。

b.医薬品について、総合機構は、現在、安全性データベース及びデータ・マイニング分析手法を構築しており、データ・マイニング分析手法の導入整備の進捗状況を適切な時期に公表する。厚生労働省は、総合機構が透明な形でこのデータ・マイニング分析手法を構築し、進捗に応じて、米国業界を含む業界に対して意見表明の機会を提供することを確保する。

13.医療機器の規格:

厚生労働省は、2005 年度に、GHTF、国際標準化機関(ISO)や国際電気標準会議(IEC)等の機関によって作成された医療機器の国際規格及びガイダンス文書について、可能な限り実質的な修正をすることなく導入する。修正が必要であると判断された場合、厚生労働省は常にパブリック・コメント手続を行う。厚生労働省は、医療機器の新しい基準を作成する際、パブリック・コメント手続を含む様々な方法で、米国業界を含む一般に対して意見を表明する機会が継続して確保されるようにする。厚生労働省は、2005 年4月1日、765 種類のクラスU医療機器に対する363 の認証基準を作成した。厚生労働省は、クラスU医療機器に対する認証基準作成を継続する。

14.医療機器に対するGCP:

厚生労働省は、2005 年度に、申請者が提出するデータにつき、日本の承認申請資料の治験の実施に関する基準(GCP 基準)に実質的に同等であると認められたGCP に適合していることを明らかにする場合、日本国外で実施された医療機器に係る臨床試験データを受け入れる。

15.製造販売承認制度:

2005 年4月1日、薬事法が改正され市販後安全対策の一部が変更されたことを受け、厚生労働省は、国内管理人制度を製造販売承認制度に変更した。厚生労働省は、新制度への移行が、外国企業が日本市場にとどまり製品を供給する能力に与える影響を認識し、経過措置期間の設定を含む措置をすでに講じた。厚生労働省は、新制度への移行について、引き続き米国業界を含む業界と意見交換を行う。

C.血液製剤

1.産業界の意見:厚生労働省は、医師と患者が血液製剤を用いるものを含む様々な治療法のリスク及びベネフィットについて正確な情報をえられることを確保するため、業界を含む様々な関係者とともに積極的に協働する。2004 年度から2005 年度にかけて、厚生労働省は、すべての関係団体とともに協働し、患者の治療、需要の減少その他関連事項を含む血液製剤の安定供給確保に関連する事項を議論する会合を開催した。具体的には、厚生労働省は、2005年3月に、血液製剤の需給調査会に関係業界の代表を招致した。厚生労働省は、2005 年度も引き続き、これらの事項に関心を持つ関係団体と協働する。厚生労働省は、米国業界を含む関係団体に対して、これらの事項に関し、意見を表明する機会を提供する。

2.透明性:厚生労働省は引き続き、需給計画の実施が外国製品を差別せず、透明性があり、日本の国際貿易上の義務と十分に整合的であることを確保する。

D.栄養補助食品の自由化

1.啓発及び情報提供目的の説明:2005 年度、厚生労働省は、特定保健用食品に係る啓発と情報提供のための表示及び宣伝広告の制度について、その範囲を拡大した。FAO/WHO 合同食品規格計画(コーデックス委員会)の動向に基づき、厚生労働省は、(現在、一般食品とされているものを含め)保健機能食品制度の改正を検討していく。

2.輸入関税:日本政府は、医薬品と同じ成分を含んでいる栄養補助食品を含め、関税水準についてはWTO 交渉において包括的に議論を行うこととする。

3.コーデックス:厚生労働省は、同省の規制について、コーデックス委員会で策定された国際的なガイドライン及び規格と調和させていく所存である。日本は、コーデックス委員会において、このようなガイドラインや規格を策定するに当たって、一層積極的な役割を担っていく。

4.ポーテンシーリミット:厚生労働省は、国際基準に基づき、栄養機能食品中の栄養素の上限値と下限値の改正を決定する。

X.金融サービス

A.規制改革の更なる促進

1.日本は、金融サービス市場の開放と自由化における進展を継続している。この過程は、1995年の「日本国政府及びアメリカ合衆国政府による金融サービスに関する措置」とともに開始され、1996 年に立ち上げられた、金融分野の抜本的な規制緩和を行うものである、「ビッグ28バン」の金融自由化イニシアティブの下で加速された。2年間の「金融再生プログラム」の下で、金融庁は、金融システムの安定性の確保に焦点を当て、2005 年3月末までに、主要行の不良債権比率を約半減させるという目標を達成した。

2.2004 年12 月、金融庁は新たな2年間の「金融改革プログラム」を公表した。このプログラムでは、より幅広い範囲のサービスを迅速に提供するための金融機関の能力を向上させる一方で、利用者の保護と利便性を向上させることにより、焦点を金融システムの安定確保から金融システムの活力促進へ移行させることを明確にしている。新たなプログラムの下、金融庁は、積極的かつ広範囲にわたる工程表を発表した。その目的は、日本の将来を、高度に進んだ「金融サービス立国」として確立するため、金融改革の道筋を示すことである。

3.プログラムの工程表は、広範囲にわたる重要分野における改革を記載している。その中には、販売、価格、広告、市場行為、利用者保護、企業統治、開示、リスク管理が含まれる。

これらの改革は、多くの法律、規則、ガイドラインに対する広範囲な変更をもたらす可能性もある。グローバルな金融システム、日本で活動している米国の金融サービス提供者、米国で活動している日本の金融サービス提供者に対して、これらの改革が与え得る大きな影響を踏まえ、日米両政府は、プログラムの実施や、必要に応じ、金融サービス市場に関する他の問題について、「成長のための日米経済パートナーシップ」の「日米財務金融対話」の下で行われる二国間の金融サービスに関する議論やその他の機会において、議論を行う。

4.プログラムを開始する上で、持続的な経済成長の促進、また、少子高齢化や引き続き進展している経済のグローバル化への対応にとって不可欠である全体としての構造改革の一環として、金融改革のための具体的なプログラムを創出する必要性を日本は認識している。

5.米国政府は、プログラムの下で採用された原則を、一般的に支持する。両政府は、利用者の満足が中心的な価値を占め、かつ「官」ではなく「民」が主導する、開かれた、健全で、活力があり、国際的に尊敬される、金融システムを育成するという目標を共有している。これらの目標を達成する上で重要なのは、日本と外国の金融機関の間の平等の取扱いという原則を堅持する立場と整合した形で、金融行政の透明性と予見可能性を向上させるための枠組みを形成するための努力を継続することである。

6.日米両政府は、「成長のための日米経済パートナーシップ」の「日米財務金融対話」の下で行われる二国間の金融サービスに関する議論のような協議の場における協力の価値は、日米の金融監督当局間のパートナーシップの更なる強化にとって不可欠なものであると認識している。

B.個別措置

1.信託銀行免許:日本国政府は、将来の信託法改正の計画という文脈において、信託業法や兼営法等の法律の改正を研究している。その研究の過程において、日本国政府は、外銀支店29の公平な取扱いを論点の一つとして検討する。

2.確定拠出年金:日本国政府は、2004 年10 月に、企業年金がない従業員に対する確定拠出年金の拠出限度額の引上げを行った。また日本国政府は、2005 年10 月に、資産が少額である場合、引き出し手数料により資産の減少又は滅失するおそれが生じるため、中途引出しの要件を緩和した。厚生労働省は、確定拠出年金のさらなる普及を図るため、投資教育を継続的、計画的な形で促進するとともに、拠出限度額等のさらなる引上げ等の改正により確定拠出年金制度をより魅力的な代替年金プランとするための方策を検討している。

C.透明性:

ノーアクションレター:金融行政の透明性向上に向けた努力の中で、金融庁は、ノーアクションレター制度の更なる活用促進において、引き続き前進し続けている。さらに、金融庁は、金融改革プログラムの重要な要素として、ノーアクションレター制度を更に向上させるための措置、並びに日本の金融関連法令及び規則の書面上の解釈を記載する媒体を拡大する他の手段を発展させるための措置を検討している。これまでにとられた措置及び進展中の措置は以下のとおりである。

1.金融庁によるノーアクションレターの活用件数は増加している。金融庁は、2004 年4月以降、11 件のノーアクションレターを発行した。これは、その前の12 か月間の6件、及び2001年7月にノーアクションレター制度が導入されてから最初の21か月間の4件から増加している。

2. 金融改革プログラムの下、金融庁は、これまで、ノーアクションレター制度の更なる活用を奨励し、また制度自体を向上させるため、以下のような措置をとってきており、また今後とっていく予定である。特に、金融庁は、a.2005 年2月、ノーアクションレター制度の細則の英語版(仮訳)である、「ノーアクションレター制度の詳細」を公表して、ノーアクションレター制度の認知度を向上させた。

b.2005 年6月に、監督下の会社を含む一般の人々を対象に、ノーアクションレター制度並びに金融庁によるノーアクションレター制度及び関連法令の適用のあり方を改善するための提案について、詳細な調査用質問表を配布した。

c.2005 年10 月、上記の調査結果を反映させた細則の改正によりノーアクションレター制度を改善した。今後は、各方面を通じて改正内容を周知していく予定である。

3.金融庁は、ノーアクションレター制度に加え、日本の金融関連法令、規則の書面上の解釈を記載する媒体を増加させるための措置についても検討を開始した。その中には、以下の措置が含まれる。

a.今年の秋までに、金融庁による法令解釈の事例を記載した「参照事例集」の作成について議論すること

b.「法令解釈等に係る一般的な照会を受けた場合の対応」に係る事務ガイドラインを見直すこと

Y.競争政策

A.独占禁止法の執行力の強化

1.独占禁止法改正:

2004 年10 月15 日、日本国政府は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)を改正するための法案を提出し、同法案は、2005 年4月20 日、国会で成立した。28 年ぶりの大改正となるこの法律改正は、市場メカニズムと自己責任の原則に基づき、21 世紀の経済社会にふさわしい競争政策を確立するという日本の決断を表しているものである。

公正取引委員会は2002 年以降、独占禁止法を見直すための独占禁止法研究会を開催し、同研究会は2003 年10 月、報告書を取りまとめた。公正取引委員会は、経済団体、法曹団体、消費者団体などのさまざまな利害関係者の見解も考慮しながら、独占禁止法研究会の報告書に基づき独占禁止法改正法案を作成した。

改正法は、2006 年1月4日に施行され、公正取引委員会の独占禁止法執行力、また、ハードコア・カルテルや入札談合などの反競争的行為を排除・抑止する力を大幅に強化すると期待されている。この法案の最も重要な点は以下のとおりである。

a.課徴金算定率を以下のとおり引き上げる

(1)大企業の製造業者及びサービス提供事業者については6%から10%。(中小企業については3%から4%へ);

大規模小売業者については2%から3%へ(中小企業については1%から1.2%へ)。

大規模卸売業者については1%から2%へ(中小企業については1%から変更なし。)。

(2)過去10 年以内に確定した課徴金納付命令を受けたことのある再違反事業者に対しては、通常の課徴金に5割加算した課徴金算定率を課す。

(3)(a)供給量、市場占有率又は取引先を実質的に制限する不当な取引制限(カルテル)、(b)違法な購入カルテル、(c)課徴金の対象となるカルテルと同様の方法で行われる特定の私的独占等、課徴金の対象となる行為の範囲を拡大・明確化する。

(4)課徴金納付命令は公正取引委員会の決定により、直ちに効力を有し、事業者が審判を請求することを選択しても失効しない。事業者が期日までに課徴金を支払わず、審判において課徴金納付命令が維持された場合、事業者は政令で定める利息(を加算した額)を支払わなければならない。事業者が課徴金を支払った後、課徴金納付命令が審決によって取り消された場合、公正取引委員会は事業者に政令で定める利息を加算して課徴金を還付する。

b.以下のような課徴金減免制度(リーニエンシー制度)を導入する

(1)公正取引委員会の調査開始前にカルテルや入札談合の存在を公正取引委員会に情報提供した最初の事業者(その他の法律上の条件に合致する場合)の課徴金を全額免除する。さらに、公正取引委員会は、最初に情報提供した事業者及び当該事業者と同様に評価されるその従業員等を刑事告発しない方針を明らかにすることで、リーニエンシー制度の有効性を強化する。この方針は、2005 年10 月6日に公表された「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」において明らかにされた。

(2)課徴金減免の対象事業者が合計して3社を超えなければ、公正取引委員会の調査開始前に2番目及び3番目にリーニエンシーを申請した事業者は、課徴金がそれぞれ5割又は3割減額され、また、公正取引委員会の調査開始後にリーニエンシーを申請した事業者は課徴金が3割減額される。

c.とりわけ、ハードコアカルテルや入札談合を発見しこれらに対する措置を講ずるため、以下の措置によって公正取引委員会の調査の有効性を強化する。

(1)刑事告発を目指す場合、強制捜査令状を入手する権限を公正取引委員会が指定した職員に付与する。

(2)公正取引委員会の調査を妨害する企業及びその従業員に対する罰則を以前の20 万円以下の罰金又は6か月以下の懲役から、300 万円以下の罰金又は1年以下の懲役に引き上げる。

(3)公正取引委員会の排除措置命令に従わない事業者に対する罰則を以前の300 万円以下の罰金から3億円以下の罰金に引き上げる。

(4)公正取引委員会による排除措置命令が出せる期間を違反行為が終了後1 年から3年に延長する。

d.公正取引委員会の手続の公正性を向上させるという目的をもって以下の措置をとる:

(1)排除措置命令又は課徴金納付命令を受けることが見込まれる事業者は、公正取引委員会によるそのような命令が出される前に、証拠の提出及び意見の申述等の反論の機会が与えられる。被審人が応諾した場合又は審判が開催された後においてのみ審決が出される現在の勧告制度は廃止される。)

(2)公正取引委員会は、規則及び手続を定めるに当たって、事業者が主張に反論し、自己の主張を陳述する十分な機会が確保されること等適正手続を確保することの必要性を考慮する。

e.改正独占禁止法の効果的な施行を確保するため、以下の措置をとる

(1)公正取引委員会は、施行規則を策定し、パブリック・コメントの募集を行い,2005年10 月6日、規則の確定を行った。

(2)公正取引委員会は、一般国民と経済界のためにセミナーを開催する等、改正法の一般の認識を高めるための広報活動を増やしていく予定である。

2.独占禁止法の刑事執行

a.2005 年5月及び6月、公正取引委員会は、合計26 社及び8人の個人について国土交通省が発注する鋼橋上部工事の入札談合を行っていたとして、2003 年7 月以来の刑事告発を行った。また2005 年6月及び8月、公正取引委員会は合計6社及び4人の個人について日本道路公団発注の鋼橋上部工事の入札談合を行っていたとして、刑事告発を行った。

b.公正取引委員会は、特にハードコアカルテルや入札談合といった悪質、重大な違反行為に対して、新たに導入された犯則調査権限を積極的に利用する。

3.独占禁止法の適用除外:

独占禁止法適用除外が可能な限り限定されることを目指し、公正取引委員会は、著作物の再販売価格維持行為の適用除外等、現存する独占禁止法適用除外について、更に縮小又は廃止することができないか引き続き検討する。これに関連して、公正取引委員会の職員、産業界、学界及び消費者の代表から構成される著作物再販協議会が定期的に開催されており、著作物再販価格維持の適用除外が消費者利益に資するように弾力的に運用されているか検討している。直近の協議会は2005 年6月に開催された。

4.公正取引委員会の資源

a.2005 年度において、公正取引委員会の予算は前年度比4%増の81 億3100 万円が認められた。職員数は純増で34 名の増員が認められ、2006 年3月31 日時点で合計706 名となった。

b.反競争的と疑われる行為の経済的及び法的影響についての分析を強化するために、公正取引委員会は採用努力や既存の職員の育成を通じて、職員の分析能力の向上に努めている。

2005 年10 月の時点で、8名の公正取引委員会職員が経済学に関する大学院の学位を有しており、そのうち1名は助教授であった。また、10 名の法曹資格者を受け入れており、そのうち1名は前職が裁判官であり、現在審判官の職に就いている。公正取引委員会は経済学の大学院での教育を受けた職員と共に高度な法律の教育を受けた職員を増やす予定である。現在5名の職員が大学院で経済学又は法律学の教育を受けている。

5.独占禁止法の遵守

a.独占禁止法が改正され、リーニエンシー制度の導入等を通じて公正取引委員会の執行能力が強化されることから、事業者にとって独占禁止法遵守体制の整備がますます重要になっている。公正取引委員会は広報活動等の強化を通じ、事業者が独占禁止法遵守体制を採用又は強化することを奨励する。

b.公正取引委員会は事業者による独占禁止法遵守を支援するため、必要に応じ、独占禁止法に違反する行為を明らかにするためのガイドラインを策定する。例えば、公正取引委員会は2005年6月29日、「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方」を作成・公表した。現在、公正取引委員会は、説明会を開催して同「考え方」の周知に努めている。

B.公正取引委員会の執行活動における手続公正性の向上

1.審判手続:公正取引委員会の審判手続における手続公正性を高めるため、2005 年度予算で新たに法曹資格者2名を公正取引委員会の審判官として増員することが認められ、その結果、公正取引委員会の審判官7名のうち3名が法曹資格者又は裁判官出身者となる予定である。

2.警告:公正取引委員会は、独占禁止法違反の疑いで警告を受けることが見込まれる関係事業者に対し、警告を行う前に、反論のための証拠を提出し、意見の申述をする等の機会を付与する仕組みを2006 年1月初旬に導入する。

3.注意:公正取引委員会は、注意を行った旨を競争政策上公表することが望ましいと考えられる場合にのみ、注意を受けた事業者の了解を得て、公表する。

4.公正取引委員会の手続の見直し:内閣府基本問題懇談会は、審判手続及び執行体制に係るその他の面における公正性を確保するとの観点からの独占禁止法の見直しについて検討している。この検討は、2007 年6月頃を目途に終える予定である。

C.効果的な談合対策

1.官製談合を含む談合の防止

a.国土交通省発注の鋼橋上部工事の入札談合に関し2005 年5月23 日付で公正取引委員会が行った8社に対する刑事告発及び引き続き行われた追加3社の職員の逮捕を受け、国土交通省は、入札談合が行われたとされる3つの地方整備局のすべての建設工事については8か月の、他の地方整備局の入札については5か月の入札停止措置を合計11 社に対して行った。当時、8か月という停止期間は、独占禁止法違反に対して国土交通省がこれまでに採った入札停止措置の中で最も長期のものであった。その後の一連の鋼橋梁事件に係る逮捕・起訴を受け、国土交通省は違反企業への停止期間を延長した。結果として、2005 年9月現在、追加的に停止措置を受けた企業を含め26 社が停止措置を受けている。

b.政府発注の建設工事に関する入札談合防止措置の強化のため、国土交通省は、国土交通事務次官を議長とする12 名の委員からなる委員会を設置した。委員会は、なぜ現在の措置が2005 年5月に刑事告発の対象となった鋼橋梁に係る入札談合のように大規模な入札談合の発生を阻止することができなかったのかを検証する。また、国土交通省は、外部専門家の意見を取り入れ委員会の検討に資するため、学者と弁護士の5名のメンバーからなるアドバイザリー・グループを設置した。委員会は、国土交通省直轄の鋼橋梁工事の発注に係る入札手続及び契約締結の実態調査結果をとりまとめた。調査結果をもとに、委員会は入札談合の再発防止策を作成し、7月29 日に発表した。国土交通省の防止策は、一般競争方式及び総合評価方式の拡大並びに最長24 か月の入札停止期間の明確化及び工事に係る違約金の契約額の10 パーセントから15 パーセントへの引き上げによる重大な談合行為に対するペナルティの強化を含んでいる。

c.公正取引委員会は発注官庁の職員が入札談合に関与していたと思料する場合、

(1)発注官庁の長に対し、入札談合への関与に関係する事実を通知する。十分な証拠を得た場合にあっては、入札談合に関与していた職員の氏名を含めて通知する。

(2)入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の下で、将来にわたり発注官庁の職員による入札談合への関与を排除するために必要な入札及び契約に関する事務に係る改善措置を講ずることを発注官庁の長に求めることができる。この点に関し、公正取引委員会は、(日本道路公団発注の鋼橋上部工事における入札談合事件において、)日本道路公団の入札談合等関与行為が認められたため、2005 年9月、日本道路公団総裁に対して、入札談合の再発を防ぐための改善措置要求を行った。

d.公正取引委員会のリーニエンシー制度を創設する独占禁止法の改正を踏まえ、国土交通省は、2005 年度内に行政措置減免制度を採用するかどうかの検証を開始する。これは、談合に参加したことを公正取引委員会に通報した企業に対して特定の行政制裁を免除するものである。

e.2005 年3 月25 日に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」の一部として、日本政府は、コストの削減及びより質の高いサービスの調達を目的として、より競争的な入札制度を段階的に導入することにより、政府調達制度を改善することを決定した。

2.地方レベルでの談合

a. 日本国政府は、地方公共団体における談合に厳正に対処することの重要性を認識している。入札契約適正化法は、中央政府及び地方政府における談合を防ぐための多数の措置を設けており、その中には、地方公共団体が実施する公共工事の発注において談合等の不正行為があると疑うに足りる事実があるときは、地方公共団体は公正取引委員会にその事実を通知する義務が含まれる。

b.総務省は、地方公共団体における談合を排除するために適切な取組を行ってきており、今後もこの取組を推進していく予定である。

(1)この点に関し、2004 年12 月28 日、総務省は国土交通省とともにすべての地方公共団体に対して、談合防止に関する教育を職員に行うことや、談合の疑いについての公正取引委員会への情報提供が円滑に行われるよう、談合に関する情報を収集し公表するメカニズムを確立するという内容を含め、談合を根絶するための措置を徹底的に実施するよう通知したところである。

(2)総務省及び国土交通省は、入札契約適正化法の規定に基づく地方政府の措置状況について調査し、調査結果をウェブサイトで公表してきており、今後もこれらの取組を継続する予定である。さらに、必要に応じ、引き続き談合の根絶に関する通知を発出していく予定である。

(3)また、総務省は、地方公共団体に対し、地方公共団体が従来の入札プロセスを見直し、インターネット入札の活用等地方レベルの談合の防止のため、より有効な新たな入札制度を導入することを促す努力を行っている。

3.談合に対する行政制裁の透明性

a.国土交通省は、談合活動のため指名停止を受けた企業を含む指名停止を受けたすべての企業・その停止期間・範囲及び理由を含め、ウェブサイトで公表する。また、国土交通省は、談合への関与が判明した各企業が、談合により生じた損害を国土交通省に賠償するため支払う金額を公表する。

b.総務省は地方公共団体に対し、談合への関与により指名停止されているものを含め、指名停止を受けた企業名、指名停止の期間及び理由その他関連事項について公表するよう奨励してきており、今後ともこの取組を続ける予定である。

D.経済全体における競争の促進

1.競争促進的な方法での民営化

a.個別の政府関係機関の民営化を担当する省庁は、民営化が関連市場における競争を阻害するのではなく促進するものとなることを確保すべく、関係各省庁と協力及び調整する。

b.郵政民営化に関して、日本国政府は、郵政民営化の準備及び実施が日本における競争過程をゆがめないことを確保する。民営化後の各会社は独占禁止法の適用対象であり、民営化の過程においても同様である。

c.公正取引委員会は、郵政民営化も含め、競争政策の観点から民営化の試みに関して適切に対処する。公正取引委員会は、民営化の過程にある政府所有機関を含む事業者の事業活動を監視し、独占禁止法違反行為に対して厳正に対処する。

2.規制改革における競争促進

a.公正取引委員会は、事業者間の競争を促進させる観点から、引き続き規制の対象となる産業における競争環境の創造に努める。この目的のため、公正取引委員会は、事業活動に反競争的効果を及ぼす規制制度を改善するため、取引の実態に基づき、場合によっては独占禁止法違反の認定に基づき、政策提言を行う。

b.公正取引委員会は、規制改革が進められている公益事業等の分野において競争促進的で独占禁止法に整合的な行為を促進するために、必要に応じてガイドライン等を策定又は改定する。例えば、公正取引委員会は、過去1年余りの間に以下のガイドライン等の策定又は改定を行った。

(1)「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」(2004 年6月改定)

(2)「適正なガス取引についての指針」(2004 年8月改定)

(3)「携帯電話の番号ポータビリティに関する独占禁止法上の考え方」(2004 年11 月公表)

(4)「適正な電力取引についての指針」(2005 年5月改定)

Z.透明性及び政府慣行

A.パブリック・コメント手続

1.日本国政府は、行政上の命令の制定過程の透明性を高め、公正性を確保するため、パブリック・コメント手続の改善に引き続き取り組んでいる。2005 年3月11 日に、日本国政府は、パブリック・コメント手続の法制化を含む行政手続法改正法案を国会に提出した。同法案は、6月22 日に国会で可決された。この目的に沿って、この改正法には、次のようなパブリック・コメント手続を強化するための数多くの改善策が含まれている。

a.各省庁は、命令・規則案や関連する資料を、インターネットや必要に応じ他の手段を用いて公示・公表する。

b.原則として、最低30 日間の意見提出期間を確保する。例外的に意見提出期間が30 日未満の場合は、命令・規則案の公示時に、各省庁は、意見提出期間を短縮するとの決定に至った理由を明らかにする。

c.各省庁は、全ての提出された意見を十分に考慮する。

d.各省庁は、提出された意見の全文又は要約に加えて、意見がどのように取り入れられたか又は取り入れられなかったかということと、その決定の理由を公示する。インターネットを用いる方法においては意見の要約のみを公示した場合は、各省庁は、求めに応じて、意見の全文を公にする。

2.総務省は、引き続き、各省庁におけるパブリック・コメント手続の実施状況の包括的な年次調査を行い、公表する。これに関連し、関係する各行政機関と密接な連携を維持する。

3.日本国政府は、その実施状況を含む日本のパブリック・コメント制度の今後の進展について米国政府が有している継続的な関心を引き続き認識している。

B.構造改革特別区域(特区):

小泉内閣総理大臣及びその内閣は、引き続き、構造改革特別区域(特区)を日本の経済再活性化計画における優先度の高い事項としている。2003 年4月に57の特区を認定した第1弾認定以来、特区の合計数は548 に達した。日本国政府は、成功した特区が日本経済のより広い範囲に対して最大の経済的効果をもたらすよう、必要な措置をとっている。この目的に向け、日本国政府は以下の措置を行っている。

1.特区の提案及び規制の特例措置の適用に係るすべての過程を透明性を保った形で運営している。

2.特区への市場参入機会拡大のために作業を行っている。

3.内外の企業が同様に特区内での操業について無差別のアクセスを有するよう確保している。

4.特区において成功した規制の特例措置を可能な限り迅速に全国規模で適用している。

5.米国企業及び他の外国企業が、特区で適用される規制の特例措置に係る提案を提出し、及び地方自治体に対して特区設置のための提案を行うための機会を確保している。

6.外国関係者から特区についての問い合わせがあった場合は、可能な対応をしている。

7.特区評価委員会が、どの規制の特例措置が全国規模で適用されるべきかを決定する際に、以下の措置をしている:

a.規制の特例措置の全国展開を決定するための開かれた会合と一般に利用可能な情報を通して、意思決定の透明性を確保すること。及び、

b.評価に係る意思決定が行われた後にその意思決定とそのもとになる情報を公開し、すべての利害関係者が評価の過程を十分理解できるようにすること。

C.APEC 透明性基準:

APEC 各首脳は、貿易及び投資分野における一括した透明性基準に合意した。日本及び米国はこれら基準の形成のために緊密に協力してきた。したがって、日本及び米国は、APEC メンバー・エコノミーの国内法制度におけるAPEC 透明性基準の完全な実施を達成するために引き続き共同で作業する。

D.法案策定への市民によるインプット:

幾つかの府省は、その判断で、策定中の法案に対し、法案が国会へ提出される前に、一般市民によるインプットの機会を設けてきた。

E.保険契約者保護機構:

生保・損保保険契約者保護機構(PPC)の改正を含む保険業法改正案は、4月22 日に国会を通過した。改正後の制度では、高予定利率の保険契約の補償割合が見直され、保険業界と政府の拠出割合も再構成される予定である。金融庁は、新制度の施行に必要な政省令等の案を10 月12 日に公表しパブリック・コメントの募集を行った。金融庁は、利害関係者に対し、要請に応じ、生保・損保PPC に関連する法律や規制に関し情報提供を受け、コメントし(仮に政省令等の案があれば、それらに関するパブリック・コメントの募集を含む)、関連の日本国政府職員や関係者と意見交換を行う適切な機会を提供する。

F.郵便金融機関:

2005 年10 月14 日、国会は、郵政民営化関連法案を成立させた。郵政民営化に関する措置については、この報告書の「民営化:日本郵政公社の民営化」の項で言及されている。現行の郵便金融機関に関する措置は以下のとおりである。

1.総務省は、引き続き、民間生命保険会社及び他の民間金融会社に対し、要請に基づき、簡保及び郵貯の検査及び課税の要件について担当職員と意見交換を行う機会を与える。

2.総務省は、簡保商品及び日本郵政公社による元本無保証型商品の窓口販売又は元売りに関連する法律改正を国会に求める提案の作成に関し、広く一般に情報を提供することの重要性を認識するとともに、民間利害関係者に対し、要請に基づき、担当職員と意見交換を行う有意義な機会を与える。日本郵政公社法に規定がないことから、日本郵政公社は、元本無保証型商品の元売り又は現在提供していない新しい貸付業務の導入を行うことはできない。

3.日本国政府は、2004 年1月の新しい簡保商品の販売に関するデータを米国政府に定期的に提供しつづけてきた。この情報の提供は、要請によって今後も継続されると共に、両政府は本件に関し引き続き連絡をとっていく。

4.日本国政府は、郵便金融機関と競合する民間事業者との間で、同様の規制、法律、税の義務が課されることとなることにより平等な競争条件が確立されるべきであるという米国政府の強い関心を承知している。さらに、日本国政府は、米国政府より、同一の競争条件が整備されるまでは、新たな若しくは変更された簡保商品、企業・個人向けの貸付け等の銀行関連サービス又は新たな元本無保証型商品の元売りは導入されるべきではないとの要望があったことを承知している。日本国政府は、日本郵政公社が、新たな又は変更された簡保商品又は特約を導入する計画を現在有していないことを確認する。

G.保険商品の窓口販売

1.2004 年3月の金融審議会保険作業部会の報告では、原則として、保険商品の銀行窓販の解禁を段階的な方法で行い、一定の期間内には全面解禁するよう提言されている。報告書に基づき、金融庁は、パブリック・コメントの募集を行った上で、2005 年7月8日、規則改正を行った。新規則では、2 年間のモニタリング期間の後の全面解禁を念頭において、2005 年12月までに先行解禁が開始されることが想定されている。金融審議会の報告書と整合的に、新規則には、消費者保護のためのルールが含まれている。

2.金融庁は、要請に応じて、モニタリング期間中に、消費者保護のためのルールの有効性について、保険窓口販売の解禁の実施と同様に、利害関係者に対し、情報提供を受け、コメントし、関連の日本国政府職員や関係者と意見交換を行う有意義な機会を提供する。

H.共済

1.4月22 日に国会を通過した保険業法改正案には、「無認可共済」に関するいくつかの措置が含まれている。法改正後は、現在の無認可共済は、原則として金融庁の監督下におかれることとなる。更に、少額短期の保険商品のみを提供する業者には新たに登録制が適用されることとなる。

2.金融庁は、新制度の施行に必要な規制を制定する過程においては、パブリック・コメントの募集を行う。金融庁は利害関係者に対し、その要請に応じ、法律上義務付けられている新しいシステムの見直しを含め、無認可共済についての関連の法律及び規則に関して、情報提供を受け、コメントし、関連の日本国政府職員や関係者と意見交換を行う有意義な機会を提供する。

3.日米両政府は、近い将来、金融庁以外の省庁が規制する各共済の規制や監督の整合性を評価するための検討が行われるべきであり、またそのような検討は、利害関係者に対して意見表明を行う機会を与えるなど、透明な形で行われるべきであるという米国政府の見解に関し、議論を行った。

I.農業関連の政府慣行:

2004 年、日米規制改革及び競争政策イニシアティブにおいて、植物検疫の主要分野における国際基準の採用を検討するための農業関連の事項が取り上げられた。国際的に採択された植物検疫基準は、いずれも農業分野における貿易の不可欠な要素である透明性及び科学的根拠に基づく決定の信頼性を高めるものである。

1.2004 年12 月、日米両政府は、国際植物防疫条約(IPPC)で規定されている2つの主要基準、即ち(1)検疫有害動植物のための公的防除及び(2)病害虫危険度解析(PRAs)の採用について検討するための、技術専門家及び政策担当者による合同ワークショップの開催を決定した。2005 年4月26 日から28 日に東京で開催されたワークショップにおいて、日米両政府は、公的防除及びPRAs に関するIPPC 基準の解釈及び適用についてプレゼンテーションを行うとともに、建設的な意見交換を行った。ワークショップで行われた有益な議論を通じ、両政府は、植物検疫制度について相互理解を深めた。特に、

a.米国政府は、公的防除及びPRAs に関するIPPC 基準の概念及び適用に関する説明を行った。

b.両政府は、各政府が行った公的防除の具体例及びPRAs の進展について議論を行った。

c.日本国政府は、以下のとおり説明を行った。

(1)日本の発生予察事業(PFS)は、発生予察対象病害虫に対する公的防除の実施が法的に義務づけられていないため、公的防除に関するIPPC 基準に合致していない。さらに、日本国政府は、PRAs 実施の結果として、発生予察事業対象病害虫を輸入検疫リストから除外している事例があることを強調した。

(2)病害虫が検疫措置の対象とすべきかどうか判断するため、関連するIPPC 基準に従って、発生予察対象病害虫を含めた検疫病害虫に対してPRAs を引き続き実施することとする。

2.さらに、両国におけるPRAs 実施についての理解を深めるため、2005 年末までに、日本の植物検疫専門家がノースカロライナ州ローリーにある米国農務省動植物検疫局植物衛生科学技術センター植物病理及び危険度解析研究所を訪問し、米国政府のPRAs 実施手順について更に理解を深める予定である。

[.民営化

A.特殊法人の民営化

1.2001 年12 月19 日、日本国政府は、特殊法人等整理合理化計画を閣議決定した。同計画の実施に際し、2005 年9月末までに、日本国政府は、対象163 法人のうち136 法人の組織形態について、法改正等の所要の措置を講じた。

2.日本国政府は、引き続き特殊法人の再編及び民営化に取り組んでおり、今後とも、パブリック・コメント手続の活用や、適切な場合にはその他透明性の確保に資する手段を通じ、透明性を保ちつつこの改革を進めていくこととしている。

3.整理合理化計画の実施状況の評価・監視を行うため日本国政府により設置された民間からの有識者により構成される特殊法人等改革推進本部参与会議が、2002 年7月の発足以来、41回開催された。その議事要旨及び会議資料は公開されている。

B.日本郵政公社の民営化

2005 年10 月14 日、国会は、2004 年9 月の郵政民営化の基本方針に基づく郵政民営化関連法案を成立させた。法律によれば、日本郵政公社の民営化の目的は、公社が有する機能ごとに株式会社に分割するとともに、また、地域社会と市場に対する影響に配慮しつつ、競合会社との対等な競争条件を担保するための手段を講じることによって、経営の自主性、創造性及び効率性を高めるとともに、公正かつ自由な競争を促進し、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上及び資金のより自由な運用を通じた経済の活性化を図ることにある。

1.郵便保険及び郵便貯金:

a.郵政民営化関連法は、2007 年10 月に現在の郵便貯金法及び簡易生命保険法を廃止するとともに、日本郵政公社の郵便貯金及び簡易保険の機能を郵便貯金銀行及び郵便保険会社にそれぞれ引き継がせることとしている。移行期当初から、新金融会社は、他の銀行や生命保険会社に適用されるのと同様のアームズ・レングス・ルールを含む銀行法及び保険業法に基づき金融庁に監督され、公開資本市場において取引される場合の要件を含め、他の民間株式会社に求められるのと同様の会計及びディスクロージャー要件並びに、同様の納税義務が適用されることとなる。2007 年10 月からネットワークサービス提供者である郵便局会社は、金融サービス商品又は保険商品の販売と取次を行う場合には、民間会社に適用される基準に従い、金融庁の監督を受ける。また、2007 年10 月から預金及び保険の新契約に対する政府保証を廃止することから、郵便貯金銀行及び郵便保険会社は、他の銀行や生命保険会社と同様の条件で、預金保険機構及び生命保険契約者保護機構にそれぞれ加入する義務を負うこととなる。

b. 民営化関連法は、また、移行期間中、郵便貯金銀行及び郵便保険会社に銀行法及び保険業法の特例規定として業務制限を課すこととしている。新金融会社の当初の業務範囲は日本郵政公社と同一のものとしている。将来の業務範囲の拡大は、内閣総理大臣(権限は金融庁長官に委任)及び総務大臣が、郵政民営化委員会(有識者からなる第三者機関)の意見を聴取し、新たな会社の経営状況とともに民間セクターとのイコールフッティングが確立されているかどうかに基づいて、業務拡大を決定するという透明・公正な手続きを経なければならない。新会社の業務範囲の拡大について主務大臣が決定を行う際は、新商品の導入の審査に当たり対等な競争条件及び経営の自由度が考慮されることとなる。郵便保険会社による新たな又は変更された保険商品の導入、郵便貯金銀行による新たな元本無保証型商品又は新たな貸付業務の導入は、上記のプロセスを通じて審査されることとなる。1.a、1.c と1.d に記述されている条件は、新たな又は変更された商品の申請が審査のために提出される時に、郵政民営化委員会による検討の際を含め、考慮されることとなる。

c. 民営化関連法には、損益が明確にされることを確保し、他の事業により影響を受けるリスクを排するため、新たに設立される金融会社と非金融法人との間の事後的な内部相互補助を可能とするスキームは規定していない。民営化関連法によれば、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、日本郵政公社から承継された郵貯・簡保契約を、適切かつ確実に管理することを目的としている。民営化関連法は、承継された民営化前の契約から生じる資産運用は、2007 年10 月から預金及び再保険契約により、郵便貯金銀行と郵便保険会社に委託されることを規定している。2007 年10 月以降、これらの預金及び再保険契約は、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監視・監督に服する。さらに、民営化関連法は、当初の預金及び再保険契約は、承継計画に規定され、(2007 年10 月より前に行われる)政府の認可に先立ち、新金融会社と他の民間金融機関との競争条件を考慮しつつ郵政民営化委員会によってレビューされることとしている。

d. 民営化関連法によれば、2007 年10 月以降、移行期間中において、新金融会社に対してより厳しい規制を課す郵政民営化法の特例規定を除き、郵便貯金銀行と郵便保険会社は他の民間セクターの競合企業に適用されるのと同様の法律上及び、規制上の条件に従う。

2.宅配便サービス:

a. 民営化関連法では、郵便事業会社について、他の民間事業者と同様の規制に服するとともに、ユニバーサルサービスの確保のための必要最小限の措置を超えるいかなる特典をも受けるスキームを与えないことを基本として、郵便事業と国内外の物流事業を実施するに当たっては、貨物運送法令を適用し、国土交通大臣の監督を受けるとともに、郵便事業による通常郵便と国際小包郵便の配達サービスを実施するに当たっては、郵便法令を適用し、総務大臣の監督を受けることとしている。また、現在、「郵便小包」として提供されている内国小包の配達サービスについては、移行期当初から郵便の提供義務から除かれ、貨物運送法令を適用し、国土交通大臣の監督を受けることとしている。税制についても、日本郵政公社の業務・機能等の円滑な移行・承継のための必要最小限の措置を除き、他の民間会社と同一の税制が郵便事業会社に適用されることとしている。

b.内部相互補助に関しては、現行の郵便法においても、通常郵便物、小包郵便物及び国際郵便の区分ごとに、その収支の状況を公表しなければならないこととされている。民営化関連法も、収支の状況を区分して公表させる現行方式を維持することとしている(内国小包は「郵便」から除かれる)。さらに、郵便事業会社は、郵便事業と国内外の物流事業を含む、他の民営化された事業分野との区分ごとの収支の状況を、他の民間事業者に要求されるような一般に公正妥当と認められた会計基準と同じ基準で公表しなければならないこととしている。民営化関連法においては、総務大臣に規制される郵便事業と国土交通大臣に規制される小包配達・新規の物流事業との間の不当な内部相互補助を可能とするようなスキームは規定されていない。(例えば、独占サービスから他の競争的な事業への収益移転は認められない。)

3.透明性:

a. 郵政民営化準備室及び総務省は、これまでも、時宜を得た形で、民間利害関係者に対して、要請に基づき、関係職員と意見交換を行うための有意義な機会を提供しており、開かれた機会及び透明性の確保を図ってきたところであり、米国政府もこれを歓迎してきたところである。郵政民営化準備室及びその後継組織、総務省並びに金融庁は、民間利害関係者に対し、要請に基づき、関係職員と意見交換を行うための有意義な機会を提供する。

b. 日本政府は、適切な方法による、郵政民営化に関する法律、規制、ガイドライン及びその他の側面に関する一般公衆への情報提供を含む、民営化プロセスにおける透明性の重要性を認識する。行政規則、行政の公式な決定、及びガイドラインの準備及び施行について、日本政府は、時宜を得た形で民間利害関係者に対し、要請に基づき、関係職員と意見交換を行うための有意義な機会を提供することを含め、改正行政手続法等に沿った必要な手続を通じて透明性の確保を図ることとする。日本政府は、郵政民営化委員会の透明性の重要性を認識しており、そのために、適切な措置を講じることとしている。民営化関連法の施行にともない発生する問題についても、この報告書の序文の最終節に記述された方法によって、更に取り上げることとなる。

\.司法制度改革

A.外国弁護士の提携の自由の確保

1.「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」(外弁法)の改正法は、2005年4月1日に施行された。この改正は、外国法事務弁護士(外弁)による弁護士の雇用禁止規制の撤廃、特定共同事業制度の廃止、弁護士と外弁とによる外国法共同事業の制度の導入を含む、弁護士と外弁との提携関係に関する全く新しい制度を導入するものである。

2.日本弁護士連合会(日弁連)は、外弁による弁護士の雇用及び外国法共同事業に関するものを含め、改正外弁法の施行のための会則及び会規を制定した。日弁連との協議を通じて、法務省は、日弁連が改正外弁法の基本的な理念と解釈に即した会則及び会規を策定することができるように、日弁連による改正外弁法のよりよい理解とそれぞれの会内での関連手続の適切な運用を促すための努力を行ってきた。

3.外弁法の解釈について米国政府によって表明された懸念に関し、自身とは異なる業務範囲を有する外弁アソシエイトを雇用する外弁パートナーは、外弁法5条の2(第三国法に関する法律事務)の規定に従うことを条件に、当該外弁アソシエイトによって取り扱われる法律事務の受任及び取扱いが可能であるということが法務省の見解である。

4.法務省は、日弁連の会則及び会規が法務省の見解と矛盾しないよう、必要に応じ、その会規・会則の適切な運用について日弁連と協議する。

B. 法人及び支店の設置の許容:

法務省は、国際的な法律サービスの動向及び無差別の原則の観点から、外弁に法人及び支店の設立が認められるべきであるかどうかを鋭意検討する。特に、法務省は、現在、外国法共同事業及び弁護士法人の実態並びに他の法令の在り方に照らし、外弁が法人を設立することが許容され、又は外弁及び外国法律事務所が、別個に日本の専門職法人を形成することなく、支店事務所を設立することが許容された場合に対処すべき実務上の考慮について検討している。

C.裁判外紛争解決手続の促進

1.日本国政府は、裁判外の紛争解決手続(ADR)の仕組みが個人や企業が紛争を効率的かつ経済的に解決することを助けるという重要な役割を果たすことができるとの認識の下、日本においてADR が紛争解決の手段として裁判と並ぶ魅力的な選択肢となるようにするため、ADR 業務の発展を促す柔軟で開かれた法環境を創設する手段を含めて、ADR の拡充・活性化のための方策につき検討を続けてきた。

その結果、2004 年に制定された「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)は、以下のとおり、国際的基準や慣行に従った、ADR の促進に配慮したものとなっている。

a.ADR 法においては、同法第2章所定のADR 業務(以下「ADR 業務」という。)に対する法務大臣の認証の要件は、最小限のものである。また、ADR 事業者のADR 業務に対する認証は、完全に任意であり、日本国籍及び他国籍の者に等しい基準で開放されている。ADR 法は、認証を受けないADR業務の提供者がその業務を継続すること及び新たなADR事業者が認証を受けずに新たな事業を設立することを制限しない。

b.一般的に、当事者が個々のADR 手続に適用される規則、プロセス及び基準を決定することが認められる。

c.ADR 法の下で認証を受けたADR 業務は、弁護士法第72 条に違反するとは解されない。同様に、ADR 業務において弁護士でない者が報酬を得て調停人として活動することも、それが社会的にみて正当であれば、当該弁護士でない者が提供するADR 業務が認証を受けていなくとも、弁護士法第72 条に違反するとは解されない。また、仲裁法にしたがって仲裁人として活動することも、弁護士法第72 条に違反するとは解されない。

d.認証を受けたADR 業務において弁護士でない者が調停人として活動する場合、弁護士が当該ADR 手続を監督しなければならないという一般的な要件はない。代わりに、必要な場合に弁護士から助言を受けるための仕組みが必要である。

e.加えて、外弁及び外国弁護士は、いずれも弁護士と同様に、日本国内において行われる国際仲裁手続において当事者を代理する業務を行うことが認められる。日本国政府は、外弁は、その職務の範囲内で、ADR 手続(外弁法第5条の3の対象となる仲裁手続を除く。)において当事者を代理する業務を行うことが認められることを確認する。

2.ADR 法は2007 年5月31 日までに施行される。ADR 法は、すべての種類のADR の利用を促進するため、国及び地方公共団体が国民にADR を周知させるための情報を提供する責務を有することを定めている。ADR 法の施行に向け、法務省令及びガイドラインを策定するに当たって、日本国政府は、国際的な議論の動向、基準及び慣行を考慮に入れ、また、認証を得る手続や認証を受けた後の報告義務が合理的であり過重でない形でADR 法を施行することを確保する。この点に関して、日本国政府は、

a.ADR 法の施行のためのすべての省令及びガイドラインについてパブリック・コメント手続が行われることを確保する。また、

b.ADR 法が施行された後、国境を超える紛争あるいは電子商取引に関する紛争に係るADR 手続への同法の影響を注視し、これらのADR 手続について明らかになった問題や障害を改善するための措置を遅滞なく採る。

].商法

A.現代的合併手法の採用:

日本国政府は、2003 年4月に成立した改正産業再生法等の様々な手法を利用し、産業界の構造再編を進めてきた。2005 年3月22 日に、日本国政府は、三角合併、金銭合併、外国株式を利用した株式交換を可能とする合併対価の柔軟化及びショートフォーム・マージャー(スクイーズアウト・マージャー)を導入する会社法案を国会に提出した。会社法案は、2005 年5月17 日に衆議院を通過し、6月29 日に参議院を通過した。会社法の規定の大部分は政令で定める日に効力が生じ、合併対価の柔軟化を導入するための規定はその一年後に効力を生ずる。

1.日本国政府は、会社法が可能な限り早期に効力を生ずることを確保するために必要な手段をとる。

2.日本国政府はこれらの新しい条項がM&A 取引を促進し、それゆえ日本経済にとって有益なものとなることを確信している。

3.日本国政府は、会社法によって可能となる三角合併にかかる税制上の措置について、課税の適正、公平及び租税回避防止の観点も十分に踏まえ、−なお、米国政府は、税の取り扱いも企業がM&A 取引を行うかどうかを決定するにあたり非常に重要な要素であると指摘している−会社法の関連部分が施行されるまでの間に方針を決定する方向で検討している。

4.日本国政府は、企業に対し、株主利益の最大化をその目的及び効果として有しない買収防衛策や、経営陣の保身を主要な目的とした買収防衛策を採用することを慎むよう奨励する。この点に関して、2005 年5月27 日、経済産業省と法務省は共同で「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」を発表した。

B.積極的な議決権の代理行使を通じた株主利益の増進

1.年金基金による健全な議決権代理行使方針の増進:

日本国政府は、積極的な議決権代理行使が、年金基金の受益者の利益となる企業統治の強化や株主価値の向上に果たす重要な役割を認識している。この観点から、日本国政府は、公的年金基金及び私的年金基金の管理者により、年金基金の収益を増加させる仕組みとして議決権の代理行使が促進されることを支持している。過去一年にわたって、この点において日本国政府は以下の政策を推進し、措置を講じてきた。

a.年金資金運用基金は、議決権の代理行使の方針及び運用受託機関による実際の行使記録の透明化を支持する。この点に関して、年金資金運用基金は、既にすべての運用受託機関に適用される運用指針を公表し、運用受託機関に対し、株主利益の最大化のために議決権を代理行使すること、議決権の代理行使の実際の記録を毎年年金資金運用基金に報告するよう求めている。2004 年10 月には、運用受託機関による議決権の代理行使の結果が公表された。2004 年には、すべての運用受託機関において議決権が代理行使された。

b.年金資金運用基金のいくつかの運用受託機関が自主的に議決権の代理行使の方針を公開してきた。年金資金運用基金は、議決権の代理行使の方針の公開を求めるための運用指針の改正の是非の検討を続けるとともに、すべての運用受託機関が議決権の代理行使の方針を公開することを働きかける。

c.民間の年金基金に関しては、日本国政府は株主議決権の代理行使についての運用受託機関の受託者義務に関する更なる進展を支持しており、この領域における国際的な運用の進展に照らし、株主議決権の代理行使に係る特定の受託者責任を採用することが適切かどうかを検討するために調査に着手する予定である。

2.ミューチュアル・ファンドによる議決権の代理行使に係る記録の公表促進

a.日本国政府は、企業価値を増加させるメカニズムとして、投資法人及び投資信託の運用者による議決権の代理行使の促進を支持する。金融庁は、現在、会員企業が実際の議決権の代理行使の結果を公表することとなるように、議決権の代理行使に係る規則の改正を投資信託協会に対して促している。

b.金融庁は、投資信託及び投資法人に関する法律に基づき、投資信託委託業者が実際に行った議決権の代理行使の記録をそれらの会社の法定帳簿に記録しなければならないこと、及びそれらの投資信託の受益者がその記録を閲覧することができることを確認する。

3.外国株主による議決権代理行使の促進:

外国株主による議決権の代理行使に関する米国政府からの要望に対し、日本国政府は以下のことを確認した。

a.日本の商法においては、外国株主による議決権の代理行使を制限する規定は存在しない。

外国株主のグローバル・カストーディアン(複数国の有価証券保管業務を総括して取り扱う金融機関)又はサブカストーディアン(自国の有価証券保管業務を実際に行う金融機関)は、与えられた代理人としての議決権のうちの一部について、ある提案に賛成の投票をし、残りを他の提案又は反対の提案に賛成の投票をすることができる。

b.投資信託及び投資法人に関する法律の第22 条2項は、外国企業が外国の法令に準拠して設立され、日本の商法に規定された法人と同種類の法人で、日本国内に営業所を有している場合、外国企業と日本企業を同様に取扱う。

c.日本国政府は、外国株主数が増加している状況を考慮し、東京証券取引所の諸規則の見直しを含め、東京証券取引所がその上場企業のコーポレート・ガバナンス向上のために果たすべき役割について、引き続き検討する。

XI.流通

A.着陸料及び空港使用料

1.日本国政府は、成田国際空港、関西国際空港及び中部国際空港の着陸料と空港利用料に関する米国政府の懸念についての見解を述べた。

2.2005 年4月に発表された成田国際空港株式会社(NAA)の2005 年度経営計画では、最重点施策の一つとして着陸料の引き下げを掲げている。6月2日、NAAは着陸料の引き下げに向けて国際航空運送協会(IATA)との協議を開始し、9月16日には新しい料金体系が両者から発表され、10月1日から適用されている。NAAの着陸料は平均21%引き下げられ、いくつかの新たなサービス料金が導入された。NAAは、この料金改定により空港使用料全体で11%の収入の減少になると試算している。新しい着陸料は、航空機の騒音レベルによって決定され、着陸料の実際の引き下げ率は各航空会社により異なる。

3.日本国政府は、NAA の着陸料引き下げ提案を歓迎する。

4.日本国政府は、空港使用料は透明性を含むICAO 原則に従って決定されるべきであるという点について、米国政府と見解を共有する。

B.航空運賃:

日本国政府は、航空会社による航空券の販売と航空運賃の30 日前申請に関する米国政府の懸念についての見解を述べた。

C.クレジット・デビットカード

1.日本国政府は、日本の銀行において、国際的に認められているATM ネットワークのセキュリティ標準と同等のセキュリティ基準を維持することの重要性を認識している。日本国政府はまた、銀行ATM の管理者が、国際PIN セキュリティ及び暗号化基準へ準拠するかどうかを含め、自らのネットワークに用いる暗号化基準を決定することを指摘した。

2.警察庁は、国内におけるカード犯罪に関連する取締りを引き続き強化している。警察庁は、個人情報を含まない偽造カードの原版となる、いわゆる「生カード」の密輸入防止や犯罪グループの国内への不法入国を防止するため、税関、入国管理局及びクレジット/デビットカードの発行者並びに販売者との連携を強化している。

3.日本国政府は、政府サービスの支払い手段としてのクレジットカード及びデビットカードの利用を推進してほしいとの米国政府の要請に留意した。加えて、総務省が主催する研究会は、地方公共団体の歳入の収納方法としてクレジットカード払いを導入することについて、種々の法制的な課題・技術的な課題を検討している。なお、総務省は、これらの検討に基づき、「規制改革・民間開放推進3か年計画」において「2005 年度中に検討・結論」するとしている。

D.道路運送車両法の改正

1.変更登録及び移転登録の手続を円滑化するため、市場開放問題苦情処理推進会議(OTO)は2005 年3月に道路運送車両法の見直しとその実施についての検討を提言した。

2.日本国政府は、自動車登録手続に関して自動車リース会社の負担を軽減するための措置が可能か否かについて検討を進める。

米国政府による規制改革及びその他の措置

T.規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題

A.領事事項

1.旅券への生体情報の搭載

a.確実で安全な渡航文書は、国境警備の重要な要素である。米国政府は、より安全な旅券を発給しようとするすべての国の努力を歓迎する。国務省は、2004 年9月26 日付書簡をもって、日本国政府は、「2002 年米国国境警備強化及び査証入国改正法」が定める生体情報搭載旅券発給計画の保有に係る要件を満たしていることを認定した。

b.米国政府は、日本国政府が生体情報搭載旅券の発給計画を積極的に進めてきていることを認識しており、特に、2006 年3月に生体情報搭載旅券の発給を開始するための努力の一環として、2005 年6月3日に旅券法の改正案が国会を通過し可決されたことに留意する。

c.米国政府は、2005 年6月15 日、査証(ビザ)免除対象国は2005 年10 月26 日までにデジタル写真搭載旅券を発給しなければならないと発表した。同じく2005 年10 月26 日に、すべてのビザ免除対象国はICチップを搭載した旅券(「e-パスポート」)を一年以内に発給するための、米国が(当該国のビザ免除措置を継続する要件として)受け入れうる計画を提示しなければならない。国務省は、現在発給可能な最も安全な渡航文書である生体情報搭載旅券に関する取組を続け、ビザ免除対象国とともに引き続きその開発に関する作業を行う。日本がビザ免除対象国であることは、日米両国民間の活発な人的交流を維持するために重要であることから、日本国政府は、2005 年6月15 日に行われたこの発表を歓迎した。6月15 日の発表、及び米国政府からビザ免除対象国に示されたより具体的な要件に応じて、外務省は日本国政府がその要件を十分に満たしていることの証明として2005 年7月29 日付の書簡を提出した。国土安全保障省は、2005 年9月15 日付の書簡において、日本がビザ免除対象国としての地位を維持するための要件を満たしていることを確認した。

2.非機械読み取り式旅券所持者に対するビザ免除措置の停止

a.米国移民法は元来、ビザ免除対象国の旅行者がビザを持たずに米国を旅行するためには2003 年10 月1日以降は機械読み取り式の旅券を所持しなければならないと定めていたが、日本を含む大多数のビザ免除対象国がこの期限を延期することを求め、2004 年10 月26 日まで1年あまり延期することが認められた。

b.2004 年10 月26 日以降一定の期間中、米国国境と入国地点に配置されている米国税関国境保護局職員は、その任意において、機械読み取り式旅券を持たずに米国に到着したビザ免除対象国の旅行者に金銭的負荷を課すことなく一時入国の許可を与えることができた。

非機械読み取り式の渡航用文書を所持した日本人旅行者は、日本国政府の要望のとおり、この任意のビザ免除を8か月間受けることができた。

c. この一定期間は、2005 年6月26 日に終了したが、国務省はビザ免除対象国との間で密接に協力し、各国国民に機械読み取り式旅券の所持を求めることについて情報交換を行ってきた。2004 年10 月26 日以来、税関国境保護局職員は機械読み取り式旅券の要件を説明する文書をもって、米国に入国するビザ免除対象国の旅行者に通知してきた。また、同局は、2005 年6月6日にビザ免除対象国からのすべての旅行者に対し、新しい要件について再度周知するための文書を発出した。米国政府は、真に緊急の事態が生じた場合には、事例に応じ、非機械読み取り式の渡航文書を所持した旅行者を支援すべく、引き続き日本国政府と共に作業を行う。

d.2005 年6月26 日という期限を一般の人々に知らせるための広報活動の努力は、適切な旅券を所持せずに米国に到着するビザ免除対象国からの訪問者の数の減少に貢献してきた。

2005 年10 月26 日以降、ビザ免除対象国によって新たに発給される旅券は、デジタル写真搭載旅券でなければならず、さもなければ渡航者はビザを取得することが求められるという要件を、ビザ免除対象国に知らせるための広報活動の努力も行われてきた。

3.出入国地点における生体情報による出入国管理

a.US-VISIT は、米国国境をまたぐ合法的な旅行や通商を円滑にする一方で、米国国民と訪問者の安全を強化するものであり、国土安全保障省の最優先事項である。

b. US-VISIT による入国審査は、現在115 の空港、15 の海港、及び59 の主要な陸路入国地点での二次審査地点において行われている。US-VISIT による出国手続は、12 空港、及び2海港において行われている。US-VISIT による入国審査は、2005 年12 月31 日までに残りの陸路入国地点でも適用されることとなる。

c. US-VISIT は、その基本的考え方を陸路米国入国地点での自動出入国システムという形で具現化することに向けて進んでおり、米国陸路国境でRFID(無線周波数による認証。いわゆる「電子タグ」)技術の試験運用を計画することによって国境管理システムの改善を続けている。2005 年10 月までに、3900 万人を超える外国人訪問客がUS-VISIT による審査を受けてきたが、US-VISIT の適用に起因する審査待ち時間の大幅な増加はこれまで見られていない。入国地点での通常業務の一部として引き続き待ち時間の監視が行われる。US-VISITの手続にはほんの数秒しかかからない。最も繁忙な3つの陸路入国地点であるアリゾナ州ダラス、テキサス州ラレド及びミシガン州ポートヒューロンで試験運用を実施した後の状況調査によれば、US-VISIT の適用は、ほとんどの場合において、I-94 を必要とし、したがってUS-VISIT 適用を受ける訪問者が入国手続に要する時間を短縮している。US-VISIT 導入前のラレドでは、二次審査地点で審査に要する平均時間は約11 分であった。ラレドでの調査結果によれば、今では手続は5分未満で終わり、多くの場合において2分程度にまで短縮されている。国土安全保障省は、引き続き空港、海港、陸路入国地点を監視し、US-VISITを十分かつ効率的に運用するために適当な人的、物理的、技術的手立てを確保する。

d.US-VISIT は在米国日本大使館を通じて日本国政府と定期的に協議を行っている。これらの協議では、社会への知識普及、プライバシー及び運用上の問題に焦点が当てられている。

US-VISIT は、US-VISIT プログラムの要件や、米国への出入国の際に何が行われるのかについて、日本国政府、旅行業界、一般の人々に知らせるための幅広い広報活動プログラムを有している。この努力は2004 年の初期から行われてきており、今後も引き続き行われる。

下に列記したものに加え、2005 年9月に東京、名古屋、大阪で開かれた「See America WeekJapan」プログラムにもUS-VISIT 担当者は参加した。当プログラムには地方メディアへの広報のための「Media Marketplace」も含まれる。

e. 2003 年12 月、国土安全保障省は広報活動キャンペーンを立ち上げた。キャンペーンの中には、日本で合計1,000 万人以上の人々の目に触れることとなる日本の主要メディアでの有料広告や、航空機内用日本語アニメーションビデオの日本の航空会社への配布、日本語のパンフレット、日本語による説明標識が含まれている。US-VISIT は、旅行・観光業界関係者との協議や、メディアとの意見交換会(2004 年11 月、東京)、ビザ免除プログラムについての説明会(2004 年9月27 日、ロサンゼルス及びワシントン・ダレス国際空港)、旅行産業協会が開催するPow Wow のような国際的な旅行・観光ショー(2004 年4月、ロサンゼルス)、ワールド・トラベル・マーケット(2004 年11 月、ロンドン)にも参加した。

旅行事業を促進する連邦機関がないことから、米国旅行産業協会(TIA)によって展開されてきたSee America も、US-VISIT やその他の要件について渡航者に知らせるよう努めている。

f.US-VISIT プログラムについての情報は、在日米国大使館のウェブサイトから日本語で入手できる。米国政府は、この情報を更に広めるための日本国政府の提案を歓迎する。

g.陸路入国地点においては、ビザを所持した日本国民は、数次入国可能なI-94 を申請する際の一度だけ、US-VISIT の手続を受けることになる。仮に、I-94 が一年間有効であれば、そのI-94 の期限が切れる時にのみ再びUS-VISIT の適用を受けることとなる。

h. 米国政府は、新しい生体情報要件によって取得された日本国民の情報の保護に関する日本国政府の懸念を十分に理解する。取得された情報は、国土安全保障省と国務省によって、個人の渡航記録の一部として、データベースに保存される。データベースのシステムは、入国地点に駐在する税関国境保護局職員、移民税関執行局の特別担当者、米国市民権移民局の認可担当職員、米国領事館、及び連邦・州・地方の法執行機関職員によって、知る必要がある場合のみ利用される。このプログラムは、US-VISIT 個人情報保護基準及び米国の個人情報影響調査を遵守した形で実施される。US-VISIT にはこのプログラムを専門的に取り扱うプライバシー担当者がおり、国土安全保障省の他のプライバシー担当者と密接に協力している。米国政府は、US-VISIT によって集められた外国人の生体情報を、米国国民の個人情報に適用されるものと同等の水準のプライバシー基準で保護する。情報が不適切な形で使用されたりあるいはアクセスされたりすることのないよう、セーフガード措置が実施されてきた。国土安全保障省の個人情報保護担当官は、適切なセーフガード措置が実施されるよう、このプログラムの関連部分を見直す。

4.ビザ手続
a. ビザ申請取得可能な在日米国公館の拡大

i. ビザ申請者が無料でインターネットで予約をとることを可能にしたコンピューターによる面接予約システムは、日本のビザ申請者の効率性向上に貢献してきている。すべてのビザ申請者に面接が課されることとなった2003 年8月1日以降、国務省は、東京の米国大使館査証部に5人、大阪の米国総領事館に3人、那覇の米国総領事館に1人の担当官を増員した。米国政府は、予約システムが効率的に機能しているか、日本にいるビザ担当官の数が未処理申請を積み重ねることなくビザ申請を処理するのに十分であるかについて、引き続き注視する。

ii. 米国政府は、福岡及び札幌の米国総領事館でビザ手続を再開すべきであるという日本国政府の要請を引き続き検討するとともに、名古屋の米国領事館でもビザ手続を開始すべきであるという要請に引き続き留意する。米国政府は、生体情報による技術を幅広く利用することを含めた、ビザ手続の更なる改善に引き続き取り組む意欲を維持している。

b.ビザ更新手続の効率化

i. 米国内での商用ビザ更新手続の中止に伴う負担の増加について、在米日本企業及び日本国政府からも重大な懸念が表明されてきている。ビザの有効期限はビザ所持者の米国滞在資格と結びついてはいないものの、現実には、ビジネスマンにとって、米国の隣国や自国に出張に出た際にビザを更新することについては不便な面もある。出張日程は、多くは急に決まるものであり、出張先では予定が詰まっていて、ビザ更新のために米国の大使館や総領事館に行くことができないことがある。この困難な状況を認識し、米国政府は、米国内でのビザ更新手続の再開について引き続き検討する。

ii. 米国政府は、合法的な旅行者がビザを取得し、更新することを容易にしつつ、安全を強化することのできる技術を可能な場合に利用した、ビザ手続を円滑にする方法を探求することに深い関心を有している。米国政府と日本国政府は、ビザ関連事項に関する事務レベルの定期的な対話を行う。

c.ビザ発給及び有効期限

i. 米国は、すべてのビザ申請者に自国でビザを申請するよう奨励しているが、第三国の米国公館においても、面接予約の要請を受け付けられるのであれば、ビザの申請を行うことができる。国務省は、全世界の米国公館において、ビザ申請者にとって便利な「ビザ待ち時間の見込み」を提供する新たなページを同省のウェブサイト上で立ち上げた。現時点では、第三国の国民にはEビザの更新を行っていない公館もある。しかしながら、国務省はビザを発給するすべての公館における人員や設備の配置を見直しており、日本国民がカナダやメキシコの米国公館でEビザの更新を行えるようにしてほしいという日本の要請を慎重かつ真剣に検討する。

ii. 1年間に発給されるH-1B ビザの数は議会によって決められている。現在の発給数上限は6万5千件である。2005 年包括歳出法(法案番号HR4818)では、これとは別枠で2万件のH-1B ビザを発給できることとなった。このビザは、米国で高いレベル(注:修士以上)の学位を取得した者に発給される。

iii. 2005 年6 月24 日包括歳出法には、H-1B 及びL-1 ビザに関する規定も含まれている。すなわち、L-1 ビザについては、L-1 ビザ所持者が第三国の管轄下にある当該第三国内の地点に在住することを制限し、また、一律申請の対象となる被用者に求められる継続雇用期間を12 か月へ延長することとしている。H-1B 被用者の雇用主は、当該被用者に対して最低賃金額の100%を支払うことを求められている。その他の規定は、不正行為防止費として雇用者に500 ドルの支払いを義務付ける制度を導入するなど、H-1b 及びL-1ビザに関連した不正行為を防止するための規定となっている。日本国政府が懸念を表明してきていた第108 議会提出の関連法案(法案番号HR2154, HR2702 及びHR2849)は、成立しなかった。

iv. 米国政府は、日本に赴任する企業内転勤の外国人に5年間有効なビザが発給されているのに対し、Lビザの有効期間が2年又は3年しかないことに対する相互主義的観点からの日本国政府の懸念を真剣に検討する。

v. 米国政府は、Eビザの取得を容易にすることが日本国政府にとって重要であるということを認識しており、Eビザの資格要件に関する日本国政府の要望を認識する。

5.運転免許証

a.2005 年5月11 日にブッシュ大統領の署名により成立し、3年以内に発効するいわゆるReal ID 法は、国土安全保障省に対し、各州政府が運転免許証やその他の州発行の身分証明書を発行する際に従うべき最低基準を設定する規制を定めることを求めている。同法は、各州に対し、運転免許証申請者のフルネーム、誕生日、主たる居住地の住所などの特定の個人情報を入手するよう求めている。同法は、国土安全保障省が設定する最低基準を満たしていない、州政府発行の身分証明書や運転免許証を、連邦政府機関が公用目的で受理することを禁止している。

b.その上、すべての州は、国土安全保障省との間で、外国人運転免許証申請者の法的地位を確認するための覚書を結ばなければならない。ほとんどの州が、Real ID 法で定められているとおり、2005 年9月11 日までに、運転免許証申請者の法的地位を確認するためのシステム(SAVE)を日常的に利用するため、国土安全保障省との間で覚書を結んだ。しかしながら、その覚書は各州に、2005 年中にSAVE の利用を開始することは必要としていない。一定期間米国に滞在することを認められた外国人に発行される運転免許証や州政府発行の身分証明書の有効期間は、滞在許可期間を超えてはならない。

c.同法の要件に従っていない運転免許証や州政府発行の身分証明書は、連邦政府向けの身分証明やその他の公用目的、例えば連邦政府の建物への入館や飛行機への搭乗などに使うことはできない。各州は、テネシー州やユタ州が既に行っているように、運転行為を認めるものとしては有効であるが連邦政府向けの身分証明目的には使用できない「自動車運転証明書」を発行することは禁止されていない。飛行機に乗る際に、外国の旅券を提示することも依然として許可されている。

d.現時点では、各州が新法の規定をどのように履行するかは定かではない。同法は、国土安全保障長官に対し、運輸長官及び各州と協議の上、規則の制定、同法の遵守の確認及び同法の下での各種許可を行う権限を付与されている。米国政府は、新法が米国に居住する日本人を含む外国人に影響を与えるであろうという日本国政府の懸念を理解する。国土安全保障省は、規則が制定されていく中で、利害関係者からの情報を求めるとともに、各州は同法を履行していく中で、現在各州の運転免許証に関する規則が日本人や他の国の国民に影響を及ぼしている問題についても検討するべきであるという日本国政府の要請を認識する。また、同省は、規則策定過程で、規則案公示後に行われるパブリック・コメント募集に日本国政府が参加することを歓迎する。

f.2005 年1月1日に施行されたイリノイ州の新法(公法93-0752)によって、同州は、社会保障番号を取得できない合法的外国人滞在者に「一時訪問者用運転免許証」を発給することができるようになった。その手続についての詳細な説明は、イリノイ州務省のホームページ(www.ilsos.net/departments/drivers/drivers_license/tempvisitordl.html)で入手可能である。現時点で、米国政府の理解によれば、イリノイ州の法改正によって、今やすべての州が、運転免許証取得手続において社会保障番号以外の身分証明書を受け付けるようになった。

g.米国政府は、国際運転許可証、ミシガン州の身分証明書提出要件、マサチューセッツ州の同乗者同行義務、テネシー州の自動車運転証明書などの各州の運転免許証に関する規則について、日本国政府が懸念を有していることを認識している。

6.社会保障番号(SSN)

a.SSN 取得期間の短縮化:社会保障庁(SSA)はSSN を発給する、あるいは社会保障カードを発行する前に、外国人の移民資格を確認しなければならない。昨年中、SSA と国土安全保障省は、移民資格を確認する作業を迅速化する努力を継続してきた。両省庁は、現在、オンラインによる確認システムの導入に取り組んでおり、これにより確認作業の遅れが減少し、SSA から国土安全保障省への書面での確認照会を少なくすることが出来る。米国政府は、この点についての日本国政府の要請を考慮しつつ、こうした努力を継続していく。

b.駐在員家族への社会保障番号の発給:米国政府は、駐在員家族へのSSN の発給に関する日本国政府の懸念を十分に理解する。

7.滞在許可証(I-94)

a.I-94 の有効期間の延長:米国政府は、連邦規則により、税関国境保護局職員は、Eビザ所持者に対し、旅券の残余有効期間が十分にある限り、初回の滞在有効期間として2年を超えない期間で認める権限を有していることを確認する。

b.I-94 更新手続の迅速化i. 米国市民権移民局(USCIS)は、2005 年2月に提出された2006 年度予算において未処理件数の削減を優先しており、2005 年度予算より全体で4%の増額を要求し、未処理案件の解消に向けた努力にかかる経費として総額1億ドルを特定している。

ii. USCIS は、(1)国家の安全保障の確保、(2)未処理件数の削減、(3)顧客サービスの改善の3点を優先している。中でも、最初の2年間で、USCIS は電子申請システム及びその便益を拡大し、全申請の50%がその恩恵を受けるようになると共に、申請者が自らの申請の現状についての情報をUSCIS のウェブサイトを通じて確認できるようになった。USCIS は、これらの努力を継続する。

B.貿易・投資関連措置

1.ダンピング防止措置及びセーフガード措置

a.米国政府は、米国のダンピング防止法がWTO協定上の義務に整合的なものとなることを確保する。この点について、米国行政府は、バード修正条項の関連する規定をWTOの勧告及び裁定に適合したものとする法案を支持する。加えて、米国行政府は、熱延鋼板の紛争案件に係るWTOの勧告及び裁定を実施するための立法について、引き続き米国議会と緊密に協力して取り組んでいく。

b.バード修正条項及び熱延鋼板の紛争案件に関しては、関連の米国法をWTO協定上の義務に整合的なものとする法案が第109議会に提出されている。

c.2004年12月3日、1916年歳入法第801条(1916年ダンピング防止法)は廃止された。

d.米国政府は、その他特定の米国のダンピング防止及びセーフガードに係る措置及び慣行に対する日本国政府の懸念について、自国の見解を説明した。

2.米国特許制度:

日米両政府は、実体特許法の調和に向けた効果的な取り組みに対して相互支援することを再確認すると同時に、

a.米国政府は、米国の先発明主義特許制度に関する日本国政府の懸念について引き続き日本国政府と議論する。米国は、米国の先発明主義制度が独特のものであると認識しているが、米国は、同制度が米国内で米国のためにはうまく機能してきたと信じている。現在米国の議会で審議中の法案(H.R.2795 とその修正案)にもあるように、先願主義への関心が高まっているが、先願主義は米国では依然として議論を呼ぶ問題である。提案された法案に関する議論の他に、米国、日本及び他のWIPO 先進国グループの加盟国は、先願主義の観点から起草されている条約草案に基づき、実体特許法の調和の協議を行っており、米国は継続して議論を行っていく。

b.米国政府は、米国の早期公開制度に認められる、出願日から18 か月経過後における特許出願公開の例外を廃止することに関する日本国政府の要望について引き続き日本国政府と議論する。米国は早期公開制度の経験により、例外の必要性が認められないと証明されることが明らかになるものと期待している。この問題は、前述の特許法改正法案の中にも盛り込まれている。

c.米国政府は、再審査制度を更に改善することに関する日本国政府の要望を引き続き検討する。米国の再審査制度の変更や、付与後異議手続のための新しい規定は、前述の特許法改正法案の中にも盛り込まれている。

d.米国政府は、発明の単一性要件の緩和という日本国政府の要望を引き続き検討する。米国が発明の単一性基準の採用について現在検討中であることは留意されるべきである。

e.米国政府は、ヒルマー・ドクトリンの修正という日本国政府の要望について引き続き議論する。米国は、この問題が米国、日本及び他のWIPO 先進国グループの加盟国の場で進行中の実体特許法の調和の協議において継続的に議論している最中である点を指摘したい。

この問題は、前述の特許法改正法案の中にも盛り込まれている。

f.米国政府は、米国の植物特許に関する法律と植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)において規定されている新規性の決定に関して日本国政府が提起した問題について留意する。米国政府は、日本国政府が表明した懸念について留意するとともに、この問題について検討することとする。

3.保険業規制

a.全米保険監督官協会(NAIC)は、州間の協力の促進及び効率性の向上のための措置を含む、「2003 年規制の近代化のための行動計画」の実施を継続する。具体的な進展には下記のものが含まれる。

(1)免許の申請のための標準化された提出要件の確立及び免許基準の統一を目的とした、免許付与に関するモデル法の形成(同法は全ての州において採用されている。)。

(2)一本化された電子申請制度の創設(同制度は現在49 州とコロンビア特別区で利用されている。)。

(3)生命保険、年金、障害、長期介護を網羅する州際保険商品規制簡素化措置の実施(同措置は現在15 州で採用されている。)。

b.米国政府は、日本国政府が、特定の州の保険規制及び手続きについて懸念を表明したことを認識している。米国政府は、これらの見解をNAIC へ伝達し、NAIC は適切な州の監督者に対してこれらを伝達した。米国政府は、州別規制に関連した問題について、引き続き、適切な場合には、日本国政府とNAIC との間の意思疎通を促進する。

c.再保険担保要件に関する問題は、NAIC の再保険タスクフォースの中で、引き続き議論されている。タスクフォースは、定期的に集まっており、会合はNAIC のウェブサイトで公表されている。利害関係者は、自由に会合に出席することができる。タスクフォースは、認可されていない再保険会社に適用される米国の再保険規制の包括的な概観を記載した白書、また、現在の担保要件の改正の検討のため、タスクフォースに提出された提案について、現在作業を行っている。

4.各州環境規制の調和

a.連邦環境保護庁は、日本国政府が各州の環境規制の統一性について懸念を持っていることを理解する。

b.環境保護庁と各州は、環境保護に対する責任を共有するとともに、パートナーとして米国の環境問題の解決に取り組む。そのような連携の取組の一つが、「全米環境実績パートナーシップシステム」である。その目標は、環境保護庁や各州それぞれが持つ独自の強みを活かしながら、可能な限り最良の結果を達成することに重点を置いた環境管理システムを構築することである。この事業は、最良の結果を促進し共有することによって、各州の環境規制への取り組み方がより統一的なものとなるよう支援する。

c.環境保護庁は、また、水銀スイッチやその他懸念される問題について、成功した州の取り組みに光を当て促進するための手段を講じており、これが各州の環境規制方針の調和を支援することとなる。その例として、環境保護庁は、水銀の使用に関する項目を含むよう連邦共通廃棄規則の改正を進めており、この改正により水銀スイッチの回収が容易になるであろう。多くの州がこの新しい連邦規制を州レベルで自動的に採用する予定であり、環境保護庁は、全ての州と協力しながら、各州が新基準を採用するよう促していく。環境保護庁はまた、以下の同庁のウェブサイト上に全米各州の廃棄プログラムへのリンクを提供する。http://www.epa.gov/epaoswer/hazwaste/id/univwast/uwsum.htmd.電子機器分野においては、環境保護局は、電子製品環境アセスメントツール(EPEAT)の開発を通じて、デスクトップ型やラップトップ型コンピューター、モニターに組み込まれている水銀の使用削減を促進するため、州を含む主要な利害関係者と緊密に取り組んでいる。この環境調達ツールに関するさらなる情報は、以下のウェブサイトで見ることができる。www.epeat.net

C.流通

1.物流分野でのテロ対策措置
a.交通保安:

米国政府は、安全保障上の要請と国際貿易円滑化の必要性との間でバランスをとることの重要性について、日本国政府と理解を共有する。このことは、一貫した慣行及び共通の手続を設定するという国際協力を通じて達成される。米国政府は、船舶及び港湾設備の安全性を評価するための共通の基準を規定する国際船舶・港湾設備規則を国際海事機関(IMO)と共に策定する作業において重要な役割を果たしてきた。米国政府は、現在、「ハイレベル戦略グループ」を通じ、国際貿易の安全確保及び円滑化のための「基準の枠組み」を実施するために世界税関機構(WCO)と共に作業を行っている。この枠組みは、経済的な繁栄にとって不可欠な通商をも円滑化する方法で、貿易の安全を確保する。

(1)貨物情報の事前電子提出:米国政府は、2002 年通商法施行に伴う事前電子貨物情報の実施に関する規則の策定過程において、国際貿易関係業界と非常に緊密に連携してきた。リスク評価を支援するための政府による情報要件を、貿易関係業界に過度な負担をかけることなく、正確かつ時宜を得た情報を確保するための、ビジネスプロセスと適切に連携させることが重要である。国際的整合性は、その影響を抑制する方法の一つである。

米国政府は、貨物データ要件における更なる国際的な統一化に向けWCO と協働する機会を歓迎する。C-TPAT は、総合的なサプライチェーン・セキュリティを向上させるための官民間のパートナーシップである。テロリストによる悪用からサプライチェーン全体をより効果的に保護する安全基準とベスト・プラクティスを実施する自発的なプログラムである。安全基準を自発的に実施することと引き換えに、C-TPAT 参加者は、貨物検査回数の低減を含む多くの利益を得る資格を有する。米国政府による調査は、C-TPAT 参加者は非C−TPAT 参加者よりも受ける貨物検査がかなり少なくなっていることを示している。

C-TPAT参加者は、非C-TPAT参加者と比較するとセキュリティ関係検査は6分の1、貿易関係検査は4分の1へと少なくなっていることに留意すべきである。このような検査回数の減少の結果、財政的な利益があることは明らかである。米国政府は日本国政府との議論を歓迎し、C-TPAT参加者のために更なる利点を探求する。米国政府は、C-TPAT関連規則の実施と更なる見直しの過程において透明性を向上させる努力の一環として、引き続き民間部門の関与を促進する。

(2)ACE:ACE(Automatic Commercial Environment:米国電子通関システム)は多年度にわたるシステム開発のサイクルを通じて実施される。ACEは、米国政府及び貿易業界双方の発展のための要請にこたえるべく設計されている。システム全般の現在及び今後の向上により、効率性の向上と書面作業の減少がもたらされる。重要な一里塚となるのは、カナダ及びメキシコから到着するトラックの事前電子貨物情報提出を支援する電子マニフェスト(積荷目録)の実施である。この「e-マニフェスト」システムは、現在、大規模な実施に向けて現場で試験運用されている。これは、2002年通商法が定める事前電子貨物情報提出要件の実施を支援するものである。自動マニフェスト・システムは既に鉄道、航空及び船舶貨物に対して実施されている。

b. バイオテロ法及び関連規制

(1)2002 年公衆の健康安全保障及びバイオテロへの準備及び対策法は、米国食品医薬品局(FDA)に対し、第307 条(輸入食品発送の事前通知)を含む同法の4つの規定を履行する規則について、規則案の告示及び国内外の利害関係者がコメントを提出するための機会を提供した上で、これらを制定する権限を与えた。FDA と税関国境保護局(CBP)は、2003 年10 月に暫定最終規則案を共同で発表し、バイオテロ法で定められているとおり、同規則が2003 年12 月12 日に発効する一方で、関係者に対し、同最終規則案の規定についてコメントを提出する追加的な機会を与えた。FDA とCBP は、施行にかかる裁量の行使についての履行指針を2003 年12 月に発表した(この履行指針は、最近では2005 年3月に改訂された)。FDA は現在、最終規則を制定していく中で、暫定最終規則案に対する意見募集期間に受け取った、日本国政府からのコメントを含むすべてのコメントと共に、履行指針が取り扱う分野について、これら規則が貿易に与える影響を可能な限り少なくしながら、バイオテロ法やその立法過程と整合し同法の目的を達成する規定を策定するという目的のもとに、慎重に検討している。

(2)米国政府は、2003 年12 月にFDA が最初に発表した履行指針(最近では2005 年3月に改訂された)において、非商用差出人から非商用目的のために米国に輸入され又は輸入のために提供される食品については、FDA やCBP は基本的に規制措置をとらないこととしており、それらの輸送手段が国際郵便であれ宅配便であれ、FDA 及びCBP は、事前通知が行われていなくても基本的にそれら食品の輸入を差し止めないこととしていることに留意する。http://www.cfsan.fda.gov/~pn/cpgpn5.html 参照。

(3)在日米国大使館は、日本の食品加工業者、日本郵政公社、商業宅配サービス業者及び一般の日本国民が、バイオテロ法の履行について高い関心を有していることを認識し、歓迎する。大使館は、日本の食品加工業者及び発送人に影響を与えうるバイオテロ法関連のいかなる重要な進展についても、大使館のウェブサイトにて日本語で関連情報を提供するように努める。米国政府はまた、日本国政府と緊密に協議しながら、日本を含む諸外国の国民、特に個人食品発送者及び中小の食品加工業者によるバイオテロ法の履行を支援するために、米国大使館・領事館を通じて簡単に入手できる利用しやすい資料の作成作業を行う。在日米国大使館は、バイオテロ法に関する広報活動をいかに効率的・効果的に改善していくかについて、日本国政府及び利害関係者と更に議論することを歓迎する。

2.コンテナ重量規制

a.国務省は、運輸省連邦幹線道路局(FHWA)の貨物輸送管理運営部(FMO)と、コンテナ重量制限に関する日本国政府の要望について協議してきた。FHWA のFMO は、議会の定めたところにより、米国内における大型トラックやバスの大きさ及び重量の連邦基準の各州による実施を監督している。FHWA は、米国内の商業用車両の重量制限に関する詳細な手引き書を提供している。

b.要約すると、連邦重量法は、全米州際・国防用高速道路システム及びそれら道路への合理的な接近経路に当たる道路に適用されるものであり、車軸にかかる重量、総車体重量、橋梁規格重量(車両の車軸の間隔及びそれが過重配分に与える影響について)といった基準に基づき商業用車両の制限を設けている。米国は、積み荷あるいは積み荷の中に入れられて動く箱についての重量基準を制定しておらず、むしろ、それらを含めた車両全体とそれに関連する車軸に係る重量についての基準を定めている。州際高速道路における最大総車体重量は、橋梁規格によってより軽い総車体重量が規定されているところを除いて、8万ポンドである。

c.州政府は、国際商取引(他国発又は他国向け)においてコンテナで輸送する貨物を「分割できない積荷」と見なす権限も有している。全州ではないが、様々な州がこの権限を行使している。したがって、仮に州の方針により、著しく重い日本のコンテナ輸送が「分割できない積荷」として規定されれば、当該州政府は、当該積荷を州際高速道路上で輸送することを可能にする重量超過許可証を発行することができる。同許可証を発行しようとする州政府は、「分割できない積荷」として認定するか否かを決定するに際して、重量超過貨物が幹線道路により大きな損傷を与えることを積極的に受け入れるかどうか(また、幹線道路に物理的に許容能力があるかどうか)を決定しなければならない。

d.米国政府と日本国政府は、本件について、引き続き意見及び情報の交換を行う。FHWA 及びFMO の「商用車の寸法・重量チーム」は、日本国政府に対して連邦重量制限について説明し、更なる懸念があれば議論する旨提案している。

3.米国の海運法

a.1920年商船法及び日本の港湾状況に関する報告要求:日米両政府は、1920年商船法に関し意見交換を行った。米国の行政省庁は、本件について日本国政府と引き続き協議・情報交換を行い、日本の港湾状況につき米国連邦海事委員会(FMC)に対し、随時報告することとする。

b.1998年外航海運改革法:日米両政府は、1998年外航海運改革法に関し意見交換を行った。

米国政府は、日本国政府の懸念に留意した。

4.新運航補助制度:

米国政府は、新運航補助制度の廃止を日本国政府が要望したことに留意した。

a.新運航補助制度(MSP)は、現在就航中の米国商船隊と、現在就航中及び予備の船舶運航に必要な訓練された要員が、海上輸送能力に関する米国及び全世界の安全確保の要請を満たすことを確保することを意図している。2003年11月24日に、大統領は、2003年海事安全法(MSA2003)を含む2004年度国防授権法案に署名し、2006年度から2015年度の間、60隻までに対し新MSPを作成することとした。新10か年計画は2005年10月1日に始まり、2006年度から2008年度において毎年1億5600万ドル、2009年度から2011年度において毎年1億7400万ドル、また2012年度から2015年度において毎年1億8600万ドルの支出権限を付与する。

b.米国政府は、日本国政府が、MSP補助対象船舶リスト及びMSPのいかなる変更について情報を提供されることを確保する。米国政府は、MSPが今日の世界的な安全確保の必要性を満たすために重要であると考えている。

5.各種貨物留保措置:

米国政府及び日本国政府は、アラスカ北岸産出原油の輸送を米国籍船のみ認めることとした法律を含む各種貨物留保措置について意見交換を行った。米国政府は、貨物留保等の措置が国際海運市場における自由かつ公正な競争の条件を歪めるおそれがあるとの日本国政府の意見に留意した。これらの問題について、米国政府は以下のとおり説明した:a.米軍貨物の輸送を含めて貨物留保法が適用される米国政府所有貨物は、外洋航海を伴う米国の対外貿易全体の1%未満である。

b.2000年4月以降、アラスカ原油の輸出はない。それ以降は、アラスカ原油のすべては精製及び米国国内消費のため米国西海岸市場へ輸送されている。

D.制裁法

1.イラン・リビア制裁法

a.米国政府は、本件に関し、日本国政府を含む米国の貿易相手国の見解を得られたことを評価する。米国政府は、日本国政府により提起された問題点に対して、イラン・リビア制裁法は、同法の規定に従い、同法の対象とされている活動を行った者に対して適用されるのであり、国籍による区別は無いことを説明した。また、同法が米国の国際法上の義務と整合的な形で適用されるべきとの問題意識を米国議会が有していることは、同法の立法経緯が示しているとの説明があった。米国政府は、これらの問題について、引き続き日本国政府と対話を継続していく。

b.米国は、リビアにおいて大量破壊兵器とこれを運搬可能なミサイルの廃棄が進展したことを受け、2004 年4月、リビアに対する本法の適用が停止され、本法の適用範囲が大きく変更されたことを再度指摘する。

2.1996 年キューバの自由と民主主義連帯法(ヘルムズ・バートン法)

a.米国政府は、1996 年キューバの自由と民主主義連帯法に関する日本国政府の懸念を理解する。同法の制定以降、大統領は本法第3章(没収財産に関する取引を行った者に対し、民事訴訟を提起することを認める)の適用延長が米国の国益にとって必要であり、キューバの民主主義への移行を促進するとの認識に基づき、6か月ごとに第3章の実施停止期間を延長してきている。適用延長の期間は同法306 条の規定で決められており、6か月を超える延長を一度に行うことはできない。

b.直近では、2005 年7月15 日に、大統領が同法に則り、同法第3章の実施停止期間を2005年8月1日から更に6か月延長する旨の書簡を議会に発出した。

3.地方レベルの制裁法:

過去の報告書でも言及しているとおり、ここ何年もの間、米国は、州及び地方レベルでの制裁の取組みが連邦政府の外交政策を支持するものとなることを確保すべく、州及び地方行政府に働きかけるよう相当の努力をしてきている。米国は、関連する国際的な義務にも留意しながら、今後も必要な場合にこうした努力を継続する。

E.競争政策

1.

反トラスト近代化委員会(AMC)は,2002 年の反トラスト近代化委員会法に基づき,2004 年4月2日に設置された。

a.委員会は、法律によって、以下の義務を負う。

(1)反トラスト法の近代化並びに関連する問題の特定及び調査の必要性の有無の検証

(2)反トラスト法の運用に関心を有するすべての関係者の見解を求めること。

(3)これらにより特定されたあらゆる問題に関する提案及び現在の計画の適否を評価すること。

(4)委員会による調査の結果及び結論が詳細に記載された報告書を準備し,委員会が適切であると考える立法又は行政上の措置に関する勧告書と共に議会及び大統領に提出すること。

b.2005 年1月13 日の会合において,AMC は,他の事項とともに,反トラスト法の適用除外に関する以下の問題等について調査することを決定した。そして,2005 年5月には,それらの問題のいくつかに関する詳細な論点に関してパブリック・コメントを求めた。

(1)反トラスト法の適用除外はそれらがもたらす利益によって正当化されない場合には撤廃されるべきなのか,さもなければ,それらを時限的なものとすべきか。

(2)ウェッブ−ポメリン法及び輸出業者法第3章に定められている輸出業者に対する反トラスト法の適用除外は撤廃されるべきか。

(3)国家行為理論は明確化されなければならないのか。さもなければ,変更されなければならないのか。

(4)ノエール・ペニントン理論は明確化されなければならないのか。さもければ,変更されなければならないのか。

c.2005 年3月31 日,AMC はその作業に関する予定表を公表した。その予定表によると,AMCは2007 年4月に最終報告書を議会及び大統領に提出する予定となっている。

2.

米国政府の競争当局は,引き続き,連邦反トラスト法の適用制限及び適用除外の適切な範囲について,その見解を表明する機会を求めていく。

a.これに関連し,2004 年6月,米国はジャクソン・テネシー病院会社対西テネシー・ヘルスケア社事件において,例えば市及び各病院の担当地域といったより下の段階の公共団体は,競争を規制又は独占的公共事業に置き換えるとする州の政策に従い州によりそれらの反競争的行為が是認されたものであること,及び,民間企業のように事業を行うことを単に是認するだけでは是認としては不十分であることを当該公共団体が証明できた場合のみ,シャーマン法の適用除外となる「国家行為」を主張できるとするアミカス・ブリーフ(訴訟において第三者が法廷に提出する意見書)を第6巡回区連邦控訴裁判所に提出した。

b.また,2004 年12 月,米国は,米国対Gosselin World Wide Moving 有限会社事件において,1984 年海運法が規定している反トラスト法適用除外は,国防省が支払う軍及び民間の物資を米国に輸送するための料金に係る入札談合に適用されるものと解釈すべきでないとする意見書を第4巡回区連邦控訴裁判所に提出した。

F.法律サービス及びその他の法律関連事項

1.外国リーガルコンサルタントとしての外国弁護士の受入れ

a.2002 年8月、米国法律家協会(ABA)は、すべての州がABA のモデル規則に基づいた外国リーガルコンサルタントの制度を採用することを奨励するとの決議を採択した。それ以後、ABA は、そのモデル規則に即した外国リーガルコンサルタント制度を有する州の数が増加するよう熱心な努力を継続した。これに関連し、2005 年、ABA の法律家規則に関する合同委員会は、各州の弁護士会の指導者たちと会合を行い、最高裁長官協議会と共に作業し、多数の州に対しモデル規則の実施に関する相談サービスを提供した。

b.ABA の努力に対して、2005 年、ペンシルベニア州とアイダホ州が、ABA モデル規則に基づく外国リーガルコンサルタント制度を採用した。さらに、ジョージア州は、それまで有していた外国リーガルコンサルタント制度をABA モデル規則と同等のものに改めた。これらの行動により、日本やその他の外国の弁護士に外国リーガルコンサルタントとして活動することを許容する米国内の司法管轄地域(注:州及びコロンビア特別区の単位を指す)の数は26となった。これらの26 管轄地域の法律サービス市場の収入は、米国における全法律サービス市場の収入の概ね85%となる。

c.また、2005 年、バージニア法律家協会は、バージニア州における外国リーガルコンサルタント制度の採用提案を承認し、現在、その提案はバージニア最高裁判所の承認を待っている。

d.米国政府は、ABA に対し、2004 年10 月の日本側要望書に記載された米国における外国リーガルコンサルタント制度に関する日本の見解を再び伝えるとともに、最高裁長官協議会、ABA のWTO サービスの貿易に関する一般協定(GATS)作業部会及びABA 専門職責任センターのしかるべき担当者へ伝達することを依頼した。

e.米国政府は、これらの問題について引き続きABA と共に作業を継続し、日本国政府に対し、日本側要望に対する州当局の回答を通知する。

2.製造物責任法

a.ブッシュ大統領は、司法改革は、包括的な経済拡大政策の基盤であると述べている。このため、ブッシュ政権は、不適当な不法行為訴訟や不合理な裁定によって企業が被っている不当な負担を軽減する固い決意を有しており、この目的に向けたいくつかの関連法案を支持している。

b.ブッシュ大統領は、問題解決を促進し、訴訟コストを抑えるため、医療過誤訴訟改革及びアスベスト訴訟改革のための立法を強く支持している。この目的に向けて、ブッシュ大統領は、これらの分野での改革を皮切りに、重要な司法改革法案を通過させるべく、引き続き議会と協働していく決意を明らかにしている。

3.クラス・アクション(集団訴訟):

2005 年2月18 日、ブッシュ大統領は、2005 年集団訴訟改革法に署名した。この法律は、州外の企業、労働者及び株主が、非友好的な地方の陪審団の前に引き出されたり、不公平な和解を余儀なくされたりしないようにし、他方で、集団訴訟は、被害者が適切な賠償を十分に受けられるものでなければならないという貴重な利点は保持した形で集団訴訟システムを改革するものである。具体的には、この集団訴訟改革法は、州をまたがる巨額訴訟のほとんどを連邦裁判所の所管に移し、弁護士が友好的な地方の裁判所で利益を得て回ることを防ぐ。また、この法律は、原告や集団訴訟が公平に扱われることを確実にするため、和解に対するより厳しい司法審査の要求を含む新しい防衛手段を備えている。この法案の成立は、集団訴訟改革における重要なステップである。

U.電気通信

A.米国無線市場への参加:

米国政府は日本国政府に対し、引き続き、コモンキャリア及び非コモンキャリアの分類及びタリフ及びノンタリフサービスの区別についての情報を提供する。

B.免許及び報告要件の緩和:

1996 年通信法は、連邦通信委員会(FCC)に対し、通信法に基づき電気通信サービス事業者に適用される規則について、意味のある経済的競争により公衆の利益に照らしてもはや不要となった規則があるかどうか、及びそのような規則は廃止又は修正されるべきかどうかを決定するため、見直しを行うことを義務付けている。米国電気通信市場への外国事業者の参入についての認証・免許付与の審査基準について、米国政府は日本国政府の二年ごとへの見直しへの参加を歓迎し、日本国政府によるいかなる提案もその意義に従って真摯に考慮する。

C.規制の予見可能性

1.情報サービスと電気通信サービスの二分法

a.2004 年3月に発表された「IP関連サービスについて(WC Docket 04-36)」と題された規則制定に関する意見招請(NPRM)において、FCC は、インターネット上で提供される音声サービスにより創造されるより多くの消費の選択肢をもたらし、通信市場において規制の安定のための措置を提供する機会について検討し、またインターネットベースのサービスの発展を更に促進するための手続を開始した。この意見招請では、インターネットサービスが最低限の規制に服するべきであるだけでなく、公共の安全性、緊急通報(911)、法の執行のためのアクセス、消費者保護及び障害者によるアクセス等の重要な社会的な目的を実行するメカニズムが、通信がインターネット関連サービスに移行するにつれて変化する可能性があることを認めた。当該手続において、FCC は特に以下についてコメントを求めている。

(1)IP関連サービスに対する管轄権に係る性質

(2)様々なIP関連サービスについて、連邦による管轄権を主張するための適切な根拠

(3)一つ又は複数の種類のIP関連サービスが伝統的な公衆通信事業者規制に関する排他的な連邦の規制の対象となることが考えられるか否か、またその根拠

(4)コメント提出者が特定したIP関連サービスの個々の分類に関する、その適切な法的な分類及び規制上の取扱

b.米国政府は、情報サービスと電気通信サービスの二分法的枠組についての見直しに関する情報提供を継続する。

c.6月27 日、米国最高裁判所は、全米ケーブル電気通信事業者連盟(NCTA)対Brand XInternet Services の係争に関し、ケーブルモデム・サービスを「情報サービス」と分類するFCC の決定を支持する判決を出した。2005 年8月、FCCは、有線ブロードバンドインターネットアクセスサービスは電気通信要素と機能的に一体となった情報サービスと定義づけられることを決定した。

2.UNE規則の策定:

伝送サービスに関する代替的なプラットフォームの出現(例:ケーブルモデム、電力線ブロードバンド、無線ブロードバンド)は、米国政府が設備ベースの競争を促進するためにどのような方法が最善であるかについて再検討することを促してきた。

2004 年、米国高裁はアンバンドル義務が適用され得る市場条件についてより適切に定義されるべきであるとの判決を行った。2005 年2月、FCC は、競争事業者へのアンバンドル要素の提供についての新たな規則を発表した。これらの改訂された規則により、アンバンドル義務はより対象を絞った形で課され、接続要求事業者は自ら設備ベースでの投資を行い、自ら用意した設備と関連付けられるネットワーク要素のアンバンドルを利用することとなる。当該取組は設備ベースの競争の便益を、産業再編のための技術動向との整合性を図りつつ、全ての消費者、特に中小企業顧客に対して拡大することを意図している。この規則は、通信事業者が自前のネットワークを設置する度合い及び「川下」の地域交換市場が長距離・無線市場を特徴づけているものと同様の活発な競争状況を示す度合いに応じて、アンバンドル義務を取り払うよう、設計されている。

3.ユニバーサルサービス:

日米両政府は、WTO 参照文書の約束に沿ったユニバーサルサービス制度を維持する継続的な意思を有することを再確認した。

D.州レベルの規制の調和

1.米国政府は、免許付与手続を含む州レベルの規制、州ごとの規制の調和に関する日本国政府の関心、及び統一された報告様式の採用について、日本国政府との対話を継続する。

2.この領域における日本国政府の懸念を考慮し、米国政府は、全米公益事業委員協会(NARUC)の成果に係る情報について日本国政府に提供する。

E.アクセス・チャージ

1.州際アクセス・チャージ

a.FCC は、現在、事業者間精算の法制度を形成するため勧告の見直し及び更なるコメントの招請の過程にある。2005 年3月、FCC は多種多様に存在する事業者間精算の法制度を、競争の活発化及び新たな技術により特徴付けられた市場のために設計された統一された制度へ置き換えることを目的として、規制制定案に関する更なる意見招請(FNPRM)を発表した。前回の規制制定において、FCC は現在の事業者間精算制度(アクセスチャージ及び相互補償)に関する数多くの課題を認識し、事業者間精算の統一された方向性を見出すことについての関心を表明した。FCC は連邦通信法251 条(b)(5)が適用される相互補償支払いに係るビルアンドキープ方式についての意見を募集した。FCC は、現行のコストベースでの事業者間支払いの要件に基づき設計された代替的な改革措置についても意見を募集した。

b.いくつかの事業団体は既存の事業者間精算制度の包括的な改革についての提案を行い、これをFCC に提出した。前述のFNPRM において、FCC は、これらの提案への法的、経済的基礎並びにこれらの提案により示唆される最終利用者への影響及びユニバーサルサービスの課題に関するもの含め、提案についての意見招請(http://www.fcc.gov/wcb/ppd/により入手可能)を行っている。提出された包括的な改革提案に加えて、FCC は、既存の事業者間精算及びコストの基準の変更を含む代替的な改革施策についても意見を求めている。FCC は、透明かつ公正な手続を通じて事業者間精算制度を引き続き改革する。

2.州内接続料:

通商代表部(USTR)は、特定の州により利用されているTELRIC モデル及びこれらのモデルの形成過程への参加の機会についての日本国政府からの情報提供要請の支援を行うため、合理的な措置を採る。

F.商用衛星に係る輸出許可及びTAA 許可等の処理手続

1.商用通信衛星の輸出許可及び技術支援(TAA)許可について、米国政府は米国の法律、規制、政策に合致する範囲内で、その遅れを最小化し、透明性を最大化する努力を継続する。例えば、米国政府は現在、免許手続が容易になるよう、ウェブサイトによりより多くの文書様式を提供し、オンラインによる申請の利用を増加させてきている。米国政府は、このシステムによる改善状況について、可能な限り日本国政府からの情報提供の要請に応じる。

2.米国政府と日本国政府は、商用衛星の輸出免許に係る有益な情報交換を行った。日米関係の重要性にかんがみ、国務省は必要に応じ、特定の事例について日本国政府と議論する用意がある。

G.電気通信機器の貿易の促進

1.総務省と米国連邦通信委員会(FCC)は、非公式の会合を重ねた結果、電気通信機器分野と電磁両立性(EMC)分野のそれぞれで適当な相互承認の方式について認識を共有するに至った。

電気通信機器分野については、日米両政府は、政府間の相互承認協定を、可能ならば2006年早期に締結することを目的として、2005 年11 月に政府間公式交渉を開始する予定である。

2.EMC 分野については、米国政府は、認定機関から認定を受けた日本の適合性評価機関が行ったIT 機器及び工業、科学、及び医療用装置(ISM 機器)に係る適合性評価結果の受入れを可能とする措置の策定を日本と協力して行う用意があることを確認した。

H.ネットワーク回線終端装置(NCTE):

日本国政府は、1990 年のネットワーク回線終端装置(NCTE)に関する書簡(1990 年書簡)についての、首脳への第三回報告書に記載されている簡素化された手続の廃止に関する提案について、パブリック・コメントを招請する。改訂された手続に対する継続的な必要性を証明する十分な証拠が利害関係者からパブリック・コメント手続を通じて提出されない場合、1990 年書簡は2006 年度以降適用されないこととなる。

V.情報技術

A.著作権・著作隣接権の保護

1.米国政府は、利用可能化権、生の実演に係る権利、人格権を確実に保護することの重要性を認識する。米国政府はまた、日本国政府が固定されていない著作物の保護を重視していることを認識する。米国政府は、著作権法を含む米国法におけるこれらの著作物の明確かつ確実な保護を求める日本国政府の要請に関し、日本国政府と一連の生産的な議論を行ってきた。

日米両国政府はこれらの問題について議論を継続していく。

2.米国政府は、十分な保護を継続的に確保するため、人格権の保護に関する判例法の今後の展開を継続的に注視していく。

3.米国政府は、コンピュータプログラムに係る貸与権の保護について、特にビデオゲームのプログラムを重視して、日本国政府との議論を継続していく。

B.デジタル・ミレニアム著作権法の下での権利の十分な保護:

日米両政府は、著作権所有者の権利とISP 及び侵害者と目される者の利益の間の適切なバランスを取ることの重要性を認識した。これに関連して、米国政府はこの分野における将来の判例法の展開を注視し続ける。

C.インターネットの普及とデジタル技術の発展に関する新たな著作権問題:

日米両政府は、技術的手段の回避に対する十分な法的保護及び効果的な法的救済について、有意義な情報交換を行った。米国政府は、あらゆる分類の著作物につきそれらを合法的に使用する際のアクセスコントロール技術の回避に関するデジタル・ミレニアム著作権法の規定の影響について検討し、適切な例外を設ける。この検討は2005 年10 月3日の最初のパブリック・コメント募集をもって開始した。両国政府はこの問題について、継続して議論を行う。

D.知的財産権保護の強化に向けた日米協力

1.日米両国は、海賊版や模倣品が全世界で取引されているという深刻かつ増大しつつある問題に対処すべく、最近、主要な新政策を策定した。2004 年10 月、米国は「STOP!イニシアティブ」を、2005 年6月、日本は「知財推進計画2005」を打ち出した。

2.知的財産権分野における日米双方の施策の策定に加え、日米両国は、これまで、知的財産権の保護及び執行を強化すべく堅密な協力関係を維持してきており、今後ともこれを維持していく。多国間協力と共に、日米両政府は、例えば、

a.2004 年11 月及び2005 年4月に、アジア及び世界中で知的財産権保護・執行を促進すべく、二国間協議を開催した。

b.「APEC 模倣品・海賊版対策イニシアティブ」を共同提案し、この提案は2005 年6月に韓国において開催されたAPEC 貿易担当大臣会合において承認された。

c.規制改革イニシアティブの下、デジタルコンテンツの海賊版対策に向けて協力する方法について協議した。

3.日米両政府は、二国間、地域内、多国間協議の場において、世界規模で知的財産権保護をより強力に促進するため、引き続き協力する。

W.エネルギー

米国政府は、米国のエネルギー市場の機能を改善するよう、包括的なエネルギー政策を推進する措置を行っている。このプロセスは日本国政府により歓迎されている。

A.連邦エネルギー規制委員会(FERC)の規制政策及び措置

1.戦略計画に反映されているように、FERC の目標は、一貫した政策による高品質かつ環境上信頼できるインフラの確保、従来の規則に代わる全国規模の競争的なエネルギー市場の育成、及び従来の規制市場と移行しつつあるエネルギー市場両者の厳重かつ公平な監視を通じた需要家と市場参加者の保護である。

2.FERC の開かれたかつ透明な政策立案手続は、すべての利害関係者に対し、そのプロセスに参加する機会を与え、市場の状況に敏感な投資環境を支えている。その対外広報活動の一環として、FERC は、利害関係者が政策決定に関与できる公開の会議を定期的に開催している。提案された規則は、正式な規則制定に関する告示(NPRM)プロセスにより公表され、更なるパブリック・コメントの募集が行われる。法律に基づき、このプロセスは、提案された規則によって最も影響を受ける者だけではなく、一般の人々が提案の条項及び要件についての懸念を示す十分な機会を持つことを保証するものである。FERC はコメントする者すべての懸念について注意深く考慮に入れるため、FERC によって承認された最終規則は、最初に提案された規則と大きく異なり得る。FERC では、現在多くの規則制定が進行中である。

3.FERC は、引き続き全国規模の競争的なエネルギー市場を育成していく決意であり、より積極的なエネルギー産業への投資環境を促進するための努力を続けている。この観点から、FERCは電力の送電インフラへの投資に関する一連のインフラ会議や技術的なワークショップを行ってきた。6月15 日には、FERC は「送電網の効率的な運用及び拡大のための料金政策案」の採用に関する措置を行った。

B.連邦と州の規制

1.米国の行政制度上、エネルギー規制については、連邦と州はそれぞれ別々の責任を付与されている一方で、FERC は卸電力市場を全州間でより統一されたものとするための措置を講じ続けている。FERC は、すべての公営送電事業者のオープンアクセス送電約款に含まれる新規の発電設備設置者が系統連系する際の手続や規定を更に統一化する、大規模電源の系統連系に関する標準規則を発行した。その最終規則は2003 年7月24 日に制定され、最終規則を施行するための行動指針は2004 年12 月20 日に制定された。小規模電源の系統連系を標準化するための第2次最終規則は、2005 年5月12 日に制定された。第2次最終規則は各州の全米公共事業委員協会(NARUC)によって推薦されているベストプラクティスを数多く採用している。また、風力発電設備の系統連系に関するNOPR は、2005 年1月24 日に発表された。

2.加えて、FERC は卸電力市場における効率性を改善し、信頼性のある電力供給を電力の消費者に対し可能な限り低額の料金で提供することを確保するため、地域送電機関(RTO)や独立系統運用機関(ISO)の形成を促進してきた。2005 年5月11 日、FERC はスタッフドキュメントを発行し、RTO やISO によって運用される電力市場における長期的な送電権に対するコメントを提出するよう、すべての利害関係者に呼びかけた。

C.包括エネルギー法:エネルギーの生産と流通の仕組みを近代化することを目的とした2005年エネルギー政策法は、2005 年8月8日、ブッシュ大統領が署名し成立した。この法律は、以下の内容を含んでいる。

1.電力送電網の拡大又は近代化及び天然ガスパイプラインの建設に対するより優遇的な税制措置

2.電力送電網の信頼性に関する強制力のある連邦規則の設立

3.LNG 輸入ターミナル承認に係る明確な最終的権限のFERC への付与

4.公益事業持株会社法(PUHCA)の廃止

D.公営事業の見直し:

米国政府は、自由化された市場における競争に対して公営事業者(POEs)が与える影響を引き続き評価していく。また、FERC は、定期的に米国公営電気事業者協会(APPA)や全米農村電化協同組合協会(NRECA)と、市場に関する多数の問題について協議している。

多くのPOEs は、既にFERC のオープンアクセス送電政策に沿った送電サービス料金を設定している。2005 年エネルギー政策法は、FERC に対し、POEs を含むすべての送電事業者間におけるオープンアクセスの確保を許可するものとなっている。また、FERC は、ISO やRTO に対し、POEsをメンバーとして加えるよう、積極的に奨励している。一般的に、独自の発電設備を所有しない自治体は、電源の調達機会を、すべての投資家が参加可能な競争的な発電市場からの卸供給に依存している。

E.卸売市場における上限価格規制:

FERC は、市場支配力の乱用を抑えるために必要かつ唯一の手段である場合、卸電力に対して上限価格又は入札上限を課すことが可能である。規制の性格がこのようなものであるため、FERC は市場参加者の健全な経営判断を阻害しないよう、抑制的にこの権限を行使する。

F.一般の信頼とエネルギー市場

1.FERC 及び商品先物取引委員会(CFTC)は、エネルギー市場を積極的に監視している。この観点から、FERC は、そのスタッフの規模と経験を大きく増大させることで市場監視能力を強化した。FERC に市場監視捜査局(OMOI)が新しく設立された際には、約50 名が外部から採用された。OMOI は現在、米国の電力及び天然ガス市場の監視及び監督に従事する約100 名のスタッフを擁している。

2.また、2004 年に、FERC は公営送電事業者及び天然ガスパイプラインに対する行為規制の基準の改訂版を制定した。加えて、FERC は、会計監査及び調査能力を増強させ、積極的に違反を追及している。FERC の調査結果は、一般に公開されている。

3.OMOI は、2002 年10 月に制定された「金融証書、包括的利益、デリバティブ及びヘッジング活動の会計基準及び報告」に関する規制を執行し、適切な場合に必要な行動をとる。

X.医療機器・医薬品

A.FDAの外国業界との会合:

厚生労働省は、米国その他の在日外国製薬業界及び医療機器業界と直接意見交換をする有意義な機会を継続的に提供してきた。FDAは、医療機器・医薬品の規制等に関して、FDAに申請書を提出した日本その他の外国製薬企業及び医療機器企業と議論するための継続的かつ有意義な機会を提供している。同様に、日本その他の国の業界団体は、FDAのウェブサイトで情報の提供を受け、公聴会に参加する機会を得、また、FDAとの直接会合を持つ機会を得ている。

B.日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインの遵守

1.国際的に調和されたガイドラインを適時に実施するという意図をもって、FDA及び厚生労働省は、そのようなガイドラインの導入と遵守に関して、ICHの場で議論を行っている。

2.ICHで議論されているように、FDAは引き続き、国際的な環境で使用するようデザインされたMeDRA用語集を使用し続けることを完全に支持する。

3.非げっ歯類を用いた、新薬の慢性毒性試験の期間に関し、FDAは、ICH運営委員会を通じた厚生労働省からの求めに応じ、ICHガイドラインで定められたよりも長い期間を要求している事例数につき、最新の情報を提供し、この問題の解決を技術的に行う意志を有する。

C.医療機器規制国際整合化会議(GHTF)合意事項の早期実施:

規制システムが世界的に収斂することの重要性を認識し、FDAは、「医療機器の安全性及び性能の基本要件」その他、米国において未だ完全に実施されていない事項の実施に向け努力すると共に、GHTFの枠組みの下で関連各国の規制当局と技術的議論を深めるよう努力している。

D.医療機器及び医薬品の品質管理(GMP)基準に係るMRA又は同様の情報共有措置に向けた相互合意アプローチ:

2005年4月に日本において改正薬事法が施行され、医療機器・医薬品の承認にGMPの確認が必要となることから、GMP相互承認協定又はそれと類似した協力関係が構築されれば、画期的な医療機器・医薬品をより迅速に市場にもたらすことが可能となる。GMP相互承認又はそれと類似した協力関係の構築を目指し、厚生労働省はFDAに対し、日米間の医療機器・医薬品のGMP協力を前向きに推進するよう強く働きかけを行ってきた。FDAは、MRAを追求しないとしてきたが、最近FDA、厚生労働省、総合機構との間で結ばれた秘密保持協定のような、三者間のより密接な協力は、米国及び日本企業によって開発された医療機器及び医薬品への患者のアクセスの改善につながりうると共に、これが日米両国の関連産業の利益になることを認識する。FDAと厚生労働省は、資源と法的能力の制約の範囲内において、ある一定の情報を共有するための相互合意アプローチを追求し続ける。一層の協力を推進するための手段として、FDAは厚生労働省に対し、医療機器及び医薬品の製造者への査察結果を含む、規制の対象となる工場のコンピューター化された登録簿であるFACTSデータベースへのアクセスを認めてきており、厚生労働省が登録情報について明確化を要請する際は、そのような情報を提供する。FDA及び厚生労働省は引き続き、医療機器に関する情報及び医薬品のGMP査察報告書を共有するための手続について議論する。医薬品GMPについては、FDAと厚生労働省は既に覚書に係る書簡の交換を行い、査察報告書の写しを相互に提供する旨合意した。これとは対照的に、医療機器についてはこのような協力関係の構築がなされていない。第一段階として、FDAは、厚生労働省及び総合機構からのQMS監査情報の要請にケースバイケースで応える意志があることを示した。この事項は、秘密保持協定に関する枠組みを構築する際、厚生労働省とFDAにより議論される。医療機器に関する監査に係る日米両政府間の協力を促進するため、厚生労働省とFDAは、枠組みに含まれるべき更なる具体的な措置を追求する。

E.治験の実施に関する基準(GCP)に関するMRA又は同様の情報共有措置に向けた相互合意アプローチ:

日本においてICH-GCP基準が導入され、経験が蓄積されてきていることを踏まえ、FDAは、日米間のGCPに関する情報交換を促進するため、厚生労働省及び総合機構の職員に対し、資源の制約の範囲内で研修を提供する意志を有する。厚生労働省、総合機構及びFDAはこの件について議論を行い、相互に合意するアプローチを形成する。

F.治験薬(IND)申請のデータ要件の簡素化:

FDAは、新薬申請のための治験段階において製造・管理に関してどのような情報が必要であるかについてICHにおいて議論する意志を有するとともに、治験薬申請の簡素化に関する今後の具体的な方法について、FDAと厚生労働省との議論の枠組みにおいて検討する意志を有する。

Y.金融サービス

A.企業再編時における外国証券発行企業に係る登録要件

1.1999 年に米国証券取引委員会(SEC)は規則を採用し、買収企業及び被買収企業が外国企業であり、米国居住者による被買収企業の株式保有が10%未満である場合は、登録を免除することとした。SEC の職員は、この規則が域外適用の効果を有しているという日本国政府の見解を認識している。SEC の職員は、この水準を引き上げることについての日本の関心を認識している。しかしながら、この規則を採用する際、SEC は登録免除の目的と投資家保護の公益にとって、望ましく、また適切である米国人の持分比率の水準を注意深く検討した。

2.さらに、米国人株主比率が10%以上であっても、相反する規制上の義務や募集慣行に対応するために、より外国企業向けに整備された救済策が取り入れられてきた。したがって、合併、買収その他取引に関与する日本企業であって、10%以下であるという条件を満たさない企業は、SEC の職員に対し具体的に懸念を提起することが勧められる。

B.金融持株会社の資格:

最近まで、日本と同様、米国は商業銀行と投資銀行との統合を制限してきた。グラム・リーチ・ブライリー法において、米国の預金受入金融機関の子会社が、資本と経営について、非常に高いプルデンシャル基準を満たしている組織に限って、これらの制限を撤廃することを議会は決定した。自由化の資格を有する組織は、金融持株会社(FHC)として知られている。外国銀行は、内国民待遇の原則及び競争機会の均等原則を適正に考慮し、FHCとなっている米国の銀行持株会社傘下の銀行子会社に適用されるプルデンシャル基準と同等のプルデンシャル基準を満たした場合、FHC となることができる。この基準はすべての外国銀行に対して無差別に適用される。資本要件を満たすための政府の支援への依存は、資本の同等性を決定する上で考慮される数々の要素の一つである。単一の決定要因はない。30 を超える外国銀行がFHC となっている。米国政府は、これらプルデンシャル基準を満たすいかなる外国金融機関によるFHC 資格の申請も歓迎する。

C.外国投資信託/会社の商品販売・勧奨に係る規制:

1940 年投資会社法の下に制定されているSEC 規則7d−1 は、文言上はカナダの投資会社のみに適用されるものであるが、SEC は歴史的に、同法第7条d項の命令を求めているカナダ以外の外国投資会社に対しても、同規則の条件に従うよう求めてきた。例えば、1954 年から1973 年の間に、SEC は、カナダ、オーストラリア、バミューダ、南アフリカ及び英国の投資会社に対して第7条d項の命令を発出している。

これらの各命令において、申請者は、7条d項の命令を取得する上での必須条件として、規則7d−1 の条件に従うことに同意した。いくつかの事例においては、SEC は、規則7d−1 からの限定的な適用除外を付与している。例えば、1979 年、カナダの投資会社に対し、米国の銀行の日本支店に保管されている日本の保有株式を維持することを認めたが、認めなければ規則7d−1 に違反していたことであろう。(Templeton Growth Fund, Ltd.の事例(投資会社法に関する発表10628(1979 年3月13 日)及び10657(1979 年4月11 日)を参照のこと))。SEC の職員は、引き続き、日本で設立されたものも含め、外国の投資会社からの7 条d 項の命令申請を検討する用意がある。さらに、米国の資産運用サービス市場にアクセスする追加の手段も存在している。実際、ミューチュアル・ファンド業界においては、容易にSEC に登録できることとなっている外国の投資顧問業者が行う、米国の投資家へのサービス提供及び米国内で組織されるファンド設立の能力が、SEC 職員の解釈と革新によって、著しく向上してきている。

D.外国の上場投資信託(ETF)への米国投資家の参加:

ETF は伝統的な投資会社とは異なる運営がなされているため、米国のETF は投資会社法の一定の条項の適用除外を求めなければならない状況が続いている。いくつかの事例では、米国のETF に適用除外を付与する上で、SEC は投資会社法24 条の目論見書の交付義務からの適用除外を付与している。それによって、目論見書抜きで、セカンダリーマーケット(流通市場)において、購入者へ株式を販売することを認めている(iShares Inc. and iShares Trust の事例(投資会社法に関する発表25623(2002 年6 月25 日)を参照のこと))。米国のETF と同様に、米国以外のETF も、7条d項の命令に加え、投資会社法による登録の適用除外を求めなければならないであろう。さらに、米国のETF と同様、米国以外のETF も、適用除外の申請の中で、投資会社法24 条の義務からの適用除外を求めることができる。