「システムの管理を任されている立場上、 ……いやおうなく社内恋愛や社内不倫の実情をすべて把握してしまった」 (宝島社『遊ぶWindows』2000年1月号、p.101)
電子メールは一般に電話や郵便より安上がり。電話と違い相手のつごうのいいとき読めるし、 郵便より速い。安くて、べんりで、速い。こんなにいいことずくめの裏には、 当然それ相応のリスクがある。
メールはどこをどう通って配達されるか分からない。発信サーバ、受信サーバはもとより、 途中で通るすべてのサーバ管理者は、その気になれば簡単に誰のメールでも読める。 アメリカでは会社から私用メールを使ったためクビになった社員もいる。 上司には読まれていると仮定しておくほうがぶなんだ。 システムに侵入したハッカーやクラッカーもメールを読み放題。 しかもシステムの多くは穴だらけ。 1999年の hotmail のように、システムそのものに欠陥があって、 一般の第三者が他人のメールを読めてしまうこともある。 いずれにせよ、ほとんどタダのようなお気軽な通信手段に、 厳重なセキュリティを期待できるハズがない。常識で分かることだ。
他人に読まれてもいいような、どーでもいい内容のメールは、それでいいかもしれない。 でもプライバシーにかかわるような重要な通信は、暗号化するのがぶなんだ。 インターネットではPGPのような高度な暗号技術を無料でゲットできる。 とはいえ、一般の人にとって、PGPはまだまだ扱いにくいし、 そもそも軍事機密を扱うのでもないのに、そこまで暗号強度を高める必要もあるまい。
AVAIN(アヴァイン)のコンセプトは、「カジュアルな暗号」だ。 初心者でもすぐ使える。どんなメーラでも使える。完全に日本語対応。とくに、 暗号鍵(詳しくは後述)に日本語の全角文字が使えるのが非常にべんり。 日本人なら日本語のほうが覚えやすいのは当たり前だ。 半角英数字のパスワードは自分で設定を忘れてしまいがちだし、タイプミスもしやすい。 さらにまた、AVAINは、けっこう暗号強度が高い。軍事機密のやりとりに適するかは分からないが、 一般人のプライバシーを守るにはそれなりに充分の性能を持っている。 暗号学でいう「選択暗号文攻撃」に対して拒絶的な態度をとるので、 もし仮に暗号文を盗まれても、鍵が分からない限りまずクラックは不可能だ。
メールを暗号化するソフトも市販されているようだが、 Windows だけでいいなら、無料で使えるAVAINを試してほしい。
黄緑に青い?印がAVAINのアイコン。これをクリックすると起動する。
AVAINを起動すると、次のような細長いメニューバーが現れる。
「暗号文を作成」をクリックするか、 [F11]キーを押すと、次のような編集画面が現れる。ここに暗号化したい文章を書き込もう。 もちろん、いつものメーラやメモ帳で書いてペーストしてもかまわない。
書き終えたら「暗号化」をクリック。すると暗号鍵を尋ねられるので、 送受信者のあいだであらかじめ打ち合わせておいた秘密の「鍵」を入力する。 ふつうのパスワードと違い、日本語が使える。ここでは仮に「水瓶座の時代」 という語句で「文章に鍵をかける」としよう。
「OK」をクリックすれば、たちどころに暗号化が完了。あとはこれをペーストして、 相手に送るだけでいい。
受信メーラに制限はない。Windows同士なら、どんなメーラ間でも問題ないし、 暗号文はアスキーストリームなので外国のサーバで受信して文字化けの心配はない。 次はアウトルックエクスプレスで受信した例だ。
受信者は、AVAINを起動して「暗号文を解読」 をクリックするか、[F5]キーを押す。するとダイアログボックスがひらき、 解読したい暗号文をペーストするように言われるので、 届いた暗号文を貼りつけよう。
「解読」をクリックすると、暗号鍵を尋ねられる。
打ち合わせどおり「水瓶座の時代」とタイプして[OK]をクリックするか[Enter] を押せば、元の文章が復元される。
もし万が一、だれかが暗号文を入手して、あてずっぽうの「鍵」 をタイプするとどうなるだろう?
AVAINは強い。解読に失敗する以前に、 不正な「鍵」に対しては解読動作を拒絶するのだ。 クラッカーは何がどう悪かったかのヒントを得ることすらできない。
1 当たり前のことだが、送信者と受信者の両方がAVAINを持っていないと始まらない。 フリーウェアだから、勝手にどんどんコピーして配布してかまわない。 「妖精現実」または、 そのミラーサイトからもダウンロードできる。 ただし、Windowsソフトだから、マックとかの人は使えないよ。
2 送信者と受信者は、あらかじめ「暗号鍵」を打ち合わせておかなければならない。 これが対称暗号の宿命だ。鍵の打ち合わせには、なるべく安全な通信路(直接会って話す、 fax、ログが残らないクローズドのチャット)を使おう。
暗号鍵には日本語の全角文字(漢字など)が使えます。日本語のほうが間違いがないので、 鍵は、従来の半角英数字ではなく、日本語になさるよう、おすすめします。 (半角英数字や半角カナでも動作上は問題ありません。)
3 AVAINは少数の相手とのプライベートな通信に適している。 不特定多数の相手と暗号通信を行うには、PGPのような非対称暗号(公開鍵暗号) の使い方を学ばなければならない。
4 解読した暗号メールは、必要なら、メモ帳などに貼りつけて保存してください。
5 このソフトは、メールのやりとりだけでなく、個人的なメモを暗号化するのにも役立ちます。 例えば、家族があなたのパソコンをいじるかもしれないような環境で、 だれにも見られたくないメモに鍵をかけておくことができます。
6 AVAINをよく使う場合は、デスクトップにショートカットを作っておこう。 非常に頻繁に使う場合は、タスクバーにショートカットを作ろう。