2002-03-04 トラブルが発生していろいろ話題になっているMorpheusですが(音楽交換サービスの米MusicCityが攻撃を受ける ~「Gnutella」ベースへ移行へ|『モーフェウス』がファイル交換ソフトのアップグレードで機能停止|ファイル交換ネットワーク『カザー』を取り巻く複雑な状況)、うわさの Preview Edition を手元でも試してみたら、これも Gnucleus 1.6.0 ベースでした。まえ紹介した中国版グヌーテラも Gnucleus を使ってました。ご承知のように、ファイルローグや WinMX と違って、Gnutella はソフト固有のプロトコルでなく、オープン・プロトコルですから、このプロトコルをしゃべるクライアントは違うソフトであってもぜんぶ直接、つながります。Gnutella というソフトがあるわけじゃなくて、Gnutellaというのは、いろんなソフトがソフトの違いを越えて混乱なくスムースにやりとりするための、やりとりのしくみのことです。(歴史的には、Gnutellaというソフトがあって、現在のいろんなソフトは、Gnutella互換ソフト各種。)
CNETのMorpheus Preview Edition 1.3.3.1 だけでも、きょう現在で約6000万ダウンロードと出てます。ほかの場所からダウンロードするユーザも多いでしょう。本家Gnucleus(GPLなオープンソースの Gnutellaクライアント)よりカラフルで楽しいですが、もちろん基本機能は同じ。このサーバントはGネットでGnucleusを名乗るので、どのくらいのノードでこのサーバント・マシンが使われているのか分かりません。が、経験上は、やはり LimeWire が多く、あとたまに Bareshare という感じで Gnucleus は、それほど多い感じがしません。MusicCity系のナップ難民は、まだそれほどGネットに大移動して流れてきてないのでは、という感じがします。1ノードから見ての漠然とした感じなので、あまりあてになりませんけど、今後、音楽系の大きなP2PネットがGnutellaプロトコルを採用してGネットにつながると(かつてパソコン通信ネットがインターネットの一部になったときのように)Gネットが急に大きくなるなぁとは思ってます。
2002-03-07 追記: Morpheus 大ブレイク? - Morpheus は Gnucleus と名乗る、と書きました。実際シェイクハンドを見るとそうなのですが、Gnucleus自身は、姉妹クライアントの Morpheus(Gnucleusと名乗る)を「Morpheus」と認識するようです。下図は5件ヒットした相手が全部 Morpheus という場面。数日ぶりにグヌーテラにログオンしてみたら、いきなりこれ。6000万ダウンロードはダテじゃないってことでしょうか。
Gnucleus 1.6.3.0 にて
最近まで Morpheus なんてグヌーテラネットで見なかったのに MusicCityのトラブルで意外な展開? でも、本当でしょうか。Gnucleus と名乗るのに、なんで Morpheus に見えるのだろう。あんがい Gnucleus のバグで誤認してるだけだったり。
以下で説明するように、音楽交換に興味がないユーザにとっても、音楽系との融合でノードが増えることは大きなメリットです。Gネット自体のポテンシャルがあがるからです。
あんまりメイジャーになると、音楽の版権者とかがぼうだいなカネをかけて潰しにかかってくるでしょうから、拡大は必ずしもありがたいことばかりじゃありません。Gnutella 自体のおもしろさ、というのは、前にもネットマップを描いたときにふれましたけれど、文字通りこの脱中心系自体のオブジェクトとしてのおもしろさであって、そこを流れるデータはむしろどうでも良いのです。例えば、脱中心系で、大規模・分散的検索エンジンを構築できたら理論上、すごいパワーになる、ということは、前から言われていました。グーグルなんかと違って、いまこの瞬間のネットをリアルタイムで「なめまわす」ことができるからです。すなわち、ひとりが6ノードに尋ねて重複なしに10ホップまで見たとすると(グヌーテラ・リクエスト『あなたがアクセスできるデータのなかに「アンナ・カバン」に関するものがあったらデータの位置を返してください』、グヌーテラ・レスポンス『ありませんでしたが、6ノードに中継しました』……『見つかりました、位置これこれを参照してください』)一瞬にして、リアルタイムにものすごい範囲のネットを見る千里眼が手に入ることは想像がつくと思います。もし仮に大半のネットユーザがグヌーテラ・サーバントを導入すれば、という仮定の話ですが……。特に「ありませんでした(Not Found)」なら返事せず、見つかったときだけ返事をよこすようにするとかなり魔法的なことになります。近所の6ノードに「これ知ってたらおしえて」と言うと、ネットワーク的に非常に遠方の友から「ここみてみ」と瞬時に答えがくるんですから。
しかも、ノードの「持ち主」であるユーザ(人間さん)が検索してくれるのでなく、「持ち主」が知らないうちに、ノード自身が機能することに注意。
そういったことがヌーテラの真のポテンシャルです。mp3以外も交換できる、とかは、本質から派生する皮相のひとつにすぎません。
言い換えれば、いまグーグルがサーバダウンしたら世界中の検索が麻痺するが、Gnutellaのような脱中心系では、となりのノードが沈黙しても、すぐに別のノードにつなげて一定数以上のシナプスをつねに維持するので、きわめて安定したパフォーマンスが得られるわけです。ネット自身が考えるようになる、と申せましょう。
「考えるネット Gnutella」: 実際のマップの例。赤い円が自ノード
このような脱中心系自体の展望を考えるとき、もせ(mp3)ごときのくだらんことでP2P自体がつぶされては、かないませんから、逆に考えると、mp3なんていうHTTPで流しても軽い物体をこっちにもってこないでほしい、というような思いもあります。しかし他方、mp3 は、P2P系が自立して走り出すまでのあいだにP2P系がちゃんと機能するかのサンプルデータにちょうどいいわけです。まったくランダムのデータだと壊れずに流せているのかよく分からないし、ランダムのデータを流してMD5の一致を確認し「系自体の美」を味わうようなヘンタイは、そう多くないでしょうから。
現時点でヌーテラがテスト中だというのは、ほぼ脱中心でありながら、しかしまだ「最初の接続」だけは特別な(常に生きていることが期待される)いくつかの「ルータ・ノード」を利用する、という点がひとつあります。本当の分散、「超分散」は、ネットにログオンするための(ネットが見えるようになるための)最初の接続も、「無から取り出せる」べきです。さもないと、ルータノードが違法になるようにまた法律をねじ曲げることで、ネット全体をつぶせてしまうでしょう。現実世界なら「おーい」と声を出すと、つねに誰かしら聞きつける、ということに相当します。ヌーテラでいうと、まずGネット人口自体がもっと増えること、そして(たぶん)従来のIPアドレスをラップするような形で「となりにだれがいるか」安全に(低コストで)スキャンする方法が確立されること、さらに6ノードなどでなく事実上、無制限のシナプスを同時に維持できる帯域とマシンのリソースが確保されること —— などが関係しそうです。Gネットに接続している友がひとりでも見つかれば、そこから芋づる式にネット全体が見えるようになるので「ひとりの隣人」が世界への扉なのです。(ポエジー)
もうひとつ重要なことを指摘します。「広帯域・常時接続が広まると、P2Pで動画や音楽やアプリの版権ものが流れまくってP2Pはけしからん」という見方がありますが、脱中心系にとって、ノード間の広帯域がもたらす恩恵の本質は、動画やアプリといったボディがそこを流れるということより、大量のヘッダパケットをさばきあえるようになる、ということです。グヌーテラをやってるかたには常識的なことですが、ヌーテラネットに接続しているあいだじゅう、となりのノードとのP2Pのやりとりのほとんど100%は、第三者のリクエストを中継することです(転送量じゃなく呼数の割合)。いわゆるファイル交換(グヌーテラの場合、実際には交換じゃなく一方向ですが)をしてないときでも、ダイヤルアップのモデムのユーザだと全帯域を使い切ってしまうほどパケットをさばきます。ですので、ポート6346とかに大量の発着があるからといって、版権モノのファイルをやりとりしてるとは限らず、むしろ要求のほとんど100%は検索呼です。そして、ボディのほうも、mp3一色の音楽交換界と違って、グヌーテラでは政治的スキャンダルなんかを暴露したHTMLファイルを共有フォルダに入れて公開してるユーザもいます。有心系(サーバ&クライアント)の旧ネットでは、サーバをつぶされると、ただちにその情報が死んでしまうのに対して、脱中心系では、参照アドレスに依存せず情報それ自体が広く薄く偏在でき(言い換えれば、アドレスはサーバを指すのでなく情報を指す)かつ(これが重要なのですが)理想的な系では、非常に薄い密度のリソースであっても瞬時にリトリーブできる、という興味深い状態が実現されるわけです。
広帯域の本当のポテンシャルは、でかいファイルを特定の Point-to-point で流せることでは、ありません。そんなのは前時代的な発想です。本当のポテンシャルは、数万のノードが、毎秒数万回という速度でからみあえる、ということです。くだいていえば、 Point-to-point でひとつだけ太いコネクションを張って、大きなファイルを流すというより、(ほぼ)同時に数万のコネクションを処理し、答え、中継し、すぐ別れる、ということなのです。ひとつひとつの刹那接続は、小さなパケット数個の転送ですが、このような微小なやりとりが同時に各ノードで毎秒数万、数十万、数百万というペースで行われるとき、(ひとりのユーザがというよりも)ヌーテラ・ネットそれ自身が、ある種のブーツストラップ臨界点に達するのでは、という予感があります。「ハロー、ワールド!」とかしゃべったりしてね。
金儲けをたくらむ場合でも、このポテンシャルを開拓して利用する必要があります。サバクラで一回いくらで映画を見せたりは、長期的にははやらないでしょう。mp3やgifを使ってるユーザをあらさがしして、訴えるなんてのは問題外。
しかしそれでは、Gネットのユーザは、そういう次世代的なことに知的関心があるだけで、音楽ファイルなどの知的所有権とやらを尊重しているのか?というと、これも正反対でしょう。「もせ(mp3)なんて、いくらでもただで持っていっていいよ」ってな感じで。いくら政府が1ルーブルはこれこれの価値であるぞよとおふれを出そうが、実経済において「価値がない」ものは「価値がない」のだから仕方ない。いわゆる「ファイル交換」という通俗的な側面に限っても、mp3なんか物々交換に役立つと思えません。同人誌とかアプリとかゲームとかCD丸焼きとかWindowsXPでさえウェブに落ちてるきょうび、10MB以下のmp3なんて。だからこそ、版権者の強欲を離れて、純粋にミュージシャンの発信した世界に触れられる、ともいえるのかもしれませんが……。ファイルローグが「えんじゃく、いずくんぞ」(くだらん訴訟を起こす小雀どもめ。おまえらには我ら白鳥のこころざしが分からんのだな。というような意味の慣用句)とか言っていたのは、二重の意味で「まさに」。二重というのは、「はぁ?べつに音楽ファイルを交換するためにノードやってるんじゃないんですが」という「薄汚いいちゃもんつけるな」な意味と、もうひとつは「mp3交換なんかの利益ごときじゃなんだよ。我らのねらいは」という“極悪”な意味。「とりあえずテスト用に、おまえらの犬の餌を使ってるが、べつに我らは犬の餌を交換しあいたいわけじゃないの、あくまでデバッグ用の壊れてもいいどーでもいいデータ」
この極論は、音楽の版権者(かれらは、わずかなカネと引き替えにミュージシャンから音楽の自由を奪っている)をバカにしているというより、むしろユーザをばかにしている。といっても、こんにちでは以前ほど音楽の版権者(ミュージシャンから独占販売権を買い上げ仲介するダフ屋)なんか必要なく、技術の進歩でもっと効率的な世の中になったにもかかわらずぼろ儲けができた昔の既得権にしがみつくという趣意では、やっぱみっともないといえるのかな。
こんなにおもしろい未来の可能性が、P2Pそれ自体の問題というより、そこを流れるデータに課金したい旧独占者→治世者の献金と圧力でつぶされるのは、悲しいといえば悲しいことです。送信可能化権という変なドグマがある地域のかたは、Gネットの共有フォルダに版権モノを入れないでください。そういう地域で版権モノを送信可能にしていると、「ほら悪いことをしている」といんねんをつけられる原因になります。べつに共有フォルダに版権モノを入れなくてもグヌーテラにログオンできて楽しめるので、お楽しみください。楽しめるという意味は、ダウンロードするだけならまったく合法という表面的な意味より、むしろネットの進歩の最前線をかいまみる楽しみとか、そういうことじゃないでしょうか。
ひとつのファイルも共有しなくても、ノードとして貢献できるので、WinMX時代の「DOM」とは意味が違いますし、さらに、ひとつのファイルもダウンロードしなくても、ノードとして、ヌーテラに参加する楽しみは変わりません。ブロードバンドで帯域が余っているかたは、グヌーテラ・クライアント側で「割りあてる最大帯域」を設定してから、あとはつなぎっぱなしにしておくのも良いでしょう。常時接続の余っている帯域の「有効」利用ですね。「中抜き」にして、一般ユーザが自分たちでこのように直結できてしまうことは、解体前の旧独占者にとっては脅威だったことでしょう。自分では何も創造できないのに既得権だけで商売して文化がどーとか言ってた連中のことですが。
そしてカネである正義を持つ地域では、自分たちの利権のために、ほかの地域の法律や習慣や文化を変えさせようと圧力をかけてくるでしょうから、今後どうなるか分かりません。送信可能化権なる教義が広まりさらには受信可能化権なんてのまでできて、「正義のみかたの悪口が書いてあるウェブページは公の秩序を乱すものであり、それを読む(受信する)ことは違法であり、URLを入れるだけでページを簡単に受信できるようなソフト(ブラウザ)を所有することは違法であり」とかどんどん拡大解釈が進まないとも限りません。どっちにせよ22世紀や23世紀には笑い話になるでしょうけど、いったん禁止されてあとから復興する場合、あなたの生存期間には楽しめなくなるかもしれませんから、いまのうちに楽しんでおいたらいいでしょう。
「未来の超分散系」とかいいつつ現実をおもうと空虚だったりしますが、笑わば笑え、夢をみるのがなぜ悪い(byめるへんめーかー先生)ってなところですかね。
2002-03-04 Windows XP Home Edition wie Pro-Version nutzen: Windows XP Home Edition は、基本的に Windows XP Professional と同じOSコードを機能制限して出荷しているものと見られますが、このほど、ZDNetドイツが、おもしろいレポートを出しました。ちょっとしたトリックを使うと、Home Edition でも、本来 Professional でしか有効でないネットワーク機能を有効にできるという話です。Microsoft自身が配布している PowerToys for Windows XP の Autologon機能を使うと、なぜか Home Edition でもネットワークリソースまで見れるようになって認証もちゃんときく、とのこと。これは、上記 PowerToys が理由未詳のまま配布中止になっていることとも符合すると考えられます。
ノードは電子の雲にも似ている。そのトポロジーは原子核のまわりの「確率の波」 —— いわゆる殻構造 —— としてイメージすることもできる。
答弁書のPDFファイルがあります。Acrobat Reader の環境によっては日本語用の Aisan font pack が必要です。テキスト版(高速転送)|テキスト版(古いブラウザ用)