日本の核武装……このネタを最初に見たのはThe Next Iraqという、 次のイラクはどこだ(可能性)、みたいな記事で、 核兵器開発の可能性のマークが日本についていて説明書きに「イラク問題が泥沼化してアメリカへの支持ががた落ちした場合に、 日本は(アメリカに頼らずに)自分で自分を防衛するようになるかもしれない。そして核兵器の配備さえするかもしれない」 というようなことが書いてあったのだった。最初に見たときは、非現実な話だと感じたが、 実現可能性はともあれ、基本的にはいい考えなのかもしれない。
仮に感情的な問題はおいて純粋に技術的に考えると、日本のハイテク技術を持ってすれば、 そこそこ強力な軍を組織することは可能だろう。そして侵攻前からこれだけ(日本国内に限らず世界的に)アメリカへの不支持があるので、 「イラク問題が泥沼化したなら、強制された“友だちだよな”な関係に見切りをつけたくなるかもしれない」というのは、 ありうる話だ。 なにせ現状、やはり侵攻は疑問という考えが多いだろうし、 支持するとしても直接的、積極的に支持するというより「それ自体としては賛成しかねるが、 アメリカのやることにケチをつけて万一のときに守ってもらえないと困るから反対はしかねる、 結論的には支持する」といったようなことなのだろう。 となると、理屈の上では、べつに守ってもらわなくてもいいように、自分で戦えるアイテムを用意して腐れ縁を切ったほうがスッキリする。 いっけん突飛なようだが……。
そもそもなぜこうもアメリカは大暴れするのだろう。 冷徹な国際戦略の思惑もあるのだろうが、これでは「成功」しても、ひんしゅくを買いすぎる。 つまり戦略的なメリットがあっても、ツケも大きいので、さしひきあまりトクにならないのでないか。 自分からケンカを売っておいて「仕返しされるかもしれない」と警戒を呼びかけるのはコストパフォーマンスの悪い話で、 最初から殴らなければ良いのに……とだれでも思う。確かに相手が差し迫って戦闘意欲をむき出しにしてるなら防御もかねて先制攻撃とかもあるだろうが、 べつに「一刻の猶予もない、やられる前にやらねば」という切迫した状況でもないのだから。 また戦争をすれば儲かるという俗説があるが、モノが破壊され資源が損なわれるのだから地球全体で見れば大幅な赤字以外にあり得ず、 アメリカ国内に限定しても、あれだけの軍事行動をすれば、やっぱりすごくカネがかかるので損だと思う。 別にミサイルを撃ちまくらなくても、狡猾な、あるいはねばり強い政治手段で「言うことを聞かせる」可能性は充分にあるわけで(それが良いかはともかく)、 勝てるにしてもムダの多い、まずい、恨みと反感を買うやり方だ。
つまり、何かの儲けをめあてにやってるわけでも、賢い長期的展望があってやってるわけでもなく、 要するに疑心暗鬼というか、びびりまくって、度を失ってるのでないのかと思う。 なぜアメリカの偉い政治家とかがガクガクブルブルしてるのかといえば、やっぱ「身に覚えがあるから」だろう。 マンガの悪役じゃあるまいし、べつに世界征服をたくらんでいるとかの野望はない。 ただ「おれを怒らせるとこうだぞ」という感じで、恨みがある向きへの見せしめとして、それで(まわりくどいやり方だが)身の安全を図りたいのだろう。 しかし、それは一般のアメリカの普通市民の意識とイコールではないだろう。 そもそも、見せしめのためにぶん殴ったりしたら、当面は黙らせることはできても、かえってますます根強い反感を買ってしまう。 家族や恋人を殺された若者が、機会があったら絶対に仕返しするぞ、と誓ってしまう。 かつてあれこれあった地域とかでも、せっかく過去は水に流そうと気持ちを切り替えかけているところで、こんなことがあると、どうか。 でも、そういう長期的な危険があったとしても、とりあえず今はちからをふるってみせないと落ちつかないような、 不安な気持ちでいっぱいなのかもしれない。
あるいは、不安ということを別の角度から言い表すと、周囲から無視されたりしてる可哀想な非行少年のようなものかもしれない。 窓ガラスを割ったりトイレを破壊したりするが、それは、月並みな言葉でいえば、 「愛してほしいというサイン」(笑)なのだ。あるいは「だれか、オレを止めてくれよ~ なんで無視するんだ~」という感じ? しかし、 ぐれてやるーという非行少年なので、一筋縄ではいかない。フランスが「お前、何でそんなことするんだ、やめれ」と言えば、 逆ギレしてフランス逝って良し、まではともかく「フレンチフライドポテトという言い方は何かムカツク。変えよう」 何というか、 アメリカの考えは、どうみても権益の追求とか世界侵略とかの「分かりやすい」野望というより、 素人には理解できない異常心理学の世界でないかと思う。 世界のあちこちの地域でこれまでやってきた蛮行、殺してきた人々の数を思えば、恨みを精算することも、 アメリカの恐怖をいやすことも、とてもとても難しい。良くても200年くらいはかかるだろう。 けれど、忘れてはいけないのは、それはひとりひとりのアメリカ市民の「罪」などではない、ということだ。 イラクの指導者がどんな考えであろうと、ひとりひとりのイラクの住民は、べつにふつーの人だ。 アメリカの人だって同じだろう。どこにでも極端な思想の持ち主はいるにせよ、だ。
現実問題、どうなるのが理想なのだろう? このサイトのコアな読者としては、いっそのこと世界大戦にでもなって人類が滅んだらいいのに、 と夢想しているかたも多いはずだ。それは自分もちょっとは思う。住んでいるところがひどい山奥なので、もし仮に全面戦争になっても、 ミサイルとかが飛んでこないで、変に生き残ってかえってひどい思いをするのでないか、と、馬鹿げた心配をしさえする。 心配といえば、何よりつらいのは、このことで、自分も含めて、多くの人が、世界に失望してしまう、ということだ。 「日本の政治家は馬鹿でも世界にはすごい人がいっぱいいるのだ」と何とかどこかに救いを見いだそうとしていた人々も、 結局、国際政治の世界もひでーということに直面して、がっかりするだろう。 別の人々は「そんなことは前から分かり切っていた」と考えるだろう。 アメリカは正義と自由の良い国だ、アメリカが正しくて日本が間違っていたから戦争に負けたのだ、などと、 ばくぜんと思っていた若い人は、ひどく幻滅するはずだ。 正義とか自由という言葉も次々と踏みにじられ、社会に貢献する、ということ自体の価値観も揺らいでしまうだろう。 こんな社会に貢献したくない、とすら感じるかもしれない。 けれど……それが現実なのだから、仕方ない。やっぱり現実が出発点なのだ。 長い時間がかかるにしても、この授業料があまりに馬鹿げているとしても。 アメリカがベトナムに侵攻した時期は、あまりに情報が出なかった。 「湾岸戦争」のときも。もともとアメリカが国防のために開発したというインターネットが、 結果的に「反面教師の授業、実況中継」の道具になるとしたら、なんとなく皮肉なことだが、 アメリカの救いもそこにあるのかもしれない……。
アメリカの人やそれを「支持」する国の人は、今なんとなく肩身の狭い思いをしたり、 あるいは逆に開き直って「これは絶対に正しいのだ」と強弁しているだろう。 そういうひとりひとりの反応は、まともで理解可能だと思う。 日本にいる自分もあまり偉そうなことは言えないのであって、「何で日本政府はあんなに馬鹿なのよ」とつっこまれたら、 ひどく決まりの悪い思いをするなーと思っている。 いくら名目は民主主義といっても、国民や世論がどうがんばってもそうそう政治は変えられないので(ましてや世論など関係ない、 と言い切る独裁国家では)、アメリカであれイラクであれ日本であれ北朝鮮であれ、そこの政府がやってることの責任をそこの普通市民に追及されても、 にわかには答えようがない。なんで日本はあんな態度なのだ、と日本人のあなたに問いつめても現実問題、仕方ないように、 「アメリカ人」や「イラク人」を責めても仕方ない。実際、あんなに自国政府の政策に反対してるのだし。
さて、アメリカと同盟を続けるとろくなことがないので、独り立ちできるよう日本も軍備拡張して核武装でもしたらいいのだろうか。 自主憲法を作って。 それは、ひとつのオプションだ。 もっとも、アメリカを怒らせる結果になることは必至だ。 「日本には多数の原子力発電所がある。 これらの施設は核兵器製造にも転用できるのであるから、 ただちに廃棄しなければならない」などとからまれても困る。 廃棄などしたら、東京の電力が供給できなくなってしまうから、現実にはできるわけない。 しかしいついつまでに廃棄せよ、さもなければ、などと「国連」決議を出されたらたまらない。 そんなことは非現実としても、やはり、寂しがりやで不安で不安でいっぱいのアメリカを怒らせると、どのみち話がややこしくなりそうなので、 なかなか独り立ちも難しそうだ。同盟関係をやめる、ということは、もうお前は友だちじゃない、と絶縁することだから、 やっぱラディカルだ。でも、それが世界の調和のためにプラスなら、いいのかもしれない。 逆説的だが、アメリカ合衆国は、そういうラディカルなことができる国だ。 そして、それが、わたしがアメリカを好きな理由でもある。
もっとも、現実には、アメリカの圧倒的な軍事力をもってすれば、イラクへの侵攻が泥沼化(長期化)することはないだろし、 万一泥沼化したとしても、泥沼化したという情報がなければ泥沼化していないのと同じことだ。アフガニスタンと同じで、うまく煙に巻かれてしまうだろう。 それに、日本の上の世代には「核」に対するアレルギーがあるので(発電のような100%平和目的の原子力利用にさえ非理性的な反応をする)、核武装はやはり非現実だとは思う。 (「通常兵器」なら良くて「核兵器」は悪いというのは不合理だが。)
TBSへ電話レポートを送る。空爆される場所イラクに僕がいて、攻撃する艦隊の上にもTBSの記者がいる。なんともおかしな感じがする。一人はミサイルが発射されるのを見送り、もう一人の僕はその着弾地点でレポートを送る...
カートゥーンのページより。by Steave Sack
「国連を通過」
2003年3月21日 スイス国際放送の報道によると、米軍はアフガニスタン南部で、空爆を伴う大規模な軍事行動を開始した。
「果敢な一撃」作戦と名づけられている(Operation Valiant Strike)。イラクへの大規模進撃を始めたからといってアフガンへの侵攻をゆるめるつもりはない、
とアピールするねらいがあると見られる。
http://www.swissinfo.org/sen/Swissinfo.html?siteSect=143&sid=1707215
この作戦部隊(セクション)の名前 The White Devils のネーミングセンスが印象的。
魔法使いにも白魔法と黒魔法とかあったり、ハッカーにもホワイトハットとブラックハットという言い方があったりするけれど、
「悪魔たち」にもホワイトというのは、ポエジーがある。
正義の悪魔、「正義」なんだけどやってることは「悪魔」、という自虐ギャグなのだろうか? あるいは、遠くから巡航ミサイルを撃ったり高空から空爆したりする戦い方が、ホワイトカラーなバトル、なのだろうか。「正義のいじめ」とも訳せるが。あるいは「白衣の悪魔」?