2004年7月28日 RealPlayer 10.5 beta: 今のところ Auto Update 経由のみみたい。(ウェブにもあった) RealPlayer のネット接続を許すとむしずが走る…のはともかく、 このアップデートは、相互運用性のあるDRM 「Harmony™ Technology」 が目玉らしい。 これまでのDRMは、例えばWMAはWMAのデコーダでないと再生できない、 といった制約があったが、 これだと、Realで買ったものをiPodで再生…といったある程度の融通が利くという。
2004年7月29日
'Stunned' Apple rails against Real's iPod move
既にお伝えしたように、RealPlayer 10.5 beta の目玉は、 Harmony という機種越えDRM技術である。 Apple と手を結んだのかと思いきや、Apple は勝手にやられたとカンカン、次の iTunes のバージョンアップでわざと非互換にして、 Real では再生できなくする、とまで言っている。 ( Neowin より)
iTunes の非互換はこれまでにもあって、バージョンを下げると、iTunes そのものが起動できなくなるような、 ユーザからみてかなり不便な挙動もあった。
DRM それ自体が気持ちのいいものとは言えないとしても、 ようやく産業全体が少しずつ良い方向へ変わり始めたこの過渡期に、 Harmony の考え方自体については、一定の評価はできる。
この問題をさらに掘り下げるならば、 Real Player の Linux 版、Helix Player を GPL で公開してしまうことの「矛盾」が浮き彫りになる。 えげつない商売の代名詞のような Real のプレーヤーが、他方で GPL であり、 Ogg Theora を世界初サポートするほどコミットしている、という奇妙な二面性は、 もっと注意されていい。 そして、Apple のDRMを解除するコードも GPL 、 その名前が Hymn であることを思い出せば、 Hymn と Harmony …、名前からして、一脈通じるものがある。
Helix と Real の関係は、 Mozilla と Netscape の関係に少し似ているのかもしれない。 Netscape 4 が嫌われていたように、Real も嫌われているが、 それは FireFox の人気とは関係ない。Helix もそういう地位になるのかもしれない。
RealPlayer はハッキリいってムカツク存在なのだが、 QuickTime のずうずうしさも負けていないわけで、 このニュースは Apple にとってマイナスに作用すると思う。 iTunes で音楽を自由にしたかのようなプラスイメージが大きかったのに、もったいない。
ここで Karl が説明してる。
RealNetworks Says Files Can Play on iPod, Also works on other players
Real 'frees' Apple's iPod player
Apple Not Too Harmonious with Real (slashdot)
Apple's real problem
「アップルのDRMをリバースエンジニアリングで破った」と書いてある。完全に確信犯だ。
そして Harmony と Hymn の名称の一致もわざとだろう。
Real でも再生できる、ということは、むしろ、どちらかといえば、Apple にとっても市場拡大のチャンスなのだが…。
リバースエンジニアリングは技術の発展、特に互換性のある製品の開発に欠かせない普通の技術だ。 DMCAでも、1201節 (f)で、相互運用性のためのリバースエンジニアリングを明示的に認めている(念のために同じ条文へのリンクもうひとつ)。
が、主要な判例では、この条項の文字どおりの意味とは違う運用がなされてきた。最も有名なのは、DeCSSだろう。 すなわち、DMCAの実際の運用上、リバースエンジニアリングが違法とされてきた経緯がある。 そのことを知りながら「これは常識的、倫理的、技術的にはもちろん、法律的にも本当は正しいことなのだ」と確信して、いざとなれば判例を覆す覚悟でやっている。 当然のことながら、Realの法務は、勝ち目があるとみて、これにゴーサインを出したのだろう。 米国以外では、一般にDMCAのような奇妙な法はないから、上記のことは、必ずしも世界の常識ではなく、とりあえず米国に限った話だ。 例えば、DeCSS もアメリカ以外では作者も無罪が確定、使用は合法である。
Realがこの態度、という点が、何とも皮肉で、興味深い。 Realは、StreamboxVCR がらみでは、 1201f を無視したがる逆の立場の存在として、嫌われていたのだ…
もし万が一、クローズドのプロトコルを解析することが禁止されてしまうと、データ形式の相互運用でLinuxユーザは非常に困ることになる。 当時は、このままではRVをLinux上で見れない、という危ぐがあった。Helix の今とは隔世の感がある。