趣味Web 小説 2002-12-29

最近読んだ本

年末年始といえば「このミステリーがすごい!」の季節ですね。世間で評価の高い作品はたいてい外れがない(私は都合がいい性格なのです)ので、今年もいくつか読みました。いやー、楽しめました。

大学2年生の頃につけていた読書日記の形式を踏襲して、最近読んだ本を書名等のみバラバラ列挙しておきます。

半落ち
横山秀夫/講談社/18行×43字/297頁/泣き落としが話題ですが、落ちが最初からわかっていても十分楽しめます。再読しました。文春でも1位というだけのことはあり絶対のお勧め。
GOTH
乙一/角川書店/18行×42字/332頁/「犬」は小説を読み慣れた人にはすぐ分かる落ちだけど楽しい。傑作だろうけど、それでも年間2位にしては軽いような気も。
誘拐の果実
真保裕一/集英社/21行×23字×2段/484頁/昔から大好きな作家。本作は文春で年間2位、このミスでは2004年度版扱いだけど絶対に上位にくると思う。好きな作家が時々こうして大向こうに受ける作品を書いてくれるのはとても嬉しい。近所の小さな本屋にも本が入るようになるからね。
動機
横山秀夫/文春文庫/18行×39字/312頁/「半落ち」に吊られて買った1冊。期待に違わぬ好短編集。とくに表題作はいい。
ぼっけえ、きょうてえ
岩井志麻子/角川ホラー文庫/16行×40字/211頁/現代作家が紡いだ奇跡の古典作品だなんていわれますが、京極夏彦の「嗤う伊衛門」と同様に現代小説。表題作は悪くないけれど、私は短編集全体を一気に通して読んだ方がいいように思う。
ブラックサンデー
トマス・ハリス/新潮文庫/19行×43字/444頁/読むのに時間がかかった本というのは大抵……。まあ、つまらなかったら最後まで読まないわけですが。昨年9月11日の米国中枢テロ事件を予見した小説、だなんていわれているけど、70年代というのは日本でもテロ事件がガンガン起きてた時代。予見とかそういうレベルで語るのはどうかと思います。
我は苦難の道を行く(上)
上坂冬子/文春文庫/17行×39字/347頁/興味深く読んだが、この手の本は古書店が値をつけてくれないのが残念。売れないんだろうな。
我は苦難の道を行く(下)
上坂冬子/文春文庫/17行×39字/347頁/汪兆銘と日本の関係史。日本は東南アジアではまだしもいいこともしたのだろうが、中国にとっては災厄でしかなかったということのようだ。保守バリバリの上坂さんが書いても中国にとっての日本にはろくなところがない。だからといってやってもいない罪まで背負わされても困るが。
トリック狂殺人事件
吉村達也/角川文庫/17行×40字/343頁/読み飛ばし本。100円だからこれで満足。
孤独の歌声
天童荒太/新潮文庫/18行×41字/386頁/大傑作と名高い「永遠の仔」の作者の唯一の文庫化作品(だと思う)ということで150円で入手。ふつうのサイコホラー。この手の小説には最後まで読む気がしない低級なのが多いから、いい方なんじゃないかと思う。
海洋堂クロニクル
あさのまさひこ/太田出版/特殊な版組/373頁/こういう本は手放すともう二度と手に入らないからなあ……。2800円の贅沢本。あ、チョコエッグの大図鑑みたいな本とは全然違うので要注意。サブカル系の良質なノンフィクション。ちゃんと文化の流れ(文脈)を押さえて説き起こしているので、凡百の記事とは説得力が違います。興味ない人にはどうでもよさそうですねー。
大誘拐
天藤真/角川文庫/18行×40字/434頁/長年、詠もう読もうと思っていた一冊。控えめにいって大傑作。ユーモアあふれる誘拐もの。
わが名はレッド
シェイマス・スミス/早川文庫/17行×39字/311頁/前作「Mr.クイン」に引き続き、軽快に楽しめる怪作。私はこういうユーモア系のミステリならどんな残酷な物語でも平気みたいです。うへぇ。
賢人が見つめた中国 桑原寿二論文集
桑原寿二/産経新聞社/22行×23字×2段/482頁/我が社もいよいよ(今頃、ともいう)上海に工場を立ち上げるのだ、ということで読み始めた本。ちっとも読み終わらない。昼休みにカッコつけて読んでいるだけじゃあなかなか……。面白いので、じっくり読みます。
The OTAKU DIARY
岡田斗司夫/ロケット野郎/43行×31字/512頁/「ぼくたちの洗脳社会」ではまって以降、私は岡田斗司夫の著作なら何でも読みます。おかげでDAICONや海洋堂など、知らなくてもよかったことに妙に詳しくなってしまったり……。オタキングとしての岡田斗司夫の著作はどうでもいいといえばどうでもいいんです。でもそれを勝手やらないと食いつなげないですからね……。まあ面白いからいいか、ということで。本書はオタキングの20世紀日記集。まさか自主制作本として出版されるとは思ってもみなかった。まがりなりにも雑誌連載だっただけに。

真保裕一の最新作や横山秀夫が非常に面白かったりして小説は今年も(いつも思うのだけれども、それなりにアンテナを広げてたくさん読めば小説のいいのは必ずあるものですね/てゆーか書き飛ばしを始めて以降の西村京太郎なんか読んでいる人ってなんなんだろう/人生の無駄とか思わないのかなー)当たり年でした。でも今年はそれ以上に特筆すべき本が数冊ありまして……。年末になって読んだものではないわけですが。

自省録
マルクス・アウレーリウス/岩波文庫/18行×43字/231頁/今年読んだ中でも最高の本といえばこれ。ローマの五賢帝、その最後がマルクス・アウレーリウス帝なのですが、そんなことはトーシローが読む分には、はっきりいってどうでもいい。岩波文庫の読むことを拒絶するような紙面に屈しない読書癌を鍛えていらっしゃる方なら一度は手にとる価値があるはず。いわゆる名言集で、いくつか小節を暗記しておくと分不相応にインテリぶることができます。(こんな書き方してますが、ホントにお勧めです)
からくり民主主義
高橋秀実/草思社/18行×45字/285頁/「国民の声」ってのは、いったい誰の声だ?というわけで、日本の本当の姿を丹念に観察し記録した一冊。ジャーナリストによる考現学の到達点。「ぶっちゃけた話」の乱れ打ちでとにかく笑えます。「ぼくたちの洗脳社会岡田斗司夫/朝日文庫や「異見自在」高山正之/PHP出版に匹敵する大傑作……というのが初読時の感想。半年経った現在、さすがに先にあげた2冊ほどには後をひかなかったかな、と。人生観、世界観に永続的影響を受けるには至らなかった、と。そういう意味では、逆に安心してくれてもいいと思います。絶対のお勧め。

中公文庫からクラウゼヴィッツの「戦争論」が出たので喜んで買ってきたものの、これはとうとう読めませんでした。10年以内の読破を目指します。あと社会思想者が倒産したので教養文庫から面白そうなのを慌てて買ってきたんだけれども、これも全然手付かず。まあ、そのうちに。

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