横山秀夫「半落ち」が直木賞を取り損ねた。選考委員の誰かが「受刑者はドナーになれないことを忘れている」などという愚にもつかない批判をして、なぜかそれが支持を得てしまったからだ。受刑者がドナーになれなくたって、物語に破綻が生じないのは明々白々。宮部みゆき「火車」が「主人公の姿が見えない」として、天童荒太「永遠の仔」が「長すぎる」として落とされた以上のバカバカしい落選。ふざけるな、と。
真保裕一が落選を繰り返しているのは百歩譲って認めてもいい。宮部みゆきも「理由」まで待たされたとはいえ、最終的に直木賞作家になったことは喜ばしい。けれども福井晴敏「亡国のイージス」や東野圭吾「秘密」「白夜行」などの落選は、どうにもなんというか「空気を読め」と。ミステリーにばっかり賞を与えていられないのでしょうけれどもね。まあミステリーファンの贔屓目で見ると、直木賞の選考委員の顔ぶれは不満です、ということ。
最初から直木賞なんか望みのないジャンルのファンなら、逆に気楽なんだろうな。ミステリーは、なまじっか直木賞を取りやすいジャンルだけに……。というか、直木賞は影響力大き過ぎ。