趣味Web 小説 2003-02-07

デローリアンの夢

世界最大の自動車メーカGMで副社長まで登りつめたジョン・デローリアンには、ひとつの夢があった。錆びないクルマ、すなわちステンレススチールの車体を持ったクルマを作りたい。しかしステンレスは重い。重すぎる。彼のアイデアは、GM社内では一顧だにされなかった。デローリアンはGMを飛びだし、半生かけて築き上げた地位も名誉もかなぐり捨ててDMC社を設立した。DMC社は英国の誘いに乗って大西洋を渡り、工場を建設した。そして世に問うたのがデローリアンだった。

エンジンはルノーのV6、3リットルだが、重たい車体というハンデを克服するには、それでも非力だった。ブレーキが厳しく、十分な制動が取れず、スポーツカーとして十分な性能は得られなかった。そしてDMC社の財政は進退窮まった。ジョン・デローリアンは、ついに数千万ドルの麻薬仲介業に手を出した。自分のクルマを作り続けるため、最後の賭けに出たのだ。しかし、あっさりとおとり捜査の手に落ちた。こうして彼は、世界の表舞台を去った。

デローリアンがタイムマシーンとなって大活躍する映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が公開されたのはデローリアン発売から4年後の、1985年だった。すでに、デローリアンは幻のクルマとなっていた……。本日の金曜ロードショーは「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」、私はこのシリーズが大好きだ。物語の終幕近く、バラバラに砕け散ったデローリアンの姿を見ると、夢破れたジョン・デローリアンをついつい想起せずにはいられない。

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