特許というのは、確かに公開されているものだけれども、それを見たからといって誰でも簡単に真似できるとは限らない。ソフトウェア関連の特許には暗いので、機械系の場合についていうと、特許を読んでその通りにやってみても、思うような成果が上がらないことがほとんどです。なぜなら、特許に記載されている事例は、特許に書かれていない様々なノウハウや、他の特許との組合せによって実現されたチャンピオンデータだからです。
まして、特許技術を利用した製品となると、同等の物を作るためには大変な困難が待ち受けています。
Windows のソースが流出してもしなくても、たしかに Microsoft 社の特許は公開されています。けれども、機械系技術者の常識からいわせていただくと、公開されたその特許だけ読んでも、真似するのはそう簡単じゃないわけですよ。実際に、それをどう製品に組み込んでいるのか、実物を調べることができるか否かは大変重要なことなんです。だから、ソースの流出は特許技術の流出という観点からも Microsoft 社にとって痛いのではないか。実装方法が明かされたら、全くそのまま真似すれば簡単に盗むことができますから。
なので、民生品はどうしようもないですけれども、産業向けの製品はライバル社が簡単には購入できないよう、策を練るものです。中間業者に最終ユーザを把握させて、売ってはいけない相手に間違って売ることのないよう注意します。もちろん中古業界までは(十分には)管理できませんから、ザルといえばそうなんですけれども、企業が厳しい姿勢を見せることは、有形無形の歯止めとして機能するんですね。
ところで、プログラムの場合はソースを見られたら全部見られたも同然かもしれませんが、工業製品の場合は設計と製造の現場に最後の秘密を持ちます。このことが、特許と製品を公開しても、そう簡単には真似されないという根拠となるわけです。
水冷パソコン第1号は NEC から発売されましたが、採用したシステムの基礎技術は日立のものです。ではなぜ、製品化はライセンスを買った NEC の方が先だったのか? 製品化に必要なノウハウの構築において、NEC が素晴らしい成果をあげたからです。これは、特許の製品化が簡単でないことを示す一例ではないでしょうか。