順に検証してみよう。HTMLで書いた場合、本当に容量が重くなるか?これはメールが使われる状況に依存するはず。友人・知人同士の一言メールに、いちいちタグを打っていたらそれは重くなるだろう。まずマークアップする価値のない内容しかないから。
でも、それがメールマガジンのような、ある程度構成のある内容を伴っていたら、全く逆のことが起こる。ある程度の規模を持つメールマガジンは、それぞれ内容に見出しをつけている場合が多い。ある種の記号で見出しに相当する文字列を囲んだり。これは、グラフィカルな要素を認識できる人間に大してはアクセシビリティ向上の効果がある。が、それ以外の場合(例えば読み上げ)は、こういったグラフィカルな要素を示す文字列は障害となる。また、こうしたグラフィカルな要素を配置するよりは、HTMLを使用して適切に各内容をマークアップしたほうが、健常者にとってもアクセシビリティ向上に結びつく。
ちょっとこの「検証」は無理があるのではないか。たしかに記号文字の類で簡単な装飾をしているテキストメールは少なくない。しかし、まともにマークアップした場合のファイルサイズ増大と比較すれば、微々たるものだといえる。当サイトのマークアップはかなり単純なものとなっているが、それでも全文字量の2割弱をタグの記述が占めている。テキストメールで2割弱も装飾のための記号文字を用いたら、大変なことになる。
以上の論証では、HTMLを解釈しないことで得られる強いメリットは特に得られなかった。
メリットが云々というより、HTML メールには明白なデメリットがあるということ。
現在主流のグラフィカルな HTML 文書を適切に解釈するためには、相当大規模なソフトが必要になる。大勢が何年もかけてブラウザを開発してきたが、それでも IE にせよ Opera にせよ、十分に仕様を満足しない。メーラーが独自の HTML 解釈エンジンを積むことに躊躇するのは当然であって、基本的に HTML 文書を解釈できるメーラーは、視覚系の WWW ブラウザを適宜利用するものがほとんどだ。すると、いくつかの問題が生じる。
まず、ほとんどのブラウザは、利用者の声に応えてデフォルトで JavaScript が有効。メールというのは、基本的に勝手に送られてくるものだ。したがって、JavaScript が有効な状態で HTML メールを読むのは危険だ。信頼できない Script を実行させられてしまうことになる。
また多くのブラウザでは、画像の表示もデフォルトで有効。HTML メールはしばしば画像を利用するのだけれど、このような画像はメール本文と一緒に送れない(通常 HTML 文書は添付ファイルから画像を呼び出すことができない)。ではどうするかというと、適当なサーバにあらかじめ画像を置いておく、ということになる。これがなぜまずいのかというと、SPAM 業者に宛先の有効無効を判断する情報を与えることになるからだ。
俺は、そもそもなぜHTMLを解釈しないメールソフトなんかが生き残っているかが不思議なのだが。何故?
マークアップなんて、本来的には読者の要求の外にあるのではないか。そもそも HTML 文書がブラウザのデフォルトスタイルで表示されると「味気ない」と思うのは、MOSAIC 以来、視覚系 WWW ブラウザ開発者らが進めてきた戦略にはまって妙な先入観が植えつけられているからに過ぎない。HTML 文書を解釈するソフトがいつまでもテキストブラウザだけであったなら、CSS などというものも登場しなかっただろう。メールに、カラフルなあれこれとかマークアップによる文書構造の明示などを期待している人が、あまり多くないということではないか。