趣味Web 小説 2004-09-19

Advice316 GEOGRAFIA

アドバイスをお待たせしている間に潮路さんの Web サイトが閲覧できなくなってしまいましたので、次のご依頼へと進みます。

ご依頼人と Web サイトのご紹介

管理人のるーぴんさんは昭和時代末期の生まれ。高校時代には演劇部の部長として存在感のある(竹中直人さんのような、と評された)女優だったそうですが、現在は医療の道を目指して浪人(?)中。公文教室講師(アルバイト)のお仕事もなさっています。

家庭用ゲーム機の RPG が好きで、お母様と共同戦線を張って楽しまれることが多いとか。非常に珍しい、という感じがします。私の時代は、父親はゲームにはまっても母親はゲームを苦々しく思っているというのがよくあるパターンでした。

……と、いうわけで、「GEOGRAFIA」は FF シリーズの二次創作となる小説とイラストを中心に、日記や掲示板などを添えた典型的個人サイトです。

ご相談の内容

開設してもうすぐ1年は経過するのですが、なかなかアクセス数が思うように伸びません。1日平均して30件あたりなのですが、開設当初からこの数字はほとんど変わっていません。新参者の方にも気軽に立ち寄っていただけるサイトにしたいと思うのですが、なかなかそうもいかなようで。

何度かサイト閲覧に関するアンケートをとったことがあるのですが、これといった改善点を見つけることができず。見づらいWEBデザインにしたつもりはないので(ポップアップ広告はどうしようもないとして…)、やはりコンテンツの問題なのでしょうか。もし宜しければ、プロの方から見た問題点などを指摘していただけたらと思いました。

最初にお断りしておかねばならないことが1点。「趣味のWebデザイン」といっているのは、つまり私自身のことを指しているのでありまして、プロではなく趣味でやっている素人です。ただ、勉強よりも仕事となりがちなのがプロですから、3流のプロよりは私の方がよく知っている分野もあります。それでもとにかく、私は Web デザインで直接収入を得たことは一度もありません。ボランティアで人に教えたことは何度もありますが。

アドバイスいろいろ
見た目は大きな問題ではない

大切なことは何回でもお伝えしていこうと思っているわけですけれども、主要な Web ブラウザにおける Web サイトの見た目を「デザイン」と呼ぶならば、よほどひどいものでない限りアクセス数に決定的な影響はないと考えてけっこうです。

商用の(趣味レベルでない)通販サイトなどでよく問題になる「デザイン」は、単なる見た目の話ではなくて、買い物の手順とか商品リストの提供の仕方といった、情報システム全体の設計に関わる話です。どのような情報を見せるか、どのような手順で見せるか、情報と情報をつなげるロジックは? といったように。Web デザイナーの個人サイトがたいてい大して人気がない事実が示すのは、見た目だけよくたって意味がないという現実です。見た目はひどすぎる状態でなければ OK なのです。

私はかつて友人のサイトを手伝い、見た目の改善に力を尽くしました。今見ても、最初と最後では見違えるほどよくなっていると思います。ではそれで人気が向上したでしょうか。……全然ダメでした。ガッカリして周囲を見渡すと、しょうもない見た目でも、友人のサイトの10倍、100倍の人気を得ているサイトがたくさんあることに、あらためて気付かされました。

人気を決める2つの要因

さて、Web サイトの人気というのは、提供している情報が持つ需要によってほぼすべて決まります。ただしその需要には2つの側面があることにご注意ください。ひとつは、その情報自体の価値が生み出す需要。もうひとつは、その情報が提供されるまでの経緯から生み出される需要です。

例えば、私の書く記事には面白いものもそうでないものもあります。反響の多い記事もそうでない記事もあります。けれども、わずかな例外を除いて、各記事の読者数はほとんど変わりません。それはなぜか?

「期待」が生む需要

当サイトの大半の記事は、常連読者だけに読まれています。検索エンジン経由で大勢に読まれる記事は限られており、ほとんどは無視できる程度のアクセスしかありません。他の個人サイトなどからリンクされる記事も、多くありません。ほとんどの記事には、とくにその記事が目当てという読者が僅かしかいません。サイトの表紙にある数日間だけ読まれて、それきりほとんど誰も読まない。

記事を個別に比べていけば、私の書いた文章が他の多くの人の文章より大勢に読まれる理由は理解できません。私の文章には、ろくな内容のない凡作が多いからです。そうしたつまらない記事だけを集め、私が書いていることを伏せて別の Web サイトで公開したならば、人気など出ません。ここで URI は伏せますが、私が運営している他の Web サイトで、この予想は的中しています。同じ私が文章を書いているのに、訪問者数は当サイトの50分の1なのです。

現在、当サイトの訪問者が多いのは、一度そこそこ人気が出たのがきっかけで多くのサイトからリンクされ、無数の検索語において検索エンジンの掲載順位が大幅に上がったことも理由のひとつですが、何といっても効いているのは多くの訪問者の「期待」を得たことです。

信頼できる「目利き(例えば個人ニュースサイト)」が紹介していない記事をわざわざ読むのは、「目利き」の保証なしでも「期待」だけでサイトを訪問するからに他なりません。直近の過去ログを除き、古い文章は検索エンジン経由や直リンク(=各記事が実力で集めるアクセス)を除けばほとんど読まれていない(サイトのナビゲーションを辿って表紙から過去ログへ進む人は少ない)。多くの常連読者は新しい文章を読みたがっています。

「期待」が生み出されるプロセス

「期待」はふつう、ビッグバンのように無から生じるものではありません。その情報が生み出されるまでの経緯に、「期待」の源泉があります。

ランキング1位で100万円

かつて着メロ界でこの手のものは腐るほど見てきたので、簡単に1位になって100万円をゲットする方法を皆さんに教えてあげよう。まず、アメリカで生まれる。そして音楽的素養を身に付ける。そして日本に移住して、アメリカで培った音楽的素養を開花させる。CDを出して、超売る。アルバム700万枚くらい売る。それからこのアメーバブログでアカウント取ってサイト始めれば楽勝です。絶対1位になれます。100万とか楽勝です。

極端な話をすればこういうことですが、例えば一度、面白いことを書いた記事が注目され、人気サイトからリンクされたとしましょうか。このとき、アクセス数が一時的にしか増加しないケースと、一定数が残るケースがあります。その違いを探るヒントとなるのが、立て続けに3日間リンクされた場合。このケースでは、私の経験上、一度きりのリンクとは比較にならないほどの長期間、アクセス増が持続します。

一発屋と思われたら、人気のある記事だけ読んで、人は去っていきます。このサイトの記事はいつも面白いんじゃなかなろうか? と読者に思わせることが、「期待」を得るためには重要なのです。「期待」でアクセスを稼ぐ人気サイトの多くは、アクセス数がぐんぐん増えていく時期には、連日のように面白い記事を発表していたものです。

いったん大きくなってしまえば、大きなアクセス数が(直接・間接に影響して)「期待」を呼び、あまり頑張らなくても高い位置で安定します。もちろん、頑張るのをやめれば提供する情報の質と量は低下しますから、安定するのは「期待」によるアクセスだけです。記事自体の価値で稼いでいた分は失うことになります。

小まとめ
  • 記事の需要は、記事自体の価値と、記事の周辺にある価値が決めます。周辺にある価値とは、このサイトの記事は興味深い内容に違いない、だから読みたい、という「期待」です。常連読者中心のアクセス状況となっている Web サイトでは、「期待」の確保がアクセス増に必要です。
  • 「期待」を得るためには、一時的には、立て続けに価値ある情報を提供し続けたり、記事を書く自分自身の価値を高めたりしなければなりません。無価値なところから「期待」は生まれません。ただしひとたびアクセス増を果たせば、規模が一定の「期待」を呼び、価値の補充を少々手抜きしても高値で安定します。
小説というコンテンツの特性

私が「期待」の重要性を説いてきたのは、FF の二次小説などを公開するサイトの人気は、多くの場合、常連読者が支えているからです。新作を発表したからといって、劇的にアクセスが増えるなんてことはありえないし、小説をたくさん書いても、ろくな資産とならない厳しい現実もあります。提供している情報自体の価値がアクセスの主な源泉なのであれば、提供する情報量が2倍になればアクセスだって2倍になっていいはずでしょう。ところが小説の場合、そうはならない。

これは職業作家も同じです。本当に素晴らしい作品は売れ続けますけれども、短期的には新作が売れます。しかしその新作は、賞味期限をすぎたらさっぱり売れなくなってしまう。そして書店から消えていく。古い作品群が、資産としての価値を持たないわけです。だから、新作を書き続けなければ生きていけない。

たぶん、新作よりちょっとだけ面白い旧作はいくつもあるんです。でも、読者はそれを発掘しようとしないし、出版社が再出版しても何故かそれを買わない。長く商品価値を維持するのは、特別素晴らしい作品だけなんです。ところが、例えば大沢在昌のように、「新宿鮫」がヒットして人気作家になった途端に、初版限りだった初期作品群がわずかな例外を除いてみな文庫化され、現在も入手可能となったケースもあります。作家が有名になり、「期待値」が底上げされたのです。でも、これは例外ですね。ふつうは、頑張って底上げしても商品として成立するには、まだ足りないわけで。

とにかく、二次創作で人気を得ていくためには、作品単位ではなく作家単位で問題を捉えるべきです。初期の大沢在昌が初版作家にもかかわらず命脈を保ったのは、計算できる数字はきちんとさばけたからでした。しかしその安定した客層を拡大することは、なかなかできなかった。小説を書いても書いても、アクセス数は増えない。多くの人が直面している問題です。この問題に、誰にでも実行可能な解決策はあるでしょうか? 私は、「ない」といわざるをえません。

少欲、知足、精進

大抵の個人サイトは、誤解を恐れずに書けば、見るだけ時間の無駄です。その多くは有料の書籍で代替でき、当然、一部の例外を除いて本の方が内容は素晴らしい。個人サイトなんて、「踊る阿呆に観る阿呆」の世界です。厳しいようですが、これはいずれ気付かざるを得ない、ひとつの現実です。WWW を通じて世界とつながるんだ! なんていってみても、それはどこまでも可能性の話でしかなく、実際には10人とか30人とか、それもすべて日本人だけが読者だというのがふつうなのです。

FF の二次小説という方向性で、情報それ自体の価値で生き残るのは困難です。ごく一部の傑作を除き、小説は古びて朽ち果てていくコンテンツです。

だから、「期待」を糧にしてやってくる常連読者の確保が大切だという話を長々としてきました。しかしそれは、簡単じゃない。こうすればいい、なんて軽々に書けるものではない。人気のある小説の書き方は、誰も教えてくれません。傷の少ない小説を書くポイント集はたくさんありますが、傷だらけの「Deep Love」が各巻合計で100万部を突破するわけです。小説として史上最高の部数を記録した「世界の中心で愛を叫ぶ」だって、批評家のみならず市井の読書家から散々批判を浴びました。

結局、ほとんどの人は現状維持しかできないんです。いろいろ頑張れば、今の2倍3倍程度なら読者を増やせるかもしれませんよ。でも、10倍100倍とはいきません。夢見る数字は遠いのです。ただし、もうアクセスアップなんて飽きたよ、という段階に達するだけなら可能です。少欲、知足、精進……非常につまらない答えとなりますが、永遠にゴールに到達できない死のロードから抜け出す秘策は、これしかないと私は思います。

小説とイラストについて

るーぴんさんの小説はなかなか読ませますよね。私は原作となったゲームをプレイしたことがありませんけれども、あまり前提知識に寄りかかり過ぎずに書かれているので、楽しめました。

また長い文章を書けるというのはひとつの才能(あるいは大変な努力の賜物)です。途中いくらかだれるとしても、最初から全然、長文を書く能力のない人とは世界が違います。ときどき粗筋だけの小説を書く人がいて、もうちょっと何か描写はないのかと問うと、ようするに何も思いつかないのだ、と。逆に、全然ストーリーがなくて、きわめてどうでもいい無意味な会話とか描写ばかりを延々と繰り返す人もいます。どちらの人も、B5で100ページを超えるような小説を書くのは無理です。

高校時代は文芸部に所属していました。小説を書ける人と書けない人の差は歴然としていて、とにかく書けない人は書けない。私は書けない方で、だからというわけではありませんが、編集・印刷・製本ばかりやっていました。あとは読者としていろいろ感想を述べたり。で、そんな私から見てるーぴんさんは、小説を書ける方の人です。少なくとも全く書けない人とは文章が違う。でも、田舎の高校(生徒数2000人)の1番になれたかというと……。

イラストも多少の波はありますが、全体的には「見られる」レベルだと思います。プロ並みだとかそんなことは申しません。でも、もっと下手な人はいくらでもいて、私の見てきた範囲では、自作イラストを公開している無数のサイト群の中では上位3分の1には入ると思います。信じられないくらい下手な絵を公開している中学生を大勢見てきましたから、この見立てには自信があります。一応、12年も絵を描いていた時期がありましたし。

小説にせよイラストにせよ、好きになってくれる人はいるわけです。素人の平均はだいぶ上回っていますから。では大人気になるかというと、それも難しいという話なんですね。しかしです、1日30人が上限だとは思いません。もっと上を目指せるだろうと考えます。

気休め程度のアクセス向上策いくつか

新参者の方にも気軽に立ち寄っていただけるサイトにしたいとのことですが、半分は既に実現できています。FF の二次創作というだけで敬遠される方が多いでしょうが、別にそうした方々を読者にする気はないでしょう。とすれば、るーぴんさんのサイトは、現状においても気軽に訪問できます。問題は、立ち寄る動機がないということです。といっても「期待」を醸成する難しさは既に書いた通りです。ではどうするか。

気休め程度の方策としては、宣伝が挙げられます。嫌われにくい宣伝方法には、例えば人気のある FF コミュニティの小説掲示板の常連となる手があります。どんどん小説を投稿してくださいといっているわけですから、そこにどんどん投稿してみる。投稿する際に、自分のサイトのアドレスを忘れずに記入しましょう。なお、他の人の邪魔にならない程度には節制してください。

これでお客さんがぐんと増える可能性があります。ただし宣伝活動も意外に地味なものです。現在の訪問者数が少ないので、2倍くらいまでは簡単かもしれませんが、その先がなかなか。それに、宣伝をやめた途端に元に戻ってしまう可能性もあります。

新規読者を増やすには、お友達を増やす手もあります。この場合は、あちこちのサイトに出向いて、小説の感想を書いてくる。そのとき、なるべく誉めることですね。それを何度も何度も繰り返す。ウソで誉めても仕方ないので、いいと思うサイトを探してください。で、こうした活動を続けていると、そのうちにいいことがあったりなかったりします。一方、時間と労力の浪費以外に、悪いことは何もありません。であれば、挑戦する価値もあるでしょう。

最後にひとつ、今すぐできる改善案。とにかく小説がメインコンテンツなのだから、それを読んでもらわないことには仕方ないわけです。私なら、小説の一覧はサイトの表紙に持ってきます。総目次は総目次、小説の一覧は小説の目次に掲載する、という方針は明快ですが、やっぱり新規読者には面倒くさい。小説の概要を知らせる手間はひとつでも減らした方が、新規読者へのアピール度が高まります。

終わりに(余談)

以上でアドバイスを終わります。

余談になりますが、見た目の改善はアクセス向上には直接影響しませんけれども、作者自身が自分のサイトに自信を持つきっかけにはなるかもしれません。だからもしるーぴんさんが「ダサすぎる」と思っているのであれば、改善を勧めます。そうではなくて、「けっこういいんじゃない?」と自信がおありなら、他のことに時間を使った方がいいでしょうね。

改善しようとすれば、まあ、山ほど「直した方がいい」箇所はあるわけなんですけれども、きれいになってもカッコよくなっても、ホントにアクセス数に影響しないので、今回はそのあたりについては何とも申しません。ご質問があれば、いくつか回答したいと思いますが。

余談・アフターサービス

Information