「フレーム内表示=盗用」か?

それは盗用か[2004年3月28日]

  1. ページ盗用とレンタルサーバーMLM屋
  2. ページ盗用サイトに反撃
  3. ページ盗用問題のまとめ
  4. VEGA CLUBの汚名をそそぐ

この話題については反応記事、関連記事が多数存在するが、私の目を引いたのは1件のみだった。

Orbium: コンテンツは盗用するな! 共有財産であるべきだ.

僕はリンクフリーで公開しているコンテンツはそうした知識の共有を行うために公開しているものだと理解している. この盗用は明らかにそうした意志を無視し,踏みにじるものだ.

知識の共有を目的とした公開であったなら盗用も糞も無い。実際私はサイトポリシーにおいてiframeによるembed型リンク他あらゆる形式のリンクを許可しているが、embed型リンクをされたごときによって目的が踏みにじられることは断じて無い。

松永さんがコンテンツを公開している理由は定かではないが、仮に知識の共有を行うためであれば、松永さんには反撃する理由がない。ただ、松永さんは以下のように述べているので、ずいぶんいろいろと雑念が入っていらっしゃるようだ。

当方としては、サイト閉鎖ではなく「インラインフレームの解除と出典の明示」だけ対処してもらえばよかった、というのは当初から一貫した考えである。別にMLMだろうと何だろうと、あるいはネガティブリンクだろうと、リンクだけならご自由に、だ。しかし、そのサイトに協力も賛同もしていないのに、そのように受け取られかねないような表現、あるいは当方の作成したものを安直に流用して儲けようとしていながらこちらに何らの見返りもないやり方というのは避けてもらいたい、ということである。

ところで、フレームの中に他サイトの文書を読み込む手法は、一概に盗用とは言い切れない。Google 画像検索やキッズ goo という前例について、松永さんはどのようにお考えなのだろうか。両者とも、他者のコンテンツを安直に流用して儲けているわけだが。

そのサイトに協力も賛同もしていないのに、そのように受け取られかねないような表現ともおっしゃるが、フレームの中に表示されているだけでそう考えてしまうのは、むしろ読者のリテラシーの問題ではないのか。多くの閲覧者のリテラシー不足を、安易に肯定する意見には賛成しない。

Google にキャッシュを取られているサイトは、みな Google に協力しているのか。賛同しているのか。そうではない。大多数の方は、Google にキャッシュを取られていることを知らない、あるいはキャッシュを取られずに済む方法を知らない、もしくは単に黙認しているに過ぎない。

blockquote 要素には引用元を示す cite 属性があるが、Windows 版 IE では cite 属性が解釈されない。そのため、cite 属性を記すだけでは、多くの人にとって引用元は不明であろう。では、引用時の出典情報は cite 属性に明記するだけでは不足なのか? 私は、十分ではないかと考える。もちろん、最大シェアの IE で無視され、他の主要ブラウザでも面倒な操作なしに表示されない形では「出典を明記しているとは言い難い」という判断もありうる。しかしそれは唯一の正解ではない。

インラインフレームへの文書読込は、HTML の観点からいえば「引用」ではない。リンクによる参照である。見た目は引用に似ているかもしれないが、技術の本質は全然違う。フレーム未対応のブラウザ(の一部)では、参照文書へのリンクが用意されるだろう。あるいは、noframes 要素に記述されるフレームの代替内容は、リンクになるはずだ。見た目だけを判断の根拠として、リンクを盗用といって糾弾するのはいかがなものか。

……という私の記述についてHatena::agenda 2004-03-29にて以下のご意見あり。

HTMLの観点からいえばembed、埋め込みです。埋め込んでしまっているのですから参照ではありません。これは通常なら転載というのが最も近い表現かと。文脈によっては引用になり得ます。確かにレンダリングの過程(あるいはソースレベル)においてはブラウザにとってURIの参照かもしれませんが、プログラムを擬人化しても仕方ないでしょう。

読者の方は、dotnote Days...2004年03月27日も参考にしてください。embed は「参照」だと私は考えます。例えば、被「参照」側がファイルを削除した場合、「参照」した側からもファイルが消えます。これは「転載」では起こりえない事態です。しかしこの辺は日本語の問題で、意見の分かれるところ。ただし印象が大きく異なる言葉なので、この言葉の選択次第で結論に多大な影響が。

追補
追補 2

一人が勘違いしている場合、勘違いする側が馬鹿だ、という話になる。みんなが勘違いしている場合、勘違いさせる側が馬鹿だ、という話になる。いずれにしても勘違いは勘違いなのだが、多数派のいうことは正義になってしまう。見た目はどうあれ、松永さんのコンテンツは盗まれてはいなかった。転載されたわけではなかったのだ。img 要素にせよ、フレームにせよ、src 属性で指定された URI にあるリソースが参照されるに過ぎない。

Google画像検索、キッズgoo、excite翻訳などはいずれもフレームの中に他人のコンテンツを勝手に表示する。大手サイトがやれば誤解されないのに、弱小サイトがやると誤解され血祭りに。結局、フレーム内表示自体の問題じゃなくて、それを見る側のリテラシーの問題なのだ。文書のプロパティを見れば、フレーム内に表示されるリソースの URI などはわかる。他サーバから呼び出された文書かどうかは、閲覧者がちょっと調べれば簡単にわかるのだ。

そういう話をまったく無視して、「弱小サイトが Google と同じことをやると誤解されるらダメ」とは不公平な話ではないか。だいたい Google なんてのは反則企業だから、キャッシュとかいう著作権侵害を平気でやる。あそこは大手だから、「キャッシュされたくなければこうしろ」という情報は「常識」で、知らない方が悪いらしい。そんな理屈が通るのか。ブラウザがきちんと進歩して、誰が Google の真似をしても勘違いが起きないようにするのが、正しい未来のあり方ではないか。

DAC さんのご意見を紹介

私の言葉の伝わりにくい部分などを整理してくださっていて、ありがたい。また、DAC さんの感想が、うまく松永さんの気持ち(もちろん推測)と私の意見の間を埋めるものとなっているのではないか。また、追記にまとめられた整理すべきポイントはたいへんありがたかった。必読の文書。

松永さんの反論について

当サイトでは Trackback を受け付けていないので、この場で反論を拾います。ページ盗用問題のまとめのコメント欄より。

[No.9] 投稿者:松永[2004年03月28日 19:11]

↑上記徳保氏の記事について簡単に。私は「参考文献の提示」(参照)である「リンク」と、適切に参照元を提示してコンテンツを利用する「引用」、そしてそれ以外の「転載」や「盗用」を厳密に区別しています。書かれたタグのみで単純に判断して徳保氏はインラインフレーム表示を「リンクであって盗用ではない」と主張していますが、現実問題としてインラインフレームでは内容そのものすべてが「リンク元」サイト内に取り込まれて表現されるため、著作権違反になるという判例もあるわけです。その判例を私は支持します。したがって、「リンクを盗用という愚」と主張する愚には賛同しかねます。なお、googleやgooなど検索エンジンでの取り込みについては、検索した人がだれも「これはgoogleが作成した画像である」と考える余地がないという点で同意を得やすいと思います。以上。

[No.10] 投稿者:松永[2004年03月28日 19:13]

なお、いちいちソースを見て判断することをリテラシーとして読者に求めることには賛同できません。出力された結果において判断するのでなければ、ブラウザは不要ということになりましょう。

松永さんが多数派の論理を正義の源泉としていることは当初からわかっていた。野嵜さん流にいえば、賛同者の多寡に関わらず「正しい」ものは「正しい」のだが、ようは HTML の原理原則から考えるか、実際の閲覧者のリテラシを前提に含めるか、という差だといえる。私が前者を重視するのは、次のように考えるからだ。

先にあったのは HTML であって、ブラウザの設計がまずく適切なインターフェースが用意されていないのが問題の根本原因だ。例えばブラウザに「プロパティサイドバー」が常設され、現在アクティブな HTML 文書(または選択された要素)のプロパティが表示されるのが標準状態であったなら、別ドメイン下からのリソース参照は誰にでも簡単に判読できる。Google のような大手サイトは、有名であるが故に「システムを理解できない方が馬鹿」といわれるのだが、本来なら、あらゆるケースにおいて誤解を防止できたはずだ。ブラウザベンダーの想像力不足が、このような事態を招いている。

もちろん、近視眼的な問題解決も世の中には必要とされている。だからそれはそれとして認めるが、もう少し遠くを見た意見があってもいいのではないかと思うわけだ。ところで、

「W3C原理主義」の人は、「インラインフレームはリンクタグなのだから、インラインフレーム表示はリンクであって盗用ではない」と主張 ワラタ さすが原理主義者

楽屋裏の発言にすぐ辿りつけるというのもいかがなものか。松永さんらしく、ここでも十分に抑制した表現を採用されているのはさすが。

後日談とか(2004.3.29)

松永さんがちょっと悪口を書いただけで退会者がボロボロ出てくるというのは、それはそれでいかがなものか。影響力、大き過ぎ。現実にそこにある問題を松永さんは無視できないだろうから、今後は今回のようなネタはやりにくくなるだろうと思った。

ところで、盗用サイトを作ったユーザーが非常に紛らわしい表記をしていたため、私もVEGA CLUBさんの表現を貶めるような表現を過去にとってしまっていました。と松永さんは述べていて、「みんなも勘違いしたよね? だから僕が勘違いしたのも仕方ないよね?」ということを言外にいっている。首尾一貫した言動であるなあ、と思う。ウケ狙いのネタにしないで、最初から VEGA CLUB にメールでクレームをつけるのが無難だったのではないか、と思ったりもする。

FUMING さんの批判に応える(2004.3.29)

端的にいうと、現状において件の「盗用」が問題になること自体は当然だ。しかしそれは近視眼的な物の見方であって、別の観点からは異なる結論を導くことができるし、そして最終的に望ましいのは原理原則に基づいた解決策であろう、という話をしたかったわけだ。

受け止める側のリテラシ云々を問うのもばかばかしいし、そういうことを平気で言うのは技術者側の傲慢さが見えてきて、私的には反吐がでる。

この批判は単純すぎる。リンクと引用が素人目に区別できないのは、ブラウザの実装がまずいからだ、と私は述べた。そこで私は、ブラウザの実装の改善案をいくつか示した。現状の実装のままではリテラシの向上は掛け声倒れだろう。しかし、blockquote 要素の cite 属性問題と同じで、技術者の工夫によって、技術の本来の意図を反映した状況を生み出していくことができるのではないか。

現在、Google などの大手サイトだけが、大手であるが故に、弱小サイトと同じことをしても誤解されない。これは不公平な話だ。本来、弱小だろうと大手だろうと、(HTML の観点からいえば)それはやっていいことなのだ。ようは、誤解が生じない実装があればいいわけであって、これは技術的に解決しうる問題ではないのか。

とりあえず、今ここで述べておきたいことは、アプリオリにフレーム内表示がダメだというわけじゃないという話だ。まずこの事実を押さえておかねば、技術者の工夫も始まらない。

リファラ・関連文書拾遺(2004.3.29)

ことのは関連、要点[2004年3月29日]

「フレーム内表示」くらいで簡単に著作者を(事実上)詐称できてしまうのは、ブラウザの実装がまずいから。逆にいえば、ブラウザが進化すればいいという話なのだから、問題の根源は「フレーム内表示」にあるわけではない。この事実が広く知られることになれば、ブラウザベンダーの努力によって、「フレーム内表示」にまつわる諸問題は解決される。

現時点でブラウザの実装がまずいのは明らかで、今そこにある問題についてこの場でどう判断するか、ということなら松永さんのおっしゃることは正しいのではないか。ただ、もっと遠くを見た意見もあっていいだろうと思う。だから私は、「それは盗用か」と問うた。ここで「それ」とは、「フレーム内表示」自体を指す。

アプリオリに「フレーム内表示」がダメなのではない。ブラウザの実装次第で解決される問題なのだ、というのが、私の論旨。

MT を使っていて少し困ること[2004年3月30日]

悪マニと Google の話題で書いたときもそうだったんですけど、回線が細いせいなのかどうか、ひとつの記事にあんまり長い文章を詰め込むと、うまくいかないことがあります。再構築したらファイルが途切れたことがあって、過去ログなんていちいちチェックできないんだから、そういうのは困るよな、と思ったり。