2004年1月10日以降、2ch, 楽天, infoseek, geocities, aaacafeなど多くのサーバが断続的に接続不可能、あるいは回線の異常な混雑状態に陥った。事の発端は「竹島切手」問題にある。以下、簡単に経緯をまとめてみたい。
竹島は島根県隠岐島の北西約157キロに位置し、面積は約23万平方メートル。島が日本の領土として正式に編入されたのは1905(明治38)年2月22日の島根県告示による。竹島をめぐる日韓両国の対立は、韓国が1952年に大統領宣言で領有権を訴えたのが発端。韓国は現在も警備隊員を常駐させており、実質的に同島を支配している。
2003年秋、韓国郵政庁は2004年の切手発行計画をまとめた。計画の中には、日韓で領有権を争っている竹島(韓国名・独島)のイラストをあしらった切手の発行(2004年1月16日予定)が含まれていた。
総務省は事態を重視し「領土問題が存在する竹島をテーマにした切手を発行することは、良好な国際協力関係を求める万国郵便連合憲章などにそぐわない」
(郵政行政局)との考えから、9月22日に「再考を求める」
(事実上の発行中止要請)文書を送った。韓国側は要請に応じず、「竹島切手」は外交問題となった。総務省は外務省などと協議した上で、日本郵政公社に対して、「竹島切手」が貼られた郵便物の引き受け停止などの措置を求めることも検討しはじめた。
2004年1月7日、日本の報道各社は一斉に「竹島切手」問題を報じた。日本国民が問題の存在を知ったのはこの時点である。
9日、麻生太郎総務相は閣議の中で「対抗して日本郵政公社が記念切手を出すかどうかは極めて政治的な問題。(閣議の場で)あえて諮りたい」
と対抗措置を提案したが、外遊のため閣議を欠席した川口順子外相が帰国後、外務省などとあらためて協議することを確認するにとどまった。なお麻生総務相は閣議後の記者会見で、「竹島切手」を貼った郵便物の取り扱いを拒否するという案について「現実問題としてどうか。結構大変な手間だ」
と述べている。
同日午後の記者会見で福田康夫官房長官は「韓国が自国の一部と考えて(切手を)印刷するのであれば問題がある。どうしてそうなったのか、韓国側の説明を求めなければならない」
と述べ、川口順子外相と協議して経緯の説明を求める考えを表明した。
同日夜、小泉純一郎首相は首相官邸で記者団の質問に答え、「波紋を広げるとか、荒立てるような動きはしない方がいい」
と否定的な見解を示した。同時に「竹島は日本の領土だ。韓国側もよくわきまえて対応してほしい」
と述べた。この発言は韓国側で大きく報道され、憤激を買うこととなった。(いつものことである)
12日、川口外相は「竹島切手」の発行を中止するよう、尹永寛外交通商相に電話で申し入れた。会談の中で川口外相は「竹島は日本固有の領土。国際法上もそういうことだ」
と説明したが、尹外交通商相は「韓国には韓国の立場がある。(韓国の)固有の領土だ
」と応じなかった。ただ「この問題で日韓の友好関係が損なわれるようなことがないように注意する」
(川口外相)との認識では一致したという。
13日、川口外相は申し入れの事実を明らかにした。同日午前、麻生総務相は記者会見で「対抗措置はいろいろ考えられるが、今この段階でどうこうするということはない」
と述べ、即時に具体的対抗策を講じる構えのないことを表明した。
16日、「竹島切手」は予定通り発行され韓国各地に長蛇の列ができた。4種類計16枚が1シートで、合計14万シートが販売される予定だという。
同日、高野紀元・駐韓大使は外交通商省を訪れ、金在燮・外交通商相代行と会い「(両国民の)感情対立をあおるもので遺憾」
と表明。金代行は「抗議は受け入れられない」
が「韓国民の感情が高まるのを望んでいない」
とし、日韓協力の重要性を指摘した。
同日午前、川口外相は在京の趙世衡韓国大使を外務省に呼び、「竹島はわが国固有の領土だ。容認できない」
と厳重抗議し、切手が万国郵便連合(UPU)憲章前文や諸決定の精神に反することをUPU事務局を通じて連合加盟国に訴える措置をとる方針を伝えた。同大使は竹島をめぐる韓国の立場を改めて主張し、「日韓関係に悪影響を及ぼさないことを希望する。日本側にも慎重な対応を求めたい」
と述べた。
同日午前、福田官房長官は記者会見で「何回も発行をとりやめるよう申し入れをしてきたにもかかわらず、韓国が発行したことは極めて遺憾だ」
と表明。郵政事業を所管する麻生総務相も「UPU憲章の精神に違反していることが一番問題だ」
と強い不快感を示した。
韓国は1954(昭和29)年と2002(平成14)年にも「竹島切手」を発行した。1954年の発行の際には日本政府は直ちにUPUに問題提起し、「二国間の紛争となるようなデザインはUPUの精神にそぐわない」
との決議が採択されたが、2002年の発行時は総務省と外務省が事実を把握しておらず、何の措置もとらなかった。(注:今回、2002年の発行についても抗議した)
日韓ワールドカップの際に明らかになったように、日本で韓国バッシングが表面化することはないが、韓国においては日本バッシングは堂々と行われている。大多数の日本人は韓国人の激しい怒りを「知らない」「理解できない」「呆れるしかない」ため、反韓報道には韓国側の非難あるいは批判に堪えるだけの商品価値がない。むしろ反日報道に商品価値があるのだから、日本は不思議な国だ。
これに対し、WWWは商売にならない言説が一大勢力となりうる世界なので、反韓の言説も多数見受けられる。韓国に強い反感を抱く日本人は少ないが、母数が1億2000万人だから、合計で数百万人にもなる。
日本における反韓のメッカは2chである。日本人は韓国で反日のメッカとなっているサイトを知らないが、韓国人は2chを知っている。
1月9日夜、小泉首相の「竹島は日本の領土だ」
発言を受け、例によって韓国側報道は派手に展開したことは前述の通りだ。しかし無責任な報道に焚きつけられた韓国人が、実際にできることはほとんど何もない。韓国のネチズンが2chに八つ当たりしたのは、ひとつの自然な流れといってよいだろう。
2chは1月10日から13日にかけて強烈なDoS攻撃(サーバへ大量のリクエストを行うことで高負荷によるサーバダウンを狙う攻撃)を受け、一時、接続が困難になった。この件に関しては詳細に事態の推移を記録したWebサイトが既に存在するので、解説はそちらに譲りたい。
いずれもあまり品がない(反韓色が強い)ので注意。
日本の報道では「竹島切手」問題は大きく取り上げられたが、日韓サイバー対立は派生した事象のひとつに過ぎないから、ほとんど記事になっていない。だが日本のネチズンの関心は後者に偏っている。興味深い現象だと思う。日本人は韓国人の激烈な行動に「引いている」
(評論家の森一矢氏)が、少なくとも関心はあるらしい。
ちなみに韓国では、韓中日、歴史めぐり「サイバー三国志」展開、[オピニオン]サイバー戦争、韓国ネチズン「12日夜に日本サイトを大攻撃」、韓日のネチズン「サイバー独島大戦」、韓日「独島サイバー大戦」…相手サイトを攻撃、韓・日 ネチズンたち 'サイバー 激突'(韓国SBSが放送)、韓日ネチズンの「独島発」誹謗戦が激化、韓日ネチズンの「サイバー壬辰倭乱」が進行中(以上、すべて翻訳版)というように、多くの記事が書かれている。
韓国では以前より、WWWを舞台にしたこの手の騒動に関する記事が、一般紙で商売になる状況が続いている。日本では考えられないことといってよい。「Yahoo! Internet Guide」などのWWW情報専門誌でさえ、この手の騒動を扱うページは全体の数%に留まるのが日本の現状だ。一般の新聞がこぞって話題にするなど考えられないことだ。
「K国の方式」が誕生したのは2003年12月29日、嵐の前夜だった。
「Kの国の方式」は、韓国のデジタルカメラ愛好会が運営するネタ画像サイト「DCinsede」から写真を拝借し、日本語のコメントを添えて再構成したWebサイトである。一連の騒動の中で「Kの国の方式」は日本人の韓国に対する蔑視・差別・誤解の象徴となったが、多くの韓国人を憤激させた各画像は、韓国人が作成したものだった。とはいうものの、韓国人の「Kの国の方式」解釈は、あながち誤りだったとはいえない。たしかに「Kの国の方式」は、韓国を笑いものにしたい日本人がブラックユーモアの精神で作成したWebサイトに相違ない。
このサイトの不運(あるいはネタサイトとしての幸運)は、韓国の報道機関に「韓国を誹謗するWebサイト」として紹介されたことだった。マスコミの力は凄まじく、「Kの国の方式」は「竹島切手」問題とは直接の関係がないにもかかわらず、2chと並ぶ反韓サイトの象徴として一躍有名になり、攻撃対象となったのである。安サーバがDoS攻撃に断固対処するはずもなく、「Kの国の方式」は誕生から半月も経たない内に消え去った。
だいたいこういった経緯で消えたWebサイトは、誰かがミラーサイトを構築するものと相場が決まっている。「Kの国の方式」もまた例外ではなく、10以上ものミラーサイトが作成された。ふつうはこうなると攻撃する側が諦めるものだけれども、今回に限ってはそうならなかった。
2chが韓国のネチズンによるDoS攻撃で被害を受けた件については既に述べたが、とくに17日以降、ミラーサイト群への攻撃が集中的に行われ、infoseekやgeocitiesなど、ミラーサイトが作成された各サービスに広範な被害が生じた。その結果、一時的ながらミラーサイト群は駆逐されるに至った。