「まとめサイトへのログ転載は気にしないけれど、金儲けは許さん」という人がけっこういるようで、ネット本が売れなかった頃にはあまり問題にならなかった 2ch 本が、最近では作りにくくなっているようです。いや、作ること自体には(事実上)支障ないのだけれども、ネットでの猛反発は我慢する他ない状況。ところで 2ch 以外では、掲示板のまとめ本が問題になった事例(育児ママを癒す本」事件/「ホテルジャンキーズ」事件)が早い段階からありまして、ろじぱら本が過去の投稿を採用せず新規に出版向けと断って投稿を募集したのも防衛策なんでしょうね。
著作権の問題については、あまりリンクされているのを見たことがないのだけれど、妖精現実の第9章11項と第6章2項が参考になると思う(賛同するにせよ、しないにせよ)。じつのところ私は革命的な提案にはついていけない。全員に分配するほど利益の出ないビジネスの足を引っ張ることはないじゃないか、と思う程度。気になるのは、他人のちょっとした金儲け(電車男だって高々数千万円に過ぎない)を口を極めて罵る人の醜さ。
ふだんはRinRin王国に紹介されるとリスペクトのリンクが増えるのだけれど、今回は最初に増えたリンク元が2chログの書籍化について 8……。
以下、少々補足など。
2ch は匿名掲示板ですから、出版などに際し著作者全員の明示的な許可が必要となると、事務コストが常識的な損益分岐点を遥かに越え、2ch のコンテンツは金銭的価値をほぼ失います。それは公共の福祉に合致することでしょうか。個々人の権利は大切ですが、適当なところで折れる必要もあると思います。「思い出に残る食事」など私の好きな本が、今後は(コストの問題で)作れなくなってしまうのだとすれば、寂しい話です。
大ヒットした「電車男」はもちろん、細々と売れてきた過去の 2ch 本にも一定の需要がありました。「2ちゃんねる」著作権侵害問題や電車男@FAQにある通り法的リスクの存在は明らかですが、これまで訴訟はありません。「著作権侵害は許せない」そうかもしれません。しかしながら、誰かが涙を呑んだ代わりに欲しい本が手に入った人がいて、西村博之さんも出版社の社員も書店員も印刷所の従業員も少し潤って、経済の歯車がひとつ回ったのも確かです。
電車男の時刻表は「2ちゃんねるぷらすVol.11」や「泣ける2ちゃんねる(2)」の出版を問題視していません。その理由が「知らなかったから」以外の何か(例えば「反対意見が目立たないから」)だったとすれば、少なくとも鉄子さんの価値観に「全員の著作権をきちんと守るより大切なもの」が想定されていることを意味しませんか?
2ch の9月危機以降長らく、2ch が儲かる話には基本的に応援する雰囲気があったと思う。独身男性板の住人が「電車男」出版に反対したこと、他板にも共鳴するスレッドが立ったことに、私はガッカリしました。「2ch ってそういうところだったっけ?」と。2ch 住人が、「参加者」ではなく「利用者」になってしまったことに、寂しさを感じたのです。