趣味Web 小説 2006-01-25

Advice351 森の中の丸太小屋

ご依頼人と Web サイトのご紹介

燈絽さんと実琴さんが共同で運営する2次創作小説中心のウェブサイト。(ちなみに今回、ご依頼をくださったのは燈絽さんですので、以下、2人称は「燈絽さん」とします。

更新履歴が残っているのは昨年6月以降なのですが、とにかく大量の小説が公開されており、ビックリしました。これほどたくさん書いてきて、カウンターの数字が5000未満となると、「ううむ」と考え込んでしまいます。たしかにいろいろ改善案を挙げられないわけでもないのですが、もっとまずい構成・デザインのサイトでカウンターの数字がひとつ大きい事例もいくつも見てきたわけで、「いったいどうしてなんだろう」というのが正直なところです。

昨年、この手の事例で最大の衝撃だったのが Banded Agate ですが……って、サイト名も変わってアドレスも変更!? で、春から関東に出てくるらしい。激動だなあ。

ともあれ、焼け石に水ではあるけれど、やらないよりはやった方がいいかもしれない、その割には手間暇はやたらとかかる、というしょうもないアドバイスしか提示できないのが実情なので、あまり期待せずに読んでください。

ご相談の内容

全体のレイアウトも気になりますが、小説のページの文字の大きさや背景がどうなのかアドバイスをお願いしたいと思っています。後、意見や感想が欲しいと思っているのですが、全くといっていいほど反応がありません。よければそれについてもアドバイスを頂きたいです。

色々と勝手を言ってすみません。目についたことでも何でもいいので、アドバイスをよろしくお願いします。

アドバイスいろいろ
0.

お待たせしました。いくらなんでも待たせすぎで、申し訳ないです。

1.

おそらく、いろいろ不安があってアドバイスの依頼をされたのだろうと思います。

私の回答は、「問題ありません」です。

デザインに華がないことは認めざるをえませんが、少なくともそのことが何かに害を及ぼしているとは思われません。だいたい派手な見た目を目指すとひどいことになりがちなのであって、むしろそうした「失敗しているデザイン」と比較して、優等生といってよいでしょう。

淡い配色も字が読めないほどの極端さを慎重に避け、上品に、美しくまとめていますよね。メニューフレームの装飾はあまり見かけないもので、ていねいに作られている印象です。

ナビゲーションも概ねきちんと整備されているように思いました。行き止まりのページもありますが、ブラウザの「戻る」機能で十分に対応可能な範囲内。例えば「徒然」コーナ内の各文書に目次へ戻るリンクを用意した方がよいでしょうが、面倒なら現状維持でも問題なさそうです。

2.

燈絽さんのサイトデザインに、致命的な問題は見当たりません。したがって、「ここさえ改善すれば絶対にお客さんは増えるはず!」という景気のいいアドバイスはできそうにない。

もちろん「もっとこうされた方がよいのでは?」という話はできます。ただ、そうしたアドバイスには即効性がないだけでなく、効果の確実性も高くないことにご注意ください。いろいろ手間暇かけてサイトを製作していると、「こんなによく考えて頑張ったのだから、さぞかし効果があるに違いない」と錯覚しがちです。現実はそう甘くはない。結局のところ、内容が多くの閲覧者の心を捉えれば人気が出るだけのことです。

「なんであのサイトがあんなに人気あるんだ!?」と驚いても意味はない。今ここに1日1万人が閲覧するサイトがあるとしても、所詮、ネットユーザの8000人に1人が閲覧しているに過ぎないわけです。燈絽さんにとってつまらないサイトがその程度の人気を持っていても全くおかしくはない。燈絽さんはそのサイトに関心を持たない「8000人中7999人」の側にいるだけのことです。

ウェブで一定の人気を得るとは、即ちこのようなことなのですから、多数派の意向にあまり左右されても仕方ないわけです。

私のアドバイスがさして意味を持たないのは、このためです。より多くの人に喜ばれるように……などと考えても、たった1000人、10000人の心さえつかまえられない。そうした限界をよく認識された上で、以下を参考程度に読んでいただければと思います。

3.

のっけからよそのサイトの紹介になってしまうのですが、一般的な話についてはこちらを参考にされるとよいと思います。

少なくともデザインに関して、現状、これといって欠点はないように思うのですが、解説記事を読み込んでいくと「あ、これ、うちでもやってみようかな」と気に入るテクニックを、いくつか発見できるかもしれません。

既に述べたとおり、現状に致命的な欠陥がない以上、いろいろなテクニックを駆使して、より洗練されたデザインを実現したところで劇的な効果があるとは考えられません。

けれども、自分が納得できる、自画自賛できるデザインを手にすることができたなら、その自信はサイトへの愛着へと変化し、より楽しくサイト運営を続けられることになるでしょう。そしてしばしば、そういった管理人の明るい気持ちは閲覧者にも伝わり、よいコミュニケーションの基礎となるのです。

そんなわけで、参考サイトに目を通されることは無駄ではないのではないかな、と思います。

4.

二次創作というジャンルでは、燈絽さんのサイトほどシンプルなデザインで人気のあるサイトは珍しいのが実情です。だからといって派手なデザインにすれば人気が出るのかといえば、もちろんそういった話でもない。おそらく、二次創作で人気を得る才能と、画像のあるサイトを作りたいと思い、実際に作るセンスに(少なくとも形式的な)相関があるのでしょう。因果関係があるのかどうか、あるいは直接的な相関があるのかどうかはわかりません。

本文を読み始めてしまえば画像はどうでもいいわけで、いわゆるライトノベルでも本文を収録する紙面の大半は、白い紙に文字が並んでいるだけです。イラストは数十ページに1枚というペースでしか用意されていない。にもかかわらず、カバーには派手なイラストが使われ、目を引いていたりする。イラストを気に入ったところで、どうせ本文は文字なのだから、あまり意味がないような気が私などはするわけですけれども、ライトノベルの世界ではイラストは売上に貢献する重要な要素ではあるらしい。

まあ、二次創作の場合、著作権がどうとかこうとかいった問題もありますし、絵師さんと仲良しにでもならなければ、内容にあわせたイラストは調達できません。

では打つ手はないのかといいますと、じつはキャラものの画像でなくてもいいわけですね。文字と重ねて使うのではない、1点モノの画像素材はたくさんあります。ふつうの小説などの場合、キャラクターのイラストは使っていないけれど、やっぱり美しいカバーを用意していることが多い。こっちの路線なら、十分に対応可能だと思う。

……といっても具体的に改善案を作ってみようとすると、けっこう迷いますよね。まずは簡単なところから、やってみてはいかがでしょうか?

変更案の方が絶対に素晴らしい、とは思わないのですが、画像ひとつでもけっこう印象は変化するということを確認していただければ幸いです。

5.

ナビゲーションは、とりあえず問題はないのですけれども、私なら少しデザインを変えますね。

具体的には、なるべく少ないクリック数で個別の作品へ到達できるように目次の構成を変更します。

たしかに、1ページにたくさんの作品へのリンクを用意すると、その分量に閲覧者が「引く」可能性はあります。けれども、多少のことならクリック数を増やさない方がいいのではないか、と私は思う。

下の方の作品が目立たなくなってしまう……という心配はたしかに当たっていますが、とりあえず新作はページの上の方に特設リンクを作って紹介するとか、サイトのトップページに新着作品をリンクするコーナを作るといった対応もできますよね。

まあ、好みの問題なので、「あ、これもいいかも」と思ったら参考にしてください。「いや、やっぱりよくないよ」と思ったら、忘れてください。

6.

意見や感想がほしい、という件について。

本を買いますと、読者カードが入っていることがよくあります。せいぜい数行しか感想を書く欄がなく、その気になれば3~10分で書けるわけですよね。でも、ほとんど誰も感想を書かないのが実情です。

あるいは、燈絽さんご自身、よそのサイトの小説を読んだ際、どれだけ感想を書いていますか。「うわー、すっごく面白かった!」と感動してさえ、何も書かないことの方が多いのではありませんか? 私の場合は、そうです。結局のところ、たいていの読者は、タダで読めるものはタダで読みます。

「感想を書いてくれなきゃもう更新なんてしない」と作者がすねても、やはり大多数の読者は何もしようとしない。「この人が作品を書くのをやめてしまうのは残念だけど、でも、だからといって何か感想を書こうとも思わないな。作者が気を変えてくれればいいのにな」と徹底的に自分は何もしない。どの作家も他の作家と同じではないのだけれど、多少の違いは読者にとってそれほど問題ではない。

あるいは、極端な話をすれば、仮に最後の一人の小説家が筆を折ってさえ、少なからぬ読者にとっては「読書」自体が数ある娯楽のひとつに過ぎず、自分が何らかの行動を起こしてまで守らねばならないものではない。

アマチュアが「同人」を結成するのはなぜかといえば、お互いに感想を言い合うというシステムを作らねば、ほとんど誰も感想を話してくれないからです。そして自分自身も、他人の作品について感想をいうことができない、書くことができないからです。相互に利益のある体制を構築してはじめて、「面倒くさい」という高い高い壁を乗り越えて感想を言い合い、参考にしあうことができるようになるのですよ。

ウェブでは素人でも何とかかんとかすれば、のべ100人くらいの方に作品を一部でも読んでもらうことは不可能でない。すると、確率1%でも1人くらいは何か感想をくれるだろう、とまあ、そういった期待が持てるわけですね。

でも、現実は厳しい。「ご意見・ご感想はとくに歓迎していません」といっている私のサイトはいささか特殊かもしれませんが、1日数千人が閲覧しているにもかかわらず、メールなどいただくのは月に2回程度です。カウンターの数字が10万くらい増えると、ようやくメール1通。はい、お分かりですね、通常のサイトなら当サイトの100倍くらい、いろいろ意見をもらえるはずだ、と仮定しても、1000ページビューにつきメール1通にしかなりません。

「世の中、そういうものなんだ」ということを、まず認識していただきたい。

燈絽さんのサイトの掲示板には、当サイトのメール受領頻度よりはよほど高い確率で投稿があり、ウェブ拍手からのメッセージも年に数回はもらえるわけですよね。カウンターの数字が5000に満たないサイトだということを考えると、とくにひどい実績ではありません。それどころか、平均値を超えているのではないですか。

そ、そんな……とガッカリされるかもしれませんね。でも、ないものねだりをしても、誰も何も恵んではくれません。

結局、ウェブに何か幻想を抱いてもダメなのでありまして、同人活動のようなものを、地道にやっていくことを勧めます。本当に知り合い同士で同人をやってもいいでしょうし、あるいはウェブ上に仲良しの作家さんをドンドン増やして、お互いの作品について感想や意見を言い合う体制を作っていかれるとよいでしょう。ただまあ、とくに後者の場合、基本的には「持ち出し」になることを覚悟してください。自分が5作品の感想を書いたら、相手が1作品の感想をくれる、それで満足しましょう。

7.

閲覧者数の割に、たくさんの感想をもらえる人もいます。いますけれども、それはようするに、学校でやたらと友達の多い人、みたいなものでしてね、真似しようったってできないのです。「何であの人ばっかり人気あるの?」と思っても仕方ない。いちおう、そんなことでも理屈はいくつかつけられたりするのですが、虚しいですよ、自分にはどうせ実践できないのだから。

文字だけのコミュニケーションにも、それなりに人格が現れます。それはお喋りから出てくる人格とはかなり違っている場合があります。だから、日常生活では人気がなくても、ウェブでだけは人気のある人とかもいたりします。ただ、いずれにしても、日常生活で人気のない人が行動を見直して人気者に大変身することが非常に困難であるように、ウェブで人気のない人が文章の書き方などを見直したって、やっぱりたいていの場合、人は寄ってきません。

ファッションセンスのない人が、みんなに褒められるようなコーディネートをしようとしたって無理で、せいぜい周囲を不愉快にさせない程度の服装しかできないようなもの、といってもかまいません。頑張って頑張って、それでもその程度なのであって、気を抜くとすぐに周囲に不快感を撒き散らしてしまう。悲しいですね。

既に述べたとおり、燈絽さんのサイトの人気、読者からのリアクションの量は、ふつうです。とくに多くも少なくもない。どちらかといえば多いかもね、という微妙なところ。この現実を、基本的には受け入れていくしかありません。だから、同人活動のようなスタイルを目指す他ない。友達同士や仲間の中で感想をお互いに言い合う仕組み……これは人類の知恵です。古臭いと思われるかもしれませんが、やっぱりこれが一番、強力だし、確実なんですね。

8.

二次創作系のサイトは、検索エンジン避けをするのが常識となっているようですね。著作権問題で目をつけられたくない、とか、必ずトップページの説明を読んでから閲覧してほしい、といった文化があるためだとか。

そのため、二次創作系のサイトのアクセスアップ手法は非常に限定されています。

燈絽さんには釈迦に説法でしょうが、念のために確認しますと、まず第一に重要なのは、いわゆる同人系サーチエンジンへの積極的な登録です。ひとつふたつのエンジンに登録しておしまいではなくて、常に人気のあるところを探して、どんどん登録を増やしていく。続いて、仲良くしてくれそうなサイトの掲示板に出没して、いろいろ作品の感想などを丁寧に書いていく。もちろん投稿者情報として自分のサイトのアドレスの入力は忘れないこと。そして相互リンクの申し出は基本的に全部、受け付ける。ただし相手がリンクを外したらこちらもリンクを外す。巡回先を増やす。参加型の企画があれば必ず立候補する。

肝心の作品さえそこそこいいものならば、基本的に、こうしたことを繰り返していくだけです。それで人気は出ます。というか、他に何もすることがない。

なーんだ、簡単じゃないか、と思ってしまう方が世の中には多いのですが、だいたい続かないんですよね。なるほど、やるべきことは分かりきっていて、簡単なのですが、続けるのが面倒だし、たいへんなのです。同人系サーチエンジンも、せいぜい10箇所くらいに登録したら飽きてしまう。一番の難所が、よそのサイトの作品をどんどん読んで感想を書くというステップで、あまりの不毛さに音を上げてしまう。ほとんど無反応ですからね。でも、地道にやっていくしかない。

そういうことに努力し続けると、作品の内容の割にアクセスがあり、そして感想もいくらか貰いやすいサイトになります。

どれかひとつだけ、ということであれば、大手サイトの企画モノに乗っかることですね。ま、何もしないでも人柄だけで人気を集める人がいるわけだから、その隣でこうして頑張るというのは、いろいろ精神的につらいものがある。ほとんどの人が続かないのも、当然なんですね。

いろいろ書きましたけれども、話しは最初に戻って、気の合う人と同人を組んでいくのが一番、お勧めです。できれば、会って話せる相手がいいです。文章を書くのは面倒くさいので。会って話せないなら、せめてメッセンジャーで連絡の取れる相手がいいですね。メールよりメッセンジャーのようなチャット型の方が、気楽にコミュニケーションを取れることが多いです。メールの3行、メッセの30行、っていいます。同じ精神的コストで、たくさん、言葉のやり取りができるのです。

アドバイスは以上です。

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