趣味Web 小説 2008-01-28

1.7倍速再生と速読

1.

録画したテレビ番組は、再生速度を増減できる。当初は1倍で再生していたのだが、次第に1.1倍、1.2倍と速くなっていき、最近では基本が1.7倍。

当然、入り乱れた会話やささやき声など、もともと聞き取りにくい部分は、聞こえない。でも、別にかまわない。というか、「見たい」といっても、大半の番組は、それほど真剣に「見たい」わけじゃない。

人生はあまりにも短すぎる、と思っているような人は、「どうしても見たい」「真剣に見たい」ものしか見ないのだろうから、「1.7倍で再生して満足できるような番組を見るなんて、時間の無駄」というに違いない。でも私はそうじゃない。

誤解を恐れずに書けば、少なくともここ数年、私は「くだらないものを(そこそこのレベルで)たくさん楽しみたい」と思ってる。実際に私が読んでいる本、見ているテレビ番組や映画、聴いている音楽がくだらないものがどうかは別問題。ただ、私の姿勢として、量の追求に重点を置いている。

2.

「ちょっとだけ読みたい本」「ちょっとだけ見たいテレビ番組」「ちょっとだけ聴きたい音楽」を、限られた時間の中でいかにして享受するか、というあたりに私は興味を持っている。

しかし「ちょっとだけ」の欲求だから、努力するまでには至らない。速読の解説を読む気になれず、もちろん練習もしない。その点、テレビの高速再生は、ピピッと操作すればいいだけなので、努力が不要。まずはここから、となったことに不思議はない。

1.7倍は極端。でも、ふつうの人でも1.2~1.4倍くらいまでなら、さして違和感がないと思う。興味のある人は、ちょっと試してみてください。

で、いったんこれに慣れてしまうと、「たくさん録画しすぎて、見る方が追いつかない」人はもう、リアルタイム視聴に耐えられなくなるんじゃないかな。私の場合はそうだった。

朝食時の天気予報はリアルタイム視聴しているけど、他はもう、ニュースだろうとなんだろうと、全部、録画したのを見てる。逆にいって、録画してないものは見ない。再生速度を上げたり(報道やバラエティーであれば)興味の薄いコーナーを飛ばしたりできないのはかったるい。

こうなってみると、リアルタイム視聴の不便さを理由に「テレビ番組を見ない」と言い出すのは飛躍ではないか、と思う。リアルタイム視聴が不便なら、録画視聴だけすればいい。

3.

テレビ番組を高速視聴するようになってからというもの、本を速く読めるようになってきた。もちろん、速く読めばそれだけ脳に残る情報は落ちてしまう。それでもいい、という本が私にはある。

従来は、どうでもいい(けど読みたい)本を読むのにも、1頁1~3分かかった。だから、時間の貴重さを鑑みて、読みたいのに諦める本がたくさんあった。いま、そうした制約から解放されつつあるのは、とても嬉しい。

高速再生を繰り返すだけで、どうして速読(といっても私の速読は、ちょっとした読書家のふつうの読書スピードよりも遅い)が可能になったか。おそらくそれは、全部が頭に入らなくても「気にしない」感覚に慣れた、からではないか。罪悪感みたいな……わかりますよね? それが、適当に麻痺してきた。

斜め読みと違うのは、一応、全部の文字を目で追っていること。だから空では思い出せなくても、読み返してみれば、「あー、これは見覚えがあるな」ということになる。

Information

注意書き