装飾をCSSに委ねるとき、一部ではなく全てを任せよ、という原則があります。元々CSSは、そのように使うものとして設計されているのです。しかし実際にCSSでデザインしていくと、各部分のデザインはうまくいっても、レイアウトで躓きがちです。本書はCSSデザインの最難関、「レイアウト」について真正面から取り組んだ労作です。
本書はHTML文書の装飾を全てCSSに任せるという大方針のもと、5種類の基本的なレイアウトに焦点を当てて解説しています。レイアウトのバランスについての記述は秀逸です。しかしなんといっても本書の白眉は、実際の製作過程を詳細に追っていることでしょう。初級者の方には、本書の解説を「手で追う」ことをお勧めします。完成形を眺めるだけでは見えてこないものがたくさんあります。
本書の難点は、HTML周りの記述にあります。div要素に頼り過ぎた作例、要素とタグの同一視など。HTMLの正しい使い方、アクセシビリティー関連の話題については、別に学ぶ必要があります。しかし「レイアウトとCSSの解説書」と割り切れば、有用な一冊ではないでしょうか。