Web デザインの勘所を解説した本です。テーマの抽象度を高めていけば、デザインの世界は法則の山に埋もれています。しかし個別具体的なケースについて「かっこいいデザインを実現するポイントは?」と訊ねると、いまだに「センス次第ですね」と返ってくるのが実情です。
本書も例に漏れません。各項目のタイトルに正解を指し示す言葉は少なく、大半はデザインの要所を指し示すのみです。世の中にデザインの良し悪しが存在するのは事実ですが、「いいデザイン」の定式化は困難です。そこで著者は、特異なアプローチを試みています。項目毎にデザイナー渾身のオリジナル作例を用意したのです。
著者の示す「ルール」を全て満たす作例はありません。しかし、全てかっこいい。個々の解説を「なるほど」と頷きながら読んでいくだけでも十分役立ちますが、ぜひアンテナの感度を高めて、「センスがいい、とはこういうことだ」という言外の説明も受信したいものです。
なお「ゼロから始めるWebデザイン」や「Webレイアウト見本帳」などが解説するWebデザインの基礎は予習しておいてください。骨組みが未完成なのに「神は細部に宿る」ことを示す解説を読むのは時期尚早です。要注意。