Book Guide 2005-02-10

ゆかいな誤変換。

誤変換をテーマにした本は過去に何冊か出ていますが、本書の特徴は意図的に生み出された誤変換を集めたところにあります。したがって、「あるある」ではなく「そんなアホな」という誤変換ばかり。あまりにシュールで想像力の追いつかない誤変換文もありますが、理解を助ける親切なイラストが用意されているので安心です。

本書の実体は旧来からある「語呂合わせ」の集成です。「ソフト部→祖父 飛ぶ」といった例を見ての通り、冷静に考えれば「だから何なんだ」という内容。これで笑うのは簡単なことではありません。本書が商品として成立しているのは、言葉遊びに「誤変換」とラベルをつけ、作意を消して「偶然の産物」を騙ったからだと思います。

もちろん、本書に収められているのは誤変換の事例です。では本書の真の著者は日本語変換ソフトウェアなのか? 違います。肝心なのは、元テキストの選択だからです。「音節の区切りや字の選択次第で別の文章が浮かび上がるテキスト」を発見した投稿者の柔軟な日本語感覚が、見事な誤変換を呼び寄せているのです。

さて、本書は何度も発売が延期されました。著者のイラストが遅れたため、と聞きます。ならば編集者には十分な時間があったはずなのに、重複・誤字・脱字の多いこと多いこと。遅れたついでに、もう少しよく見直してから出版していただきたかったと思います。

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