「電車男」は 2ch 発の書籍なのに、なぜか 2ch の住人には大不評。一体、なぜ? この疑問を解く鍵を求めて、私は本書を手に取りました。結果、概ね満足しました。
大所高所から分析した批評家風の言葉はたいてい、無意識に動いている現場の人間には違和感のあるものです。発言者が現場の人間だったとしても、それは同様です。上司の訓示が上滑りしているように感じるのはこのためで、土台、言葉にならないものを言葉にすれば、こぼれるものが多いのは仕方ありません。
著者は 2ch の住人ですし、私も利用者の一人です。けれども、やはり本書の説明には違和感がある。著者自身もそうだと思います。
読んでいて面白かったのは、「自分のよく知らない部分の説明ほど、もっともらしく思われる」こと。本書を読んで、すっかりもやもやが消えた方は、多分、2ch に代表されるような文化に染まっていないのでしょう。著者の前作「美しい日本の掲示板」と同様、リトマス試験紙のように使える1冊です。
ただし、本書はかなりマニアックです。多数の補注も、マニアをニヤリとさせるような記述に終始しており、ネット初心者をサポートしません。ベストセラーとして大々的に報道されて初めて「電車男」を知ったような方にはお勧めいたしかねます。