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新世界倶楽部
当倶楽部では多種多様な仮装を楽しめます。
メニューはこのようになっております。

カジュアル[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆☆★(4)]
 僕は服には全く無頓着だった(過去形に注意)。
 異常とも云える寒がりのせいで、要するに衣服というのは寒暖の調節が出来ればそれでいいと思っていた。だから小学校のアルバムなんて見ていると、「こりゃ浮浪児の出来損ないだなあ」と思える服装の僕に出会うことが出来る。
 遠足や旅行などは妙に気を使ったのでいいのだが、授業の風景を撮った写真はもうダメだ。一体どこで売ってるあんな服、てな感じ。
 中高ともに私服は似たような物だった。いつも同じ様な服を着て生活していた。前にも云ったとおり寒暖の調節が出来れば、それで良かったから服は完全に親任せだった。この決断がどんなにひどいセンスの服を誘うか、今考えるとゾッとする。
 大学に入るとさすがに周囲の目もあり、また都会に出てきたので服には結構気を使うようになった。初期は高校から着ていた親選びの服で随分恥ずかしい思いをした。特に訳のわからん英語フレーズ、これは痛かったねえ。
 それ以来、一念発起して服を買い揃えた。
 ファッション誌も何も見ない、頼るは己のセンスとキャンパスの風景。金額も1着2000円以下の制約付き。
 それでもね、変わったよ。自分で思うね。
 勿論周囲の尊敬を受けるほど、なんてうぬぼれちゃいない。本当に人並みの服装になった。予算もばれた試しはない。出鱈目のブランドや金額を名乗っても疑われなくなった。
 人間、そんなよっぽど酷い服でもなければ(やっぱオタクになると相当酷い服を着ているのがいる。昔の僕みたいなね)服の質とか目利きじゃないんだし、わからんものよ。
 これ、結構知っておくと便利だね。 

スーツ[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆☆☆(5)]
 どういう訳か昔から、スーツの好きな子供だった。
 小学生の頃はさすがにスーツやブレザーは着れないから、代用に白いブラウスの上にチョッキやベストを着、その上にカーディガンなどを羽織っていた。嫌なガキである。
 そんな僕だからその後も家で一人の時など勝手に父のタンスからスーツを取り出しては、鏡の前で悦に入っていた物である。変態だ。
 中高と詰め襟だったけど、とりあえず正装なのでスーツ熱は特にでなかったが、大学に入ってからが再燃した。僕は初のスーツ購入に完全に舞い上がってしまい入学式のみならずその翌日もスーツで行ってしまったのである。当然滅茶苦茶浮いてしまい、その目論みは翌日で消えたが。
 さてその後、僕は毎日ジャケットを着てくる奴と仲間になった。
おそらく同種人だろう。余談だが男にはこの手の人間が結構いるのである。友人など大学生の癖に十万以上のアルマーニを着てクラブで踊り狂っている。別の男もポール・スミスを着て、東大に行ってしまった。僕は3万程度の量産品である。
 さて当時の僕はジャケット制服化を考えてはいたが大学に入って1年は窮乏生活を送っていたので代用品たるテーラージャケットを買う余裕はなかった。結局、奨学金受給生になってからジャケットを買い、今は日常の用に着ている。
 来年は教育実習、そして就職すれば毎日がスーツだ。
 それは結構楽しみな光景であるが、僕は信条として生涯を通じて灰色のスーツは着ないことを明言しておく。あんなくたびれた色は僕の趣味には合いません。 

詰襟[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆☆★]
 中高と制服は詰め襟だった。
 初め元は軍服とは知らず「随分変な服があったモンだ」と思ってた。恥ずかしながらそれが軍服と知ったのは中学2年のときで、父親から詰め襟が首を切られないためと聞いた時には吃驚した。
 その後、セーラー服も軍服だと聞いた時ほど驚かなかったが。
 僕の中学は英国海軍風の濃紺で、高校は帝国海軍の流れを組む黒の制服だった。いわれてみれば、サーベルを差す切れ込みも背後にあったりして何かと本格的だ。
 こういう由緒正しき制服は僕の出身校のような歴史の古い学校に多いらしく、都会に出てきて似たような制服を随分見たがいずれも名門校であると聞く。テレビで見たが最難関私立中学と云われる某中学の制服も似たものだったので吃驚した。
 僕は在学中、スーツが好きだったので「なんでブレザーじゃねえんだこの学校はよお」と思っていた(別の友人某は「ホルスターをかけられない」という理由でブレザーを推していた)が、今考えると何となく詰め襟も世間公認のコスプレっぽくて良いかな、と思う。
 だってスーツはいつでも着れるけど、詰め襟着れるのはこの年代だけだもんねえ。近隣の学校は灰色のださい詰め襟だったが、そうではなかったこともとても良かったと思っている。
(追記、先日友人宅でエロビを見ていたら、コスプレの中に学生服というのがあって吃驚した。勿論着ているのは女である。詰め襟着て角帽かぶった女に欲情するなんて、少々理解しかねる) 

セーラー服[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆☆★]
 僕の通っていた中学校の制服はセーラー服だった。
 当然「女子は」である。男子はそんなもの着ない。
 最近はセーラー服は人気がないのか、近隣の諸学校は中学も高校もおしなべてブレザーだった。だから夏は白、冬は黒のセーラー服を着ているのを見れば、まず間違いなく我が中学の生徒だったのだ。
 そして僕のいた中学は希にみる真面目な中学で、非行もほぼ皆無な学校だった。近隣の恐喝やら窃盗やらシンナーやいじめや自殺に暴走族といった荒れた学校とはまったく縁がなかった。
 そんな学校で思春期の3年間を過ごしてしまったため、僕の頭には「セーラー服=清純&真面目」という図式が完全に刻み込まれていた。殆どエロ親父と考えが似ている。
 だから都会などで、セーラー服を着ていながら馬鹿騒ぎしているガングロなどを見る度に「あれは女子学生ではない」と勝手に思いながら、違和感を飲み込んでいる。 

体操着[着用経験:あり/好感度数:☆★★★★(1)]
 高校という狭い社会にいると、外部のことはよく解らなくなるようだ。僕は母校がそうなものだから、ずっと体操服というのはどこの高校でも学校指定着を買わされるものだと思っていた。
 が、他の高校を出た人の話を聞くと、そうでもないらしい。運動部員などは指定が来るらしいが、そうでなければ大学の体育と同じ、「動きやすい服を各自用意」するものらしい。とある友人の高校は、剣道も私服でやったと聞く(防具はどうすんだ?)。
 これは大歓迎な風潮である。大体学校が指定した物は制服にしろ何にしろ高すぎる。これは学校側へのリベートなりキックバックの分があるのだろうな。値段が高い割には質もわるけりゃデザインもダサい。最低である。
 殊に我が校の体操着はその配色の悪さがつとに有名だった。
 誰がこの色を選択したのか知らないが、色盲だったのだろう。
 学年毎に色は異なるのだが、「赤」「青」「黄」とあり、赤は鮮血のような目にいたい赤、青は色落ちをしたようなくすんだ水色。黄色は、これが僕の代だったのだが、からし色なのである。
 もうちょっとマシなものはなかったかと思う。
 素材もボロで、一回スライディングをしただけで破れる素材を使用。あの体操着会社、一般の市場ではとても競争力はないな。
 とどのつまり、それを着せられる生徒こそいい面の皮である。 

ジャージ[着用経験:あり/好感度数:☆☆★★★(2)]
 体育の教師は何故、オフィシャルな席でもジャージを着ているの
だろうか。ここでの公式行事というのは生徒集会や卒業アルバムの撮影、なんていうときのことだが、やはり「社会人」としてそういう時はスーツを着用すべきだよな。
 彼らは常にジャージ、んでもって頭は丸刈りで金のアクセサリーなんかチャラつかせちゃったりしている。竹刀片手に胴間声を張り
上げるその姿はまさしくヤクザである。
 あのヤクザの人もね、法廷なんぞに行くとよくジャージで現れる。おそらく楽なんだろうね。街を見てもそこらをぶらついているチンピラはまず間違いなくジャージ着用である。
 必然性もないのにジャージを着ている奴は、喧嘩や有事に備える奴くらいなもんだ。あれは活動着だからね。
 そういう柄の悪い姿で、日頃から偉そうに校舎を闊歩している奴が生徒に「服装の乱れは心の乱れ」とかなんとか声高に脅しているのである。
 お前ら社会人の服はスーツだろう。授業のない日くらいはスーツを着て欲しいモノだ。
 本当にワケが分からない。 

剣道着[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆★★(3)]
 子供の頃、剣道を習っていた。
 日曜になる度、家で剣道着を着ると車で道場まで送って貰ってた。途中、近所の女の子に会ったりしたとき、何か誇らしかったっけ。剣道の腕はからっきしだったけど、とにかくハッタリの効く衣装であることは、何となく解った。
 高校に入ると武道の授業があり、僕は剣道を選んだ。
 この剣道というのは礼法と型であり、打ち合いもあるにはあったが、試合まではやらなかった。そういう授業だから剣道着や防具の着脱や畳み方は異常に厳しくやらされた。
 ここで困ったね。
 僕はまったくの不器用で、これがさっぱりできない。
 子供の頃は家で着替えていたからそんなことはやらなかったのだ。故に出てくるのはいつも最後、先生も呆れて「もう上がっていい」というほどの下手さだった。
 ところがここで天啓があった。
 剣道の先生は三十代の母校剣道部出身で、現副顧問だった。
 そして僕の父親がやはり母校の剣道部員で剣道部顧問たる先生の直属の先輩だったのだ。この事実が露見して後、あまり厳しく云われなくなった。
 恐ろしいことで有名な先生が「山田さんはお元気ですか?」等と云うのを聞くにつれ、昔の運動部って本当に怖いな、と思った。 

水着[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆☆★]
 中高と金もないのにさまよった学校付近のデパートには付属の 
フィットネスクラブとプールがあった。プールは夕方から子供向けのスイミングクラブに変わっていた。僕もかつては世話になった所でもある。
 さて子弟が泳いでいる間、親は何をするか。勿論買い物して貰うのがベストであるが、泳ぐ子供を見ていることもできる。デパートの2階からガラス越しに階下のプールを見下ろすスペースがあるのだ。
 このスペースは誰でも入ることが出来て、ベンチとジュースの自販機がたくさんあった。
 僕はガラス越しながらプールサイドのベンチで読書、というものに妙に憧れており、よくこのベンチでジュース片手に本を読んだ。階下のプールは冬だろうとなんだろうとガンガンに暖房をかけており、ガラスから漏れる熱が、南国気分を醸し出していた。
 今考えると不思議なのだが、僕はパインジュース片手に南国気分に酔っており、何故か階下の水着姿には興味を覚えなかった。確かに僕はロリコンではないのでガキの水着に興味はない。これは解る。ただ中には僕と同年代それ以上の水着姿もあったのだ。これに全く興味がないとは不思議である。
 後に、その同年代風の人たちは他でもない同級生の水泳部員だと知った。夏は学校のプールで冬はそのプールで練習していたという。僕は全く気がつかなかったのだが、気がついていれば凝視していたかどうかはわからない。 

浴衣[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆★★]
 浴衣、ねえ。
 僕の地元では夏に3日間、やけに豪勢な大祭がある。
 女って本当に浴衣が好きだよなあ、とこの大祭を見る度に思う。当日になると近隣の駅や家の近くで色とりどりの浴衣に身を包んだ女の子を見ることが出来る。これが面白いもんで浴衣(ハッピではない)を着ている若い男ともなると、これはまずチンピラやら暴走族やらその類である。
 地元の祭りであるからして、行けば今でも見知った顔に出会える。高校時代の同級生達である。
 昨年はひそかに敬愛している同級生とその彼女に会って、同道する光栄を得た。結局ふたりとは夜の11時まで一緒に喋ったのではあるが、途中彼女の方が浴衣に着替えに自宅へ戻った。
 彼は「なんだよ、途中で面倒くせえなあ」などと不満を表明してたが、浴衣姿の彼女に満更でもない顔をしていたのには微笑させられた。そしてそんな二人を見て、「浴衣の似合う女の人ってのはいいね」と柄にもなく僕は思っていた。 

軍服[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆☆★]
 別に軍事マニアというわけではないが、仮にも「大佐」と名乗る身ではあるので軍装にはなかなか関心がある。とはいってもそれはあくまでカジュアル上の話であり、別にマニア誌を購入の上、通販で「ドイツSS将校用儀礼服一式20万円」なんてのを買ったりはしない。
 ではカジュアル上とは何かといえば、昔から流行っているドイツ軍の放出ジャケット(ほら結構街で着ている人見るでしょ? モスグリーンの服で腕にドイツの国旗が入った)に中身は迷彩シャツを入れ(やっぱ野戦用)、ドッグ・タグを仕込む程度だ。
 ま、凝っていると云えば凝っているが、人目を引くほどではない。これが迷彩パンツとなると話は違うが(迷彩パンツなら上は黒か蛍光色が良いと思う)下は濃紺のジーンズである。
 この程度なら大人しいもんだと僕は信じるが、やはり世の中には僕の想像を飛んだ奴がいる。繁華街の地下鉄で、全身野戦用の迷彩を着けた上、ヘルメットまでかぶっている奴がいた。
 凄いのは半袖にまくった二の腕に(さすがに顔ではなかった)濃緑のペインティングを施していたところだ。
 これにはぶっ飛んだねえ。
 自衛隊は勿論こんな馬鹿なことはしませんよ。
 これで片手に電動ガンでも持ってりゃお巡りさんが飛んで来るんだろうけれども、彼は服装とは場違いな明るい色のリュックを背負っていた以外、何も持ってはいなかった。
 でもきっと警官が職質かけて、リュック開けたらナイフとかエアガンとか出てきたりするんだろうな。
 マニアの世界は恐ろしい。 

警官[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆☆☆]
 折角貴重な時間を割いて貴方はこのHPを見てくれる訳なので、たまには役に立つ話をしようじゃないか。警官の階級章についての話ね。
 別に知っていても何にもいいことはないが、無駄な知識はこの世にないと云うじゃないか、まあこのサイトに来ていただいたお土産として覚えてって下さい。
 まず警察の階級は「警視総監」「警視監」「警視長」「警視正」「警視」「警部」「警部補」「巡査部長」「巡査長」「巡査」となってます。僕はコナミの「ザ・警察官」では警視長まで行ったことがありますな。
 ま、ちなみにここに書くのは警視までです。何故か? それ以上になると国家公務員になるし、そんな人とはまず接しません。
 で、階級章の見方なんですが、胸の所を見ればわかりますな。
 まず星の脇に太い線があります。これが金色だったら「警視」「警部」「警部補」で、銀色だったら「巡査部長」「巡査長」「巡査」です。あとはその太線の数で、多い方が偉い、とこういうことになっています。
 例えば金の2本は警部、銀の3本は巡査部長ね。簡単でしょ?
 まあただ知ったからなんだということはあってね。
 財布を届けに交番に行ったら、やけに年をとった警官がいた。彼の態度がやたら悪かったので頭に来て、彼が僕の名前を書き間違えたところで「そこは違いますよ、巡査長」と云ってやった。
 そんときのまあ相手の顔、見物だったね。
 後ろ暗い人は決して無闇に云ってはいけません。 

郵便局員[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆☆★]
 どういうわけだか僕、郵便局員の制服が好きなんだよね。
 いや、別にこれは郵便局員の制服見てると興奮するとかそうゆう次元の話ではなくて、ただ単に他の公務員の制服に比べてデザインがいいなあと思う程度のことである。
 昨今、郵政民営化が叫ばれているけど、試験制度にしろ何にせよ郵便事業っていうのは他の官庁とはやっぱ毛色が違うよね。髪の毛も郵便職員は茶髪が何人かいるよね。顔つきは妙に真面目そうなのに頭は茶髪っての、大学にいっぱいいるんだよね。なんだか見てて哀れを催す。
 郵便は他の公務員に比べて確かに物腰丁寧だし、僕は大変好感を持っている。民営化されようがされまいが、あの濃緑の制服に身を包み、職務に励んで欲しい。
 私、陰ながらに応援しております。 

白衣[着用経験:なし/好感度数:☆☆★★★]
 白衣と云えば看護婦。白衣の天使、とはいうが実際は悪魔みたいな奴の方が多いな。あれで興奮するというのがよく解らない。僕はおっかないイメージの方が強いんだけれどもね。
 ともあれ白衣には妙に性的な側面もあるのだが、一方知的な面があることも忘れてはならない。云うまでもなく医師が着ているからだ。ただ僕は「医師」と「博士」を混同しているきらいもあり、今でも「法学博士」とか「文学博士」とか聞いても白衣を思い浮かべてしまう。困ったことである。
 高校の頃、文芸部の顧問の先生は国語の教師だというのにいつも白衣を着ていた。「賢そうに見えるだろう」というのがその根拠であったが、僕の後輩の如きは「白衣を着た人ってセクシーですよね」とのたまいやがった。
 白衣を媒体に考えると、知的な面は性的魅力に転化されうるのだ。頑張ろうぜ、僕を含めた非肉体派の諸君。 

ヤクザ[着用経験:?/好感度数:☆☆☆☆★]
「たいさー、なんすかその格好は」
 偶然電車内で後輩にあった。そのときの第一声がこれである。
 その時の服装は花柄シャツにクリーム色のテーラージャケット。当世の常として襟は思いっきりジャケットから出してある。彼にはこの服装がヤクザに見えるという。
「馬鹿者、お前には流行が解らぬ。ピコTでもなんでも着ろ」
 とまあこう罵声を返したのだが、実際そんな変な服装かね。花柄は昨年夏からそれまでのアロハブームの流れを組んできたウエーブである。僕の着ている花柄は大抵小さな花が乱舞している物であり、そうそう奇異な品ではないはずだが。
 確かに威圧的かといえばそれまでの経験則上、多少はそんな感じもあるかな、とは思うけど人が避けて通るほど変だとも思わない。大体ノートリミングの短い黒髪に、眼鏡をかければ不本意ながらも(あの眼鏡が悪い)オタク面の僕である。怖いはずがない。
 と、ここまで考えて「ヤクザ風」とは何だろうと考える。
 ステテコに腹巻きってのは東映の世界でしょ。やっぱ紋付き袴かMIBみたいなブラックスーツ。そうでもなけりゃやたらケバイ服だろうね。でも法廷に出てくるのはジャージかゴルフウエアだし、地元で飲み屋から出てくるようなのはラフだね。
 ケバイという意味では花柄もヤクザ(というよりゃチンピラ)が好みそうな服ではあるが、花柄が流行化された今、「花柄=ヤクザ」という視点は一昔前の「茶髪=愚連隊」に通実アナクロな偏見だと云わざるを得ない。 

羽織袴[着用経験:なし/好感度数:☆★★★★]
 僕も一成人として参加した今年の成人式は色々な意味で話題を巻き起こした式だった。テレビでは無軌道な若者達の姿が連日連夜ブラウン管を賑わせていた。
 その中でも白眉とも云うべきクラッカー事件、あの映像を見た時僕は「どこも同じなのね」と思った。
 事件ではない、事件を起こす彼らの服装である。
 男子の場合、まずスーツ姿である。例外は羽織袴で、これはまあ暴走族OBや組員のみなさんである。僕は一つ上の先輩から羽織組の無軌道については聞いていたが(市長を呼捨にしたり、マイクを奪い取ったりしたらしい)、なるほど、会場に入って僕はこんなに同世代の筋物が市内にいるとは思わなかった。
 僕の出身が割と程度の低い地区であることは書いているが、なるほど羽織組も一番多かった。式後の立食パーティーも普通の成人が怖がって近寄らないため、殆ど襲名披露みたいな感じになっていた。
 その日、日本で同じ様な格好をしたチンピラや組員が大暴れしていたのだろう。背中に紋を入れて「*代目**組若衆」と書いた襟を立てて、彼らは少年法の保護を失うのだ。
 まあ、御勝手にと僕は云いたい。
 彼らが僕らの前で威勢よくするのは、これで最後だろうから。 

晴れ着[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆☆☆]
 身内に来年、成人式を迎える女の子がいる。
 彼女の親に頼まれて、成人式の女性の晴着率を調べてみることにした。彼女は昨今の成人式の荒廃を聞き、しかも彼女は住んでいる街に殆ど知己がいないため数十万払って晴れ着をレンタルするのが馬鹿らしいというのである。
 まあ、成人式に参加した僕に云わせれば全く同感である。彼女は半額を親に返上し、残りで旅行に行きたいというのだが、僕は推奨する。あんな式に晴着業界以外何の意味もない。あの後やった高校の同窓会の方がよほど意義深い。
 で、調査のためにあたりを見回ったのだが、もう女性はほぼ全員晴着である。例外は3人しかいなかった。一人はチャイナドレスを、もう一人は鳩尾までボタンを開けたセクシーなスーツを。もう一人は妊婦らしく(会場には子連れもいた)マタニティーを着ていた。
 知っている顔もいたが全員晴着、同窓会でも女子は晴着だった。まあ男のスーツ姿というのは人によって暗く見える奴も多かったが、晴着は「晴」の字の通り明るく見え(大枚払って暗く見えたら詐欺である)、随分といい光景を見せてくれた。
 まあ、10人以上女子はいたから軽く100万以上は消えているわけで華やかに見えなきゃどうしようもないが、僕は家人への報告に少々悩んだ。
 結局、親戚から晴着を借りることで決着したようだが、僕としてはあの成人式、やるだけ無駄だと思うよ。
 「ふざけているのは一部の不心得な成人」なんて嘘っぱちだね。私語なんて友達いない奴を除けば全員、携帯をいじってる奴なんて持ってない奴以外全員だよ。 

学生運動[着用経験:?/好感度数:☆☆★★★]
 高校の体育祭に「クラブ対抗リレー」なる種目があった。
 めいめいのクラブがそれぞれの特徴を持った衣装を用いて走るというお遊び競技だった。運動部と文化部の部に別れており、文芸部は当然文化部の方に属しており最速を目指していた。
 ところで問題は衣装である。
 運動部はみんな大会出場用の服装で走っていた。陸上部は本職だから早かったねえ。弓道部は可哀想だった。水泳部は毎年競泳水着を2枚履いており、途中で1枚脱いでいた。
 これに対し文化部は困ったものでブラスバンドはちゃんと衣装があった物の、他は概してバトン代わりに専用の物を持つのが精一杯。例えば天文部は望遠鏡の筒を、放送部はマイクを持っていたように思う。
 文芸部は、ときたところで部長の僕は困った。
 もともと文芸部は名目上は文化筆頭部でありながら、実績もなければ認知も無し、ただのオタク部に成り下がっていた。こうなりゃヤケだ怖いものなんかねー、という訳で僕は滅茶苦茶な手段に出た。
 自己主張丸だしのアホな自作Tシャツを作り、タオルで口を覆い、中学時代に自転車通学用のヘルメットをかぶり学生運動そのままの怪しいスタイルで出ることにした。バトンはヘルメットである。
 このような左翼スタイルでは教師から殺されるので、ヘルメットには「七生報国」とか「八紘一宇」と書いた。「フルメタル・ジャケット」のジョーカーの心境である。
 この学生運動風、教師には意外にも郷愁を誘ってか好評だったが生徒からは完全に無視され、惨憺たる結果になった。リレーは3位、共に走った仲間からは「ヘルメットが重いんだよ」と文句を言われ、ろくでもない競走だった。 

子供服[着用経験:あり/好感度数:☆☆★★★]
 子供服だからって舐めてかかると痛い目みるぜ。
 子供服売場でバイトしている知人から聞いて吃驚したんだけどさ、やっぱ高級ブランドとかあって、小汚いTシャツがン千円とかするんだってさ。またそれが売れてるんだって。
 なるほど大都会の名の知れた電器屋ではクソガキが新作ゲームを万札抜いて買いあさっているが、そういうところの親なら馬鹿げた値の服でも着せかねない。なんせ犬にオーダーメイドの服を作る奴もいるくらいだからな。
 僕がガキの頃なんぞは、破れたらワッペンで誤魔化してたんだぜ。服なんて買って貰えるのは年に2回くらいだ。これは貧困の故ではなく、我が家が基本的に服なんてきてればいいという家だったせいだけれどもよお。
 まあ、そう考えると訳わかんなくなっちゃうよね。
 百貨店行けばそれこそ子供服が万単位に成っちゃうから、生意気にも2001年モデルとかあるしね。本当、僕が子供の頃はクラスの金持ちもそんな服は着ていなかったからねえ。
 そんな生活しているガキはろくな奴にならねえ、と叫んでみたりするけど、反面ではかなり羨ましいと思う僕がいたりする。まあ、そういう子供はスポイルされるどころか、結局お金の力で頭が良くなって、結局はいい収入を得る職に就くわけだ。
 僕は自分を愛国系だと思うけど、時々革命を起こしたくなる。 

教育者[着用経験:なし/好感度数:☆☆★★★]
 人目で教師とわかる服装、というものがある。
 昨年、その記事は小さなトピックとして社会面に載っていた。
 内容は簡単なものだった。都立高校の教師が風俗店で年齢をごまかしていた女子高生の接客を受けた。その後二人は援助交際を始めた。結局、教師は相手が高校生と知りながら行くところまで行き、ついに逮捕された。
 概要だけ見れば、よくある淫行教師の逮捕談だが、この女子高生はただものではなかった。
 なんと彼女は、「スーツに運動靴」という服装から相手を教師と見破ったのだという。そして教師と付き合うことに興味を持ち、援助交際に入った(註:教師と生徒は別の高校)。
 服装で相手の職業を見破るとはホームズならお手の物だろうが、そこらの淫売には勿体ない特技である。
 とにかくこれを見ている教師の皆さん、要注意。 

アンパンマン[着用経験:なし/好感度数:★★★★★(0)]
 どういう訳だか小学校の頃の初詣には、近隣の大寺院には行かず、ローカルな神社ですませていた。我が家が特に神道に傾倒しているという話は聞かないけど、謎な話である。
 ともあれローカルな神社だって年始には沢山の参拝客が来るし、露店などの市も立つ。僕はいつもお好み焼きを食べながらあたりを徘徊したものだった。いつも着ぐるみが来ているのが特徴だった。
 ある年、僕の一家は近所の一家と一緒に参拝に来た。そして僕はその家の女の子と境内を歩いていた。その年はアンパンマンが来ていたが、小学校5年生では着ぐるみなんぞに目を輝かすこともなく、冷めた目つきで配っているキャンディーバーを貰ってくわえていた。
 と、彼女が悪戯っぽく微笑むと僕に耳打ちをした。
 言い忘れたが、彼女は悪戯の好きな子で、いつもふざけてばかりいた。彼女が耳打ちした内容はまさしくその才能を存分に生かしたものだった。
 まず、僕はアンパンマンの前に立つと、「わーい、アンパンマンだー、かっこいいなあ」と無邪気に叫ぶ、とその隙に彼女が背後から忍び寄り、着ぐるみのジッパーを下ろすのである。
 アンパンマンはジッパーを自力で戻すと後頭部を掻く真似をした。やつは喋ってはいけないのだ。で、次に彼女が「わーいわーい」とやり、僕がジッパーを下ろした。僕と彼女は相対しておりアンパンマンはどちらかに背を向けねば行けなかったのだ。
 今度はアンパンマンは両手をあげて怒ったように足踏みをした。
 僕らはその後も調子に乗って、何度もジッパーを下ろした。
 と、最後はとうとうアンパンマンがキレて追っかけてきた。僕は逃げた、がしかし小学生の足では追いつかれ、一発殴られた。首謀者の彼女は逃げてしまい、従犯の僕が割りを見たのである。
 結局、アンパンマンは「てめえ、次来たらマジ殺すぞ」と覆面をかぶったまま僕を威嚇した。
 僕がバイキンマンフリークになったのはこの時以来である。 

裸の王様[着用経験:あり/好感度数:☆★★★★]
 小学校2年生の頃、学年別の発表会が2学期末にあった。我が2学年は「裸の王様」の劇をやった。クラスが4つあったので、物語を4幕に分け、どういう訳か2組の王様は僕だった。
 どういう因縁でそうなったのかは知らないが、王女様役が美人の誉れ高き子だったので、「キスシーンでもないかな」と不埒なことを考えていたことは覚えている。
 ともあれ2組であるのでまだ話は早くて、初めて商人に出会ってその甘言に丸め込まれる所だったと思う。ちなみにセリフは僕じゃない「セリフ担当」がマイクを使って壇下で読むのであり、覚える必要はなかった。
 さてこの時の格好なのだが、どうも担任の美的感覚がずれていたらしくとんでもないものができあがった。他のクラスの王様が入学時のブレザーやガウンにコートを着ていたのに対し、僕はカーテンをまるめてまとっただけである。王様と云うよりソクラテスのような哲人に近い。
 しかも冬、暖房なんてない体育館だから寒いんだよな。
 僕は幸い服を脱ぐシーンはなかったが、半袖半ズボンの体操服の上にカーテン。これは裸になった王様より馬鹿な服装である。僕は壇上で震えながら「俺はこんな王様ほど馬鹿じゃない、馬鹿じゃないんだぞ」とたくさんの観客に、目で訴えた。 

バニーガール[着用経験:なし/好感度数:☆☆☆★★]
 どういう訳か、昔つき合っていた女の子はバニーガールに憧れていた。僕は到底理解できない物言いだったから「まあ、やめといた方がいいだろうな」ときっぱりはっきり宣告した。別れてから随分になるが結局着てるんかね? 風俗嬢になるとは思えないから、まだ着てないだろうな。僕の知ったことではないが。
 さて、バニーガールといえば「欽ちゃんの仮装大将」。あれってもう全然見てないけど、まだいるの? 多分いないと思うんだけど、女性の権利なんたらの会の圧力で。別に御本人が進んでやってんだからいいじゃんねえ。借金のカタとか、それしか生活の種がないというなら困るけど。
 僕はあんまりコスプレには造詣も理解もあまりない為、あの特異な服装の魅力が解らない。露出度の高いあの服はそれはそれでいいと思うが。
 いわんやオタク系だけがとびつく「ネコ耳」に至っては理解不能である。 

浮浪者[着用経験:?/好感度数:★★★★★]
 大学1年生の頃、それまでの高校の「短髪義務」の反動から、丸1年髪を切らずに生活した。前髪すら切らないのであるから顔面は鼻先まで髪に埋もれており、それはそれは不気味な御面相だった。
 んで、その最末期である3月頃。僕はとある飲み会の席でぐでんぐでんに酔っぱらい、あろうことか某環状線の車内で眠ってしまい、起きたときには既に自宅には帰れない時間になっていた。
 これは困ったということでカプセルホテルを探そうと思ったが、よく考えれば飲んだせいで金がない。キャッシュカードはあるが、こんな夜じゃ使えない。お巡りに保護して貰おうかと思ったが、なんとなくそれも憚られた。
 僕は仕方なく公園で夜明かしをすることにした。大公園で有名な駅で降りると自宅に連絡し、友人宅に泊まるとでっち上げる。わざわざ大公園を選んだのは、パトロールが充実していると思ったからである。
 3月にしては寒い日で、僕は腰まである革ジャンのジッパーを閉め、手をポケットに入れて(ナイフを握りしめている)ベンチで夜明かしをした。疲れていたせいか、驚くことに座ったまま眠れた。酒が弱いと助かることもあるのである。
 そして気がつけば5時で、電車は動いている。僕は立ち上がることにした。体中が痛かったが、これは布団以外の場所で一泊すると必ず起きる現象である。
 と、早朝のまだ暗い公園を歩いていると、一人のホームレスに出会った。彼は僕の顔をじーっと見て、云った。
 「仕事がねえなら紹介するぜ」
 僕がホームレスに見えるって? 僕は驚愕した。
 その日、僕は髪を切った。 

ポン引き[着用経験:なし/好感度数:★★★★★]
 ポン引きの顔は疲れていて哀しい。
 あの薄ら笑いが貼り付いたような顔が見ていて痛々しく感じる。職業に貴賤上下の別はないということは解るが、なんとなく彼らを見た後は嫌悪の情が先行してしまう。「卑しい」という言葉が脳裏をかすめまくる。
 そう、それを増長させるのが、彼らの必需品である桃色のハッピである。ちゃんと店名の(大体は口にするのも憚られるような助平な名前の)入った安っぽい生地で作られたハッピ。それにハチマキなんか締めて手を叩いている。
 どういう訳か、僕の住む地方都市にいるポン引きは大繁華街のそれのような海千山千の一癖ありそうな男ではなく、没落しきったサラリーマンという感じの人相風体が多い。彼らが「千円ポッキリだよ」とか「兄さん、遊んでいかない」(ああ、僕もそういう声をかけられる年になったのだ)というのを見るのは非常に哀しいものがある。
 まあ、ただよく考えて見れば誰でも社会に出れば多かれ少なかれ彼のようなことをせずにはいられなくなるだろう。営業マンや接客業はみんなそうだ。違うのは商品の差ぐらいのものだ。勿論それを公衆の面前でやるか、顧客に対してやるかという差もあるが。でもやはりその卑しさを全面に出させるのは、あのハッピの魔力だろうと僕は思う。 

アニメ系[着用経験:なし/好感度数:☆★★★★]
 これ、もし違ったら名誉毀損モノなのであんまり詳述は避けるが、オタクの総本山たる電気街の某都市に初めて行ったときの話。
 その駅を出て、すぐのところに募金の集団がいた。確かどこかの地震の義捐金だと思った。どこでもちょっとした駅前には募金関係の連中がたむろしているものだが、僕はああいう路上の手合を全く信用していないからビタ一文も払いはしない。尤もボーイスカウトの赤い羽根には寸志ばかり払っているし、僕の信用する公的機関の募金には応じている。
 大体だね、ただ駅前で「募金お願いしまーす」と叫んでいるだけならとやかく云わないが、歩いている人を捕まえて「募金をお願いします」とほざきあまつさえ金額の下限を指摘してくるなぞ犯罪である。何に使うか解ったモノではない。
 さて初めて秋葉原に行ったとき、駅前にずらりと並んでいるコスプレ集団を見て、僕は随分驚いた。全部ゲームやアニメのキャラである。別段僕はオタクではないから知らないキャラも随分いたが、見知っている連中も結構いた。
 彼らが一斉に募金よこせと通行人に詰め寄っているのだ。いや、詰め寄っているとは妥当な表現ではない。僕の前にはゼルダの伝説のゼルダとおぼしきキャラが立ったのだが、彼らはまあ作った様な明るい声で「募金お願いしまーす」と云っていた。
 僕は「やらねえよ」とちょっとビビりながら云った。彼はそういう反応には慣れているのか「そんなこといわずにお願いしますー、困ってる人たちのためですよお」と云った。
 僕は無視して通り過ぎようとした。あんな訳のわからんペラペラした安っぽい服を着た連中(コスプレの衣装は流通量が狭いせいか、大体生地は粗悪品のような気がした。それともあれは自作かな?)に取り囲まれては勝てるはずもない。
 彼は「怪しい団体じゃないですよお」と云ったが、どう考えても怪しい集団だった。まだオウムが元気にパソコンを売り、信者が尊師の説法をウオークマンで聞きながらビラをまいていた時代だった。 

パジャマ[着用経験:あり/好感度数:☆☆☆★★]
 パジャマは寝間着のせいか妙にエロチックな感じがする。
 まあ、これは女に着せてナンボの話であり、別に一人で着て興奮しているわけではない(そりゃ変態と云うより悪魔の所業だ)。個人的にはあんまりパジャマが好きではないので、高校のジャージを着て寝てたりするのだが小学校の頃はパジャマで寝ていた。
 そう、その小学校の頃の話。
 理科の時間「月を観察する」という授業で、その月の形と方角と高さ(これは専用のヒモで角度を測定するのだ)を報告するという課題があった。もちろん夜に測るわけで遠出をしては危ないので、近所に住む子供同士班を作り、班ごとに日にちを決めて報告するというシステムになった。
 で、僕の班は僕を入れて三人、二人は幼なじみの女の子であった。 三人で話し合って一人の女の子の家で測ることに決めた。まあ小学生のことだし、相手は幼稚園の頃から知っているわけで夜に家に押し掛けたって別段抵抗はなかった。
 だが、当夜に行ってみて二人とも示し合わせたようにパジャマ姿で現れたのには大いに驚いた。
 僕は今も昔も決してパジャマフェチであったことはないが、この時は頭を殴られた感覚に襲われた。美人レベルが2割増しになったというか、なんというか見慣れた顔の筈なのに、全然違う。その差に吃驚しその隙に心を持って行かれてしまった。
 僕は測定もそぞろに何とか義務を果たすと、逃げるように彼女の家を辞去した。
 満天の星を眺めつつ、僕は「女は化ける」と強く感じていた。 

女装[着用経験:あり/好感度数:☆★★★★]
 僕は酒一杯で完全に酔う。二杯で記憶が飛び、三杯で吐きまくる。嘘だとおもわば、僕の友人知人に聞くがよい。もっともここで酒とは日本酒のことで、僕は滅多に飲みませんが。
 さて昔の彼女を前にして僕はしこたま酔っぱらい(彼女は高い酒を常備していたのだ)完璧に理性を飛ばしていた。彼女はまあ僕の狂態を見るのが楽しいという子だったから、僕の醜態を見てはゲラゲラ笑っていた、らしい。僕に記憶はない。
 さて、そんなある日の一齣。
 彼女はウイッグ片手に、意識朦朧の僕に云った。
「ねえねえ大佐、女装してみない」
「やだ」僕は即答した。
 だが、アルコール付けの脳では舌戦勝てる術もなく、ほどなくして僕は陥落した。
 彼女は勝手に化粧を僕の顔に塗りたくり(この後ニキビが出来た。僕の肌は変に敏感なのだ)、ウイッグをかぶせ、お気に入りの服を着せた。
 僕は鏡を見て、血の気が引いた。
 いや女に生まれなくて良かったね。まあ僕は自分をそう醜い人間とは思ってないが、有り体にいって女装した僕は「ブス」だったね。それもよく電車に乗ってる「この人の人生、苦労しただろうなあ」とか同情しちゃうくらいのブス。
 いやあ、これは恐ろしい。
 時々「女にうまれたらよかった」と思ったものだが、こういう現実を見てしまうと、そんな酔狂なことは酔っていても思わなくなる。 

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