情報フロンティア研究会(第1回) 議事要旨
1. 日時 平成17年3月11日(金) 10時〜12時
2. 場所 総務省 1101会議室
3. 出席者(敬称略)
(1) 構成員
岡田仁志、勝屋久、木村忠正、栗原聡、國領二郎、小林徹、齋藤義男、V.スリラム、津田宏、西村毅、柳沼裕忠、矢野貴久子
(2) 総務省
鈴木政策統括官、松井審議官、武田情報通信政策課長、谷地方情報化推進室長、内藤情報通信政策課課長補佐
4. 議事概要
(1) 開会
(2) 総務省挨拶
鈴木政策統括官から挨拶があった。
(3) 開催要綱(案)について
資料1に基づき、事務局から開催要綱(案)について説明が行われ、了承された。
(4) 座長選出及び座長代理指名
開催要綱に基づき、座長には國領構成員が選出された。また、國領座長より座長代理として木村構成員が指名された。また、國領座長より座長代理として木村構成員が指名された。
(5) 構成員紹介
(6) 議題
@ 今後の進め方について
※資料2、資料3に基づき、事務局から説明
A 柳沼構成員からの発表
※資料4に基づき、柳沼構成員から発表
- 使う人の嗜好を理解して、知的に人のやることを予測してくれる究極はボタンが1個しかないリモコンの実現を目指す研究がある。こうなるとリモコンは単なる機械でなくなる。これは「知的統合」の一例であるが、その実現にはまだ解決すべき問題が多く存在していると思う。
- IQ表示ができるような高度な機器は、日本が国際競争に勝てる領域だと思う。
- 日本の企業は国内競争中心なので、外部とのコミュニティを形成すると情報が漏れてしまうという意識があるが、もっと多くの人とのコミュニティの中でうまれたアイディアをマネジメント側が内生化していくという意味でのイノベーションが必要だと思う。
- 家庭に比較的省電力の直流電源を置けば、発電所から高電圧で直・交・直とつなげていく無駄のある現在の仕組みはあまり必要なくなるのではないか。今後は、交流電源の200V系と直流電源の5V、10V系を共存させて、ICTとモーターなどのバランスを保つようにすると良いと思う。
- 確かに、今は省電力機器がたくさんあり、エネルギーロスの原因になっている。
- 賢い生活者が登場して情報の非対称性が逆転しているが、垂直立ち上げのために、強いマーケットシェアはほとんどとれない。AVやモバイル機器は差別化が難しく、課題山積みの状態。
B フリーディスカッション
- フロンティアを広めていく上で一番重要な視点は、エンドユーザのリテラシーをいかに喚起するかということだと思う。垂直統合型社会の日本では、CIOがベンダーを替えることに対して非常に恐怖感を持っていて、初期投資コストばかりに目がいきがちになっている。会社の構造、更には社会の構造が、ICT導入をサポートできる仕組みになっていない。こういう社会構造を5年程度の時間軸で変えていき、SOAによるメリットをユーザが理解し、SOAを導入することによってCIOが評価され、結果的に会社が強くなるという循環が重要だと思う。
- 最近「スケールフリーネットワーク」や「スモールワールド」というキーワードが注目されている。例えば、米国人であれば平均6人の仲介者がいれば、どの米国人にでも手紙を送ることができるという報告がある。知り合いの知り合いを伝っていくと、実はどこかでつながっているという、よく耳にする話が実は科学的に重要なネットワークの構図だということが最近分かってきた。これらのネットワークはボトムアップに構成されるもので、これまでのトップダウン的思考の下発展してきた科学技術とは異なるパラダイムを、いかに産業面に活用するかという観点からユビキタスの環境を考えると、主役のはずの「人」に対する注目が弱いと思う。実世界の膨大な情報をいかに吸い取って、ネットの世界と融合させ、新しい情報インフラとして我々の生活を良くしていくかを考えると、リスク回避などの課題にもっと貢献できるのではないか。
- Webサービス(SOA)、P2P、ブログなど比較的新しく成長が見込まれる市場(エマージング)において技術・手法・ビジネス概要までは描くことは簡単だと思うが、実際に重要なのは具体的にトライアンドエラーでエグゼキューション(行動する)ことだと思う。所謂、そういった新しい技術の上で世の中に役に立つサービス・魅力的なコンテンツの提供をすることだが、そのキープレイヤーはベンチャー企業と感じている。ただ実際に日々ベンチャー経営者・VCの方たちと話をすると日本に一番欠けているのはベンチャー企業の経営陣の人材である。人材の流動化・育成を含めて重要な課題だと思う。すぐには流動化しないので大企業とベンチャーの緩やかな連携(パートナーシップ・アライアンス)も現実的で重要である。最後にベンチャーも世の中に貢献する重要な仕事の一つだと皆が認識する社会構造・社会的環境も必要だと思う。日本人は残念ながら欧米人と比較すると認識の格差が大きいと思う。
- 課金からフロンティアを考えてみると、今後は、ピュアなP2P技術により、音楽をつくった人が、直接聞く人に課金できるようになるだろう。現在、携帯電話で写真を撮って友達に送っている人が、パソコン持ってビデオで撮ったものを送るようになって、それを更にブログで一般に公開して、それに誰かが投げ銭をするという世界になったら面白いと思う。また、電子マネーは記憶力を有するので、同じコミュニティに属している人だということを判断してコンテンツを見せるといったことも可能になるではないか。そういう意味では、イノベーションを実現していく上で、課金も役に立つのではないかと期待している。
- 情報フロンティアについて考えたときに、「無意識」と「コミュニティ」が重要になるのではないか。今までは、こういうものだったら使ってもらえるのではないかという発想でサービスを考えてきたが、今後は、ネットワークを介したプライベート・コンシェルジュのような無意識に受けられるサービスを考えていけば、もっと新しい領域が生まれると思う。また、趣味や嗜好、年齢や性別といった切り口で見ていけば、論理的なコミュニティはたくさん存在するので、その中で規則性が見いだされれば、それが市場やニーズを把握するための一つの指標になるのではないか。
- 第一に、アーキテクチャがディストリビュート化されても、基本的な社会・文化がディストリビュート化されていなければ、導入するのは非常に難しい。そういう意味で、特に日本の場合は、技術だけでなく、周りの社会や環境についても考えなければいけないと思う。第二に、日本を最初の市場にして、そこで勝って外へ行くのか、あるいはいわゆるBRICから始めて、そこで勝って日本へ導入するのか、グローバルネットワークの中でそういう考えを持つべきではないか。第三に、今後は、情報による知識が競争力の源になるので、ハードだけではなく、ソフトについての考え方を変えて、ソフトについても技術投資として認識しなければいけないと思う。
- 今後は、今のOSとは違うオペレーションでモジュール・コントロールができるような高度なソフトウェアが必要で、アンバンドルにすればするほど、ソフトウェアが非常に重要になる。そこはビジネスチャンスとしても重要なポイントだと思う。
- サーチエンジンにおけるフロンティアを考えたときに、検索を含め今のインターネットに一番欠けているのは、安心・信頼だと思う。インターネットは、今まで匿名性をもとに広がってきたが、そろそろ変えていかなければいけない。個人情報保護などいろいろと難しい問題はあるが、匿名性を外せばスパムやフィッシングの抑止力になる。政府、メーカー、ベンチャーなどが協力して安全なインターネットをつくっていかないと、成りすましなどのネガティブなイメージを払拭できず、このままではまずいという懸念を持っている。
- これだけメガコンペティション、破壊的イノベーションが叫ばれると、早く売ってさっと逃げるモデルでないと儲からないが、日本はスピード感、アジリティ(俊敏さ)が欠如しているのでうまくいかない。日本がそれらに弱い原因は、やはり人だと思う。日本の若い優秀な人たちのやる気を削ぐビジネス・ディシジョン・メーカー(BDM)が上の世代にいるため、やる気のある人たちはスピンアウトしてベンチャーに走らざるを得ないが、ベンチャーを支援する人も、企業内のBDMを説得しなければならず、ベンチャーの人が苦労するという構図が存在する。そういう意味では、2007 年問題はむしろ日本のチャンスだと思う。日本の強みは確かにインテグラル型だと思うが、日本がモジュール型に移行したとしても、決して日本の強みを失わないと思う。モジュール型、インテグラル型というのは、両方の要素が組み合わさって初めて社会的に機能するので、単に欧米に追いつくだけではなくて、欧米より強くなるモデルを見出す必要があるのではないか。
- 個人のITリテラシーは重要だが、個人に行き着く前に、経営者や自治体の長のITリテラシーが非常に重要だと思う。インターネットは自由だからこそ、ルールをつくって自ら情報発信していかなければいけないツールであり、部署をまたがらないとうまく使いこなせない。インターネットをうまく使いこなすノウハウをもっと平均化して、経営者と行政の長が知識として持つようになれば、随分変わっていくのではないか。それをいかに広めていくかが課題だと思う。
- 技術的なフロンティアとサービスのフロンティアがあり、社会的普及を考えたときに、高度で最先端を行くニッチのフロンテイアもあれば、General Purpose Technology(GPT)がマスで広がって社会へ普及していくというマスのフロンティアもあり、サービスの観点からは切り分けて考えていく必要がある。例えば、早稲田大学理工学部の1〜2年生200 人のうち、SNSを使っているのは7%しかしない。ICTに関連した世界では当たり前だと思っていることが、実は社会全体では当たり前ではないということがある。また、日本社会全体から考えたときに、ネットワークに対する信頼が非常に薄く、匿名で自分の足跡を残したくないという風潮がある。例えば、日本では、コミュニケーションのデフォルトが携帯電話の文字通信になっており、対面コミュニケーションが非常に希薄になっている。したがって、社会・文化の基盤となっている社会的な認識や価値体系を変えていく必要があり、それが日本社会全体の一つの大きなフロンティアになっていると思う。
- 確実に押さえるべきテクノロジーや理論がある一方で、社会、産業、サービスのフロンティアを明確に意識しないと、フロンティアの姿は見えないように思う。
以上