すみけんたろう『スタイルシートWebデザイン』(技術評論社,1998)は,ウェブサイト制作に關する解説書として,出版から5年經つた現在(2003年夏)でも十分に通用する名著である。今でこそまともな解説書も増えて來たが,1998年當時において,本書は我が國にあつて殆ど唯一のまともなHTMLの解説書であつたと言つても過言ではない(尤も,私個人は2000年になつてからHTMLを勉強し始めたので,その状況をリアルタイムでは體驗してゐないが)。逆に言ふと,本書の出來以前には,基本的な考へ方の點で大きく誤つた解説書ばかりが跳梁跋扈してゐたのである。
本書の歴史的意義は幾ら強調してもし足りないであらう。本書は多くのウェブ制作者をして,視覺的・物理的な情報を重視する餘りHTMLの理念を犧牲にしたマークアップから意味的・論理的な情報を重視した本來のマークアップへと轉向せしめた。本書の最大の特徴は,HTML文書の見榮えを規定するものとしてのCSSを切り口に,HTMLひいてはSGMLの基本的な考へ方をきちんと咀嚼し明確に提示してゐる點にある。單に正しい解説がなされてゐるだけでなく,優れて説得力を持つた解説がなされてゐるのである。そこには,HTMLの理念と云ふものがしつかりと提示されてゐる。
すみ氏は今年の春,その名著の元データを,ウェブ上で公開された(http://www.asahi-net.or.jp/~jy3k-sm/css1/index.html)。著者ご本人の本書に對する心殘りな點,取分けサンプルCSSのデザインなどについて,第三者の協力に據るさらなる改善を期待されての事ださうである。
私(まき)自身は到底美的センスに優れてゐるとは言へず,CSSのサンプルを書直すところまでは至らなかつた。このHTML版の意義は大體において,Word文書及びプレーンテキストの形で公開されてゐるデータを,ウェブ上においてより利用し易いであらうHTMLの形に起したと云ふ點に留まる。さらなるどなたかのご協力を得る爲の一契機となれば幸ひである。
このHTML版の編輯・作成に當つて,まきの取つた基本的な方針は以下の通りである。
ゲラ校正時の追加モノであるところのdiff*.txtにおける變更は,これを全て反映させた。
以上の作業は,固より私個人の責任において行はれたものであるが,かと言つて著作權が發生するほどのオリジナルな作業とも言へないであらう。本HTML版の著作權は,すみ氏に全面的に歸屬する。
このHTML版が,より良いウェブ制作への貢獻の一端を擔ふ事になれば幸ひである。
最後に,『スタイルシートWebデザイン』に教へを得た讀者の一人として,このHTML版の編輯にあたり數々のアドヴァイスを下さつた原著者のすみ氏に感謝の意を表したい。
――2003年夏 京都にて