CSSを使う方はずいぶん増えたけれども、いまだにCSSで全ての視覚デザインを行うことの重要な意味に気付いていない方が少なくありません。私はHTML概説で書いています。
「赤い字に注目してください」といった文書の記述は、よくありません。色彩を解釈しないユーザーエージェントの存在もさることながら、スタイルシートはユーザー側でも指定できるという事実は重大な意味を持っています。HTML文書の製作者がどんな表現方法を指定しても、ユーザーはそれを無視できるのです。それをユーザーの横暴というのは当っていません。HTML文書は、表現によらず情報を伝えられるように書かれるべきなのです。ブラウザで表示結果を確認しながらHTML文書を作成するのは愚かなことです。あなたの利用しているブラウザは、世の中に無数に存在するユーザーエージェントの一部に過ぎません。
CSSはHTML文書とは別に用意されています。したがって、CSSを削除したり、取り替えたりしてもHTML文書の内容は伝わります。逆にいって、CSSはそのように使うべきものですし、HTML文書はCSSとは独立に存在しうるものとして書かれるべきです。
Windows版のIEがCSSをOFFにできない仕様になっているのは、重大な欠陥です。またMozillaやNN7などがユーザスタイルシートの適用方法を明快に示しておらず、またその取り扱いが面倒でまだるこしいのは、改善されるべきポイントです。これに対してOpera6はその辺りしっかりしているから、当サイトのデフォルトスタイルがどれほど崩れて表示されても私は安心していられました。ユーザCSSを適用されるか、CSSをOFFにしていただければよいだけのことだからです。CSS対応を謳うブラウザはすべからく製作者CSSとユーザCSSの両方に実用的なレベルで十分に対応し、またその取り扱いの簡便を目指すべきです。
さて、CSSは閲覧者が自由に削除したり取り替えたりしたりできるよう仕様が作られているわけですが、この性質は旧来のWebデザインの発想を大きく変えるものです。
HTMLで視覚デザインまで行おうとする旧来のWebデザインは、必然的にHTML文書と視覚デザインが不可分ですから、閲覧者は製作者の意図通りのデザインを押し付けられる他ありませんでした。したがって、ユーザビリティーやアクセシビリティーなどは、視覚デザインとの兼ね合いを考えつつ、サイトの製作者の匙加減で決められてしまう状況が生じていました。
簡単で正しいHTMLとCSS利用の視覚デザインによる新しいWebデザインでは、この状況が大きく変わります。すなわち、閲覧者はWindows Media Playerのスキンを変えるように、気軽にWebサイトのデザインを変更できるわけです。製作者が用意したCSSを唯々諾々と受け入れる必要はありません。気に入らなければ無視してよいわけです。
これでは閲覧者にばかり得があって面白くないという製作者も多いことでしょうが、実際にはそうでもありません。閲覧者側に選択権を与えることで、逆に安心して特定環境のみを想定したデザインを提供できるようになるのです。つまり、多環境対応に汲々としてデザイン的意図を抑制する必要から開放されるわけです。
当サイトのデフォルトスタイルは、じつは少なからずの環境で不具合を生じます。ローラーが効かないなんてのは序の口で、ページ内移動のリンクが効かなかったり、レイアウトが崩れて何がなんだかわからなかったり、CPUの弱いマシンでは固定背景が重かったり、いろいろあります。いずれも各種Webブラウザ等のユーザエージェント側の実装に原因があるもので、私のCSSの記述に問題はありません。
それでも、ちゃんと見えないのは困るという方も相当数にのぼるでしょう。けれども、デフォルトCSSの表示に不具合があるならば、CSSをOFFにするか、適当なユーザCSSを適用していただければ問題は解決できるわけです。だから私は、好き勝手をやっています。
アクセス向上といった視点からは、不勉強なユーザを排除するとして戒められる行為でしょうけれども、私は本当に困っている人、それでもWebにある情報を必要とする人は勉強するものだと考えています。もっといえば、これだけ閲覧者側に協力なツールが用意されているのですから、これを利用しない手はないし、利用しないのはもはや不勉強な本人の責任とさえいってよいと思います。
CSSで全ての視覚デザインを行うことの重要な意味、それは最終的な表示結果が閲覧者に委ねられる、ということです。この結果、閲覧者の自由と自己責任が大幅に増大する一方、製作者の責任は縮小され、また自由は増大します。製作者、閲覧者、双方にとって自由が増大するのですから、これは悪い話ではないと思いませんか?