趣味Web 小説 2003-01-19

肝腎なのはマークアップ

カナかな団の躁鬱への連続言及もこれでおしまい。

と、ここまで書いてて、ふと気がつく。じゃあ、95% に合わせて、他を切り捨てる CSS にすりゃいいじゃん。いやいや、その 95% の CSS 解釈がお粗末だから困ってしまうのか? そーなのか?

おかしなことをいうなあ。CSSのUA振り分けには、じつはこれまで書いていないもうひとつの疑念があるのです。

多くの場合、CSS振り分けってのは異なるUAにおいて同様の見た目を実現することを目的としているわけでしょう。少なくとも、なぜCSSの振り分けをするのか、という問いに、ついついそう答えてしまう人は多い。だとすれば、本来ならば、対処を考えているUAすべてが準拠している仕様のみを使ってCSSを書けばいい、ということになりますよね。とすると、CSSファイルはひとつ書けばすむので、CSSの振り分けは不要だということになります。

ところが実際には、そうしている方は少ない。Mozilla向けCSSでは角を丸めてみるとか、IE向けではスクロールバーの色を変更したり半透明を使ってみるとか、「えーと、一体なにやってるの?」と疑問に思うことが多い。UAによる見た目の違いをわざわざ作り出しているのだから。

しかしもっとわからないのは、box-sizingというプロパティーの使用。そんなもの、仕様にないというのに、自称仕様準拠推進派の連中がこぞってこんなものに飛びついている(いた)。馬鹿じゃないの。HTMLの独自拡張は唾棄するくせに、CSSの偽者プロパティーは大好きなのだから笑える。CSS3で検討されているbox-sizingだけど、破棄の方向で検討が進んでいるそうですよね。そりゃそうですよ、IE5はほぼ消えてしまい、IE5.5もどんどんシェアが落ちていて、CSS3が勧告される頃にはbox-sizingの使命は終わっているというわけ。

box-sizingを使うというのは、つまりUAのバグを認めてしまって特定の見た目を実現しようという発想です。それはやばいんじゃないのかな? 要するに、仕様準拠なんて知ったことか、ということじゃないですか。結果としての見た目が同じになればそれでいいんだよ、と。そんなことなら、どうせやりもしないHTML文書の再利用なんて御託を並べずにテーブルレイアウトでもやっているか、あるいはそれこそテーブルレイアウト派への批判でよくいっているように、PDF形式にでもしてはどうか。

UAのバグに依拠してレイアウトしてしまう愚について、ああだこうだと偉そうにいっている人が、なんでCSSではUAのバグに甘いのか。

その理由は簡単で、みんな「CSS外してOK」とはいいたくないんだよね。自分の考えた視覚デザインとやらに絶対の自信があるらしい。だからPC用視覚系UAを利用する人には必ず自分の考えた視覚デザインをちゃんと適用してもらわないと不満なんだな。そうやって結局、PC用視覚系UAの利用者の方ばっかり向いたWebサイト作りをしているわけだよ、CSSの振り分けだなんていっている皆さんは。

「やらない善よりやる偽善」なんていうけどね、やっても価値のない偽善までやることはないですよ。本当に世の中の役に立つやり方というのは、CSSは外すことができる、という啓蒙じゃないの? CSSでやってる視覚デザインなんてのはHTML文書のおまけに過ぎない、ということを実感をもって主張していくことじゃないの? 今みたいに、UAのバグまで使ってCSSによる視覚デザインを閲覧者に予告抜きで押し付けていくというのは、バカをいつまでもバカのままにしておくということだし、それでは結局、「ほーむぺーじは見た目が大事」という誤解がじつは誤解じゃなくて真実ですよと主張するようなものです。

HTMLは論理構造だけを記述し、CSSでスタイルを指定するという発想は、何が革命的だったか。それはHTML文書の最終的なデザインは、製作者ではなく閲覧者が決定する、ということです。

製作者のCSSが下手くそで読みにくい。じゃあどうする? ユーザスタイルシートで潰してしまえ! そんな閲覧者の自由を保障するのがCSSデザインですよ。HTMLで視覚デザインなどされている場合には絶対にできなかったことができるわけです。この一点さえ押さえておけば、くだらないCSS振り分けなんかさっさとおさらばできます。

あのー、私の環境からだと表示が崩れるんですけど? じゃあCSS切るか、ユーザスタイルシートでも使えばいいじゃないですか。そんなこといちいち作者に質問しないでください。300人もの閲覧者全員にメールを出している暇はないんです。……とまあ、そういうわけ。

自分の考えた視覚デザインって、そんなに大層なものなのかな? 趣味のサイトなんだから、とりあえず推奨スタイルシートなんかにするのは自由だと思う。お勧めですよ、というだけだからね。でも、「うちのパソパソじゃきれいに見れないんですー」だなんてバカUAユーザの閲覧者からの訴えに耳を貸して、仕様準拠を放り出してまで自分の考えた視覚デザインを見せたがる神経はどうなっているんだろう?

えせ仕様準拠主義者の心情はお察ししますけれども、共感はできませんね。少なくとも、仕様準拠を都合のいいときばっかり口にしていることに、もうちっと後ろめたさを感じてみてはどうかといいたい。

そーなのか? への私の回答。95%に合わせるってどういう意味? 95%のUAのバグを利用して自分の理想のスタイルを指定しちゃうぞ、ということなら大反対ですね。95%のUAで問題が起きない範囲で仕様に準拠したCSSを書くんだ、ということならどうぞご自由に。95%のCSS解釈がお粗末だというけれど、今までだってそのお粗末の範囲内であれこれやってきたんでしょ。何の問題があるのかな? それから、別に95%にあわせる必要は全くなくて、そもそもどんなUAにもあわせる必要はありません。UAの実装なんか気にしているからダメなんだ、といってもいい。肝腎なことは、CSSなしで問題なく利用できるHTML文書を作成すること、それだけです。

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