コピーコントロールCDという言葉もそこそこ浸透したようで、最近ではCCCDなどという略称もよく目にするようになってきた。
CD-Rが普及して誰もが簡単に音楽CDを焼けるようになるなんてことを真剣に心配する大企業がなかった時代に音楽CDの規格は決まってしまった。だから、音楽CDはそもそもコピーできるように作られている。ただ、音楽CDが登場してから10年以上もの間、庶民には機材が高すぎて、商売にならないという理由でコピーできずにきた。それだけのことだ。
DVDの普及を待ち望むのは、まず第一に音楽業界かもしれない。現状では、いくらコピーし放題ではあっても音楽用CDの方が数が出る。商売としての旨味が大きい。本来なら、コピーできないDVDだけで商品を出したいはずだ。しかしDVDはCDのようには爆発的に普及できずにいる。VHSに対するLDといった敗北の歴史はたどりえないが、しかし遅々とした歩みに業界のイライラは募る。
音質が劣化しない、という強烈な武器を引っさげてレコードを駆逐したCDのような迫力が、DVDには足りない。大容量が売りになるが、音楽用としてはオーバースペックだ。CDの最大74分というのは、アルバムの長さとして絶妙な上限だった。仕方がないから、ビデオクリップのようなコンテンツを盛り込むことになるのだろうが、これはアルバムの制作費上昇に直結する。音楽は今でも「聞く」のが主体で、「見る」ものにはなっていない。画面を持たないオーディオ機器がDVDに対応するかどうか、微妙なところだろう。そうなれば音楽業界には福音だが、しかしそうなったときにDVDがCDに対して優位性を持たないことを考えると、上がった制作費を取り戻せないことに気付いて悩ましい。
というか、CDをレンタルしてMDに落としている人たちと、CDをまるごとコピーしている人たち、どっちがより問題かといったら前者なのだ。人数が桁違いに多いからだ。彼らはつまり、CDほどの音質を求めていない。CDを買うことでアーティストを支援しようという意思もない。音楽を安く消費するだけの人々だ。
CDの完全なコピーを防ぐことは、たしかに重要だ。音質を全く劣化させずにコピーできるという事実にはインパクトがある。だからこれを排除することには意義がある。しかし、コピー不可能なDVDで新曲を発売したとしても、MDやMP3へのコピーは行われる。劣化コピーは防ぐことができない。仮に、DVDへの移行が成功したとする。コピーコントロール戦争は以上で終了だ。しかし、そのとき音楽業界は、先延ばしにしていた本当の敵と闘わなければならない。MDからは一定の著作権料を源泉徴収することに成功した。ではMP3はどうか? 源泉徴収のしようがないではないか?
MPEG-4オーディオの勉強をしていて、ちょっと思ったことなどを書いてみた。