趣味Web 小説 2003-02-23

斬鉄剣のサイト論

斬鉄剣のサイト論といえばアクセス至上主義みたいなことがよくいわれるが、侍魂経由で斬鉄剣を知った私には、少し違う印象がある。

私は当時、にゃごろう村でサイトのデザインのみを担当していた。といってもそこには大きな制約があって、根本的なデザイン変更には山田大佐の許可が必要だった。山田大佐は文章を書くことにしか興味がなくて、デザインについては「才能がないから」といって自分ではちっとも勉強しようとしなかった。私はこの怠惰を幾度も責めたけれども、暖簾に腕押しだったことを思い出す。それならデザインは自由にやらせてくれればいいと思うのだけれど、私がこうしようと提案するたびに、「いや、そこにはこだわりがあって……」とくる。サイトの扉ページをなくすだけでも、説得に1年近くかかった。

にゃごろう村は当初、テーマ別のエッセイ集が集まった万博会場のような構成になっていた。毎週、いくつかのエッセイ集が更新されるのだが、それがどこなのか事前に予想するのは不可能だ。それで仕方なく更新記録を見にいくのだけれど、そこにはどこが更新されたという情報だけしか書いてない。だから更新記録の内容を頭に叩き込むかメモするかして、あらためて目次を遡って各エッセイ集を見にいかなければならなかった。ようするに、とてつもなく閲覧の面倒なサイトだった。これはどうにかならないものかと思った。(ぜひ確かめてみてください)

でも山田大佐はこの構成に愛着があって、いかにも村らしくていいじゃないかという。村の村長がそういうのだから、別にそれでもいいのだけれど、村長はその一方でお客さんが増えないことを気にしたりもしていた。矛盾しているよなーと思う。二者択一なんだから、どっちかを選べというのだ。でも山田大佐の不安はわかる。デザインを変えたって、お客さんが増える保証は全然ないのだから、安易に私の口車に乗せられてしまうわけにもいかないのだ。

あ、これだ! と思ったことを覚えている。説得力のある言葉、しかも人気サイトの管理人さんが語っている。読者にムチャクチャ不親切なデザインのままじゃダメだよ、と。山田大佐を説得するために、斬鉄剣は何度か利用させていただいた。テキストサイトに特化したデザイン論というのはなかなかない。A to Z ホームページ作成体験はテキストのレイアウトについて詳しいのだけれど、これだってやっぱり、いわゆるテキストサイトとはかなり毛色の違うサイトを対象としているように思える。

結局、Webサイト作成の初心者であれ中級者であれ、多くの場合、「初めてのテキストサイト作成」ではデザインを誤る。表紙に最新のテキストをおかないのだ。別にそれならそれでもいい。どこかに日々の更新が必ず行われるページがあって、そこに読者がブックマークすることを推奨するならば。けれども、多くの人がブックマーク先は表紙を望む。だったら、最新の更新は表紙に置け、という話になる。ところが、なかなかたったそれだけのことに気がつかないものなのだ、本当に。

テキストサイトの初心者が斬鉄剣を読み、影響されることを苦々しく思う人は少なくないらしい。その言い分はわかる、わかるけれども、Webデザインのアドバイスをしていると、私はしばしば「テキストサイトやるなら斬鉄剣くらい読んでおけ!」といいたくなることがある。

ただまあ、人気は結局、デザインではなくて内容で決まるものなので、人気サイトにも面倒くさいデザインのところがたまにあるんですよね。それに初期のにゃごろう村はいわゆるテキストサイトとはだいぶ離れた地点に位置していたわけで、そもそも最新の更新を追っかけるというタイプの読者を想定していなかったのかもしれない。であれば、あれはあのままでもよかったのかな、と今になってそう思わないでもない。

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