趣味Web 小説 2003-03-21

サダム・フセイン政権打倒の目的

昨日、米軍によるイラク攻撃がはじまった。サダム・フセイン政権の打倒が目的だ。

フセイン大統領はアルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン氏や、タリバン指導者のオマル師と同様、命からがら逃げ延びるかもしれない。しかしながら、政権の座を追われることだけは確実だ。戦争が終われば日本と国連の出番になる。イラクの体制は民主化され、様々な人道的援助、経済援助によって国民生活がある程度向上するのだろう。

「イラクは放っておいてもいい。たしかに危険な独裁国家には違いなかろうが、慌てて戦争してまで政権を打倒する必要はない。大量破壊兵器廃棄を確認する国連査察を、もっとじっくり行ってもいいのではないか」というのが仏独の主張だったように思う。たしかにそうなのかもしれない。だが、いずれにせよ戦端は開かれてしまったわけだから、この条件下でよい結果を模索する他ない。コソボ空爆もアフガン空爆も、中露をはじめとする攻撃反対の声を押し切って行われた。そうして死屍累々の地獄絵図が描かれ、その上に民主体制の基盤が建設された。今では「あの戦争も悪いことばかりではなかった」という結論へと落ち着きつつある。イラクもこの道を辿るのだろう。

ところで、実際に原子炉を動かし武器を輸出しミサイル実験を繰り返している北朝鮮とイラクとでは、断然北朝鮮の方が悪ではないか、という意見がある。なるほどそうなのかもしれない。だが、フセイン政権がイランを攻撃したのは大統領就任から1年2ヵ月後(1980年)だった。この戦争は8年続き、イラクはクウェートに大量の債務を負った。これで財政が行き詰まって1990年にクウェートへ侵攻した。翌春、湾岸戦争に完敗し撤退して以降の12年間、イラクの国力は経済制裁により没落の一途を辿る。朝鮮戦争以降、韓国との小競り合いは絶えないものの全面戦争を回避してきた北朝鮮よりも、ぶち切れやすいフセイン政権の方が危険が多いという説には一理ある。

アルカーイダを公然と支援したのはアフガニスタンのタリバン政権だったが、フセイン政権による支援もまた長年疑われてきたところである。これに対し老獪な北朝鮮がアルカーイダを支援してきたという有力な情報はない。米国にとって重要なのは自国の安全であり、他国民の解放ではない。言葉は勇壮だが実際に暴発する危険性の少ない北朝鮮は、慌てて攻撃する必要がない。……という考え方もある。(国連決議に違反した不当な占領行為を続けているイスラエルに対し米国が攻撃するつもりがない理由もここにあるのだろう/ユーゴ紛争とコソボ問題への介入は別問題)

湾岸戦争による直接・間接のイラク国民の犠牲者は数十万人にものぼる、という説がある。米軍が認めている直接の犠牲者は3500人だが、それでも米国中枢テロの犠牲者数に匹敵する数字には違いない。今回もまた、とくにイラク国民に多くの犠牲者が出るのだろう。何はともあれ、哀悼の意を表したい。

余談。湾岸戦争の際、日本政府はクウェートからイラク軍を撤退させる多国籍軍の戦費を一部負担した。一部といっても90億ドルという大金だ。日本政府はこの出費を賄うため、酒税、タバコ税などを一時的に増税した。今回もまたイラクの戦後復興のために最低20億ドルの出費が予定されている。酒好き、タバコ好きのみなさんは資金計画に要注意だ。

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