趣味Web 小説 2003-03-22

Message from Hikki

この戦争がうまく行って政権がかわれば、これまでのつらい生活が改善するのかも、と理解したとしても、家族と防空壕に逃げ込もうとする途中で、目の前で息子がアメリカ軍の爆撃をくらったら、、、どうなっちゃうんだろう、、、誰を憎むんだろう、誰も憎まないで嘆くんだろうか、んん、、、。

影響力の大きい方だけに、最も単純な反戦平和主義を一歩脱した発言は歓迎したい。

イラク国民へのインタビューがこのところ盛んに行われているのですが、よりによってテレビ朝日の番組で空爆万歳の声が伝えられたのには吃驚。鳥越俊太郎さんはバカなスタッフのせいで赤っ恥をかいたが、視聴者にとってはいい報道だった。あのテレビ朝日が空爆賛成派の声を捏造したがる理由はない。空爆に賛成するイラク国民が本当に多いので、やむなく報道せざるをえなくなったということだ。まあテレビ朝日では、バスジャック事件でもゲストの凄い発言があった(「今回の警察の対応をどうお考えになりますか」「まったくダメです」「ではどうするべきだったのでしょうか」「狙撃です。危険な状況をいたずらに長引かせることなく、犯人を射殺するべきでした」「なるほど……」アナウンサー困惑/以上うろ覚え)から、朝日新聞と比較して社内統制がちゃんと取れていないんだろうな。

いずれにせよ宇多田さんの悩みは、こうしたイラク国民の声を踏まえているのかもしれない。個人の問題としては、空爆の犠牲者はまず米軍を恨むだろうし、次いでフセイン政権を恨むのではないか。あるいは、宇多田さんのあげた例でいえば、息子が逃げ遅れたことについて自分自身を責める可能性もある。米軍は、一定数の人間の恨みを買うことを引き受けている。全員が納得する空爆ではないと、認めている。人の命は地球より重い、という価値観の方はここで思考停止する他ない(それはまあそれでいいと思う)けれども、私はそれほど個人の命に絶対的な価値観を見出さないから、その先を考える。

イラク攻撃の空爆計画立案を担当しているのは、ゲリー・クラウダー空軍大佐である。彼の言葉は米軍の価値観をよく表しているものと思う。

もし核兵器や生物兵器を搭載したミサイルがクウェートやイスラエルに発射される可能性があるとして、その周囲にイラク市民の「人間の盾」があったらどうするか。ミサイルが発射された結果の重大さからは、米軍の攻撃によるイラク市民の犠牲も私は容認されると思う。

空爆支持のイラク国民も、この意見と同様の価値相対主義に基づいて状況を認識しているのだろう。空爆により市民にも犠牲が出るとしても、フセイン政権打倒による民主体制確立のためにはいたしかたない、と。個人レベルで米軍を恨み、フセイン政権を恨み、あらゆる戦争を恨む人々が生じることは、ここでは織り込み済みとなっている。宇多田さんは、その一部の犠牲者に感情移入していくから戦争反対となる。宇多田さんは、戦争によって救われる多勢の人々の幸せと戦争による人の死を比較しようとする発想自体を、おぞましいと思うのかもしれない。だからやっぱり宇多田さんと私とではまったく相容れない価値観を持っているのだろうな。それでも政治的な解決について考えずにはいられない私にとって、宇多田さんが最も単純な形の反戦平和主義から一歩踏み出してくれたのは、歓迎すべきことだ。

……という本題には関係ないけれど、きりが無くなっちゃうからというのはヘン。きりがなくなっちゃうけど、とすべきじゃないのかな。

追記。宇多田さんの日本語はヘンじゃなくて、私の方が浅薄でした。

後に何を補うかで、どっちでもあり

どっちも、日本語として変だと他人に指摘するほど変ではない。

きり 【切り/▽限り】
  • ――が無・い
  • 際限がない。はてしがない。

大辞林より抜粋。

漏れも「きりが無くなる*から*」がイイに一票。

納得。

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