これはちょっと違うような気がした。問題となっているのは統合失調症という言葉を口にしたことではなく、さしたる根拠もなく連続通り魔事件を精神病患者の犯罪ではないかと発言したことだ。こうした発言がまかり通ると、実際には精神病患者以外による通り魔事件が少なくないにもかかわらず、精神病患者が不当に疑われることにつながっていく。
もちろん、警察はバカじゃない。けれども、無責任な立場の方々はしばしばこうした問題に対してバカになる。ふつうの人が通り魔事件なんか起こさないだろう→精神病患者の犯行に違いない、偉い先生もそうじゃないかっていってたぞ、ということになる。偉い先生はもう少し慎重なことをいうもの(いくつかの特殊な事情を根拠にあげていたりすることが少なくない)だけれども、ごちゃごちゃした部分をすっ飛ばして、結論だけいただく人がいるという事実は否定できない。そしてテレビ局は私とは違って、バカにはつきあいきれませんともいっていられないことに注意しなければならない。
したがって、犯人がつかまる前に、情報の少ない段階で精神病患者の犯行を疑う発言を行うことには、とかく慎重であるべきだ。宮本さんが更新のネタ元としているニュースはTBSが障害者団体に謝罪 名古屋の通り魔めぐる発言である。宮本さんがテキストで書きたかったことは従来からの持論である言葉狩り批判なのだが、これはそういう事件ではない。「京都精神しょうがい者の人権を守る会」という名前がいかにもという感じだったので判断を誤ったのだろうが……。
蛇足。ようするに今回の事件は、たまたまテキストサイト管理人による犯罪がクローズアップされる時代が訪れたときに、テキサイ専門家がワイドショーに登場して、「今回の連続通り魔事件は一連のテキサイ犯罪と共通点があります」とたいした根拠もなく断言するようなものだ。単に「(犯行の形態に)共通点がある」といっているだけであっても、テキストサイト管理人への差別を助長する効果があることは明白なので、抗議する人が現れるのは自然なことなのである。
とはいうものの、そんなことをいっているとあらゆる犯人像予測は内容を公開してはダメということになりそうだ。けれども、実際には何となく線引きが行われていく。ひとつには、現時点で差別されているグループか、ということ。もうひとつには、グループがあまりに小さすぎないか、ということ。両方満たすようなら、犯人像予測の結果は公開に際し慎重になった方がいい。ワイドショーの犯人像予測は犯人逮捕につながらないのだから、視聴者の興味を満たすためだけの根拠薄弱な予測の価値は、差別助長の弊害を補うにはあまりに貧弱だ。
いずれにせよ、宮本さんの指摘は的外れというか、ありもしない問題を「見ちゃった」結果書かれたテキストなのではないかと思った。