迷惑防止条例の適用範囲拡大でパナウェーブに対処しようという動きもある。具体的な被害をもたらす迷惑行為がないのに、これを取り締まろうとするのはおかしい。だが、みんなが白装束は怖いと思うなら、白装束は迷惑だということらしい。その迷惑とは(野次馬の殺到なども含め)虚妄の産物であるのに、その発生源たる多数派の偏見を問わないのはどうしたわけか。
黒人差別なら、差別する人がおかしいと誰もがいうのに、白装束差別では、白装束がおかしいと誰もがいう。たしかに、パナウェーブには嫌な予感がつきまとう。だから監視はつけておいた方がいいだろう。しかし、表向きはいわれのない差別をしてはならない。彼らがどこに滞在しようと、合法である限りは制限を受けるべきではない。
パナウェーブが林道の占拠など、違法すれすれのことをやっているのは事実である。だが、何か事件がおきるたびに警察署周辺の道路に違法駐車しまくるのは、報道機関の習い性になっている。こうした違法行為が常態化しているからといって、マスコミ関係者の入村を拒否し、バリケードを築くことが許されるだろうか? パナウェーブが不当に差別されているというのは、つまりこういうことを指している。白装束で、見るからに怪しげだから、というのがパナウェーブ排除の本当の理由なのだ。それはあからさまな事実だ。
パナウェーブ以外の、見た目のふつうな団体(例えば一般の企業)がパナウェーブと同様の「迷惑行為」を行ったとして、そこの社員が住民登録を拒否されるような事態になるだろうか? 産業廃棄物の違法投棄に関わったような企業だって、トカゲの尻尾切りをやっただけで何食わぬ顔で存続するではないか。それがなぜ、パナウェーブでは土地取得絡みの古い詐欺事件がこれほど大騒ぎされるのか?
反社会的行為のひとつひとつを取り締まることと、ある種の人々への差別に法的根拠を与えることとは峻別しなければならない。
ひとつの理想的な根本的解決策は、パナウェーブに対して各地の地方自治体がこれから実行しようとしている対策が人権侵害である、という認識が広まることだ。新法成立によってパナウェーブの強制解散に法的根拠を与えるのも根本的解決策のひとつだが、私は、これだけはあってはならないシナリオだと主張する。