HTML が理解されないのは、文書構造を「見た目以外の何か」によって明示しなければならない場面を経験してきた人が(少なくとも現在の日本には)ほとんどいないからだ。
仮に日本語文書の一般的スタイルが、
といったものであれば、HTML はすんなり受け入れられたろう。括弧の代わりに h1~h6 要素を用い、スラッシュの代わりに p 要素を用いる、というルールはすんなり理解できる。
改行がいけないのは、あまりに多様な意味で使われていることだ。見出しと本文の区切り、段落の切れ目、会話文のあれこれ、間、などなど。
……いや、そうでもないか。仮に日本語文書の一般的スタイルが前述の通りであったなら、 h1~h6 要素を用いたときに自動で括弧が表示され、 p 要素を用いたときにはスラッシュが表示されなければ利用者は怒り出す。多くのブラウザのデフォルトスタイルではブロックレベル要素の前後に改行を入れるから、HTML をちゃんと用いずに font 要素などばかりが用いられることになる。
結局、所望の表示結果を得ることに興味が集中する限り、「文書構造の明示」という概念はいつまでも理解されないということか。
私はソースを見た場合を基準として書いています。基本的に HTML を学ぶ際に(いわゆる)ブラウザは害悪でしかありません。「表示結果」を説明に持ち出すから、HTML の基本概念を誤解するのです。まず HTML をマスターし、次にスタイルシートという、データと表現をつなぐ概念を学び、そうして初めて、HTML 文書が各種 UA に解釈された状態を示すのが筋です。
「表示結果」を見れば、(よほど特殊なスタイルシートを用意したのでない限り)各要素は暗示
されるに留まります。まさにそうだからこそ、HTML の説明に「表示結果」を持ち出してはいけないのです。ソースを見れば、font 要素(+ br 要素)と h1 要素とが異なることは明らかです。しかし(WinIE における)「表示結果」は同じです。だから、「どっちでもいいでしょ」という誤解が生じるのです。
とはいうものの、初心者に「表示結果」を見せずに HTML を教えるのは困難です。「表示結果」なしで授業すると、多くの方が何一つ理解してくださらない。だから泣く泣く「表示結果」を見せます。こうして悲劇が再生産されていくわけです。