で、人のエントリに言及してそこに勝手にリンクを張る以上は、最低限のマナーとして自分のエントリに参照元としての相手のエントリへのリンクは必要だろうと考えます。これは別にネットマナーとかそういうレベルの話じゃなくて、普通の大人なら普通に考えれば分かることじゃないかと思います。
最近、ネットマナーというと響きが悪いものだから、これは別にネットマナーとかそういうレベルの話じゃなくて、普通の大人なら普通に考えれば分かること
といったモノの言い方が目立つようになりましたね。これはもちろん Vins-T さんに限った話ではなく、界隈(?)一般の風潮として。
ここで思い起こしたいことは、もともと「問題あり」として批判されたネットマナー啓蒙サイトの筆者の多くが、何かというと「常識」といい、「当然のこと」といい、「人間として」云々といってきた、という事実です。そして、それをまとめてネットマナーと称した。ごく当たり前のことが理解できないバカがいる、許せない、おまえなんか啓蒙してやる! ……それがネットマナー啓蒙サイトの設立動機だったのであり、この前例を忘れちゃいない私は、Vins-T さんの発言に危険なにおいを感じずにはいられません。
そもそも、直接的な言及・被言及の関係だけを明示するだけが Trackback の有用な使い方なのでしょうか。Vins-T さんは非常に限定的な使い方だけを想定なさっているようですけれども、そこにまず認識の錯誤はないのか。
加野瀬さんはかつて(今でも?)、興味深いリンク元を被言及側である加野瀬さん自身の手で自サイトの Trackback に登録していました。自分の記事の参考文献として、それらの言及記事一覧は有用だとお考えになったからです。
この考え方を発展させると、自分の記事へのリンクがない文書であっても、内容に関連がある興味深い文書ならば Trackback に登録してもいいのではないか、ということになります。例えば、自分の記事より前に書かれた記事とかですね。いや、それらは記事中にリンクとして埋め込めばいいじゃないか、といえばその通りだけれども、記事を書き上げてから有用な関連記事を発見したとすれば、どうか。記事を書き直すよりも、Trackback を登録する方が簡単です。
さて、もう一歩話を進めましょう。要は Trackback が記事の有用な参考情報として機能しさえすれば、その内容は何でもいいのではないか。このとき、言及リンクのない記事を Trackback するのは、必ずしも Trackback される記事の筆者だけでなくともいいのではないか。まったくの第三者が Trackback したっていいでしょう。その結果が素晴らしいものであるならば。(そうなるともちろん spam の氾濫が予想されますが、リンクを必須にしたって spam のハードルはほんの少ししか上がらないことには注意すべき)
Trackback は人のエントリに、勝手に自分のエントリ向けのリンクを張る機能
だけをいう……わけではありません。Vins-T さんが「あるべき Trackback の姿」を掲げ、その理想に反する形態の Trackback を批判するのは構いません。しかし、これは別にネットマナーとかそういうレベルの話じゃなくて、普通の大人なら普通に考えれば分かること
とおっしゃることには賛同できません。それは Vins-T さんの理想に共感していることを前提としなければ成立しない話なのだから。
多くのネットマナー啓蒙サイトが「ローカルルールの無根拠な一般化」と批判されたことは示唆的です。普通の大人なら普通に考えれば分かること
といった、不用意な一般化は避けるべきではないでしょうか。
おそらく Vins-T さんが懸念されているのは、対象を明かさずに記事に言及したサイトが Trackback により一方的にアクセスを得ることでしょう。何故それを問題と考えるかというと、「(主にアクセスの面で)不公平」と感じるからでしょう。
しかし考えてみてください。例えば大手サイトが弱小サイトに言及するとき、これまでは微妙な配慮とやらが必要といわれてきました。そこに「リンクなしで言及するが、Trackback により言及の事実だけ伝える」という選択肢がひとつ増えることになるのです。これは Trackback される側にとって、必ずしも不幸な状態とは言い切れませんよね?
あるいは、言及にもいろいろなレベルがあります。抽象化、一般化の方向へ進んだ言及の場合、特定の記事への返信という形式を離れていくことになります。そのとき、考える切欠となった記事へのリンクは不要かもしれない。さらに別の例をあげると、既視感のある議論への言及に、新しい記事を書き下ろす必然性はありません。過去の記事を引っ張り出して、Trackback を打つのはよくないことでしょうか? 既に結論の出ているような話題の場合、それこそ最も有用な Trackback になると私は考えますが。(そしてもちろん、この Trackback は第三者も行ってよい)
Trackback は必ずしも自分のエントリ
へのリンクを生成するものとは限らないし、Trackback した記事が、Trackback された記事への言及
とは限らない。それでも Trackback は有用なものとなりうるし、そのとき相手のエントリへのリンクは必要
ではないと私は考えます。
普通の大人なら普通に考えれば分かること
ではないだろう、と。それほど単純な話ではないだろう、と。