趣味Web 小説 2004-05-10

P2P 技術の未来はどっちだ!?

逮捕されたからといって有罪になるとは限らない、と留保をつけた上で、持論を少々。(予め断っておきますが、以下、P2P 技術として主に想定しているのはファイル共有・転送技術です。それ以外の P2P 技術はインターネット白書2003年版によれば利用者の絶対数が少ないので、ここでは無視します)

包丁は有用な刃物だから、誰でも買ってよいのだけれど、用もないのに持ち歩いていると面倒なことになります。カッターナイフは、飛行機に乗るとき(これも法で禁じられているわけではない、と思う)以外は携帯していても OK です。日本刀は家に置いておくだけでも登録が必要ですね。猟銃も登録制、そして拳銃は基本的に所有が認められません。

Winny 開発者の逮捕で、P2P 自体の未来を危ぶむ声が非常にたくさんあるのですが、私はそう思いません。匿名性を高める方向へ進化した Winny は、いわば包丁を日本刀(むしろ拳銃)の方向へ進化させたようなものであって、遅かれ早かれ法規制の対象となったでしょう。違法な用途に供されることを意図してバージョンアップを繰り返してきた開発者は、権利を侵害された人々、社会秩序を重視する人々の逆鱗に触れました。裁判の行方は予断を許しませんが、ここまでは予期された展開です。

合法的なファイル交換において P2P ソフトが匿名性を保証する積極的な意義があるでしょうか。流通データの暗号化や、流通経路の隠匿など、本来は不要な機能ではないかと私は思います。P2P は実名性を高める方向へ進化することにより、透明性と合法性を確保して生き延びるのではないでしょうか。まともなビジネスの道具として P2P の技術が真価を発揮するためには、地下ではなく陽の当たる世界へ向かわねばならないでしょう。

結果的にヤバイ使い方もできるソフトとして有名なのが SoftEther ですが、混乱が早期に終息し、便利なソフトとして表街道を大手を振って歩むことが可能となったのは、製作者の意図が悪用にないこと、大半の利用者の意図も真っ当なものであることが明らかになったからでした。Winny 問題で重要なのは、まさにこの点ではないでしょうか。製作者も利用者も悪用を意図するソフトだったからこそ、Winny は執拗に官憲の追及を受けたのです。

P2P 技術は、どうしたって悪用を完全に防ぐことができません。だからといって、殺してしまうには惜しい技術です。現在、Internet のトラフィックのほとんどはアダルトコンテンツ以外です。Internet が急速に大きなビジネスを生み、世間に認められてきたのは、早い段階で表文化が裏文化を圧倒したからです。日本で最も人気のある P2P ソフトが Winny である内は、せいぜい100万人程度というファイル共有ソフトのユーザ数が爆発的に増えることはありません。

武器は大抵の民家から消えましたが、武器にもなりうる刃物はどこの家にもあります。P2P もこれと同様に、こそこそと悪いことをするために工夫されたようなソフトが表舞台を去り、健全な用途を第一に想定して作られたソフトが普及していくでしょう。そうでなければ、P2P 技術に未来はありません。

通信の秘密を守ることは必要

私の勇み足を諫める好記事。

続報(2004年9月18日)

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