Google と悪徳商法?マニアックス/W社問題Vol.1

Google と 悪徳商法?マニアックス[2004年1月23日]

googleから、削除された理由(わけ)

1月6日にgoogleに質問を送った返事が返ってきました。簡単にまとめると、「クレームが来たので、検索結果から削除した」と言うことのようです。

ご連絡ありがとうございました。お返事を差し上げるのが遅れました事をお詫び申し上げます。

弊社ではGoogleインデックスに表示されるドメインが、登録されている国の法律に従っている事を確認するよう努めています。弊社では、法律で公認されているコンテンツを削除すること及び情報アクセスの制限を行っておりません。しかしながら、特定のページのコンテンツが日本の法律に違反していると判断された場合、そのページをGoogle.co.jpから削除することがあります。この場合、クレームを頂いたユーザーから詳細情報を記載した署名入り文書を弊社法律部に提出していただく必要があります。

この度ご指摘になったページは、日本の法律上、名誉毀損罪(刑法230条)及び営業妨害罪(刑法233条)に該当すると判断され、Google.co.jp及び弊社パートナーサイトから削除させていただきました。何卒ご了承いただきますようお願いいたします。

今後とも Google をどうぞよろしくお願いいたします。

当サイトがgoogleで検索できなくなったことに対し、「SEO対策」だの「偶然的結果」だの本質を全く見ようとしない方も多くおられましたが、これで「googleの検索結果は、恣意的なものである」ことがハッキリしました。もっと、たしかな目(略称、たし目)を養って欲しいと思います。

# それはともかく、googleの解答は、なかなか趣がある解答な気がします。

さて、ここで皆さんに考えて欲しいことがあります。良く、インターネットの登場により、市民と組織が言論という同じ土俵の上で戦えるようになったと言われます。一般論としては、正しいでしょう。しかし、インターネットと言う「自由競争市場」では、権力や影響力、富と言った「価値」が、一極集中していく傾向にあるため、間違った意見だとも思います。

現在、サーチエンジンと言えば google です。googleに表示されないと言うことは、誰も見ないのと同じことです。google と言えど一企業ですから、当然、資本の論理が働き、不都合なページは積極的に削除していくでしょうね。資金力のある企業なら、「広告で、批判記事を潰す」、「弁護士を雇い、法的威圧をかける」ことなど朝飯前です。

既に、いくつかの企業については、企業側に都合の良い情報しか見つけられない状況になっています。今後、ちょっと批判的な記事を書いたり体験談や感想を載せたりすると、「google八分の刑」や「プロバイダにクレームが行く」ことが頻繁に起こるようになるでしょう。ヤクザは身内を攻めるように、本人に攻撃するより効果的な場合が多いものです。

もはや、インターネットで正直な気持ちを書くことは許されないのでしょうか?消費者が、商品やサービスについての情報を集めることは不当なことなのでしょうか?「ひとりの普通人として、なにが出来るか」、考えてみて欲しいと思います。

P.S. この記事を見て、早速動き始めた企業が、きっといる。間違いない。

P.S.2 googleへの返事は、うまいツッコミが思いつかなかったので送ってません。誰か送った方がいたら、結果を教えてください。

【再掲】

今のところ、googleで検索できないページ一覧。さらに、調べて追加しました。これ以外に検索できないページがありましたら、教えてください(www6.big.or.jp 上にあるもの)。

このBeyondさんの発言に賛同する方が非常に多いようですが、私は反対意見を述べます。

まず、検索できないページとして5つ挙げられた例のうち、京都の事件に関する記事は2つとも京都新聞から許諾を得ずに転載されたものであり、著作権法に違反しています。これは明々白々な事実であります。京都新聞では1年以上昔の記事の閲覧を有料サービスとして提供しており、Beyondさんの行為は京都新聞社のビジネスを不当に阻害しています。Googleが当該記事を検索インデックスから削除したのは、当然のことでしょう。内容以前の問題です。

問題は、その他の記事の削除が正当かどうかです。Googleは日本の法律上、名誉毀損罪(刑法230条)及び営業妨害罪(刑法233条)に該当すると判断しましたが、法的判断は分かれるでしょう。Beyondさんも法的判断の問題には触れていませんし、私もその点には踏み込みません。以下、Beyondさんが考えてほしいとおっしゃったことについて、書いていきます。

WWWにおける個人と組織の力関係

私は小なりといえども一部上場を維持している某企業の一社員ですが、当サイトの累計ページビューは、社の公式Webサイトの12倍です。Googleの定めるPageRankも、当サイトの方が高いのです。

私の会社は曲がりなりにも大企業に分類されていますから、Webサイトにもそれなりのお金と手間と時間がかかっています。仕事の一環で、給料をいただいて製作にかかわっている人が何人もいるのです(ただしサイト管理専業の社員はおりません)。営業部門が企画書を出し、偉い人が承認して、外部の業者と打ち合わせし、発注する。リニューアルするという話が社内で出てから、1年経ってもいまだに表面上は動きが何もない……というくらいに、じっくりとよく考えて、コトが進められているのです。

それでも、私が趣味で適当に作ったサイトの方が10倍も人を集めるし、PageRankも高いのです。こういうことが起きるという意味では、WWWは個人と組織が同程度の影響力を持ちうる可能性がある世界だ、といえなくもないでしょう。ただ、これに類する事例は出版や音楽の世界などでは以前より存在し、WWWが特別にどうだという話ではないかもしれません。近年の「モンゴル800がダブルミリオン」「静山社がハリポタでミリオン連発」といった話題は、まだ記憶に新しいと思います。

いずれにせよ、「自由競争市場」では、権力や影響力、富と言った「価値」が、一極集中していく傾向にあることは、インターネットの登場により、市民と組織が言論という同じ土俵の上で戦えるようになったという説を間違った意見だとする理由にはなりません。組織ではなく個人のもとに「価値」が、一極集中した事例は、世の中にたくさんあります。WWWでは、とくにその種の事例がたくさん見つかります。

なぜWWWの主役は趣味の個人サイトなのか

ここで少しだけ「らしい」ことを書きます。WWWにおいて、プロの手になるコンテンツよりも、個人が趣味で作成したコンテンツが幅を利かせているのは何故でしょうか?

アルミサッシの掃除の仕方、犬の散歩のさせ方、などなど、日常生活の細々とした情報の需要を満たすのはたいてい、趣味の個人サイトです。Yahooディレクトリを見れば、そのことはもっとよくわかります。例えばホームページ作成で紹介されているサイトの大半は趣味の個人サイトです。(趣味が高じて雑誌に記事などを書くようになった方もいますが)

しかし、みなさんご存知の通り、HTMLなどの解説書は無数に出版されており、掃除のテクニックも本や雑誌の特集によく登場します。ペットの飼い方は実用書の定番ですね。そしてそれらの記事を、趣味程度でやっている人が書くことは滅多にありません。

先ほどの問いの答えは、「商売にならないから」です。他に、重大な理由は何一つありません。WWWはコンテンツ自体ではなかなか儲けが出ない世界であり、それ故に、採算を度外視した趣味の個人サイトに(場合によっては)優位性が生じるのです。

多くの場合、個人よりも有利だから組織が存在するのであって、本来、個人が組織に勝てるわけがありません。しかし、多くの組織は金銭的な利益を追求する集団なので、利益につながらないことには力を発揮しません。だからWWWでは組織が弱く、低いレベルながら、個人に勝ち目があるのです。はっきりいって、掃除について本当に勉強したかったら本を買うべきです。HTMLの解説だってなんだってそうです。利益が出る世界なら、(たいていの場合)組織は強いのです。

「……なーんだ、そんな当たり前の話をもったいぶって書かれてもね」という声が聞こえてきそうですが、後につながる話なので、許してください。

検索エンジンと個人サイトの集客

googleに表示されないと言うことは、誰も見ないのと同じこととは、趣味の個人サイトの実態を反映していない発言です。趣味の個人サイトの9割以上は零細サイトであり、零細サイトにおいて検索エンジン経由のアクセスは重要ではありません。当サイトは現在では更新せずとも検索エンジン経由で毎日数百人の方がいらっしゃいますけれども、それにしたって大した数ではありません。

当サイトがどのような経緯でアクセス増を実現してきたかを考えるに、検索エンジンはほとんど意味がなかったといえます。まず人気が出てきて被リンク件数が増加してから、検索順位が上昇しました。この順番は一度も逆転しておりません。ふつうはYahooディレクトリに一発登録できるはずもなく、地道に常連客を獲得していきながら、ジリジリとPageRankを上げていくことになります。

人気サイトになれば検索エンジン経由の訪問者が増えますが、しかしブックマークやお気に入りからの訪問者は、もっともっと多いでしょう。一般的な傾向としては、趣味の個人サイトは人気に応じて検索エンジン経由の訪問者(の割合)が増えていくのであり、その逆ではないのです。ですから、検索エンジンからの訪問者がいてもいなくても、不人気サイトは不人気だし、人気サイトは人気サイトなのです。

1割減、あるいは4割減となると、たしかにつらいものがないとはいいません。しかし、googleに表示されないと言うことは、誰も見ないのと同じことというのは誤りです。例えば私は、検索エンジン経由でBeyondさんのサイトを訪れたことが一度もありません。かれこれ200回以上、訪問しているわけですが。考えてみれば、「侍魂」も「俺ニュース」も、検索エンジン経由で辿り着いたことは一度もないのでした。

資本の論理はどう働くか

Googleの商品は二つあり、ひとつは検索サービス、もうひとつは広告サービスです。現在の収益の柱は検索サービスですが、将来は広告ももう少し売っていきたいようです。Googleはどちらのサービスも「利用者に利益があるものにしなければ成功しない」と考えており、計算機による自動処理システムを用いた手法と、人力による恣意的な手法(例えばODP)を併用して最適解を探ってきました。

被リンク件数が少なくても、ODPに登録がなくても、学会や重要な公的機関などの公式Webサイトが高いPageRankを与えられてきた事実は、Googleの研究成果の一端を示しています。(補注:Googleは個別のサイトのPageRankには介入しません。しかしPageRankを調整する手段は多々あり、だからプログラムの更新とともに検索順位が大幅に変動することがあるのです)

いま重要なことは、検索インデックスから悪徳商法?マニアックスを削除したことが、Googleの利益になるのかどうか、です。多くの方が、Googleは「検索インデックスの信頼性を低下させた」「金で悪徳商法の軍門に下った」と評価しているようですが、私の評価は違います。

Googleは悪徳商法の情報を適切に提供する一方で、事実無根または根拠薄弱な中傷記事も許さない、という方針を示したのです。じつに真っ当な判断です。ウェディングは疑惑の渦中にあり、黒い噂がいくつもあります。将来的には、経営陣が逮捕され裁判で有罪が確定するかもしれません。しかし有罪と断定する証拠もない現時点で、「ウェディングは悪徳業者だ」といいふらしてよいはずがありません。(また仮に有罪が確定した後にも、誹謗中傷は許されません)

Beyondさんとその支持者は、ウェディングが悪徳業者であることを確信しています。しかし、本当にウェディングが本当に悪徳業者であるとしても、証拠もなしに憶測でそうと決め付けてよい、ということにはなりません。たとえその人物が真犯人であっても、証拠もなしに罰してよいのか、しかも私刑を加えてよいのか、ということです。映画やドラマでは、しばしば「法の裁けぬ悪を討つ」ヒーローが活躍しますが、物語ならともかく、現実がそうであってはいけません。

Googleは資本の論理で動きます。Googleが「憶測に基づく悪口」を肯定するWebサイトを検索インデックスから削除したのは、それが利用者の利益になるからです。Beyondさんとその支持者は、自分が「憶測に基づく悪口」の対象になる可能性、「憶測に基づく悪口」に騙される可能性を失念しています。「ウェディングは悪徳業者に決まっている」という確信に目を曇らせて、「この憶測は真実を言い当てている(ので削除するべきではない)」と考えるのは危険です。

コトの経緯

事の発端は上記参照文書冒頭のやり取りにある通りです。ウェディング会長室長の米盛さんが「ウェディングを誹謗する投稿を削除せよ」と要求したところ、Beyondさんは「協議のうえ最小限の削除を行うこととしたい」と回答しました。これに対しウェディング会長の田中敦子さんは、協議に応じず法的に対処する旨を通告してきたという次第。

削除要請の対象となった投稿(投稿者:拙電器さん)を引用します。

どうもトリックスターさんの辞書には「デート商法」や「アポイメント商法」って言葉が無い様ですね(笑) それとも検索術って術を知らないンでしょうか?

相談事例です。

まあ、トリックスターさんの中では淡い鯉の思い出なんでしょうが、向こうのお姉ちゃんにしてみれば鯉じゃなくてカモなんですね。んでまあ、こういうマトモな商売が出来ない会社はマトモな情報管理なんて出来ッこないですからその内、名簿なんか流出したりマッチポンプでこんな事にもなっちまうんですね。

「会員権」を「宝石」に置き換えて下さい。まあ、ウェディングがやるかどうかは判りませんがその危険性があるって事です。

この投稿が徹頭徹尾、ウェディングに対する悪意ある憶測に基づいた(明確な)根拠のない中傷であることは明らかです。明らかなのだから、「協議する必要はない」という意見には一理あります。これほど明白な中傷であっても協議なしに削除せず、しかも部分削除による決着を示唆されたとあっては、匿名の怪人物であるBeyondさんとの話し合いは法廷で行った方がよいだろう、という考えにも頷けます。

とはいえ、ある発言が「中傷」かどうか、という判断は人によって異なるので、引用した投稿は「中傷ではない」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、「確かな根拠なしに悪印象をばら撒く発言だ」ということまでは否定できないはずです。

補注:「徴用」は(狭義の)「強制連行」にあたらないとして、先日のセンター試験世界史Bの問題にクレームがつきました。「強制連行」と同様、「デート商法」「アポイメント商法」には悪いイメージがあります。こうした言葉には注意が必要です。ウェディングは、少なくとも狭義の「デート商法」「アポイメント商法」とは無縁と主張するでしょう。事実を表現する場合も、言葉の選び方次第で名誉毀損となりかねません。警察が犯罪を立証する前の段階において、個別の具体例について名指しで「デート商法」「アポイメント商法」と断定する批判記事が滅多にないのは、故なきことではないのです。

Beyondさんは最初の申し入れへの返信において、削除依頼のやり方について詳述しています。正規の手続きを踏まなければ対応しない、と門前払いしたのでした。しかし、この正規の手続きというのが実に面倒くさい。しかし考えてみれば、中傷発言を放置していて本当に困るのは管理人なのです。数多の2ちゃんねる裁判の判決が示したのは、「掲示板は管理されなければならない」ということでした。中傷発言を放置して処罰されるのは、管理人なのです。

参考:匿名掲示板(仮) VS ウェディング
名指しの悪徳業者批判が少ない理由

新聞、雑誌が悪徳業者について書くとき、批判対象が名指しされることは滅多にありません。その理由は簡単で、違法性を立証できないからです。しかし、批判的な記事にしたい。となれば、業者を匿名にする他ありません。

既に、いくつかの企業については、企業側に都合の良い情報しか見つけられない状況になっています。と書けば、「なるほど、それはまずい」と思われるでしょうが、これは巧妙な煽りです。Beyondさんの主張は、「ウェディングは悪徳業者だ」と断言できるだけの証拠を示してから、いうべきことです。現時点では十分な証拠を示すには至っていないので、Beyondさんは「根拠薄弱なまま、合法な手段で利益を追求している企業を「悪徳業者」呼ばわりしている」に過ぎません。

「悪いヤツを攻撃するためなら、この程度のことはやっていい」という考え方はありえます。私も、あれこれやってきました。しかし、法律に照らして非が多いのはどちらか、という問題から目をそらすべきではありません。悪徳業者を名指しで攻撃すれば、大衆受けします。しかし、カッコつければリスクもあるのです。

世の悪徳業者は、私にではなく、まずプロバイダにクレームを付けるのですが、それに耐えかねたプロバイダが「サイトを削除するか、個人情報を業者に教えるか、選べ」と脅してきました。

大変困りました。どこか良いプロバイダは、無いものでしょうか?

ウェディングが悪徳業者だという証拠があるなら、挑戦を受けて立つべきです。そのとき、致命的な傷を負うのはウェディングです。しかし、実在の企業を名指しで「悪徳業者」と断定していながら、何の証拠もないのだとすれば問題です。Beyondさんが匿名のままリスクなしでカッコつけられるなら、新聞記者と雑誌記者は泣くでしょう。証拠集めに日夜追われる警察官も、仕事が虚しくなるというものです。

おそらく、Beyondさんは「裁判になったら負ける」と考えていらっしゃるのでしょう。ウェディングを「悪徳業者」と断定するだけの証拠を持っていないからです。ならば現在、Beyondさんのやっていることは反則なのです。

反則を反則と認識されているのなら、相手が法的手段に訴え出た段階で観念すべきです。なおもカッコつけてリスクから逃げ続ける手など、あるはずがない。カッコつけたいならリスクを負うべきですし、リスクを負いたくないなら、信念を曲げて妥協するしかありません。それなのに、Googleなんかに難癖をつけて、被害者ぶっています。状況認識が、どこかずれているのではありませんか。

クレームがプロバイダに持ち込まれる理由

人を一人雇ったら、社会保障費なども考えれば1時間に1000円程度の人件費がかかります。クレーム処理のため1人を1日拘束したら、それだけでもう8000円の負担になります。そして、1ユーザあたりの月々の収入は、せいぜい10000円なのです。プロバイダがトラブルを嫌うのは当然です。この現実の前には、正義も何もかもちっぽけです。プロバイダは、そんな現実をよくわかっています。クレームを申し立てる人も、そうです。

ヤクザは身内を攻めるように、本人に攻撃するより効果的な場合が多いというのは実態と異なりましょう。損得で話のできない聞き分けのない相手と交渉しても仕方ない、ということに過ぎません。

本気、ということ

趣味でやっている人は、生活基盤に踏み込まれると、途端に腰砕けになります。趣味の話が趣味の世界で完結している限りは、趣味の人間は最強です。生活のかかっているプロバイダは、相対的に交渉ごとに弱い。しかし趣味の話が生活基盤に侵食してくると、ふだんの覚悟と準備がないから、うろたえることになります。

組織が本気になると、裁判を起こすことになります。むやみやたらに訴訟を起こしてはいけないわけですが、裁判はお金がかかるので、訴訟なしで済ませたいのは組織だって同じです。一方、ふつうの人は最初から裁判という選択肢を想定していません。組織の利益獲得を阻害する行為を、安易に考えているのです。

「弁護士を雇い、法的威圧をかける」ことをBeyondさんは疑いなく「悪」と認識されているようです。けれどもここで大切なことは、「威圧」として機能するのは副次的な効果に過ぎず、組織にとってその裁判は必要なものなのかもしれない、という想像力です。しがない趣味の個人サイトをつぶすために大金をかけて弁護士を雇い裁判をやる……それだけ、相手は本気だということです。何が組織をそこまで追い詰めたのか、あらためて考えてみるべきです。

Beyondさんの「悪徳業者」攻撃は、相手の生活を脅かしています。だから相手は本気にならざるを得ないのです。

書いていいこと、悪いこと

もはや、インターネットで正直な気持ちを書くことは許されないのでしょうか?消費者が、商品やサービスについての情報を集めることは不当なことなのでしょうか?と、Beyondさんは書いています。煽るのがうまいですね。

私は、こう答えたい。

正直な気持ちを、何でもそのまま書いてよいものでしょうか。憶測で誹謗中傷してよいはずがありません。根拠薄弱なのに「悪」と断定してよいはずがありません。消費者が、商品やサービスについての情報を集めるとき、それらのいい加減な情報に惑わされるのはよくないことです。毎年のように、何らかの風評被害が起き、多勢の人々が泣いていることをご存じでしょう。よくないものをよいという嘘が糾弾されて然るべきであるように、悪いのかどうかはっきりしないものを、疑いなく「悪」と断定するのも、少なくとも褒められた話ではありません。

私はBeyondさんの記事を一概にダメだとはいいません。こういう情報を発信するサイトも、たしかに世の中には必要でしょう。しかし、Googleが検索インデックスから排除したことに、私は理解を示します。

存続してほしい 悪徳商法?マニアックス[2004年1月24日]

悪徳商法?マニアックスには有用な記事がたくさんあります。例えば、興味深い事実を紹介する記事です。Beyondさんの本領が発揮された傑作記事をひとつご紹介します。

こうした、事実の裏づけのある記事だけだったなら、Googleの検索インデックスから削除されることはなかったでしょう。事実に基づく記事と憶測で中傷する記事が混在しているから、目次が削除されたのです。

私は、悪徳商法を攻撃する目的のために、憶測で中傷する記事は不要だと思います。乏しい根拠で悪徳業者と決め付けなくとも、こういった事実を積み重ねていけば、自ずと伝えたい情報は伝わっていくものではないでしょうか。地道に積み重ねた事実こそ、真に頼るべき武器です。憶測による中傷は信用の置けない、諸刃の剣です。

一部の問題記事のために、有用なサイト全体が存亡の危機に陥ることを、私は残念に思います。「島津奔る」「逃げろ家康」が絶版になったときの悲しさを思い出しますが、Webサイトは改訂すれば生き残ることができます。どうか、危機をうまく切り抜けてほしいと願う次第です。

見方を変えれば[2004年2月8日]

京都新聞の該当記事が著作物の定義である「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり、かつ上記2つの例外規定にあたらないものである、という事は「明々白々な」という程に自明ではない様に見える。

その疑問への回答は情報の自由な流通か、はたまたただ乗りか?に示されていると考えます。明々白々と書いたのはさすがに多少の筆の滑りを認めますけれども、まずそういってかまわないのではないか、と私は判断します。

ところで、私は実のところ、悪徳商法?マニアックスの Beyond さんが株式会社ウェディングを悪徳業者を決め付けていること自体については、必要悪だろうと考えています。しかし悪(ここでは「違法性が高い行為」という程度の意味)には違いないので、相手を本気で怒らせたなら Google の検索インデックスから削除されて当然だし、法廷へ引っ張り出されるのもプロバイダを移らねばならないのも不思議なことではありません。これまで許されてきたのは、単なる幸運に過ぎなかったのです。

私が Beyond さんを批判したのは、法的に問題のある記事を書いたからではなく、対抗措置を一方的に非難したからです。Beyond さんの支持者を批判したのは、対抗措置の正義を顧みなかったからです。「確信犯には困ったものだ」ということをいいたかった。現実社会においては、自分の信じる正義だけが唯一の正義ではないわけです。法秩序とか、そういった他の正義もあります。「仕方ない」ではなく、「よくやった」という感想をもつ人間もいます。

Google の判断に私は理解を示しました。自分が誹謗中傷されたとき、Google が味方になってくれる(であろう)と思ったからです。そういうものの見方があっていい。にもかかわらず、「(これは望ましい事態ではないが)クレーム対応は面倒だもんね、お察しします」みたいな感想ばかりが目立ちました。はてなの件も同じです。はてなではこれまで、キーワードなどの取り扱いを慎重に慎重に行ってきました。しかし、緊急時にもそんなことでは困ります。申立者が「法的手段に訴えることも辞さない」ところまで追い詰められたとき、はてなが「手早く対応してくれる」ことが今回わかりました。だから、見方を変えれば、これは歓迎すべきことなんです。

多数派の感情論は、いつもひとつの正義となります。法(あるいは少数派の感情論/etc)はしばしば、その正義と対立します。今回の Google とはてなの件について、「正義の名のもとに悪がまかり通った」という感想を持った人が多かったのは、意外なことではありません。しかし、天邪鬼であるところの私としては、こういうときこそ一言いっておきたかった。

費用対効果[2004年2月23日]

Googleやはてなが株式会社ウェディングの要求に(ある程度)応じたように、果たして個人が中傷されたときに同様の対処を取ってくれるのかという部分については「どうかなあ?」と思わなくもないけど、ひとつの意見として、まあ興味深い。

私は決して、メール1本で Google が動くなんてことは考えていません。弁護士を使って(つまり相当の費用を投じて)対処するならば、依頼主が会社だろうと個人だろうと、Google は動くだろう、といいたいわけです。

ただ、ネットでの誹謗中傷について、生じうる損害の規模が個人と企業では全然違います。だから一般個人の場合、中傷による被害が、中傷に対抗するための費用より軽いわけです。だから、お金も手間もかからない簡単な手段しか取らない(取れない)。そうである限り、一般個人の訴えが Google になかなか相手されくとも当然でしょう。

とにかく今回、株式会社ウェディングはこの問題のために相当のお金をかけているわけです。それだけの価値が、あると考えている。しかし結果的に、この程度のことしかできないわけです。私は、これでは費用と効果が見合わないと思います。これを見たら、たいていの企業はウェディングの真似をしてもしょうがないな、と考えるでしょう。個人なら、なおさらですね。(つまり、お金をかけてみても WWW から中傷を追放するのは難しい、という結論になります)

天羽先生のご意見を拝読する[2004年2月25日]

以下のメールを2004/01/19にgoogleに送ったのだが,未だに返事はこない。要するに,googleは,恣意的に検索結果を変更している信用ならないサーチエンジンであり,説明責任も果たさず,追及されると話をすり替えてごかまそうとするか,だんまりを決め込む会社だということがはっきりしたわけだ。

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律とは何か。総務省の作成した図解[PDF]に明記されている通り、従来の民事裁判では救済できない被害について、プロバイダ等の自主的対応を促し、その実効性を高める環境整備の必要を反映して制定された法律なのです。

ネットの利用だから,情報を公開する以上の行為はできないはずですよね。この状況で法律違反というと,「わいせつ物陳列」「著作権法違反」「名誉棄損」「信用棄損」「侮辱罪」,あとはプライバシーの侵害あたりじゃないかと思うんですが,いずれも,法律に違反するかどうか,裁判所で個別に争われているはずです。事実関係を調べないと個別の判断ができないからでしょう。いずれの可能性の場合も,「言いがかり」をつけることは可能ですし,現実の社会でも訴えるだけならいつでも可能です(勝ち目がどの程度になるかは別として)。

音楽ファイルの無断公開など,明白に違反だと判断できるものもあるでしょうけど,論評か名誉棄損かといった場合には,グレーゾーンがあって,違反かどうかの判断は個別の状況によるでしょう。だからこそ司法手続きで決めることになっているのではないでしょうか。「法律違反」と判定するときの精度が問題だと私は考えているのですが,御社の法務部は裁判官並みの精度で判断できるということなのでしょうか。

引用した意見は、同法の趣旨に照らせば誤りといえましょう。

私たちは日常生活を送る中で、自らの法解釈に基づいて様々な判断を行っています。グレーゾーンがあるからといって、何でも裁判所にお伺いを立てているわけではありません。従来、プロバイダ等が自主判断を半ば放棄してきたのは、自主判断により特定の意見を公開停止としたとき、言論の自由の侵害として訴えられる可能性があったからです。このような状況下では、基本的に発信者が優位となり、被害者の救済が困難になります。(Ex.とくに個人が被害者となった場合、費用対効果の観点から対処法がないも同然となります)

WWW では匿名の発信者がいい加減なことを書く事例が多くあり、座視できない状況です。そこで、現在非常に広くなっているグレーゾーンについて、プロバイダ等が自主判断で公開停止としても免責される法が作られたのです。(総務省の逐条解説[PDF]に詳細な解説があります/必読)

というか、悪徳商法マニアックスは元々、掲示板のたった一つの書込みについて削除を求められたのです。それを拒否したので小さな話が大事になり、サイトの移転だとか警察が動くとかいう話になっています。派手な展開に目を奪われて、問題の書込みがどのようなものだったかご存知ない方が多いのではないかと思うので、あらためて引用します。

どうもトリックスターさんの辞書には「デート商法」や「アポイメント商法」って言葉が無い様ですね(笑) それとも検索術って術を知らないンでしょうか?

相談事例です。

まあ、トリックスターさんの中では淡い鯉の思い出なんでしょうが、向こうのお姉ちゃんにしてみれば鯉じゃなくてカモなんですね。んでまあ、こういうマトモな商売が出来ない会社はマトモな情報管理なんて出来ッこないですからその内、名簿なんか流出したりマッチポンプでこんな事にもなっちまうんですね。

「会員権」を「宝石」に置き換えて下さい。まあ、ウェディングがやるかどうかは判りませんがその危険性があるって事です。

「中傷」かどうかはともかく、「確かな根拠なしに悪印象をばら撒く発言」には違いありません。そのことは、争うまでもない一目瞭然の事実です。

で、これを「消せ」「消さない」という話になって、プロバイダとしては問題を解消するか、当事者同士で話し合って解決してほしいわけだから、「出て行くか、個人情報を開示するか選べ」ということになる。

Beyond さんが根拠の不確かな悪罵をなぜ守りたがるのか、ということは掲示板を見れば明らかで、裁判所で証言できそうな責任ある発言ばかりでは掲示板が成り立たないんですね。まあ、悪徳商法対策をやっているサイトはどこでもそうなんですけれども。だからふつうは、実名は挙げないことになっている。もし訴えられたらかなわないから。でも Beyond さんはカッコつけて、実名を挙げて批判することを許してきました。それがタダで済んできたことがそもそもおかしい。ということは以前、書きました。

前略

Google チーム 様

At 11:20 AM -0800 04.1.16, japanese@google.com wrote:

ご連絡ありがとうございました。ユーザーが日本の法律に違反するかどで特定のページが削除されることを希望する場合、どの法律にどのように違反しているかを証明する署名入りの文書を弊社法律部に提出していただく必要があります。

見当違いの答えをするのはおやめください。

私は

について問い合わせているのです。私は,誰かのページの削除を要求するつもりなどありません。

自分のページに削除要求が出された場合の対抗措置に関して事前に情報を得るために問い合わせているのです。

また,悪徳商法マニアックスの削除要求は,アメリカの住所となっている法務部にクレームが出されたのであって,日本法人に対するクレームではないという主張でしょうか?

なお,御社とのやりとりは,すべて公開し,ネット上のいろんな掲示板にも転載する予定です。

参考までに,以前のメールを載せておきます。日本語をよく読んでください。

以下略

天羽さんはこういう質問メールを出したけど返事がないといって、冒頭に引用したような言葉で怒っていらっしゃる。回答がずれているのは事実ですが、公開するの何のということをいっておいて、マニュアルにない質問をしたってろくな答えが返ってくるはずがないことは容易に想像がつきませんかね。Google が一人の超人によって運営されているならともかく、実際には大勢の社員が様々な業務に当たっているわけです。

公開するのなんのと脅されたら滅多な回答はできないけれど、さりとて無数に寄せられる質問への回答にいちいち上司の承認を取れるはずがない。会社の全責を背負って対外文書を作成する末端の社員の心労を、なぜ理解できないのか。天羽さんが4項目の質問の答えを知りたければ、週刊誌の記者のように社外で社員に会って、匿名の無責任な立場で話をしてもらうしかない。さもなくば、末端の社員が上司の承認を取ってマニュアルに無い回答を作成するに十分な「理由」を与えねばならない。

Google は社会的影響力の割に小さな組織で運営されていて、その点、至らないこともあるでしょう。あれほど広告の少ない検索エンジンは他にないではないか。そういうことを勘案しないで上等のサービスを求めるのは、無茶というものです。

ところで、恣意的に検索結果を変更するサーチエンジンというのは一概に信用ならないものなんですかね。現在の検索結果は、たまたま SEO に成功しただけのサイトが上位にくることがよくあるわけだし、そもそもごく基本的な PageRank の仕組みだけで Google が動いているわけじゃないってことは、過去に何度もあった検索アルゴリズムの変更の際に明らかになっていることです。

ODP とか Yahoo とか、結局のところ当初から Google の検索結果には(間接的であれ)恣意的に人手が介入してきたのでした。

前項ではいろいろ書いたけれども、私が一番注意してほしいことは、「真っ当な批判と根拠に乏しい悪口の取り違えがあるのではないか?」ということ。後者を Google が削除することは、いつ自分(あるいは自分の所属する組織)も被害者になるかわからないわけだから、大変けっこうなことだと思うわけですけれども。