まとめと後日談/W社問題Vol.5

手続きの省略は原則不可[2004年2月26日]

「Googleの対応はいい対応だ」という意見には同意。しかし、その他では、ちょっと・・

そもそも、ウェディングに対しての書き込みは、誹謗中傷ではない。誹謗中傷ってのは"根拠のない"っていう点が重要。単なる悪口や言いがかりをつけているのとは違う。

憶測だけで中傷?

では、これまでに報告のある、特定商取引法に明らかに違反している勧誘や展示即売会は? それらの声が多く同掲示板に集まり、また、他のサイトでも同様の声が挙がっている。実体を調べるために、勧誘の電話を受け、展示会にまで足を運ぶ人までいる。そーいったことを総合して「ここは危ないかもよ」と言う。それも中傷? ・・・あ〜面倒くせ、眠くて考えがまとまらない。

もうね、特定商取引法に違反した勧誘・契約方法ってだけで、まずいでしょ。明らかに違法なんだから。違法行為をしているスタッフがいる、それを違法だとそのスタッフが認識しているかどうかは知らないが、こういった商売をやる上で極々基本的な法律すら知らない、教えられてない、自覚していないスタッフがいる会社は、少なくとも優良とは言えないわな。んで、違法かどうかなんて知ってても知らなくても、その自覚症状を持たない社員が突っ走って、"何か"しでかす、ってなこともあるかもしれないわけだ。「その可能性もあるよ」と言い批判する、それのどこが悪いのか。。。

きちんと読んでから反論してほしい。

もともと株式会社ウェディングが悪徳商法マニアックスに対して求めたことは、掲示板のたった一つの発言を削除することだったのです。で、Beyond さんはそれを拒否してごねたから、裁判だという話になった。そのステップとしてプロバイダに Beyond さんの個人情報についての開示請求があり、プロバイダとしては、請求に応じるかサイトを移転するかいずれかを選べ、と。で、Beyond さんは裁判の準備としてウェディングを悪徳業者と決め付けて大々的に情報収集を開始。Google からウェディング関連の記事が消えることになる。

問題の起点は掲示板への書き込みにあるんです。私は当該の書き込みを見て、「これは削除依頼に応じるのが筋だな」と思いました。確かな根拠なしに憶測で中傷する内容だったから。私のいう「憶測で中傷」とは、この事実を念頭においた表現です。

また、特定商取引法に違反した勧誘・契約方法ってだけで、まずいでしょ。明らかに違法なんだから。というあたり、もう少し注意して書くべきではないか。なぜなら、体験談(のようなもの)を書いている人のほとんどは法廷に立つつもりが無い。匿名の無責任な立場でしかモノをいわない。そういう証言(といえるかどうかも怪しいのだが)に一方的に肩入れして、明らかに違法とか書くから「確かな根拠もなしに悪口をいう行為」に抵触することにつながるのです。

パナウェーブの事件の際にも繰り返し書いたけれども、みんなが「あいつは悪いやつだ。きっとそうに決まっている」と思っている「連中」が相手だとなると、みんないい加減な証言も裏を取らずに信じてしまう。いい加減な証言どころか、単なる噂話や又聞きの又聞きみたいな信頼度 0 の情報でも、あたかもそれが真実であるかのように口伝されていく。それは結局、有形無形の悪影響となって「連中」に襲い掛かるわけだけれども、それをいいことだと信じてやまない人がちょっと多過ぎないか。そういうことを私はいっているのです。

テレビも新聞も雑誌も、庶民が「所詮はタテマエでしょ」と思ってバカにしている社会のルールを意外にきちんと守っています。だから、よほどはっきりと証拠をつかまない限りは、実名を挙げての批判はしません。曖昧な根拠で書く場合には、ほぼ確実に批判対象を匿名にします。芸能人の有名税と企業活動への誹謗中傷とでは話のレベルが違うのです。それをわかっている。

WWW では、なまじっかの雑誌よりも影響力の大きな個人サイトが登場しています。しかし、その管理人は通常の市民感覚でサイトを運営していることが少なくない。「WWW への情報公開は、雑誌を発行するようなものだから、公的な責任が生じる」ということを、なぜか失念しています。リンクの自由を主張するときには、学会誌に発表された論文を参照する場合を例え話に使ったりするのに。それが、今回のような問題の土壌です。

実際問題として、弱小サイトは数人しか読まないわけだから、日常生活の感覚でものをいっても問題になりません。しかし、ひとたび目立つところへ出てきたら、そうはいかないことを知るべきなんです。個人サイトにも、マスメディア並の抑制が求めらて然るべきなんです。それだけの社会的影響力を持ってしまったわけだから。Beyond さんが株式会社ウェディングを悪徳業者と断定するのはかまわないけれど、雑誌記者がそう断定する場合と同じだけの証拠を持っているのか。持っていないとしたら無責任ではないのか。無責任だとしたら、罪を問われないのか? 確かな根拠もなしに、雑誌記者と同じだけの影響力を持った人が、ある企業を実名で悪徳業者と断定する。それが許されることなのか否か。

DualBalance さんは、株式会社ウェディングへの「憶測に基づく中傷」は「根拠のある批判」だとおっしゃる。検索エンジン spam 関連など、いくつかの記事については同意したい。しかし、DualBalance さんは全面支持のようですね。

私がわからないのは、仮に DualBalance さんが正しいのなら、裁判なんかやって損をするのは株式会社ウェディングの方だということです。何も心配などする必要は無い。裁判で「正義」が勝つことは確実なのだから、下手に交渉して妥協するよりマシな方向へ向かっているんじゃないですかね。それなのに何故、不安を煽るような書き方をするのか。それは、「結論の確信」だけで突っ走って足元が怪しいからです。「正義」の執行が「手続きを必要とする」のは、無意味なことではありません。

あのですね、ぶっちゃけ、みんなの考えていることは結論だけは正しいのだと思います。私も株式会社ウェディングは**だと思っています。

けれども、みんながそう思っているからといって、おそらくその結論が正しいからといって、手続きを省略していいということにはならない。もし、手続きを省略していいのであれば、オウム真理教の施設で麻原が発見されたときに、あんなのはさっさとその場で「死刑」にしてしまってもよかった。たぶん麻原は「悪い」人で、結局のところ、死刑になるのでしょう。いまだに彼が生きているのは、ようするに手続きのためでしかない。こういう話をすると、すぐに「くだらない手続きが世の中をダメにしている」みたいな意見が出てきますけれども、本当にそうなのか、よく考えなければいけないでしょう。

人が人(のすること)を「善」だの「悪」だの決めるってのはそうそう簡単な話ではなくて、いくらもどかしくても、手続きの省略は原則として不可でなければいけない。そう、私は「信じて」います。

ウェディング問題を考える会[2004年4月10日]

入会せずとも参加可能な第1回総会に出席の申し込みをしたのですが、何日経っても返信がありません。会場も決まらないうちに申し込んだので、定員オーバーのはずがありません。どなたか、返信の来た方、いらっしゃいます? 私だけ参加を拒否されているのか、あるいは誰にも返信がないのか、知りたいのです。

メールまたは電話での情報提供をお願いします。本件に関する情報提供については、メールアドレス、電話番号等、情報提供者の秘密を厳守することをお約束します。

ウェディング問題を考える会 第1回総会[2004年4月27日]

17日に開催されたウェディング問題を考える会 第1回総会ですが、前日になってようやく受付確認のメールが届きました。そして詳細な連絡が届いたのはなんと当日の早朝。私はメールチェックなしで家を出たので、読んだのは帰宅後でした。とはいえ、とにかく当日朝には届いていたわけで、ある程度は私の責任でもありましょう。あと、当日に道に迷ったのは完全に私の方向音痴のせい。地図は正確でした。

せっかく行ってきたので、何か書こうと思いつつ時間が経ってしまいました。既に詳細なレポートがたくさん出ていますので、私は個人的に印象に残ったことについて書きとめておこうと思います。

探偵ファイルはほぼ満席状態と伝えていますが、これは事実誤認。INTERNET Whatch が伝える会場には会員、非会員含めおよそ90名の参加者が集まった。の方が正確です。約200席が準備されていたので、かなり余裕がありました。ちなみに私の左右も空席でした。市民集会のようなギスギスした雰囲気はなく、参加者がみな落ち着いた態度だったので安心しました。

私が今回の総会に参加したのは、消費者原理だけで話をしない理性的な紀藤弁護士が、どのような理由で Beyond さんとその支持者を支援するのか、興味があったからです。期待に違わず、紀藤弁護士は強烈に厳しい現状認識を披露されました。弘中弁護士が慎重に言葉を選びつつも Beyond 支持者へのリップサービスに終始されただけに、紀藤弁護士の率直な発言には驚きました。(役割分担?)

プログラムに紀藤弁護士の講演は含まれていませんでしたが、幸い、質疑応答では弁護士代表として積極的にお話してくださいました。なかなか私まで順番が回ってこず気を揉みましたが、滑り込みセーフで質問できたので、以下、概要をご紹介します。(私の質疑応答が長引いて時間切れとなり、こせきさんまで順番が回らなかったことをお詫びします)

質疑1.WWW における個人の意見表明に対し企業が裁判を起こすこと自体を批判するのはいかがなものか?

Beyond さんは株式会社ウェディングからの申し入れに対し、掲示板上での対話と各種資料の提示を求めたが、果たしてこれは企業にとって受け入れ可能なものだったろうか? また仮に話し合いが成立していくつかの記事が削除されたとしても、ウ社が削除を求めたすべての記事が消えることはありえず、非常に限定的なものとなったろう。Beyond さんとウ社の主張・希望には乖離が存在し、Beyond さんがウ社に一方的に譲歩を求める限り、裁判は避けられなかったのではないか。

今回、ウ社は諸般の事情を鑑み、Beyond さんに対し裁判を起こしたことについて「間違った方法だった」と述べたが、問題解決の方法として必ずしも裁判が間違いとはいえないはずだ。双方がこれ以上は譲歩できないというラインを提示したとき、そこに大きな段差があれば、裁判という手段が最後に残されていなければならない。話し合いは万能ではない。

質疑2.情報の正誤は読者が判断すればよいとの主張には「大衆が判断を誤る可能性」が欠落していないか?

三浦和義事件は、殴打事件においては有罪が確定したが、銃撃事件は無罪が確定した。その後、マスコミ各社が裁判に負け賠償金を払ったことはあまり知られていない。相変わらず大衆は三浦和義が殺害事件の犯人だと思っているだろう。そのこと自体はもはや仕方ないとすれば、明確な根拠のない憶測による中傷の被害者にとって、裁判以外に救済の道があるだろうか。

悪徳商法マニアックスや匿名掲示板(仮)では、「**は悪徳業者ではないか?」という類の憶測には簡単に賛同と信頼が得られる傾向がある。常連の参加者層が偏向している。初心者がこれらの空間を覗いたとき、果たして冷静な判断が可能か。悪徳と断定された業者への膨大な否定的意見に圧倒され、正当な判断が脅かされる不安はないのか。

安易に「読者が判断すればいい」とばかりいうのは無責任ではないか。

応答1.(と私の感想)

まず第1の質問について、Beyond さんが「必ず存在する資料の提出を求めたに過ぎない」と発言され、ウ社取締役の米盛さんは「企業として、不特定多数の匿名人物に向けて内部資料を出すことはありえない」と回答なさいました。また Beyond さんは「対話の限界を口にできるのは、実際に対話した者だけだ」とも仰いました。

Beyond さんは「多くの目がある場所で戦えば怖くない」との信念に基づき、公開でのやりとりを基本としています。ところが、これは事実上、対話を拒否しているも同然の姿勢です。Beyond さんと支持者が提出を求める資料には企業活動のノウハウが含まれますから、基本的に公開は不可能です。けれども潔白の証明に必要ならば、Beyond さんだけには見せるという決断はありえましょう。ところが、最近まで Beyond さんは匿名の怪人物であり、直接の接触は不可能でした。

相手が絶対に受け入れられない条件を提示しながら、「対話に応じず裁判を起こすのは大企業の横暴だ」と主張するのは無理筋ではないでしょうか。会の冒頭で、会長の山本さんが匿名から実名へと向かうネットの大きな流れをテーマにお話され、その後、弘中弁護士らから Beyond さんに実名公開を勧めた経緯の説明がありました。なるほど、話はここでつながってくるのでした。また応答の中で、紀藤弁護士が2ちゃんねる管理人のひろゆきを例に挙げ実名の利点を説明されました。

応答2.(と私の感想)

そして第2の質疑について、紀藤弁護士の応答を INTERNET Whatch の記事から引用します。

また、紀藤弁護士は講演後に行なわれた質疑応答において、今回の問題について「そもそも名誉毀損のルールがインターネットというメディアが登場する以前の社会状況に合わせたものであり、実態とかみ合っていない部分がある」と指摘。「新聞社や出版社などの企業が情報コンテンツサービスとして提供する情報と、個人がホームページやBlogなどで公開する情報とは切り分けが必要だ。企業が事業として行なう情報サービスは、情報の裏が取れているものと受け止めるのが当然だが、個人がサイトで公開する情報はあくまで個人が見聞した範囲で述べているもの。情報を受け取る側が予期する情報の信憑性に違いがある」と述べた。

個人による情報発信については、「たとえ個人サイトの上での発言でも、今の法律で名誉毀損で訴えられたら、裁判に勝つにはその見解が公益性を持っていることを証明しなければならない。個人レベルでそれを立証するのは到底無理だ。現在のルールでいうと、実質上は訴えた方が勝つという仕組みになっている。そもそも、訴えられただけでサイトを閉鎖するケースがほとんどだろう。ネットで個人が発信する情報は、雑誌や新聞といったメディアとは全然違うものだということを訴え、法的なルールとして対抗できる策を見いだしていかなければならない」とし、現行法の問題点を指摘。「インターネット上の表現の自由を考える会というようなものが必要ではないか」とも述べた。

なるほど、と思いつつ、やはり疑問も感じます。Beyond さんが「ウ社は悪徳業者だ」といったら、憶測発言であっても、なまじっかの雑誌よりも影響力があるではないか、と。個人の発言だから信頼されないとはいえないし、そもそも憶測の記述に意を込めた記事はマスコミにもたくさんあります。

しかし、よく考えてみると、ウ社が削除を求めたのは掲示板の匿名諸氏の発言でした。Beyond さんの発言ではなかったのです。果たして、それらの個々の発言にどれほどの信憑性があったか、というと疑問が残ります。そこで登場するのが Google です。「株式会社ウェディング」で Google 検索したとき、かつて上位に登場したのは匿名掲示板(仮)の当該スレッドでした。Google が匿名諸氏の発言に重大な意義を与える役割を果たしていたのでした。

何らかの理由で影響力の大きな個人は実在します。個人的発言だからといって一概に責任を免除することに、私は賛同できません。大勢の信頼を集めるようになった発言者は、相応に慎重な発言を心がけてほしいのです。また企業は無尽蔵に裁判費用を捻出できるわけではありません。天下のソニーだって、WWW からソニータイマーという中傷を撲滅することは不可能です。現実問題としては、9割以上の人々にとって、WWW は日常会話と同程度に何でも発言できる場であり続けるはずです。

つまりその意味で、私はこのウェディング問題はレアケースに過ぎないと考えています。私はむしろ、紀藤弁護士の提案する法改正によるネット言論の保護によって、大手の煽動サイトが無責任な言論を流すようにならないか心配です。

……というわけで、じつは INTERNET Whatch の記事の過半は、私の質疑に対する紀藤弁護士の応答からできています。もし私が質問していなかったら、どんな記事になっていたのでしょうね。

参考