趣味Web 小説 2005-02-16

単行本より値段の高い文庫本

以前,図書館で読んでから,文庫化されないかなぁと思っていた「腕(ブラ)一本・巴里の横顔―藤田嗣春エッセイ選」が,ようやく講談社文芸文庫から出た。

(中略)

これこそ岩波文庫で出して欲しいような本だが,文庫化してくれた講談社に感謝。しかし,この厚くもない文庫本が1365円。いつも行く本屋のおばちゃんもレジ打ったあと,「あれ,間違った....あってるねぇ」と値段を見直すほど高かった。

これがボロ儲けなら、とっくに他の出版社が参入しているはずで、よっぽど売れていないのだと思う。売れなければ文庫本でも単行本でも値段は同じになってしまうことは、社内報みたいなものを手伝ったことがある方ならみなさんご存知の通り。

関係ないけれど、京極夏彦の諸作について、なんで文庫本を分冊にしないのか、という声をよく聞きます。でも、アレを分冊したら新書版より値段が高くなってしまうので、無茶な注文だよなあ、と思うのです。

ところが2003年、恩田陸の「上と外」が文庫全6巻より安い単行本全1巻として発売されたので衝撃を受けました。「上と外」の場合、先に発売されたのが文庫版だから、後発の単行本が割安でもいい? でもスティーブン・キングの「グリーン・マイル」は、後発の単行本をワザと贅沢な本にして高値をつけたわけで。

最近では天童荒太「家族狩り」が5分冊で改訂文庫化(「幻世(まぼろよ)の祈り」「遭難者の夢」「贈られた手」「巡礼者たち」「まだ遠い光」)されて少し値上げ。

文庫本と単行本の価格逆転現象、私の知る限り、もっとも劇的な例が中山介山の「大菩薩峠」でしょう。第三書館の「ザ・大菩薩峠―『大菩薩峠』全編全一冊」が5040円、ちくま文庫の「大菩薩峠 全20巻セット」が15941円です。まあ、これは特殊例かも。ちなみに「大菩薩峠」は未完の大作。ただ、本作は時代劇ですから、水戸黄門のようなつもりで読めばいい(未完だからといって気にする必要はない)と思います。

とにかく文庫本と単行本ではパッケージの重厚さが全然違うのですが、だから値段も……と短絡はできません。とはいえ文庫本で高価格だと悩んでしまうのも人情。売れない本がたいてい単行本として発売されるのは、その辺の事情を織り込んでのことだといいます。つまり、部数が少ないと単行本でも文庫本でも似たような値段になってしまい、その場合、単行本の方がまだしもよく売れる、という話を聞いたことがあります。

余談

まさか Amazon で「上と外」が文庫も単行本も全部新刊品切れとは。恩田先生といえば、そこそこ売れている作家だと思っていたのに。恩田先生の新刊「ユージニア」を買ってみようかな。

Information

注意書き