趣味Web 小説 2005-03-07

予防接種に見る個人の幸福追求と社会の利益

発端はかずよの子育てエッセイ第20回なのですが、id:chirin2 さんの指摘が理解されなかったのは、わかる気がします。端的にいえば、id:chirin2 さんの指摘の方が絶対に正しいのかどうか、素人には分からないですから。いわゆる民間療法が幅を利かせていることからわかるように、必ずしも庶民は西洋医学を信じていない。

それに、予防接種を勧める医学博士も勧めない医学博士も実際にいるわけでしょう。一人一人の意見だけ聞けば、説得力があっても、3人の意見を聞いたらワケが分からなくなる。医学の知見のある方の多数派が予防接種に賛成であるらしいことはリンクなどを辿ってみて理解できましたけれども、どうも結局のところ、前提とする価値観の問題でしかないような気もしました。とすると、導かれる答えはひとつじゃない、ということになります。

このような考え、つまり自分の子供は自己責任で受けさせたくない、という親は日本人には多いですが、外国に渡ると「日本は感染症輸出国だ」として国ごと非難されています。貴サイトで載せていることは、日本という国が他国で殺人を行うことを推奨しているのです。まだ幸いにも聞きませんが、そういう事情で感染経路となったことが証明されれば、訴えられたら負けるでしょう。

海外でマラリアを拾って死ぬ日本人は毎年いますが、予防薬を飲み忘れてたのがいけない、などといって本人の問題にされるばかり。訴えられたらという脅しは、副作用が云々という脅しと、どう違うのだろう? どちらも針小棒大の煽りではないでしょうか。また個人の幸福追求と社会的利益との線引きは一概にこうといえないところですから、日本人を非難しているという海外の方々の考えに一方的に肩入れするのが正しいのかどうか。

ここで id:CROCODILETEAR さんの意見を引きます。

人の命に直接関わる事を書こうとするなら、「ド素人」が日々感じたこと考えたことなどを自由に書いて良いわけないし、何かについて書くときにはその何かについて間違ったことを書かないように細心の注意を払ってキチンと調べてからでないと書けないなんて、当然のこと。不特定多数の人間に己の文章を読んでもらうなら、覚悟と責任が必要だ。

こう迫られるとつい頷いてしまうのだけれど、実際問題として、どうかな。予防接種を受けさせるか否かは、生き方の問題だと思う。かずよさんは伝聞情報は伝聞情報として、個人的感想は個人的感想として書いていて、間違いをホントだと断言しているわけでもないのだし。争点は「社会全体の利益を考えて、副作用の可能性を承知の上で予防接種を受けさせるべき」という意見への賛否なのでしょう?

そして、こういうレベルの話をする際にも、人の命に直接関わる事を書こうとするなら(中略)覚悟と責任が必要だ。といって「ド素人」が日々感じたこと考えたことなどを自由に書いて良いわけないと断じてしまっていいのかどうか。私は、これは素人が意見していい領域だと思いました。

こうした観点から見て、yamakaw さんの意見は、かずよさんに対する説得的意見として素直な構成ではないでしょうか。事実として正しいとか間違っているといった問題ではないのだとすれば、価値観をぶつけていくしかないのだと思います。

余談

私の弟は注射が嫌いで、おたふくの予防接種を嫌がるうちに、とうとうおたふくに罹ってしまいました。3学年上の私は弟とは対照的な性格で、嫌な予防接種も我慢して受けていました。だからすっかり安心して、弟の膨らんだほっぺたをつついて「注射を嫌がっているからこうなるんだ、バカ」といじめていたわけです。

ところが、冬休みが終わった途端に私はおたふくに罹り、弟は全快。私はその後、弟の2倍もの期間、寝込むことになりました。もともと私は病弱で、弟は元気。そういった違いもあったかと思います。

母はまず性根の腐った私を叱責し、続いて医者に怒りの矛先を向けました。このときの医者の説明で、予防接種なんて、庶民が思っているほどには効かないものだということを、母も私も初めて知りました。一度、病気に罹った人が再び罹ることもそう珍しくはないとかで、以降、母は父に子どもの看病を一切させませんでした。両親が共倒れしたら誰が子どもを助けるのか、というのでした。優しい父は、部屋の入り口に立って、悲しそうに私を見つめていたものです。

両親は、いろいろな事情があって、あまり予防接種を受けていませんでした。だから母は命がけだったかもしれない。しかし世の中、ときにはいい話もあるもので、慈母はついに子どもの病気を移されることがなく、私のような人でなしにはきちんと天罰が下った、という話。

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