中国と日本の歴史認識問題のズレについて、以下の点を指摘しておく。
- 謝罪については、日本政府・天皇は戦争に対する反省の言葉を述べているが、これは口頭であって文書ではない。中国人は文書化されていないので謝罪と受け取っていない。ここで「謝罪した」「してない」のすれ違いが生まれている一因がある。
- 靖国神社については、A級戦犯の合祀を強行したがゆえに、日本の首脳が参拝する=A級戦犯賛美と受け取られるしかない状況を生み出した。当初は靖国神社もためらっていたA級戦犯を合祀対象から外さないと、「靖国参拝」が軍国主義化と言われる要素が残ってしまうのは事実。
- 歴史問題と靖国問題を除けば、中国人による反日の口実は釣魚島くらいになってくるので、日本側としてはもっと反日的言論に対抗しやすくなると思うのだが。
ひとつだけ反論。
日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。また、日本側は、中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解する立場に立って国交正常化の実現をはかるという見解を再確認する。中国側は、これを歓迎するものである。
これって、文書だと思うのだけれど。末尾に、以下の署名があるそうですから。まあ、中国政府はこれを謝罪と認めていないようなのだけれども、日本人が考える一般論としては、微妙な感じがしませんか? 何らの補足もなしに松永さんの文章を読むと、勘違いする人が多いのではないかな。
- 日本国内閣総理大臣 田中角栄(署名)
- 日本国外務大臣 大平正芳(署名)
- 中華人民共和国国務院総理 周恩来(署名)
- 中華人民共和国 外交部長 姫鵬飛(署名)
中国の反日派が少数派であること、昨夏に愛国サイトが当局の圧力で閉鎖されたこともきちんと記しており、産経新聞だからといって読まず嫌いするのは勿体無い記事。(無料の)記事としては出さないと予想していたのですが、【特集】中国反日デモということで公開されていたのでリンクしておきます。
松永さんはいいのだけれど、単に自分のアンテナが低いだけなのに、「マスコミは重大な情報を隠し国民を都合のいい方へ誘導している」という陰謀論に飛びつく人を時々見かけます。産経は反中新聞かもしれないけれど、
これらの記事を読み比べてみれば、事実は事実として一定の情報を出していることはご理解いただけるかと。社説だけ読んで「新聞はダメ」というのでは、ちょっと無理がある。たった800~2000字で多様な視点や多くの事実を盛り込めるはずもないわけで。
いきなり卑近な話をするのだけれど、ブログなどが「炎上」して、管理人が「反省の意」を表明するとき、中韓の反日派のような物言いをする人が少なくない。「相手の意見に一理あることを認め、大筋で譲る」という話をしているのに、「非を認めたならきちんと反省しろ」といい募るわけ。「私のいうことにはひとつの理もありませんでした。完全に非を認め、謝罪いたします」みたいなことでもいわないと納得しない。
私も2003年にこれをやられて、あのときはほとほと嫌気が差したものです。発端となった話題については誤りを認めて結論だって同意したのに、相手が結論に上乗せした意見に異を唱え続けたら「負けたくせに見苦しい」とギャラリーがうるさい。本筋の議論において正しかった人が、オマケで付加した議論まで正しいとは言い切れない。それに、いくつか出したこちらの根拠の内、最も重要なものが誤っていたことは認めたけれども、ほかの根拠が全部間違いだったとはいえない。
交通事故の事後処理だって、「加害者」が「被害者」に平身低頭して全ての要求を受け入れる、なんてことにはならない。命まで奪ったとしても。それに対して「加害者のくせに生意気だ」といった怒りの声があっても、それだけで世の中は回らないよ。加害者には加害者の言い分があり、それは簡単に無効化できるものではない。私は日本が謝ってきたこと自体は、正しいと思う。けれども、中国人がみんな許すところまで「徹底的に謝る」のが正しいとは思わない。
かなりわかりやすく書いたつもりなのだけれど、やっぱり私の意見を「支離滅裂」という人はいるのだろうし、「矛盾している」という人もいるのでしょう。寂しい話ですね。