趣味Web 小説 2006-02-04

講談社BIZは面白そう

いま田中秀臣さんの「ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝」を読んでいます。講談社BIZの最新刊です。バーナンキさんの伝記を読みたかった人が本書を買って怒りのレビューを寄せ(そして Amazon に削除され)ましたが、まあ、その気持ちはわからないではない。けれどもこの本は経済書なんだから、これでいいと私は思います。バーナンキさんの発言を都合よく拝借した怪しい言説や、言葉尻を捉えた批判が、今後どんどん出てくると思う。バーナンキさんの FRB 議長就任に完璧にタイミングを合わせて刊行されたのが本書だったのは、明るいニュースです。今、書店で「バーナンキについてよくわかる本ありますか?」と訊ねると、田中本が紹介されます。本書がよく売れて、バーナンキ入門の定番になるといいと思います。

さて、田中本に挟まれていた講談社BIZの刊行予定のチラシを見ると、4月に竹森俊平「世界デフレは三度来る(上・下)」が刊行されるとのこと。今から待ち遠しい。月刊「現代」での連載も次号で終了なのかな。

多くのエコノミストは、石油価格高騰はインフレの原因になると言ってきたが、本当の経済学者は、石油価格の高騰はインフレの理由にはならないと、第1次石油ショックのときに、すでに指摘していた。ノーベル賞受賞の経済学者、ミルトン・フリードマンは、石油価格が上昇すれば、人々の石油以外のものに使うお金が減少する。したがって、石油以外のものに対する需要が減少し、それらの価格が下落する。それゆえ、石油価格が高騰しても財サービス一般の価格は上がらない。すなわち、インフレにはならないと指摘していた。もちろん、本当にインフレ率がゼロになるためにはこまごました条件がいる。しかし、こまごました条件が満たされなくても、石油価格高騰がインフレの主要な要因にはならないと指摘していた。

30年以上も前、私がこの理屈を聞いたときには、すぐさま空理空論だと思った。現に、石油価格の高騰とともに日本の物価は急上昇している。石油が上がっても、他のものの価格が下がるからインフレにはならないなどということがあるものかと思ったのである。

あの原田泰さんでさえ、「いかにもそれらしい理屈」に騙されてしまった、という話。「わかっている人」向けのコラムなので、肝心なことが書かれていない。70年代の狂乱物価の真因は何か?

このあたり「世界デフレは三度来る」に解説があります。端的には、好景気の演出に腐心する政治家の圧力(=選挙対策←民意)に日銀が負け、インフレ抑制策を実行できなかったため、狂乱物価となったのです。詳細は雑誌のバックナンバー、または4月発刊予定の単行本でご確認ください。

ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝 世界デフレは三度来る 上 世界デフレは三度来る 下

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