「正解」はともかく「失敗」はある(ことが多い)という認識のもとで人と応対すると、いろいろ都合がいい場合が多いように思います。ドラマでも小説でも、よくあるじゃないですか、「バッカ、そりゃお前が悪いよ。**ちゃんにそんな言い方するなんて」みたいな。私はこの手の話題を避けて生きているので、実際に耳にしたことはほとんどないのですが、それでも皆無ではない。「何ぼんやりしてるんだよ、追いかけろよ!」これは現実に遭遇したことのないシチュエーション。でも、経験ある人、けっこう多いみたいですね。
たいていの人は、「個性」なんていってみても、じつはふつうの人でしかない。こうしてほしいと思ってる、こうされたら喜ぶ、みたいなパターンがある。あるとわかっているなら、お勉強するに越したことはない。なので、恋愛指南みたいな本がたくさん売られているわけです。ドラマも小説も、妙に説教くさいわけです、ヘンな人から見ると。私なんかいつも「へー、ふつうの人はこう考えるのか」と感心しながら映画を見てます。「あ、こういうこといわれたら泣くんだー」みたいな。で、劇中で批判されてる側によく共感するのですが。「そんなもん知るか! もういい! お前らとはもう二度とつきあわない」とかいいたくなる。
以上は男女共通の話。とくに女性が……といわれると、さてどうでしょう。非常によくいわれるのは、「女性が会話に求めているのは共感」とかいうアレなんだけど、ちょっと今すぐに具体的データは出せないものの、女性の2割はそれほど共感を求めていないという資料を見た記憶が……。だから、それぞれの人に、それぞれの正解はある、といういいかたならまあ、とりあえず頷けるのだけれど、それは男性だって同じ。
たとえば、「女の子がなぐさめるみたいに、私をなぐさめてほしい」といい、男性がそのリクエストにどうにか答えようと、女性の口調でなぐさめようとすると、「そうじゃない、それはオトコの前でなにか話すときの女の子でしょう。女の子が女の子をなぐさめるのはちがう」と怒りだす。わたしはちょっとわらってしまったのだが、彼女がなぜ怒るのかといえば、女性には、自分がいった言葉に対して、このように返事をしてほしいという模範解答があり、同じ女性であれば、当然のごとく正解を見つけだし、期待通りのなぐさめ方で自分を元気づけてくれるのだが、男性にはそれができないということにいらだっているのである。
映画に見飽きたと思うのは、こういうパターン通りのシーンが出てきたときですね。「女の子ならこうするはずだ」という決めつけを、何で女性が自分で語っちゃうのかね。それは逆に自分もそうやって、何らかの枠の中に押し込められていくことなのに。ま、映画の脚本なので、多数派の価値観をあたかも普遍の真理であるかのように描かざるを得ないのだろうけれど。少数派の女性はもう少し声を上げた方がいいよ。
無論、記号の暴力性を一切拒否したら言語でコミュニケーションすること自体できなくなってしまう。だから……という諦めの中で、仕方なく大雑把な話をしているなら、私もムカムカしない。でも、そうじゃないみたいなんだよなあ。
個人的な体験に即していうと、私自身、自分の主張を「みんなの主張」として語ることの便利さ、強力さを実感する機会が多々あり、ヤバイなーと思っているわけです。わざとそういっているうちはまだいいけど、本気で言い出すとね、自分の意見が世界の意見になり、社会の多様性が全て許せなくなってしまう。もちろん「個性は大事」みたいなお題目はあるのだけれど、当然、それも「私が許容する個性」限定なんですね。
まあとにかく、危ないってコトですよ。(思考停止な結論)
男性には、こういったコミュニケーションの発想がない。「私がAといったら、Bと返事してほしい」という考え方をしない。つまり、期待する答えはあらかじめ決まっていて、お互いが手順通りに会話をして、それが両者の予測通りに成立する、というコミュニケーションに対して、どうして満足を覚えるのか、いまひとつよくわからないのである。それは男性にとってはほとんど会話ですらなく、ただの確認というか、「山」といわれて「川」とこたえるような、合い言葉のようなものにしかおもえない。わたしも、会話はむしろ予想のつかない方向に脱線するべきだとおもっているし、期待通りの返答がなくてもべつにいらだったりはしない。これは、女性にとっては鈍感さなのだろうか。わからない。
これもまた極端なんで、朝ガバッと起きて「うわ、寝坊した!」と小さく叫んだとき「死ね、ボケナス」とかいわれたら、げんなりしますよ私は。そんな返事がほしかったんじゃない、ということにはなる。じゃあどんな返事ならいいんだ、といわれても困るのだけど、「それは違う」という回答はあります。ていうか、id:zoot32 さんのいう「女性」だって、その程度のことを思っているのではないか、と推測するわけなのですが。
……なんだかなあ、と思ったり。いや、いずれも知っておく分には有用な知識なのでしょうけど。個人的にはイチニクスさんの逡巡に少し共感。