趣味Web 小説 2006-03-08

ゲーム脳問題:見ても見えない、聞いても聞こえない

森昭雄氏がここまで行動する動機が何なのか見極めたい。単純に金銭面での報酬がすごいからかな?

そういう発想は、森さんが「批判者はゲーム業界から金を貰ってる」というのと同レベル。狂人は自分が狂っているとは気付かない、という俗説がありますが、ひとつの考え方に固執する人は、他の考え方を理解できない、ということ。

私の推測を端的に記せば、森さんは「子どもたちがおかしくなっている」と思い込んでいる。だから犯人探しをした。そして森さんにはその面白さが理解できない「ゲーム」が目に留まった。「これだ!」と思って研究し、ゲーム脳理論を案出して自己暗示をかけた。そして社会の熱狂的な歓迎を受ける……。もうね、この洗脳は簡単には解けませんよ。

新興宗教の教祖様を詐欺師と決め付ける人が世の中にはしばしばいるのだけれども、私の狭い経験から書けば、教祖様の少なからずは自分の能力を信じています。一般庶民は「天国や地獄、あるいは霊の存在を完全に排除できない」というあたりでバランスしているわけですが、これをひっくり返して、「自分には何の能力もないという可能性は排除できない」というあたりでバランスしているのが教祖様。「100%大丈夫!」と太鼓判を押しながら一抹の不安を感じているときの心理状態を思い出してほしい。

森さんの講演に参加した作家の川端裕人さんが質疑応答でゲーム脳によってキレたり、殺人をおかす少年が増えるとのことだが、実際には森氏が17歳だった1964年に比べて今の少年の殺人は10万人あたりの発生率で比較すると三分の一以下だ。ファミコンの発売された1983年以来、一貫して凶悪犯罪は低水準。とすると、かりにゲーム脳が実在するにしても、殺人などの凶悪事件を「森氏の17歳」の同水準に引き上げるほどの影響はないと安心してよいのか。と疑義を投げかけても、聴衆の大半はその情報をスルッと聞き流しました。

凶悪な少年犯罪が減っている、というデータは誰にとっても都合のいいもののはず。しかし「不安になりたい」症候群の前には、全てが無力なのか。

川端さんも一連の記事を読む限り、社会的使命感を帯びて戦っています。森さんの片言節句をとらえて云々するなら、川端さんの気負った発言をスルーするのはおかしい。→星海さんのレス返し(2006-03-09)

gori さんが韓国のビザ免除について「これで犯罪者がゾロゾロ入国してくる」という言い方をする人も居たが、実際1年以上も特別措置によるビザ免除状態で犯罪検挙数の推移を見て判断した結果がこうなんだから、ビザの有無が犯罪検挙数とあまり関係なかったという事なんだろう。と素直に数字を読んでも、コメント欄にビザ免除されるまでは、来日韓国人は大人しくしてる。ビザ免除されると、犯罪予備軍の来日韓国人が大挙して押し寄せてくる。と韓国人差別が登場する。

京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」のトリックに「アホかー!」と本を壁に投げつけた人は大勢いるでしょうが、私はことあるごとに、この小説を思い出します。この小説は極端を描いているのだけれど、ある意味で、現実の方がもっと極端だったりする。現代の日本人は不幸だ、とかですね。マジかよ、って。

交通事故がどんどん減っていく中で、厳罰化が進む。なぜ? 例えば、こんなところから(→日本の治安悪化神話はいかにつくられたか)。多くの方が、何らおかしさを感じずに「それでいいよ」といってきたことを、ひとつひとつ点検していかなきゃいけない、と思うのだけれど、それもなかなかね……。

文庫版 姑獲鳥の夏 魍魎の匣―文庫版 クジラを捕って、考えた

ところで最近読んで面白かった「クジラを捕って、考えた」は川端さんの体験・考察記。単行本は1994年刊と古いのだけれど、多くの人にとって新鮮な内容だと思う。お勧めします。

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