趣味Web 小説 2006-03-17

基本的人権の尊重

茨城の殺人事件は主犯格の清水大志さんには死刑判決もありうる。淡々と公判は進んでおり、死体遺棄に関わった暴力団員や詐欺グループのメンバーには実刑判決がどんどん出ている。

ただまあ、仮に死刑判決が出たとしても、宅間守さんと同時に死刑が執行された島崎末男さんと同様、さして話題にならないでしょうね。「悪いやつ」が殺された事件には、関心を持つ人は少ない。

組員ら3人を殺害した熊本県菊池市の元暴力団組長島崎末男死刑囚(59)が14日、福岡拘置所で刑を執行された。死刑執行は、2003年9月以来で、野沢法相のもとでは初めて。

島崎死刑囚は1988年3月、組の運営資金や遊ぶ金欲しさから、組員らに指示し、1億円の生命保険に加入していた組員(当時44歳)を、事故を装って大分県上津江村のがけから突き落として殺害。さらに、この事件の口封じのため別の組員ら2人を絞殺するなどした。

熊本県警に89年7月に逮捕され、殺人、死体遺棄罪などに問われた92年11月の一審・熊本地裁では無期懲役となったが、検察側が量刑不当で控訴。95年3月の福岡高裁控訴審判決は一審判決を破棄して死刑を言い渡し、99年3月に最高裁で死刑が確定した。

島崎死刑囚は「死刑廃止・タンポポの会」(福岡市)が支援してきた。山崎博之代表(40)は「本人はキリスト教に入信して『やり直したい』と言っていただけに残念だ」としている。

私は、少なくとも現代の日本社会において、「死刑は仕方ない」という意見。応報概念には疑問を持っているのだけれど、現に日本人の応報思想は根強い。刑罰に応報性が強く求められる状況下で、それを無視するのはアンバランスと考える。衆愚の危険はあるにせよ、私に民主主義の全否定はできない。

警察は被害者が暴力団員でもきちんと捜査を行い、犯人を検挙した。それから10年、死刑判決が確定する。移り気な人々はもう忘れていた事件も、日本の司法はおろそかにしなかった。日本は、人の命を大切にする国である。

振り込め詐欺グループの死者4人はみな悪党だ。「死んで当然の連中だった」と思っている人も多いだろう。正直いって、私にもそんな気持ちがある。しかし警察は淡々と犯人を検挙した。一般市民は忘れ去っても、犯人たちには粛々と罰が下される。これが日本の司法制度のバランス感覚であろう、と思う。移り気な市民の目線で、感覚で事件に対処しない。人々が本音では軽視している平等主義、基本的人権の尊重に、けっこう頑固に取り組む。

オウムでサリンを製造した村井秀夫さんを刺殺した徐裕行さんは1995年11月13日、懲役12年の判決を受けた(確定)。麻原彰晃さんが殺されたって、やっぱり警察は淡々と捜査するだろう。

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