経済学の素朴な疑問をふたつ。
日本の経済論壇(のごく一部)で有名な「バーナンキの背理法」とは、「もし通貨の発行量をいくら増やしてもインフレが生じないとすると、無税国家が実現される。これはおかしいので、通貨発行権を持つ銀行はインフレを起こすことができる」といったもの。最初は「ふーん」と思ったんだけど、よくよく考えると、「無税国家はありえない」って、どこから出てきたのかなあ、と。無税国家、ありえるのではないか。
物価の上昇がなく、年率5%の経済規模拡大があるとする。このとき単純には、通貨の供給量も5%増やすことになるのだろう。このとき仮に国家予算が経済規模の5%なら、無税国家は実現できるんじゃないの? これが第一の疑問。山崎元さんのブログのコメント欄で飯田泰之さんが「貨幣発行益を国債の償還に使って増税を回避すべし」と主張されていますが、それが可能なら無税国家も不可能でないはず。全額を発券銀行引受の国債で賄うわけ。
ところで飯田さんは「貨幣発行益を国債の償還に使うことと、日銀が国債の買い切り額を増やすのは同じこと」とも主張されている。これも何となく納得してたんだけど、じつはいろいろよくわからないところがあります。先の無税国家の仕組みでは、どんどん国債の残高が積み上がる。返す気もないのに借金ばかり増えるのは気持ち悪い。じゃあ国債を引き受けた発券銀行が「債権放棄」したらどうなるのか。これが第二の疑問点。
日銀が国債を買う場合、その時点で既に日銀券は発行されているわけだから、「債権放棄」しても経済に影響を与えないような気がする。その一方で財政不安は解消される。何も悪いことがない? でもリフレ派の本でも「買い切り」までは書くけど、「債権放棄」はいわない。何故なのかな。金融引締めの際に売り物がなきゃ困る? でも半分くらいは「債権放棄」していいような……。
何か根本な知識が抜けているか、勘違いしているのかな。しばらく考えたけどわからなかったので、ここで仮綴じ。
単純形として全ての歳出を紙幣印刷で賄う無税国家を想定すれば、毎年の増分はマネーサプライではなくマネタリーベースのそれでなければなりません(つまり、信用乗数の逆数分だけ規模が小さくなります)。
あっ。完全に失念していました。今回もていねいなご解説をいただき、どうもありがとうございます。やはり無税国家は現実的には難しいわけですね。GDP の 5% ならありえないとも言い切れないかと思いましたが、それが勘違いで、実際には 1% 程度だと。日銀保有分の国債についても、おかげさまでスッキリしました。
ども。毎度お世話になります。トリビアル
という言葉がわからなくて、辞書を引いたら自明であること
と説明が。たしかに「中央銀行はインフレを起こすことができる」はトリビアルだと思いますが、財政規律などの問題で無税国家は実現不可能
とは決め付けられないような気が、私はしてまして……。