趣味Web 小説 2006-04-21

内部告発の行方

週刊誌の記事では、証拠を出せない内部告発者の発言は、匿名某氏がこういっている、と紹介される。そういうことをいっている人がいるのは事実である、という報道の仕方。そしてまた、批判の対象についても実名を挙げない。それが名誉毀損をギリギリ回避する知恵なのですね。

立花さんの告発をざっと拝見しましたが、明白な証拠を出すことができなければ、それまでだと思います。発言者が身元を明かし、批判対象の実名を挙げているのが目を引くものの、ひとつひとつの話は、既に週刊誌、夕刊紙のレベルで報道に載っていることと大差ありません。zakzak は批判対象の実名を書かず、疑惑の信憑性も保証していない。常識的には、(少なくとも現時点においては)その程度の扱いにしかなりえない話なのだと思います。

しかしながら、姉歯さんの耐震偽装事件のように疑惑が広く信じられ、「許すまじ」の論調が支配的になったならば、話は変わってきます。疑惑の本件について証拠があろうとなかろうと、関係なくなってくる。

姉歯さんの偽装はヒューザーも木村建設も総研も関係ないところで始まったようだ、とわかってきた。そしてこれまでのところ、イーホームズが外部情報を契機に行った再検査の結果が出る以前にヒューザーや木村建設が姉歯さんの偽装を知っていた証拠は出ていない。大々的に捜索までしておきながら、この状況。ところが「個人犯罪でした」では納得しない国民感情を、権力は無視できない。

犯人の姉歯さんは耐震偽装より刑罰の重い名義貸しで起訴され、ヒューザーは耐震偽装を知った後にマンションを販売した詐欺容疑で立件、手抜き工事をはじめとする様々な悪事を行っていたとされる木村建設は粉飾決算、長らく偽装を見抜けなかったイーホームズは架空増資で罰せられる見通しとなった。あとは総研の悪事を何かひとつでも見つけたら、事件は一件落着となるのだろう。

みな叩けば埃のひとつやふたつは出る身だったわけだけれど、全体としてみれば妙な話だと思う。あの世論の高まりを背景として強行された捜査に、どれだけの理があったのか。結果的に「悪事を発見しました! やっぱりこいつらは悪党でした!」って、それでいいのか。どこかの誰かさんの話だと思って、「いいぞ、やっちまえ」と思ってる人は、自分(の会社)があやふやな容疑で捜索を受け、帳簿とかみんな持っていかれ、粗探しされて断罪の憂き目に遭う可能性を考えないのか。

考えないのだろうな。あるいは、「いや、やっぱりそれは、悪いことをやっていたからいけないんでしょ」と素朴に思っているのかな。

もともと架空増資の疑いがあってイーホームズが捜索されたなら別にいいの。粉飾決算の疑惑に基づいて木村建設が捜査を受けたなら、わかるわけ。でも違うでしょう、本件取調べのための別件逮捕とかでさえない。国民の「空気」を読んで証拠もないのに本件捜査が強行され、結果が出ないので(あまり)関係ない話を持ち出して「成果」を作り出す。警察や検察に、こんな権力を与えて、よく安心していていられるものだと思う。

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