趣味Web 小説 2006-05-28

株高の風景

先日、従姉の結婚式があった。探りの段階で「出席するのは面倒くさい」という気持ちを伝えていた私のところには、もちろん招待状が届かなかった。両親の結婚式でピンクレディーを歌って祝福してくれた従姉だけに、両親のもとへは問答無用で招待状が届いた。

従姉の父にあたる伯父は数年前に会社を早期退職して悠々自適の生活を送っている。昔とった教員免許を活用して長年の夢だった教職に就いてみたり、従兄(従姉の弟)の子(つまり伯父にとっては孫)の面倒をみたり。伯母はまだ仕事をしているので、最近は家事を頑張っているのだそうな。で、お金には困っていないし、貯金もたくさんあるので、退職金は全て株式投資に注ぎ込んだのだという。それが2001年頃の話。

伯母(母の姉)は長いこと伯父の株式投資を「お金を無駄にして」と愚痴ってきたのだけれど、伯父は非難の言葉を聞き流していた。一時期は1000万円以上も含み損があったらしい。ところが伯父の眼力に狂いはなかったようで、今では資産が倍増している。伯母は有頂天で母に「あなたも株をやりなさいよ」と勧めたそうだ。母が「うちの人はお金には縁のない人だから」と答えると、「馬鹿ねえ、あなたがやればいいじゃないの」だって。でも、そういう伯母だって自分では絶対に株に手を出さない。伯父はニコニコしていたそうだが、針のむしろに座り続けた日々を忘れてはいないのだろう、他人に株を勧めたりはしない。

一方、バブル崩壊後に都市計画の都合で農地の一部を安売りする羽目になった父方の祖父が、いろいろお金の使途を考えた挙句に株式投資へ入れ込んだのは10年ほど前の話だった。昔からあすかあきおさんの著作や、怪しげな有機農法などに入れ込んでいた祖父らしく、ちゃんと第二海援隊の浅井隆さんの本にハマった。そして98年の金融危機の頃に銀行株へ全力で投資して、長い長い潜伏期間に入る。結局、10年で約3000万円の利益となったのだそうな。浅井隆さんの本で儲かることもあるんだね。

1年あたり300万円だから、大したことないといえばそうなのかもしれないけれど、年金と株の利益を足せば父の収入をはるかに越える。昔から祖父を尊敬してきた父は「親父はすごい!」と感動し、結婚式から帰ってきてから突然、株の勉強を始めた。父は仕事も趣味も全力で取り組むタイプ。結果は出ないのだけれど、当人は楽しいらしいので、いいことだと思う。

母と結婚してから、これで幾つ目の趣味になるのかな。熱帯魚、釣り、パチンコ、オートバイ、囲碁、将棋、コイン、骨董、家庭菜園、日曜大工、麻雀……。全力でこんなにたくさん同時にできるわけもなくて、メインの趣味は数年集中して取り組み、飽きたら完全に忘れ去るのがパターン、コイン・囲碁・将棋などは細く長くで続いている。

さて、母は「ボケ防止になるなら、100万円くらい無駄にするのは諦めないといけないかもしれないね」と GW に実家へ顔を出した私にいった。母は既に父の失敗を見込んで今後10年の家計のやりくりを考えていた。母が知恵を絞って準備してきた老後の蓄えが1割も減ってしまうというのに、「100万円くらい」といえるのはすごい。それ以上は傷口を広げさせない自信があるのだろうが、それにしても……。

そして母が悲しんでいたのは、「お母さんは骨董品が好きだったから、お父さんが骨董のことを忘れてしまったのが残念」ということだけなのだった。

母は趣味のない人で、父が新しい趣味を持つと、少し自分も手を出してみることを繰り返してきた。父がオートバイに乗れば、母もオートバイに乗ってみた(が、私が「おかーさーん」と走り寄ってエンジンに触れ火傷したので、すぐやめた)。パチンコは大音響が駄目。釣りは早起きがつらく、船酔いもする。将棋や囲碁は難しかった。そうして残ったのが家庭菜園と骨董なのだった。

家庭菜園は今でこそ庭でできるからいいけれど、以前は15分ほども歩いていった先にある6畳ほどのレンタル農地を耕していた。父が飽きてしまった後、一人で野菜を育てることに、母はときどき寂しさを感じていたのだと思う。約10年間、あちこちの骨董市に夫婦で出かけたりしていたので、今回のことには堪えたらしい。

日銀はだれのものか

中原伸之さんの予想では、このたびの景気回復の期間はいざなぎ景気を越えられないのではないか、とのこと。

あと1年半は株で大儲けしなさい! 次にくる波

ちなみに浅井隆さんも2004年12月にこんな本を出しており、日本株で儲けたいなら2006年前半まで、とのこと。当然、中原伸之さんとは「理由」の部分が全然違うのだが……。もう1冊の方は、半分死人さんのレビューが面白かったので、なんとなくご紹介。

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